シンプルなバカなのに真面目で奥深いバク宙ゲーム『Backflip Madness』

スマホゲーム

今年3月、iOSとAndroidのアプリストアに突如ランキング入りしてきたゲームがある。それは有名キャラのゲームでもないし、壮大な物語も育成要素もない。グラフィックはむしろショボい。地味な格好した男がバク宙をするだけ。しかしそんなゲームが3月から現在までずっとランキング上位に鎮座し続けているという事実。

今回は、そんな謎のゲーム『Backflip Madness』がなぜ人気なのか、その面白さを紐解いていきたいと思う。

シンプルかつ激ムズなバカゲー

『Backflip Madness』はバク宙をキメるだけの極めてシンプルなゲームだ。右下のボタンをタップするたびに「しゃがみ」→「ジャンプ」→「回転」→「着地」の動作に切り替わるので、タイミングよくボタンを押して赤いポールの内側に着地できれば成功。「4タップでバク宙をキメる」ただそれだけだ。

image02
この状態から4タップして…

image04
クルッとまわって着地する。

操作は極めてシンプルだが、実際にバク宙をキメるのは非常に難しい。慣れないうちは何回トライしても成功させることはできないであろう。

しかしこのゲーム、失敗したときのコケ方が妙にシュールなため、度重なる失敗もあまり苦にならない。転倒時は物理演算によって複雑に動くので、転んだ際に偶然土下座のようなポーズになったり、バスケットゴールの角に頭を強打するなど、予想もしないような面白いコケ方になることがある。その際もこの男性は表情一つ変えないのがまたシュールだ。

image01
転倒時にたまたまベンチに座ったの図。ちなみにこの服はなぜか用意されているニンジャスーツ。オプションで切り替え可能だ。

リトライが瞬時に行えることもあり、うまくいかなくてもついついリトライしてしまう。タイミングを変えながら何度もトライし、うまく着地できた時はちょっとした感動を覚えるだろう。

このゲームは、飲み会の席などで友人と交互にプレイするのがオススメだ。シンプルでシュールなのですぐに楽しめるし、バク宙をキメられた時の感動を分かち合うのも楽しい。

回転時のポーズは5種類から選択可能。それぞれポーズが特徴的なので好みで選んでもいいし、回転速度も異なるのでジャンプの高さによって使い分けてもいい。

マップは8ステージ。体育館だけでなく、町中で屋根からジャンプしたり、最終的にはグランドキャニオン(らしき場所)でフリーフォールと呼んだ方が近いレベルの大ジャンプにも挑戦できる。

image05
屋根から屋根への横に長いジャンプもある。

ちょっとしたバカゲーとして楽しむ。それだけでも100円の値段分は楽しめるはずだ。

でも、シンプルで奥深く、ゲームとして面白い

しかし、単なるバカゲーで終わらず、真面目にステージクリアを目指す楽しさも内包されているのが、このゲームの真の魅力だと筆者は感じる。

突然だが、「もっとも操作がシンプルなゲーム」とはなんだろうか。『アングリーバード』のような引っ張って離すだけの操作も非常にシンプルだし、『Temple Run』のようにフリックするだけの操作もシンプルだ。しかし、究極的にシンプルな操作はやはり、フリックやスライド操作すらない「ワンボタン」だろう。

ワンボタンゲームといえば、一大旋風を巻き起こした『Flappy Bird』や、ビルをジャンプしていく『Canabalt』、星のカービィシリーズのミニゲーム『刹那の見斬り』などが挙げられる。

いま挙げたゲームは、いずれもシンプルさと奥深さを兼ね備えたワンボタンゲームの名作だ。そして、もう一本歴史に刻まれるべきタイトルが、この『Backflip Madness』である、と筆者は思う。さすがに言い過ぎかもしれないが、このあとの説明で「言い過ぎでもないかも?」と思って頂けたら幸いだ。

最初に書いたとおり、このゲームは非常に難しい。なぜ難しいかというと、それはジャンプの挙動が物理演算によって細かく計算されていることによるものだ。

「ジャンプ」のタイミングでジャンプの角度や高さ、回転速度が微妙に変化。回転速度によって「回転」アクションの速度にも影響が出る。「着地」の体制に切り替えても回転の慣性が残るなど不確定要素が多く、それゆえ跳ぶたびにベストタイミングが微妙に変化する。単にプレイヤーのミスでズレが生じる場合も多い。

