ひらめきと挑戦の傑作アクションアドベンチャー『Celeste』 幾多の死を乗り越え、遙かなる頂きを目指す

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今回紹介するゲームは、2Dアクションアドベンチャー『Celeste』。開発はMatt Makes Gamesで、過去にはマルチプレイで遊べるアクション『TowerFall Ascension』を手がけています。本作が海外大手ゲームレビューサイトで軒並み高い評価を得たことを聞いた方もいるでしょう。

しかし、誤解を恐れずに言ってしまえば、本作は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のような無限に近い遊びの組み合わせがあるわけでも、『Undertale』のようなゲームであることをフル活用した衝撃のシナリオがあるわけでもありません。登山や精神疾患の克服と言った珍しい題材を扱っているものの、基本的にはプラットフォーマーと呼ばれるジャンプアクションを中心としたクラシックなゲームスタイルを貫いています。

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本作はいわゆる死にゲーと呼ばれる高難易度のゲームの部類で、ギミックが施されたステージを何度も死にながら攻略方法を探っていきます。死にゲーと言われるとアクション上級者以外お断りな印象がありますが、もしあなたがアクションゲームを本気で愛しているのならば、難しいことを理由に触れないのはもったいないです。

Celesteは何度も挑戦することのストレスを徹底的に減らし、少しずつ上達していける非常に高度なレベルデザイン(ステージ・難易度の設計)がされています。失敗してもやり直すまでの時間がほとんどかからず、モチベーションを途切れることなく挑み続けられるため、中毒性が恐ろしく高いです。

この記事ではレベルデザインだけでなく、ゲームと一致した物語やインタラクティブな音楽の使い方など、有り余るほど詰め込まれたCelesteの魅力を紹介していきます。

跳ぶ・掴む・駆けるのシンプルなアクション

本作では主人公のMadelineを操作し、セレステマウンテンを登っていきます。彼女はパニックやうつの症状を患っていますが、「この山を登らねばならない」という強い意志も持ち合わせている人物です。しかしセレステマウンテンは普通の山ではなく、彼女の内面の不安を実体化して行く手を阻みます。同じく登山者のセオやリゾートホテルのコンシェルジュの大城たちと出会いの中で、Madelineはもうひとりの自分自身と向き合いながら、白銀の頂きを目指します。

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このゲームに使う操作はとてもシンプルで、ジャンプ、壁などを掴み登る、そしてダッシュが主なアクションです。この内のダッシュは方向キーと組み合わせることで、空中からの二段ジャンプとして使うことが出来ます。

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構成は死にゲーとして有名な『I Wanna be the Guy』に近く、マップのギミックを突破して次のマップに辿り着き、それを繰り返してストーリーのチャプターをクリアするようになっています。I Wanna be the Guyとの大きな違いは、プレイヤーの意表を突く初見殺しが少ないこと。マップ内のギミックを目視することが出来るため、どうすれば突破できるのか考え、試行錯誤を繰り返しながら進めていくことになります。

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マップには落とし穴やトゲはもちろん、乗ると加速して動く床、空中でのダッシュが再び出来るようになるアイテムなど、チャプターごとに次々と新しいギミックが現れます。それらが絶妙な位置に配置されており、ちょっとのタイミングのずれが命取りとなります。

何度も失敗しても再挑戦したくなる、恐ろしき中毒性

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10秒に1回は死ぬのが当たり前、なんなら数秒でどんどん死体の山が積み重なるCeleste。しかしそういった場面でも不快を感じにくい理由のひとつが、リトライの早さです。他のゲームなら失敗したときちょっとした演出が挟まれるところですが、Celesteの復帰はほんの一瞬。プレイヤーのミスを責められることも、音楽が中断されることもないため、失敗前のモチベーションを維持したまま、すぐに次の挑戦をすることが出来ます。

最初トラップが張り巡らされたマップを見ると、クリアできなさそうに思えるかもしれません。しかし失敗を繰り返しているうち、手詰まりのような場所でも突破できる糸口が見えてきます。「もしかしたら」と思って試したアクションが上手くいって喜びを感じたとき、あなたはすでにCelesteの魔力に取り憑かれているでしょう。

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Celesteのマップは、ゼルダの伝説シリーズのような謎解き、あるいはメトロイドヴァニアのような隠されたルート開拓の側面も持ち合わせています。マップにはより難易度の高い収集アイテムの「イチゴ」なども配置されており、腕に自身があるプレイヤーをも唸らせてくれます。さまよい、失敗し、起死回生のひらめきを繰り返しながらチャプターを攻略したとき、あなたはいつの間にか難関を突破できる実力を手に入れているはずです。

一体化する物語とゲームプレイと音楽

Madelineはセレステ・マウンテンの登頂中に、自分と瓜二つの顔をした少女と出会います。己の投影であるその少女は「あなたの一部」と名乗り、否定的な言葉を吐き、Madelineの前に立ちふさがり追い詰めてきます。

