完成期待!「コミックマーケット92」で頒布された新作ノベルゲーム体験版・未完成版3選

毎年夏と冬に開催されている国内最大規模の同人誌即売会「コミックマーケット(コミケ)」では、同人ゲームも頒布されている。8月11日~13日に開催された「コミックマーケット92」の同人ゲーム関連ブースにも多くのゲーム制作者とゲームファンが集い、会場は熱気に溢れていた。

多種多様なジャンルのゲームが頒布されるコミケだが、今回はノベルゲーム(アドベンチャーゲームも含む)に注目。コミックマーケット92で頒布された新作から、完成が楽しみな作品の体験版や未完成版を計3作品ご紹介する。いずれも執筆時現在は入手手段がないが、気になる作品があれば完成を楽しみにしてほしい。また、一部の作品はWeb体験版の公開も予定されている。

ミステリーアドベンチャー『シロナガス島への帰還』DEAD END Ver.

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『シロナガス島への帰還』は、謎と危険に満ちた絶海の孤島「シロナガス島」が舞台のミステリーアドベンチャーゲーム。コミックマーケット92ではDEAD ENDとなる展開のみが収録された未完成版「DEAD END Ver.」が頒布された。

本作の主人公はニューヨークで私立探偵を営む男、池田戦。自殺した大富豪ロイ・ヒギンズの娘に依頼され、臨時助手を務める少女、出雲崎ねね子を伴いロイ氏へ招待状が届いていたシロナガス島へ調査に向かう。他の招待客達と共に島のホテル「ルイ・アソシエ」に集められた池田達だが、そこで悲惨な殺人事件が発生。ねね子と共に生き延びるためにも、池田は本格的な捜査に乗り出すことになる。

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島に集められた招待客達は、島の当主であるレイモンド卿のメッセージを聞く。その後、悲惨な事件が……

ゲームの進行においては選択肢から行動や聞きたいことを選んでいく場面や、画面上のオブジェクトをマウスクリックで調べる場面があり、とくに画面クリックではさまざまなものを重ねて調べることで多様な反応があったりと、PCアドベンチャーゲームの王道めいた、クラシカルな趣も感じさせるものとなっている。時間制限のある中で選択を繰り返していくシーンもあり、緊迫した状況が演出されている。

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時間制限のある中で選択を繰り返し、緊急事態を打開していく場面も

個性的なキャラクター達も見どころ。池田はお調子者めいた一面も覗かせつつも、いざ事が起これば熟練の探偵らしい洞察力と慎重さをもって行動する、頼もしい主人公像を見せてくれる。他の招待客やルイ・アソシエのスタッフ達も、それぞれの思惑を感じさせる者、底が見えない者と、いずれにせよ一癖ありそうな人物ばかりだ。

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招待客や島に住む者達。誰を信じ、誰を疑うべきか……

そして何より、ねね子である。天才であり完全記憶能力保持者と、捜査の上では頼れるパートナー。しかし初対面の人間とはろくに会話もできず、それでいて池田に対しては偉ぶった態度という内弁慶ぶり。黒髪ロングで片目が隠れ、はにかんだような俯き顔がデフォルトとなっている。そしてボクっ娘。なかなかにエキセントリックなキャラクターだが、池田との掛け合いの中では確かな信頼関係の片鱗を感じることもでき、プレイしていると色々な意味で「守らねば」と感じさせる少女なのだ。

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こちらがねね子さんです。かわいい

こうしたキャラクター達の魅力を引き立てる立ち絵やスチルに加え、背景のグラフィックにも注目。寒々しい島の空気感や、品格がありつつ使い込まれた感もあるルイ・アソシエの様子など、場の雰囲気の醸成に一役買っているように感じられた。目パチや雷光などアニメーションによる演出もあり、筆者としてはこの「静止画の一部がちょこっと動く」感覚も、(作者が意図したものかはわからないが)昔ながらのPCアドベンチャー、という印象で懐かしさを覚えた。

今回のDEAD END Ver.では真相に辿り着くことはできないが、現時点でも島に潜む陰謀、そのオカルティックな一面なども徐々に姿を表し、興味の尽きない内容となっている。またDEAD ENDとあるが単に死亡して終わりではなく、本作全体に仕掛けられた大きな謎の一端に触れる形で、続きが非常に気になる幕引きとなる。完成版での謎明かしを大いに期待したい。

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島では徐々に、現実とは思えないような現象も起き始める。その謎が解き明かされる時が楽しみだ

制作元:TABINOMICHI SOFT
作品公式サイト:http://shironagasu.tabinomichi.com/

ビジュアルノベルゲーム『警視庁魔法少女課』体験版

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『警視庁魔法少女課』は、「魔法少女」による犯罪に対抗するため警視庁に設けられた「魔法少女課」へ所属する魔法少女達の戦いを描くビジュアルノベルゲーム。今回頒布された体験版では2章までが収録されている。