しかし、そういった「ゆらぎ」を、空中で瞬間的に判断してアドリブで対応することができるのだ

例えばジャンプした瞬間、アナタはその時点で回転初速度が想定よりも弱いと判断する。それを受けて「回転」アクションの時間を予定より若干長めににとることを決断し、その通り操作をする。想定外の事態が発生したが、瞬時の判断で無事着地することができた。その判断はおそらく0.1秒未満の出来事だろう。

image03
跳んだ直後のこの瞬間にかかる緊張感。

物理演算や自分自身の操作で生じる挙動のゆらぎ。それにアドリブで対処して着地をキメる。ジャンプ時に発生する瞬間的かつ高濃度の駆け引きと緊張、それにより生み出される着地の爽快感。操作に慣れる頃には、もうその快感にやみつきになってるはずだ。

たった1つのボタン。それを押すタイミングだけでここまでの奥深さを出せているのだ。少なくともワンボタンゲームの中ではトップクラスの奥深さだろう。

シンプルな中に凝縮されたスポーツ感

このゲームをプレイしていると「まるで本当にスポーツをやってる」という感覚に陥ることがある。

初プレイでバク宙が全然成功しない感覚。練習を重ねてだんだん成功率が上がり、簡単なジャンプなら手癖だけで簡単にできるようになる上達感。それは、自転車が全然うまく乗れなくて悔しい思いをした記憶と、補助輪なしで自在に走れるようになったときの嬉しさに通じるものがある。

「しゃがみ→ジャンプ→回転→着地」の流れも、ゴルフのスイング時のリズム「チャー・シュー・メン」に近いと言えるし、ジャンプの高度によって適切なポーズを選択するのも、ゴルフクラブを使い分ける感覚だ。ジャンプのアドリブ感も、野球のバッティングで投球コースの変化を瞬時に判断して対応する感覚に非常に近い。

また、このゲームは8回のジャンプを成功させるとステージクリアなのだが、3回失敗すると最初からやりなおしとなるルールとなっている。もう後がない状況でのラストジャンプにかかる緊張感は凄まじい。言い過ぎかもしれないが、自分はオリンピック選手と同じような感覚を味わっているのではないか、と思う瞬間もある。

また、ご褒美目的にやるのではなく、純粋に自分への挑戦、単純な気持ちよさを求めて遊ぶストイックな姿勢も、かなりスポーツ的だ。

image00
あとがない状況でのラストジャンプ。凄まじい緊張感。

非常にシンプルなゲームだが、その中にスポーツの面白さを多く内包しており、それが不思議な面白さの正体なのではないか、と筆者は感じた。

まとめ

この記事を書くにあたり、英和辞書で改めて「Madness」の意味を調べた。そこには「狂気の沙汰」という意味に加えて、「熱中」「夢中」といった意味も記載されていた。「狂気」と「夢中」。「Madness」に含まれるこの2つの意味は、このゲームを的確に表しているのではなかろうか。

実際に筆者は、最初はこのゲームを「Madness」なゲームだと笑いながらプレイしていたが、いつのまにか真面目に挑戦するゲームとして、「Madness」になって遊んでいたのだ。

[基本情報]
タイトル Backflip Madness
制作者 Gamesoul Studio
クリア時間 腕次第。上手い人なら2時間もあればクリア可能。
対応OS iOS(iPhone&iPad) / Android
価格 100円 (※記事執筆時のものです)
備考 英語版のみ(テキストはメニューだけなのでプレイに支障は無し)

アプリのダウンロードはこちらから


Get it on Google Play

  • ニカイドウレンジ(@R_Nikaido

    Twitterでゲームのこと語ってたら人生が変わった人。Twitterやってただけで文章力と思考力が身について、Twitterやってただけでライターやゲーム制作の仕事を頂きました。個人でゲームも作ってます。詳しいプロフィールや活動内容はプロフィールサイト