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Celesteの、もうひとりの自分との対話の中で己を省み、悪い部分を受け入れ成長する物語は、あらすじとしては普遍的な話かもしれません。しかしMadelineの心の葛藤はイベントシーンの演出だけでは終わらず、プレイヤーのゲーム体験がその物語を強く肉付けします。

彼女の内面の不安が形になったセレステマウンテンのレベルデザインは、幻想的で不安定なギミックや痛々しいトゲで覆われたトラップ、あるいは光の届かない暗闇の静寂などによって表現されています。始まりは単純に山を登るだけだったMadelineは、山や巡り合う者たちによって自分の心の底を晒すようになり、それに呼応するようにマップのギミックはより熾烈なものに変化していきます。

そういったマップの中で何度も死を繰り返しながら出口を目指しさまようさまは、自分自身への否定と肯定を繰り返すMadelineのもがきそのものであり、プレイヤーは否応なしに彼女の精神を体感していくことになります。

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Celesteの静と動の表現は劇的であり、悪夢のような世界が展開されるときがあれば、またあるときには失意の中にひとすじの光が照らされることもあり、けして多くは語らないながらもドラマチックにゲームが進行していきます。

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そんな本作の表現に一役買ってくれているのが音楽です。繊細で美しいメロディが印象的ですが、単にバックグラウンドミュージックとしてかかっているのではなく、マップの構成や物語の展開によってひとつの楽曲のアレンジが次々と変わっています。ゲームの状況を反映して変化する音楽は近年インタラクティブ・ミュージックとして注目を集めていますが、Celesteの音楽にも大きく反映されています。何度も死ぬような厳しい場面では音楽もより激しくなり、チャプターの中の休息地点に来れば穏やかになります。

物語・ゲームプレイ・音楽の3つが重なるとき、クラシックな死にゲーなはずのCelesteが、激流のようなエネルギーでプレイヤーを飲み込みます。数え切れないほどの死を乗り越え、限界を超えてさらなる高みに挑むプレイヤーと、自分自身が生み出した試練を打ち勝とうとするMadelineが一体化する終盤は、双方向性のメディアでしか成し得ない鮮烈な体験をさせてくれます。

セレステマウンテンを制覇するために

ここまで強く勧めてきたCelesteですが、高難易度のゲームであることには変わりありません。他のプレイヤーが登頂まで1,000回程度死んでいるのに対し、けしてアクションが上手いわけではない筆者は3,000回を超えました。Celesteは何度も再挑戦したくなる中毒性が魅力ですが、逆を言えば止めどきが見つからず、疲れていてもやり続けてしまうデメリットもあります。疲れれば集中力が落ちて失敗しやすくなるので、休憩を上手く挟みたいところです。

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幸いCelesteではチャプター攻略中でもゲームを中断することが出来ます。またチャプターからチャプター選択マップに出ても今まで採ったイチゴも減らず、これまでの進行によって中間地点から再開することが出来ます。イチゴ収集も攻略に必須ではないため、自分の実力と相談しながら登頂を目指しましょう。

どうしてもクリアできない場合、本作ではアシスト機能を使う手もあります。ゲームスピードの低下や掴んだ壁から滑り落ちなくなるほか、無限ダッシュや無敵状態にも設定できます。とは言え本作の面白さを体感するならば、出来る限り使わないのが無難でしょう。

逆にまだまだこの難易度でもまだまだヌルい!と言う方にも、チャプターに隠されたカセットテープを取ることで、さらなる高難易度のB面に挑むことが出来ます。他にもハートなど隠された収集要素もあり、本格的にやり込みたいプレイヤーの熱意にも応えてくれます。

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Celesteをクリアしたときの達成感は、実際の山を登ったときの感覚とよく似ています。登山はゲームと違い、成功者へのファンファーレもなければ、報酬もありません。しかし長き苦しみを超え登頂したとき、胸の中のもやが晴れるような思いと、ただ静かで美しい景色があります。

本作もまた、他のアクションに比べると、主張の強い派手なゲームではないかもしれません。しかし数々の困難を自分の力で乗り越えたプレイヤーだけに特別な光景を見せてくれます。

挑む者に応え、相応しい試練を与えてくれるCeleste。Steamとitch.ioに加え、現在はNintendo Switchにも配信されています(海外ではPS4とXbox Oneにも配信済み)。もしあなたもセレステマウンテンに惹かれたのであれば、ぜひ遙かなる頂きを目指してみてください。

[基本情報]
タイトル:『Celeste』
開発:Matt Makes Games
クリア時間::7~12時間
対応OS・コンソール: Windows、Mac、Linux、Nintendo Switch(※海外のみPlayStation 4、Xbox One)
価格::1980円

↓ダウンロードはこちらから
Steam

itch.io
https://mattmakesgames.itch.io/celeste

Nintendo Switch
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000010822

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    ノンジャンル人生(@nongenre_zinsei

    普段からRPGの考察と『メイジの転生録』の話ばかりしている人です。去年もぐらゲームスにて連載「フリーゲームをはじめよう。」を書かせて頂きました。今年も積みゲーとの格闘をしています。自身もRPGを制作しており、現在WEBサイト等を準備予定です。