物語の舞台となるのは、「昭成」45年の日本。ソ連に譲渡された北海道が独立国となり、ポケコンから発展したような端末「ポケットスマートコンピュータ(通称スマコ)」上でSNSが普及するなど、魔法少女の存在以外にも現実とは異なる歴史を辿った架空の時代となっている。設定やグラフィックにより、独特の世界観が構築されているのも本作の魅力だ。

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現実とは異なる歴史を辿った「昭成」45年の日本が舞台

主人公は中学三年生の少女、安野シュウコ。意図せず魔法少女になってしまった彼女は政府の監視下に置かれるか、魔法少女課に入るかの選択を迫られることになり、魔法少女課に入ることを決意。他の魔法少女や刑事達と共に魔法少女犯罪へと立ち向かっていく。シュウコの能力は身体強化で戦闘スタイルは徒手格闘。そのほか任意の空間に爆発を起こすなど魔法少女の能力はそれぞれ異なり、さまざまな形での対決が描かれる。

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シュウコは半ばなりゆきながら自らの意志で、警視庁の魔法少女として戦うことを決意

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同僚の魔法少女や刑事達と共に、魔法少女犯罪へと立ち向かっていく

本作の大きな見どころは、オープニングやエンディング、また本編の要所にも挿入される、作画によるアニメーションムービー。世界観を構築するメカニックや、魔法少女ものならではの変身シーンなどをダイナミックに演出している。その一部はPVでも堪能できるので、ぜひご覧いただきたい。

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独特の設定や世界観の演出など、さまざまな場面でアニメーションが効果的に利用されている

魔法少女を題材にしつつも、組織間の駆け引きといった要素や落ち着いた筆致のテキストなどによる、渋みを感じさせる作風も魅力。現在制作中という完全版が楽しみな作品だ。

制作元:憂さ議

現代御伽草子ADV『空の水面に、降る華在りて』C92体験版

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『空の水面に、降る華在りて』は、妖怪のような存在である「百鬼(なきり)」と人が共存する町「蓬都樹(ほうづき)町」が舞台のアドベンチャーゲーム。完成版の公称プレイ時間は約20時間となることが予告されている長編作品で、今回頒布された「C92体験版」のプレイ時間は公称で約4時間。

物語は、蓬都樹町での生活に憧れる百鬼の少女サンカが、主人公の少年、上郡真白と出会うことから始まる。蓬都樹町で暮らすことになったサンカは、百鬼が起こす事件の処理を務める真白のパートナーを担いつつ、商店街でも仕事をして生活することに。真白やその友人達とのほのぼのとした日常あり、町に害をなす百鬼と対峙するアクションありの作品となっている。

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物語はサンカと真白の出会いから始まる

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アクションシーンも見どころ

一見クールだが情に厚く案外ノリも悪くない真白、素直で頑張り屋だが天然ドジっ子のサンカをはじめ、好感の持てるキャラクター達が本作の魅力。真白の幼馴染みであるしっかり者の少女、渡瀬琴音とお調子者の少年、六道太一。そして真白の育ての親であり、見た目は幼女だがその実とても長い時間を生きている百鬼達の管理者、蓬都樹七守砌(通称七守さん)。ほかにも商店街の人々といった多くのキャラクター達による、賑やかで温かい交流が描かれていく。

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長い時を生き、蓬都樹町の百鬼達を管理している七守さん(画面中央)。真白の育ての親でもあるが、この見た目で母と呼ぶのに真白は抵抗があるようで……

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サンカを歓迎し、賑やかな日々を過ごす真白や友人達

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町での生活に少しずつ慣れていくサンカの様子も微笑ましい

こうしたキャラクター達の魅力を最大限に引き立てているのが、Live2Dによる立ち絵アニメーションとフルボイス。立ち絵アニメは過度に常時動くような形ではなく、話し始める際に仕草を変えるといったメリハリのある動きが中心で、登場キャラクターが多いシーンでも話者が明確になるという効果ももたらされている。もちろん純粋に躍動感や可愛らしさの演出としても素晴らしい。

ボイスはどのキャラクターも違和感がなく、さらにアドリブ的な演技も多彩で芸達者さを見せる太一のCV、見た目の印象より色っぽさを感じる琴音のCVといったように、キャラクター造形に深みを与えているようにも感じられた。

そのほかゲーム進行に応じて項目が増えていく用語集などもあり、物語とキャラクターを丁寧にじっくりと、存分に描くことに注力した作品という印象。完成版の予定ボリュームからしても大作の予感がするが、これでフリーゲームとして頒布予定というのが驚きだ。Web体験版の公開も予定されているので、興味のある方は実際に動き、喋るキャラクター達に触れてみてほしい。また、キャラクター紹介ムービーとしてゲーム中のシーンが動画化されているので、こちらもぜひご覧いただきたい。

制作元:三日月メロン
作品公式サイト:http://karafuru.xxxx.jp/


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    中村友次郎(@finalbeta

    フリーゲームと同人ゲーム、日本ファルコム作品をこよなく愛するゲーム好き。システムに凝ったRPGをとくに好んでプレイします。
    過去に十数年ほど、窓の杜の連載記事「週末ゲーム」の編集と一部執筆を担当していました。