失われた記憶を求めて、崩壊世界を巡る探索型ADV『瓦礫の魔女は。』 その先に待つは奇妙な人達と生ける屍、そして……狂気。

ある日、教会の一室で記憶を失った女性が目を覚ました。
神父を名乗る男性の言いつけにより、外出を禁じられていた彼女だったが、好奇心に後押しされる形で一瞬の隙を突き、教会の外へと飛び出す。

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その先に待っていたのは、生ける屍たちがはびこる光景。

彼女が知らぬ内に世界は崩壊していた。

何故、そのようなことになってしまったのか。
自分は記憶を失ってしまったのか。
そもそも、自分は何者なのか。

彼女は真実を知るため、この世界を生き抜くことを決意する。
これは一人の女性が紡ぐ、切なくも不思議な御伽噺。

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その名は『瓦礫の魔女は。』(作者:茸沢しめじ氏)。
2018年は7月8日にWindows用フリーゲームとして配信された。
ダウンロードは同ゲーム配信サイト「ふりーむ!」より行える。

生ける屍を避けつつ、崩壊世界を往く探索アドベンチャーゲーム

内容としては、若干のホラー要素を取り入れた探索型アドベンチャーゲーム。記憶喪失の女性となって瓦礫だらけの世界を巡り、そこで行き交う様々なキャラクター達と交流しながら、失われた記憶に繋がる手がかりを探っていくというものだ。

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基本的には建物内と外、二つのフィールドを歩んで、その合間に発生するイベントをこなす流れで進めていく。探索型だけにパズル、隠されたアイテムの発見と言ったイベントもお約束のように用意されていて、時々、プレイヤーの思考と観察眼が試される。さらに本作独自の要素として位置付けられているのが、「アノミー」なる生ける屍の存在である。

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冒頭のストーリーでも触れた通り、外の世界では件の化け物たちが沢山うろついていて、少しでも接触すると主人公がダメージを負ってしまうのだ。正面衝突したり、ダメージを負った状態でさらに一度、触れたりでもすれば力尽き、ゲームオーバー。前にセーブした所からやり直しになってしまう。

当然のように彼らを倒す術を主人公は持ち合わせていない。
よって、導き出される答えは……

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逃げる!
戦闘しない!

……って、どこかのゲームのレビューで用いた表現だが、そんな感じにアノミーの動きを見切り、隙間を潜り抜けながら突破していくことが外のフィールドにおける基本行動となる。反面、一部を除き、建物内にはアノミーがいないので、自由に動き回れるようになっている。

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▲外にも一部、アノミーが出てこない安全地帯がある。

なので、外には長居せず、すぐに建物へと逃げ込み、セーブすると言った保険をかけながらプレイしていくのが推奨される感じだ。
こんな、いわゆる”避けゲー”と言われる要素もあって、単にマップを探索し、パズルに挑んだり、ストーリーを進めることだけに終始しない、起伏を凝らした構成になっている。

もちろん、アノミーの大群に襲われる危険と隣り合わせの状態で、特定のアイテムを見つけ出す……なんて展開もある。その時のスリルたるや、もはやホラーゲームの域。演出面でも外では環境音楽しか流れないほか、特定の場所を歩んだ時に不気味な音が鳴り響くこともあるので、人によっては冷や汗が垂れかねない。

いかにも瓦礫だらけの崩壊した、非日常な世界を巡っていくだけにある個性の強さが現れた作りだ。それだけに留まらず、本作は行く先々で出会うキャラクター達も非日常を通り越して、もはや”異様”としか言い様のないメンツ揃いになっている。

エキセントリックな登場キャラクター達、二つの側面を持ったストーリー

単刀直入に言って、本作にはまともなキャラクターが一人たりとも登場しない。
少々オブラートに包んで言うなら、ぶっ飛んだ能力の持ち主だらけなのだ。

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一つの肉体に二つの人格を宿している、不死身に等しい肉体を持つなどは序の口。世界を巡るにつれ、血を吸った人間の年齢などを思うがままに操れる、首を自由に取り外せる(※その際には断面も描かれる)、自爆すると言った常軌を逸した能力を持ったキャラクターが登場しては、主人公共々、振り回されることになるのだ。

