選ぶのは行動順だけ!?デッキ構築の戦略性をシンプルな操作に凝縮したフリゲRPG『カルエナダンジョン』

「戦略のもとに多様なカードを組み合わせてセットし、そこからランダムに選出された手札を以て臨機応変に戦術を立てる」という、TCG的なデッキ構築の仕組みはコンピュータRPGとの相性もよく、こうした要素を取り入れたRPGはさまざまな作品がリリースされている。その取り入れ方も作品それぞれだが、今回は戦闘時にプレイヤーが選択するのは基本的に行動順のみというユニークなシステムを搭載した意欲作『カルエナダンジョン』を紹介したい。イラストレーターのにほへ氏が制作し、フリーゲームとして公開している作品だ。

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『カルエナダンジョン』

『カルエナダンジョン』は、「カルエナ島」という島にある、願いを叶えてくれる神様がいるというダンジョンの最深部を目指すRPG。戦闘は4人パーティによるサイドビューのコマンドバトルで、「各キャラクターごとにあらかじめ6つまでセットしたスキルがターンごとにランダムで選出され、プレイヤーはキャラクターの行動順(≒スキルの実行順)を選ぶ」というシステムが特徴。スキル同士のシナジーや状況によって変化する効果により、デッキ構築型カードゲームのような高い戦略性を極めてシンプルな操作で実現した作品となっている。

スキルセッティングと行動順選択がもたらす高い戦略性

本作のダンジョンは1画面で表現され、敵を倒すと階段が現れ次のフロアへと進める仕組み。宝箱や鉱石の採掘といった探索イベントも散りばめられているほか、敵が出現せずお店などのあるフロアも存在する。

戦闘が始まると、まずは4人のスキルがまとめて選出。選択したものから順次実行され、4人の行動が終わると敵側の行動となり、この繰り返しで戦闘が進んでいく。攻撃対象は基本的に一番右側(プレイヤーキャラ達から見て手前側)の敵と決まっており、スキルによってはランダムや条件を満たす敵など特殊な場合もある。MPを消費することでスキルの再選出も可能だが、とくに序盤は1回再選出すると尽きてしまう程度のMPしかないため、ここぞという場面で使うことになるだろう。

パーティメンバーは剣士タイプの主人公のほか魔術師やヒーラーなどがおり、それぞれの役割に応じた個性的なスキルを備えている。使えるスキルは最初は6つだが、ダンジョンや店などでスキルの巻物を入手して習得することによりどんどん増えていく。他のキャラクターのスキルとの連携なども考えながらスキルを自由に入れ替えていくのが、本作の戦略要素となっている。

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各キャラクターごとに、習得しているスキルから6つを選んで自由にセットできる

スキルの特性としては「ターンの最初に使うと全体攻撃になる」「ターンの最後に使うと与ダメージ量が上がる」といった行動順が効果に直結するもの、「次に行動する味方のスキルの効果量を2倍にする」といった組み合わせで効果を発揮するもの、「敵のHPが奇数であれば与ダメージが上がる」「敵が毒状態なら毒を解除して大ダメージ」といった敵の状況で効果が変わるものなど多彩なものが用意されており、「このスキルで敵を倒せたら再行動できる」といったスキルもある。

これにより、スキルを使う順番によって敵に与えられるダメージやどれだけの敵を倒せるかなどが大きく変わってくるという仕組みだ。次のスキルを強化するスキルや、毒をかけてから毒特攻スキルといったシンプルな連携のほか、「このスキルを使うと敵のHPがこうなるので、次のスキルの効果が上がる」といった複雑な連携も。3人、4人で綺麗に連携できた時の感覚は格ゲーでコンボが決まった時のような爽快感に近いものがある。

「敵全体のHPの1の位を5にする」といったトリッキーなスキルも多数用意されているが、いずれもスキルの効果量が乱数で変動しないのが大きなポイントとなっている。状態異常の付与率など一部の付加要素においては結果に乱数が絡むこともあるが、与ダメージや回復量がランダムに変動することはない。

また、数値がインフレしないのもポイント。ゲームを進めると「防御力」を持つ敵が登場し、攻撃の際に防御貫通効果のあるスキル以外は基本ダメージ量から防御力分が引かれるが、スキルの効果量も防御力も数値は1桁が基本で変化量を計算しやすく、2手3手先を読み、パズルのように戦術を組み上げて行けるのが本作の醍醐味。数値がインフレしないことにより、初期スキルや序盤で習得したスキルに最後まで使い所があるのもポイントで、取り得る戦術の幅広さにも繋がっている。

