聖剣を元に戻し、復活する魔王を迎え撃つ勇者と聖女の物語……?闇を潜めし短編RPG『ディアーレイス』

前回の魔王討伐より50年。魔王を倒した勇者の生まれ変わりである主人公は、来たる魔王復活の時に備え、「聖剣」を手にするための継承式に臨む。

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そして、聖女「クレイア」と共に剣が安置されている遺跡へと向かった主人公。だが、そこで魔王の配下「失望のレイス」と遭遇。二人は辛くもこれを退けるが、聖剣は彼の者の策略で黒く穢され、力を失ってしまっていた。

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このままでは魔王に対抗できない。
二人は聖剣を元に戻すため、四つの聖域を巡る旅に出る。
果たして、剣を元に戻し、魔王復活に備えられるのだろうか。

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『ディアーレイス』は個人サイト「箱庭のイデア」にて、多くのフリーゲームを公開・配信している栄崎氏制作による短編ロールプレイングゲーム。2019年3月20日にフリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」で公開。同年5月2日には最新のアップデート(Ver2.00)を反映させる形で「フリーゲーム夢現」でも公開された。

属性効果大きめの戦闘バランスが特徴の短編RPG

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内容は城下町を始めとする拠点、「聖域」ことダンジョンの個別マップをストーリーに沿いながら巡るロールプレイングゲーム(RPG)。プレイヤーは勇者の生まれ変わりである主人公となり、穢された聖剣を元に戻し、魔王復活に備えるための旅に身を投じていく。勇者と魔王と、今時、珍しいと言わんばかりのベタベタなファンタジーをなぞったストーリーで、人によっては懐かしさと実家のような安心感を抱かせるものになっている。

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システム、具体的には戦闘周りもこれまたファンタジーRPGの王道とも言えるコマンド選択方式。行動順序も素早さの勝るキャラクターからという、定番の仕組みになっている。また、勝利する度、戦闘時に受けたダメージが全回復。次の戦闘も万全の態勢で始められる、良心的な配慮が凝らされている。

裏を返せば、敵の火力が高い。さらに属性相関の概念もあり、主人公を始めとするキャラクターそれぞれに固有の属性が設定されている。
そのため、弱点に当たる属性の攻撃を受けでもすれば、瀕死の重傷を負ってしまう。敵も同様で、弱点の属性攻撃を決めれば、短期決着に持ち込むことが可能だ。

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そのため、相性を踏まえた対策、戦闘中の体力変動(どのキャラクターが一番ダメージを受けるか)への注視が要求されるバランスになっている。しかも、本作には「防具」が存在しない。「アクセサリー」はあって、特定の属性への耐性を付けることはできるのだが、補助効果が少ない関係で、守り(防御力)を強固なものにするのが叶わない。

極め付け、アクセサリーは城下町の道具屋で売られているものでほぼ全てに加え、いずれも突き抜けた補助効果を与えてくれない。結果的に終始、弱点属性を突かれる危険が付きまとうのである。どんなにレベルを上げようとも。

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そのため、正統派RPGの感覚でキャラクターごとの育成指針、戦闘時の戦略を組み立てると面食らうこと必至。「武器」も同様で、本作は戦闘や聖域の探索で獲得できる「素材アイテム(兼換金アイテム)」を用いて強化させる(新たな武器へと発展させていく)仕組みのため、本編を進めても”聖剣以外”の新たな武器が手に入ることはない。なので、常に一連の強化措置を行える城下町の武器屋を訪れては、装備を万全なものにしていく必要がある。

最大二つをセットできる「スキル」、一つだけセットできる「必殺技」も重要だ。こちらは本編の進みと探索、レベルの上昇に応じて手に入っていくので、先の武器、アクセサリーほどの極端さはない。ただ、一部は城下町の「魔法屋」にて購入しないと手に入らないので、時折、訪れては購入する必要がある。

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それにとても大事なことで、本作には回復アイテムも防具同様に存在しない。
ゆえに関係するスキルのセット、入手が戦闘の難易度と結果を大きく左右する。

スキルの使用も「SP」と呼ばれるゲージを消費するが、これは体力と異なり、戦闘開始の度に初期値にリセットされるので、時々「精神集中」のコマンドでチャージしたり、各スキル使用で消耗する量を踏まえた戦略を立てないと、主力が潰されて敗北まっしぐら。回復はあっても、蘇生のスキルがないこともその重要性を嫌というほど意識させる。(※実際は蘇生スキルそのものは存在するのだが……これ以上は本編をご覧いただきたい。)

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▲各種スキルもキャラクターごとに相性があるので、組み合わせによっては弱体化することも……。

このように基本の体裁こそファンタジーRPGの王道をなぞっているが、ゲームバランス、戦略周りにおいて独特の味付けが施されており、意外に神経を配ることが求められる作りになっている。特に属性相関の効果は大きく、回復と蘇生手段が限定されている関係で、強敵(ボス)との戦闘時における緊張感は屈指。序盤はある程度、流れるがままに戦術を駆使すれば勝利できるが、二番目の聖域に差しかかる辺りで、本作の王道ファンタジーRPGの裏に隠された戦闘周りの”闇”を思い知ることになるだろう。

蘇る魔王を聖剣で倒し、世界に平和を……?

