Oculus、Morpheus…激動のVR、1年間で何があったか振り返ってみた

Oculus Rift DK2,VR(バーチャル・リアリティ)

先日、集計結果を発表した「VR Award Japan 2014」の告知でも書かせていただいたが、2014年はVR(バーチャル・リアリティ)の幕開けとも言える1年だった。

筆者(すんくぼ)も3月のもぐらゲームス開設を契機にOculus Riftのことを知り、惚れ込んでしまった。日本各地のイベントに参加し、開発者の皆さんと話し、そして国内外の情報を追いかけ続けている。

そのわずか10ヶ月の間にもVRは一気に盛り上がってきたという印象だ。
今年1年でどれだけの動きがあったのか、ニュースを振り返ってみたい。

1月7日 CESで開発者キット第2弾のプロトタイプ「Crystal Cove」発表

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今年一番最初のニュースはアメリカで開催された世界最大の家電見本市CESでのOculus VR社の発表だった。「Crystal Cove」という開発者キット第2弾のプロトタイプを発表したのだ。それまで360度の加速度センサーのみだったDK1(開発者キット第1弾)に位置を認識するための外部カメラが付属すること、反応速度の向上、有機ELの使用などが明らかになった。

(参考)Crystal Cove Debut, CES Recap, and Steam Dev Days(Oculus VR公式、英語)


3月19日 GDCでDK2がお披露目、試遊可能に

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3月は電撃発表が相次いだ。まずは、アメリカで開催されたゲーム開発者向けカンファレンスGDCで開発者キット第2弾「Oculus Rift DK2」がお披露目された。1月に発表されたCrystal Coveをさらに改良したもので、詳細なスペック等も明らかになった。

(参考)Announcing the Oculus Rift Development Kit 2 (DK2)(Oculus VR公式、英語)


3月19日 Sony PS4向けヘッドマウントディスプレイ「Project Morpheus」発表

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明らかに高性能で、より没入感の高い体験ができるようになったDK2の発表と同日、ソニー・コンピュータエンタテインメントがPS4向けのVRヘッドマウントディスプレイ「Project Morpheus」を発表、GDCで体験可能になることを明らかにした。性能もDK2とほぼ同程度。洗練されたデザインと快適な体験そして何より大企業であるソニーの参入に期待が高まった。

(参考)「プレイステーション 4」(PS4™)の世界をさらに拡げる バーチャルリアリティシステム 「Project Morpheus(プロジェクト モーフィアス)」を開発~PlayStation®Cameraとの組み合わせで360度全方向、リアルタイムに変化する新次元のゲーム体験を実現~(SCE公式)


3月26日 米・Facebook社がOculus VRを20億ドルで買収

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GDCの興奮が冷めやらぬ中、さらに激震が走るニュースが発表された。Facebook社による20億ドル(約2000億円)の大型買収だ。事業は完全にFacebook社から独立ということで、Facebookがパトロンとして開発資金等の出資を行った形になる。この買収により、Oculus VR社は開発、人材確保を加速させた

(参考)FacebookがOculus VRを20億ドルで買収、OculusとMinecraftの交渉は決裂―週刊もぐらニュース号外―(もぐらゲームス)


4月7日 Oculus VR創業者パルマー・ラッキーが来日、Uniteで基調講演

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ゲームエンジンUnityの開発者向けイベントUnite Japan 2014でOculus Riftの発案者でありOculus VRの創業者のパルマー・ラッキーがVRの未来について基調講演。日本で制作されたコンテンツを高く評価し、日本における開発への積極的な支援を明らかにした。非常に気さくな人柄で、開発者と一緒になって楽しんでいる様子が印象的だった。

(参考)「 Oculus VR 」の創業者パルマー・ラッキー氏はなぜ日本の開発者に魅了されたのか? ― Unite Japan 2014 レポート(もぐらゲームス)


4月26、27日 ニコニコ超会議3にてOculusのコンテンツが勢揃い

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ニコニコ動画を運営するドワンゴが幕張メッセで開催したニコニコ超会議3にOculusRiftのコンテンツが勢揃い。開発者コミュニティのOcufesも超Ocufesと銘打って10点以上のコンテンツを展示した他、憧れのキャラクターと握手ができる「握手会」や初音ミクとの「添い寝」なども展示され、のべ4000人以上が体験した

Ocufesのインタビューなどはこちら
100万人に Oculus Rift を被せたい~ニコニコ超会議で話題になった超Ocufes にインタビューしてみた

(参考)ニコニコ超会議3で Oculus Rift が体験できる「超ocufes」まとめてみた(もぐらゲームス)


5月30日 TEDxTokyoにてダンボール製スマホHMD「ハコスコ」お披露目

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スマホを装着して気軽に楽しめるモバイルVRの分野で一番最初の狼煙が上がったのは、この「ハコスコ」だ。理化学研究所の藤井直敬氏らが開発したダンボール製で組み立て式の「ハコスコ」はなんと1,000円。スマホをセットしレンズ越しに眺めると、確かにOculusには及ばないまでも視界が動き360度の体験を味わうことができる。

