全方位危険だらけのアクションゲーム『あめまち』 大雨降り注ぐ謎の街に迷い込んだ少女の脱出劇

とてもよく晴れたある日。

少女は道を往く。

……と思ったら、突然の地盤沈下!

気付けばそこは、大雨が降り注ぐ人の気のない街!
なぜ、このような場所に!?

……という、唐突極まりないオープニングと共に始まる『あめまち(※正式名称:あめまち ~少女と雨と街~)』は、2019年10月25日にフリーゲームとして公開された横スクロールのアクションゲームだ。

主に小規模なアクションゲームをWEBサイト上で発表・配布しているサークル「喫茶珈琲館」が制作。本作は「喫茶珈琲館」のサイトのほか、フリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」からもダウンロードできる。

大雨と風の驚異が少女に牙を向く、ハードなアクションゲーム

内容は至って単純。主人公の少女を操作し、大雨降り注ぐ無人の街からの脱出を目指すというものだ。複数のエリアが地続きで繋がったフィールドを進んでいく構成で、アクションゲームとしては探索型に属するゲームデザインになっている。とは言え、基本的には行く手を阻む障害を取り除いたり、危険な罠を潜り抜けることに徹する構成。

主人公のアクションも移動、ジャンプ、段差をつかんでよじ登る、しゃがむ(+しゃがみながらの移動)の最小限に留められている。特殊なアイテムを獲得しての新アクション追加みたいな要素もない。

攻撃系アクションも皆無。そもそも街には人はおろか、動物もいない。敵となりそうな脅威がないから、存在しなくて当然だ。
しかし、敵はおらずとも、あまりにも長く大雨が降り続けている関係で、街のあちこちが損壊している。道路が陥没して大穴が開いてたり、池同然の水溜まりができているなど、実際の大雨でも起こり得る光景があちこちに広がっている。

風も相応に吹き荒れており、場所によっては折れた木や看板、ガラスが飛んでくる。中には風の影響で倒れ、漏電状態になっている電柱(電線)、割れた窓ガラスが積み重なって剣山が障害として立ちはばかることもある。

もちろん、どれも接触すれば問答無用でゲームオーバーだ。なので、街中を進む際は慎重な行動が大事。一瞬の気の緩みが事故へと繋がる、緊張感抜群にして、街中の環境を反映した高めの難易度に設定されている。

さらに付け加えると、主人公のアクションも難易度全体の高さを際立たせる。というのも、挙動が重い。人間本来の運動能力に基づく、生々しい手触りになっているのだ。それなりにゲームに精通した人に対して例えるなら、”ペルシャの若者”仕様と言えばピンとくるだろう。穴やトラップを飛び越える時、ギリギリの所からジャンプしないと届かないなど、随所で際どい操作が求められてくるのである。

さらに滑りやすい。止まったり、方向転換する時にキッチリ止まらず、僅かに”スルッ”と動く。なので、上手く制御しないと穴に落ちてしまったり、トラップに接触してミスに繋がることも。足場から足場をよじ登って高所を目指す時も万が一、足を滑らせでもすれば大体ご想像通りの”ボキッ”だ。

戦闘なし、探索や謎解きも最小限という簡易設計だが、このように大雨降り注ぐ街と生身の人間たる少女が主人公という設定を踏まえた要素が盛り沢山。見た目からは想像もつかない、しかし世界観からすれば妥当とも言える説得力の高さを兼ね備えた、ザ・ハードコアなアクションゲームに仕上げられている。

またの表現で大雨の中、外を歩くことの危険性を体験できるアクションゲーム。ある意味、学習系(啓蒙活動系)ゲームとしてもカテゴライズできそうな内容だ。

だから大雨と風の中、外出はしてはならない

そんな本作の魅力は、よくも悪くも初見殺し満載な展開の数々である。

公式にも紹介されているので、オブラートに包まずぶちまけるが、本作は紛うことなき”死にゲー”である。トラップ接触で瞬時にゲームオーバーとなる時点で察せるかもしれないが、それはもう容赦ないほどボコボコドンドンやられる。

しかも、大半の障害が初見突破困難なぐらいに厳しい。
どう厳しいのかと言われれば、言葉通りである。

何の前触れもなく、突然襲ってくるのだ!

