台湾発フリーホラーゲーム『ファウストの悪夢』。『Ib』『魔女の家』を思わせる巧みな「物語」と「謎解き」

PLiCy ゲームコンテスト

「もし、君が本当にここから出たいなら、
 私が帰り道を教えてあげましょう。」

クレヨンで描かれた物語は動き出し、
そこで映しているのは幻想か、それとも記憶か。

「しかし、もし君がここで過ごした時間を、たとえ一秒でも名残惜しく思ったら…
あるいは『この素敵な一時が、この瞬間が止まったらいいのに』などと言ったら、
それは君の負けです。」

彼女は燭台を手にし、悪夢の出口を探し始める。

-ファウストの悪夢 公式サイトより引用-

 
最近では、アジア圏のフリーゲームやインディゲームの中で、日本語に翻訳されてリリースされる作品が増えてきている。昨年の東京ゲームショーで出展されていたアジア発のゲームは、以前にもぐらゲームスでも紹介した。

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フリーゲームで人気のジャンルである探索アドベンチャーゲームも、その例にもれず、アジアの作品が登場してきている。そこで今回は、台湾発のフリーゲーム『ファウストの悪夢』を紹介しよう。

本作は日本語で遊べる翻訳バージョンが既にリリースされており、特徴としては『Ib』『魔女の家』をどこか彷彿とさせるような、それでいて本作の強い独自性を持って作りこまれた「物語」と「謎解き」の絶妙なバランスが魅力となっている。またイラストレーションも、日本のフリーゲームの雰囲気とはやや異なりつつも、かわいらしくも残酷性の見える童話的な絵柄が目を惹くものとなっている。早速紹介していきたい。

猫と悪魔に導かれる少女と「夢」の物語

父を亡くした少女「イリザベス」は、父の葬式の後、叔母に連れられある屋敷にやってきていた。その屋敷とは、イリザベスの父が生前持っていた屋敷だった。屋敷に入った叔母の後を追うイリザベス。叔母を見失った彼女はそこで、不思議な格好をした紫色の悪魔に出会ってしまう。悪魔から逃げようとするイリザベスだが、屋敷の外に出るための扉が消えてしまっていた。そして、突然現れた黒い猫にも導かれるように、狂気と謎に満ちた屋敷の中を探索することになる……。

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本作の冒頭。父の葬式に参列するイリザベス

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父の残した屋敷に足を踏み入れる

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屋敷で出会った「猫」と「悪魔」に誘われるようにして、イリザベスは夢のような世界を彷徨う

本作の形式としては、謎を解きつつ物語を進めて行くというオーソドックスな探索アドベンチャーとなっている。
特徴的な部分は、主人公であるイリザベスの体力と、プレイヤーの見える視界の広さが比例しているシステムだ。イリザベスが持っているランプにマッチをつけると、そのたびに視界が広くなる。一方で屋敷にいるネズミなどのキャラに触れると、持っているランプの光が弱まっていく。ランプの光はイリザベスの体力にもなっており、光が消えると、屋敷の寝室のベッドに強制的に戻されてしまう。障害となるキャラなどを避けつつ、屋敷の謎を解いていくことが重要だ。

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ランプの光の明るさは、イリザベスの体力も意味している

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マッチを付けると、ランプの光が大きくなり視界が広がる。ランプの光はイリザベスの体力でもあるので、なるべく明るい状態を保とう

本作の狂気と幻想に満ちた世界観に合致した謎解きも見逃せない。謎解きに使用するアイテムは、屋敷の中に存在するモノに対応したアイテムとなっているケースが多く、「鍵を手に入れて、扉を開ける」といったものだけではなく、「探索して手に入れたアイテムを、どこで、何に対して使うか?」という、考える楽しみが上手く作られている。
単にアイテムを見つけるだけではなく、使い道を考えることも謎解きの一環となっているのだ。謎解きのヒントとしても、気が付くのがやや難しいものも中には存在するが、ヒントの出し方として丁度良いと感じるのものも多い。そのバランスから「自分の力で謎を解きたい!」と思わせてくれるものになっており、ゲームデザインとして感心させられる出来となっている。

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アイテムは手に入れるだけでは意味が無い。使い道を考えることで、はじめて有効なものになるのだ

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謎解きのヒントは屋敷のいたるところにある。中には読み解くのに一捻り必要なものも

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屋敷内に存在する本の内容が、ときには謎解きのヒントになるときもある。物語の世界全体がヒントになりうるデザインは巧みの一言

イリザベスを導き、そして惑わす人々

謎に満ちた屋敷を探索するイリザベスの前に現れるのは、不思議な人物や動物たち。今回は、そんなキャラクターたちを紹介しつつ、物語を追っていきたい。

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屋敷に迷い込んだイリザベスを惑わす紫色の悪魔「メフィストフェレス」。幾多の場所で現れては、意味深な言葉を呟く

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時にはイリザベスと共に屋敷内を探索してくれる「猫」。ネズミを遠ざけてくれる能力や、謎解きのヒントをくれるので、大いに助けになってくれるだろう

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イリザベスの前に突然現れる男性。誰かを探しているようだが……

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帽子を被った謎の人物の正体は?

このゲームの物語は、こういった人々と会うだけでなく、屋敷内で見つけることの出来る日記や、童話をモチーフにした書物を、プレイヤーが主体的に読み解いていくことで浮かび上がるものとなっている。得た情報をまとめて、自分の中で物語を組み立てていく楽しみもあるのだ。

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物語の背景の多くは、誰かの手によって書かれた日記の形式で語られていく。この屋敷で、一体何があったのだろうか?

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童話を改変した物語が書かれている意味深な書物も

本作の日本語版はリリースしたばかりという事もあり、修正中の文章も見られるが、物語としては理解できるものとなっている。本作は物語が明示的に語られるというよりかは、「プレイヤーがゲーム中で情報を集めて、物語を組み立てていく」という側面が強いものとなっているので、ぜひクリアしてから「この物語は、どういうことだったんだろう?」と考察を行なってみてほしい。

最後に、筆者が本作で最も特徴的と感じたポイントのひとつは「世界観に合致した謎解き」をしっかりと作りこむ丁寧さだと感じた。
探索アドベンチャーにおいて、「世界観」や「物語」の無いところに無理やり「謎解き」を置こうとすると、ともすれば「鍵を集めて、扉を開ける」ことを繰り返すゲームになってしまいがちだ。その点、本作は「物語の上に、自然と謎解きが乗っかっている」という巧みな設計を感じさせてくれるゲームだった。

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本作で探索する屋敷のマップは、どこも「ここで、何かが起こる」と感じさせてくれる点で、世界観や物語、そして謎解きへの誘導を巧みに演出している

こういった、探索アドベンチャーゲームにおける「物語」と「謎解き」の関係性は、『マヨヒガ』『ダンス・マカブル』などの名作アドベンチャーゲームを作り出したサークル「小麦畑」のoumi氏が、フリーホラーゲーム『Ib』や『魔女の家』などを参考作品としてインタビューにて語っている。興味のある方はぜひ参考にしてほしい、アドベンチャーゲームの制作技法のキモが詰め込まれている。

名作フリーゲーム制作者が考える「ゲームの作り方」のコツとは? 小麦畑主宰 oumi氏インタビュー

[基本情報]
タイトル 『ファウストの悪夢』
制作者 LabORat Studio(制作者様サイトはこちら
クリア時間 5~10時間程度
対応OS Windows 7/8/10
価格 無料

ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/11136

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    poroLogue(@poroLogue

    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加。フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。