(参考)ハコスコ、デビュー@TEDxTokyo!(ハコスコ公式)


6月 豊橋Ocufes、六本木「キラ☆キラOcufes」開催 Ocufesは1年間に全国各地で開催

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6月は体験イベントOcufesの開催が相次いだ。1日には愛知県豊橋市にて開催された。地元の商店街の町おこしイベントに併設して開催され、250名以上が体験した。24日には六本木で開催。Ocufesはこの一年の間に、大阪、日立(茨城)、北九州(福岡)など日本各地で開催された

(参考)
「誰でも、どこでもできる」自分の街で Oculus Rift の体験会をー Ocufes in 豊橋レポート(もぐらゲームス)
進化するバーチャルリアリティを体験するならイベントに行くべき!キスもできるぞ!Ocufes六本木&IVR展レポート(もぐらゲームス)
Ocufes公式


6月25日 Google CardBoard発表

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6月25日に開催されたGoogleI/OでGoogleによるダンボール製VRヘッドマウントディスプレイの発表が行われた。ハコスコとも似ているが、Googleは設計図のみを公開。その後ニュースがなかったが、2014年後半にはCardBoard対応のアプリをGoogle Playのストアで公開している。

(参考)iPhoneで使える段ボールVR「ハコスコ」、Googleが発表した「Cardboard」の購入方法などを比較(もぐらゲームス)


7月1日 ハコスコ発売開始

ハコスコがAmazon.co.jpで発売開始となった。当時はiPhone5/5S向けのみだったところ、現在は、Google CardBoardやアンドロイドやiPhone6でも使えるワンサイズ大きいハコスコ+、ハコスコDX(プラスチック製)、などラインナップを拡充している。
また、ポニーキャニオンやDMMといった企業とのコラボが相次いでおり、アイドルのライブコンサートの配信などコンテンツも徐々に増えつつある状況だ。

(参考)ハコスコ Products(ハコスコ公式)


7月5日 VR乗馬コンテンツ「Hashilus」ハウステンボスで常設展示

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Oculusのコンテンツを開発している開発者チームが制作した「Hashilus」。健康器具とPCを接続し、まるで乗馬をしているかのような体験ができるコンテンツだ。各地のイベントで出展していたが、長崎県・ハウステンボス内「ゲームの王国」での常設展示が開始された。日本初のVRを使った常設展示だ。2014年12月31日現在も体験可能。この12月には乗馬レースに加え、さらに同様の装置を使った「鳥獣ライド」も公開されている。

(参考)Project Hashilus(ハウステンボス公式)


7月24日 Oculus Rift DK2 全世界へ出荷開始

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7月に出荷開始の告知がされていたOculus Rift DK2がついに全世界に出荷された。到着したDK2を使って、様々なコンテンツが国内外で作られている。

(参考)DK2s Now Shipping, New 0.4.0 SDK Beta, and Comic-Con(Oculus VR公式、英語)


8月1日 VRで歩ける「Virtualizer」Kicksarterで目標達成

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OculusRiftには、手元が見えない中でどのように操作するのかという課題がある。その課題に対して、様々な装置の開発に乗り出すチームが多く現れた。その一つが歩行やジャンプを可能にする「Virtualizer」だ。Kickstarterでの資金募集を7月に開始し、無事にゴール。他にも6月にはグローブ型のコントローラー「Control VR」が目標金額を達成するなど新たな入力装置に注目が集まった。

(参考)VRで歩ける「Virtualizer」Kickstarterで支援を募集中(もぐらゲームス)


9月2日 Project Morpheus向けコンテンツ「サマーレッスン」発表の衝撃



9月もイベントが多く、発表が相次いだ月となった。デバイスの発表以来、展示用デモ以外のコンテンツ開発の話がなかったソニーのProject Morpheus向けに開発中のコンテンツ「サマーレッスン」が明らかになり、国内外に衝撃を与えた。鉄拳を制作したバンダイナムコゲームスの原田勝弘氏率いるチームが開発中、それもいかついゲームではなく女子高生の家庭教師をするゲームということで話題性は十分、当初は9月18日からの東京ゲームショウへの出展を計画していたが、中止になった。11月に開催された抽選制の体験会では多くのユーザーがこのコンテンツを体験した。

(参考)PS4の没入型VRヘッドセットMorpheus、制服少女と過ごす『サマーレッスン』をTGS出展。鉄拳チーム開発(engadget)


9月3日 サムスンがGear VRを電撃発表。OculusVR社と共同開発

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ベルリンで開催されていたイベントで韓・サムスン社がスマホ向けVRヘッドマウントディスプレイ「Gear VR」を発表し、Oculus VRとの共同開発を行っていることが明らかになった。PCではなくスマホで動く端末ながら、その体験はOculus Rift Dk1にも匹敵し、一部の性能はDK2を凌駕していること、また遅延低下など快適さのための工夫が丁寧にされていること

(参考)Introducing the Samsung Gear VR Innovator Edition(Oculus VR公式、英語)