本作には他にも極めて大きな”闇”が潜んでいる。
それこそが本作最大の魅力でもある、ストーリーである。

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先の通り、内容はファンタジーの王道、ベタ中のベタと言わんばかりの使い古されたものになっている。勇者の生まれ変わりが聖なる剣を用い、魔王と戦う。そしてヒロインの聖女、騎士と魔法使いの仲間がそれをアシストする。露骨なぐらい、今後どんな風に展開し、結末を迎えるのかが分かりやすい。しかも、最大の悪役たる魔王も「やはりか」と言わんばかりの勢いで蘇る。そして、大体予想した通りの悪行を重ねては、主人公達を翻弄させる。

この一連の展開には、なんと直球な勧善懲悪ストーリーだと思ってしまうこと請け合い。古くからこの手の勇者と魔王の物語をゲームのほか、漫画や小説で体験してきた世代なら、あまりのベタさと予想通りの展開の数々に苦笑いし、人によっては退屈に感じてしまうだろう。慣れ親しんでいない世代からすれば、新鮮さを感じるかもしれないが。

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そんなストーリーが最大の魅力とは何故にと、ここまでの紹介した限りでは首を傾げるかもしれない。だが、実際にそう豪語できるほどのものになっている。あるタイミングで、想定外の”闇”を体験することになるのだ。

例によって、それは実際に見てのお楽しみである。筆者……一応、記述しておくと、この種の勇者と魔王の物語をRPGはもとより、漫画やアニメでも見てきた人間がそれを見た時に起こしたリアクションは、シンプルに”開いた口が塞がらない”だった。さらにそれから間もなく”異常”が発生し、常軌を逸した事態に陥った。それについても詳細は伏せるが、「なにが起きた!?」かと言わんばかりのものだった。そして、そのことを機に本作全体に潜む”闇”に気付かされたのである。

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一個人の誇張気味の感想ではあるが、プレイすれば間違いなく同じリアクションをしてしまうだろう。また、本作の王道ファンタジーRPGという印象も音を立てて崩れ落ちる。人によっては、背筋に何かが走る感覚を覚えるかもしれない。

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作品名の「ディアーレイス」に対しても、序盤こそヒロインのクレイアが持つ必殺技として描かれるため、その印象が強固なものとなる。だが、終盤に差し掛かる頃には全く違う印象を持つことになる。

そんな具合に本作は、そのベタなあらすじとは裏腹なストーリーにまとめられている。序盤の印象が引っくり返る”なにか”があるのだ。少しでもそれが気になるのなら、このようなレビューは読み終えて、本編を始めてみていただきたい。

王道ファンタジーとしての流れに身を任せるがままに……だ。
さすれば、隠された”闇”はより一層、黒味を増して現れるだろう。

勇者とは。魔王とは。全てを成すがままに受け入れろ。

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短編を謳う通り、全体のボリュームは3~4時間程度と短い。しかし、属性の効果が強く出る戦闘の適度な手ごわさ、突如として”闇”が露わとなるストーリーもあって、物足りなさは感じさせない。聖域のマップも特に仕掛けも何もなく平坦だが、長すぎず短すぎずの密度に収まっているほか、戦闘頻度(エンカウント)を設定する「作戦」なるメニューコマンドを完備しているので、ストレスなく探索を進めていける。エンカウント設定以外にも好きなタイミングでダンジョン入口に戻る機能も「作戦」内に用意されているほか、戦闘からの逃走も確実に成功するようになっていたりと、プレイヤーに余計な負担を与えないための工夫は徹底されていて、気持ちよく遊んでもらいたい作者の配慮が滲み出ている。

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ただ、エンカウントはデフォルトの「通常」でも数歩進んだだけで戦闘が発生したり、最小設定「敵を避ける」でもごく稀に戦闘が連続発生するなど、やや不安定。難易度も弱点属性を突かれた時のダメージが大きめゆえ、特にボス戦では回復スキルがない、回復役が倒されるなどした場合は戦闘の敗北がほぼ確約されてしまう。あろうことか、蘇生スキルも”事実上は”無いに等しいので、よりその極端さが現れる。

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結果的にボス戦では、属性攻撃に耐性のあるキャラクターに攻撃を一手に引き受けるスキル「かばう」をセットし、それで全滅を防ぐ戦術が最適解で、戦術・戦略面の単調さが露わになってしまっている。弱点を突かれる緊張感は悪くないが、そこにフォーカスしすぎたことが災いしている感じだ。こればかりは適切な改善策を考えるのも難しい。ただ、せめて蘇生スキルぐらいは弱いものでも用意しておくべきだったのではないだろうか。回復アイテムも回数制限付きのを用意してよかったのでは。決してクリアできないほど難しい訳ではないにせよ、もう少し工夫の余地がありそうなまとまり方は、勿体ないと感じる次第だ。

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とは言え、このベタさの裏に隠された”闇”はインパクト抜群。童話のような雰囲気に満ちたキャラクターのデザイン、幻想的なドット絵で彩られたグラフィックも美しく、独特の空気感を構築している。主人公の性別を変更する機能もあり、女性にするとストーリー全体の百合っぽさが強まるのも、同ジャンルの作品が好きな人には興味深いトピック……かもしれない。

戦闘バランスに若干の難はあるが、なかなか衝撃的なRPGに仕上がっている本作。RPG=ストーリー重視のプレイヤーなら、ぜひプレイしてみていただきたい一本だ。勇者になって、仲間達と協力して世界を恐怖に陥れんとする魔王の野望を阻止しよう。そして、その物語に隠された”闇”をそのまま受け止めよう。

受け止めた後は……成すがままに。

[基本情報]
タイトル:『ディアーレイス』
制作者: 栄崎(箱庭のイデア)
クリア時間: 3~5時間
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料

ダウンロードはこちらから
※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/19780

※フリーゲーム夢現
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_7896.html

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