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ここで、実際の戦闘の流れを画像で追ってみよう。まず戦闘開始直後、毒攻撃ができるスキルがない状況で4人目のスキルが毒状態に特攻の攻撃スキル「注射」となってしまったので、MPを消費してこれを再選出する

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再選出の結果、次に使うスキルの効果量が2倍になる「バイバイン」が選出された(かなり引きがいい!)。続いて防御力を持つ敵がいるため、3人目がこのターン中に味方全員が防御力を無視できるようになる「ツラヌーク」を使用する

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続いて1人目が攻撃スキル「デストロイ」を使用。攻撃対象はデフォルトの「一番手前」で、与ダメージが敵のHP以上のため倒すことができる

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4人目がバイバインを使ったのち、2人目がHPが最も低い敵(最も低い敵が複数いる場合はそのすべて)を攻撃するスキル「裁きの矢」を使用する。バイバインの効果により、スキル名の横に表示される与ダメージ量を示す数値が3から6になっている点に注目してほしい

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ツラヌークの効果もあり、敵2体に6ダメージずつ与えることができた。ポイントはデストロイと裁きの矢の使用順で、先にデストロイで一番手前の敵を倒しておかないと裁きの矢の攻撃対象がそちらになり、ダメージ効率としては勿体ないことになっていまう

「RPGらしさ」もしっかり味わえる中編作品

こうしたシステムで戦うことになる敵もユニークなものが多く、とくに10フロアごとに発生するボス戦ではプレイヤーの意表を突くようなギミックも用意されている。敵の行動を見て何が起きているのかを把握し、これを攻略していくのもテンションの上がるポイントだ。ゲームバランスも絶妙で、筆者の場合初見のボスは満身創痍でギリギリ勝つか、スキルセッティングとの相性が悪くて詰むか、独自ギミックの把握に手間取って早々に落とされるか……などなど、緊張感のあるバトルを楽しむことができた。

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ボス戦ではさまざまなギミックが用意されていることも。明確なシステムメッセージとしては示されないことも多く、敵の挙動をよく見て仕掛けを見破っていくのが面白い

キャラクターの成長としてはスキル習得のほかに最大HP/MPの上昇もあるが、本作にはレベルアップの概念はなく、装備品での変動に加え、ダンジョンでの宝箱や、島の人々の悩み事の解決などで入手できるアイテムの使用で基本値が上昇していく。

テクニカルなバトルが魅力の作品ではあるがバトルだけに特化しているのではなく、装備品のもとになる鉱石の採掘や魚釣り、酒場での情報収集、さまざまなサブイベントなど、「拠点とダンジョンを往復しながらキャラクターを強化し、拠点の人々と交流していく」というダンジョンRPGらしいフレーバーもしっかり備わった作品。オリジナルのキャラクターイラストも魅力だ。

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ダンジョンなどで入手できる色々なキノコを2つ選んで薬を作ってもらうアイテム合成要素など、本編進行に必須ではないやり込み要素もさまざまに用意されている

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メインシナリオ自体は願いを叶えるためひたすらダンジョンの奥を目指すというシンプルなものだが、ゲーム進行に応じてパーティメンバーや島の住民との交流といったさまざまなサブイベントも楽しめる

公称プレイ時間は約8時間と探索や戦闘が中心の作品としてはボリュームもなかなかのものだが、どんどん増えていくスキル、バラエティに富んだ敵、そしてダンジョン自体にもさまざまな仕掛けや謎解きなどが用意されており、最後まで熱中できる中編作品に仕上がっている。戦略性の高いバトルを楽しみたい方、一風変わった戦闘システムに触れてみたい方には是非ともお勧めしたいRPGだ。

【基本情報】
タイトル:カルエナダンジョン
制作者:にほへ
クリア時間:約8時間
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/16913

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    中村友次郎(@finalbeta

    フリーゲームと同人ゲーム、日本ファルコム作品をこよなく愛するゲーム好き。システムに凝ったRPGをとくに好んでプレイします。
    過去に十数年ほど、窓の杜の連載記事「週末ゲーム」の編集と一部執筆を担当していました。