9月18日 TGS開催、3つのデバイスが勢揃い。長蛇の列

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日本で開催された「東京ゲームショウ」にてOculus VR、SCE、サムスンがそれぞれヘッドマウントディスプレイを展示。どのブースも盛況で長蛇の列ができていた。日本で開催されたイベントでこの3つのデバイスが公式に展示されるのはいずれも初めてとなった。

(参考)TGSのVRコンテンツ体験レポート ホラゲからアニメまで可能性を秘めたブースをほとんど全部見せます!(もぐらゲームス)


9月20日 Oculus Connect開催、次期プロトタイプCrescent Bay発表

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アメリカでは、Oculus VRが主催する初の開発者向けカンファレンスOculus Connectが開催された。全世界から開発者が集まり、Oculus Riftの今後に関する講演や開発者同士の交流が活発に行われた。その目玉は、基調講演で発表された次期プロトタイプ「Crescent Bay」だ。DKをさらに上回る性能とVR体験のさらなる没入感に、体験した参加者から絶賛の声が相次いだ

(参考)公式開発者会議「Oculus Connect」参加レポート。明らかになった新型Oculus Rift「Crescent Bay」の実力とは?(もぐらゲームス)


10月25、26日 お台場でOcufes開催、開発者勉強会には200人以上が参加

東京・お台場の科学未来館で開催されたデジタルコンテンツエキスポとOcufesが同時開催され、開発者同士の情報交換会も行われた。開発者会に参加したのは日本全国から集まった300名程度。3月に開催された前回の開発者会では、数十名だったことと比べると驚くべき拡大だ。

(参考)Ocufes公式


10月28日 VR専用360度パノラマ短編映画「Zero Point」配信開始

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海外のチームが制作した360度見渡せるドキュメンタリー映画「Zero Point」。ゲームのプラットフォームであるSteamにて配信が始まった。まだ不完全なところは残しつつも、360度を見渡せ、音も色々な方向から聞こえてくる体験はVRを使った実写コンテンツの可能性を感じさせるに十分ではないだろうか。

(参考)もはや“映像”を越えた“体験”! Oculus Rift専用実写コンテンツ「Zero Point」世界初のOculus専用ショートムービー。その場にいるような360度の体験は衝撃!(窓の杜)


11月30日 日本全国4箇所で第3回Oculus Game Jam in Japan開催

Oculus向けのコンテンツを制作するOculus Game Jamが東京(2会場)、大阪、沖縄の4箇所で開催された。Oculusの開発をしたことがない参加者も頭を捻り様々なコンテンツが2日間の間に開発されることになった。

(参考)第3回 Oculus Game Jam in Japan【大阪会場】まとめ(Togetter)


12月8日 SamsungよりGear VRが米国内限定で販売開始

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9月に発表されたGear VRが米国内限定で販売開始となった。まだ限られた数しか流通していないため実際にどのような体験なのかは詳細にレビューできないが、もぐらゲームスでも近々入手してレビューを行う予定だ。

(参考)VRの始まりの年の終わりに、まさかのVR親孝行。スマホをぶっ挿してVR体験できる“Gear VR”入手リポート(ファミ通)


12月11日 Oculus VRがNimble VRを買収

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Facebookに買収されたOculus VRが発表した今年最後の電撃発表は、手のトラッキングを行うデバイスを開発していたNimble VR社、3D空間の認識やモデリングを行う13th Lab社の買収だった。こうした買収が今後Oculus Riftの製品版に向けてどのように影響するのか、非常に気になるところだ。

(参考)Nimble VR, 13th Lab, and Chris Bregler join Oculus(Oculus公式、英語)


このように今年1年の動きを振り返ってみると、

・デバイスの技術革新が早く、様々な種類のデバイスが登場
・関心を持つ人が開発者サイドでもユーザーサイドでも急速に増加
・大企業が次々と参入

といった現象が起きていることが分かる。
こうした考察は開発者でもある@WheatTweetさんの考察記事がかなり参考になるのでぜひ読んでみることをオススメしたい。

VRになぜ注目が集まるのか?開発者が考察するVRの今後

今回の振り返りはデバイスに寄っており、コンテンツの振り返りがあまりできなかったが、数多くのコンテンツが作られ、そのクオリティは確実に上がってきている。

ソフトの紹介記事はもぐらゲームス及び毎週連載の「杜のOculus部」(窓の杜)を参考していただきたい。また、もぐらゲームスのダウンロードサイトからもダウンロード可能だ。

来年はいよいよOculus RiftやProject Morpheusの製品版の話題が出てくると思われる。さらに本腰を入れて情報を発信していきたい。

VRにまつわるニュース・ソフトの紹介はMoguraVRにて更新中!
http://www.moguravr.com/

  • すんくぼ(@tyranusii

    学生時代、MMORPG「リネージュ」で朝から晩まで飽くことなきレベル上げと戦争に没頭する毎日を送る。本業では廃人卒業後、国家公務員を経て、再びゲームの世界へ。「もぐらゲームス」を立ち上げました。ハマったゲームはライブアライブ、ファイアーエムブレム 聖戦の系譜、デモンズソウルなど。
    個人ブログもやってます:もぐらかペンギンか