特に風で飛んでくる木、ガラス、看板の類は冗談でもなく、唐突に来る。回避行動を取ろうと思ったらもう手遅れ、となるほどだ。当たり判定もシビアで、そのまま走りきれば良さそうと思ったら、頭が1ドット単位で接触してしまったのでアウトとなるのが多々。辛うじて突破できたとしてもその先、思いもしないものが思いもしない方向から来て、水の泡にされることもある。

あらかじめ自ら姿をさらし、危険性を伝える穴、ガラスの剣山も回避するのが大変だ。先の通り、主人公のアクション全般の挙動が重い。

なので落下、もしくは接触ギリギリの所から飛ばないと突破は無理。助走を付け、走り幅跳びの如しで飛ぼうとしたその先に待つ運命は”ホップ ステップ ジャンプ・・・かーるいす!!”である。”わたしのだっしゅつはここでおわってしまった!”とも言う。

そんな訳で初回プレイ時は、不意打ちの洗礼に遭いまくること確実。公式で”死にゲー”を騙る意味を思い知らされる、苛烈な展開が連続するのだ。これだけでも、相当意地悪な難易度になっているのが察せると思う。

だが、この難易度が大雨によって損壊した街の設定にこの上なくマッチしている。現実にも大雨……特に台風接近に伴う悪天候時には、街中で様々なものが損壊する事態が起こる。屋根が飛んだり、電線が倒れたり、工事用に組み立てられた足場が倒壊するなど。ゆえに外出は危険だと、天気予報では注意が呼びかけられる。それを無視して出てしまった人が被害に遭うニュースが報じられることも多い。

本作はまさにそんな状況下の街を進んで脱出を目指すので、理不尽な危険の数々が”あって当然”。むしろ、事前に予告するようにしたら台無しになるほど、しっくりくる設定になっているのだ。
それもあって、厳しくて当然と言い切れる説得力の高さが表現されている。

また、あくまでもやられやすいのは初見時。全てのトラップはランダムではなく、特定の地点に限定して襲い掛かってくるので、一度経験した後はパターン化可能。ノーミスクリアも達成できる設計だ。設定的にはランダムにした方が”らしさ”が出せるかもしれないが……余計にクリア困難になりかねないのもあってか、そこは加減されている。

また、ゲームオーバー後も瞬時にエリアの入口から再開する高速形式なので、ストレスを感じさせない。何より、ゲームクリア(エンディング)に要する時間が長くて30~40分程度と短め。何十時間も難関突破に悩まされる心配もないので、遊びやすさも上々だ。

”死にゲー”の触れ込みに戸惑い、抵抗感を覚えるかもしれないが、昨今、インディーゲーム界隈における同タイプの作品レベルの苛烈さはないので、実は苦手意識のある人にも薦められる作り。舞台設定が全体の厳しさに説得力を与えている作りにも唸らせるまとめ具合で、魅力になっているのだ。

そして、だからこそ大雨や風吹き荒れる街を歩く危険性が輝く。それが学習系(啓蒙活動系)ゲームとしての価値を付与しているのも面白いところだ。

グラフィックへのこだわりも光る、秀作短編アクション

巧みなマップ構成も見所。特に基本操作を地形の流れに沿い、メッセージテキストなしで教える序盤の構成は驚くほど自然にまとまっている。

謎解き的な仕掛けも用意されているが、いずれも僅かな手数で攻略できる作りでテンポを乱さない。特定の地点を繋ぐワープポイントが解禁されたり、踏破したエリアと繋がる近道が完成するなど、探索型の体裁を取ったなりの展開もあり、街中全てを歩き回りたい欲求を刺激する。

何と言っても、グラフィックが素晴らしい。家屋、ビル、マンションなどの建造物はもちろん、バス停に自販機、掲示板と言った物に至るまで丁寧に描き込まれていている。静止画では分かりにくいが、主人公のアニメーションも滑らかで、髪の毛もしっかりなびく徹底ぶり。雨もちゃんと地面などに打ち当たる部分まで描かれていて、その細かすぎるこだわりの数々には度肝を抜かれること間違いなしだ。特に主人公のアニメーションは本当によく出来ているので、じっくり隅々まで堪能いただきたいところだ。

演出面でも音楽は基本的に環境音主体、ストーリーも本編ではあまり詳しく語られないが、意味深な要素があちこちにあり、真相を考察したくなる面白さがある。エンディングも分岐式になっているので、2周目以降も楽しみもバッチリだ。

悪く言えば初見殺しが満載なので、苦手な人には辛さを感じる内容だ。ただ、それに説得力を持たした世界観と練られたマップ構成という、一口にダメとは言い切れない魅力がある。アクションゲームとしてもマップ構成の巧みさに手頃なボリューム、二周目以降を楽しくする分岐式のエンディングなどの見所があり、遊び応えも申し分なしだ。

「雨の中を歩く少女のゲーム」を作りたい一心で誕生した、作者の自己満足作品でもあったりするのだが、それゆえのらしさと高い完成度が際立つ逸品。アクションゲーム好きはもちろん、この世界観に惹かれた人はぜひ、遊んでみていただきたい良作だ。謎多き人の気のない街を進んで脱出し、真相に迫ろう。同時に大雨と風の脅威も学ぼう。

[基本情報]
タイトル:『あめまち』
制作者: 喫茶珈琲館
クリア時間: 20~30分(エンディング分岐あり)
対応OS: Windows
価格: 無料
備考: 推奨年齢12歳以上(※出血表現あり)

ダウンロードはこちらから
※喫茶珈琲館:公式サイト
http://coffeekan.usamimi.info/room/ame/

※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/21309


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