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性格的にも一言にエキセントリックで、時にはゾッとするような台詞を放って空気が凍り付くことも。中には対応を誤れば、ご想像通りの展開を迎える”罠”を隠している者もいるので油断ならない。

こんなキャラクター達と交流しながら、本作は失われた記憶に繋がる手がかりを探っていくことになる。それもあって、常に何が起こるか読めない謎の緊張感があるのだ。彼らは世界崩壊に繋がった”とある事件”を機に誕生した元普通の人間、という設定も得体の知れない怖さを醸し出していて、件の緊張感を引き立てる。

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……のだが、皆、やたら明るい。
確かに奇特な能力を持つキャラクター達が沢山出てくるが、いずれも主人公に対して敵対的な素振りはみせず、エキセントリックな言動も交えた楽しい会話を繰り広げるのである。

当の主人公も設定とは裏腹に底抜けに明るくてフレンドリー。時々、言動にギョッとさせられながらも、雑談したり、ツッコミを入れたりの楽しいやり取りを展開するのだ。崩壊した世界と生ける屍、能力者になった経緯、どこへやら……である。

この設定に(いい意味で)忠実でないキャラクター達が、本作最大の見所になっている。少し怖いところもあれど、彼らは彼らなりに今の世界を満喫し、生き続けているのが何とも言いがたい健気さに満ちていて、誰もが好感が持てたり、少し気になる存在として描かれている。

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中でも主人公との絡みが特に多く、ストーリーでの登場場面も多い「ノロイ」と「ジブン」の二人のデコボコっぷりには、思わずクスっとしてしまうはず。

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一見、厳格そうに見えて、実はとんでもない関係性を築いている「阿形(アギョウ)」と「吽形(ウンギョウ)」の警察組織に属する双子も必見だ。

何より、十数人に及ぶキャラクターが登場しながら、それぞれ特有の個性を与えて独立した存在感を出しているのが圧巻。各々を掘り下げるイベントも適度に用意されていて、本作がいかにここに力を注いだのかを実感させられること間違いなしだ。

ただ、根っ子は崩壊した世界、そして記憶喪失の女性を主人公にした内容だ。中盤を越え、主人公が記憶を取り戻して以降はそれまでの明るい雰囲気が一瞬の内に消え失せる。そして、言葉通りの”狂気”が深まっていく。

そして、迎えるエンディング。思わず「なぜ、こんなことになったんだ……」と呟いてしまうほど、心苦しいものになっている。実は分岐方式で、特定の手順を踏むと真のエンディングも見れるのだが、それもシンプルに言って”とてもつらい”。

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しかし、これ以外に相応しいものなんてないと納得できる所もあって、プレイヤーに何とも言いがたい後味を残すのだ。そもそも、記憶を取り戻した主人公の素性と背景からして、この結末は避けられないと思えるものになっている。どういうものなのかは伏せるが、少なくとも微塵も共感できないどころか、人によっては悪い意味で寒気に襲われるだろう。

一部、手順を誤ると到達がほぼ無理になるシビアさがタマにキズではあるが、見るだけの意義は十分にある。また、ゲームクリアした後には、そこへと繋がる詳細なヒントを知ることもできるので、ぜひ挑戦してみて欲しい。

題名通りの強烈な”なにか”を思い知るはずだ。

関連作『廃屋の姫は。』と一緒に、隅々までこの世界を歩もう。

裏を返せば、最後までやり切ってスッキリできる内容ではないので、苦手意識があるなら注意が必要だ。同様にキャラクターも色んな意味で個性が強すぎるのに加え、台詞にもネットスラングが頻繁に混ざり込むので、好みが分かれる。その後のイベントで緩和されるが、登場時、心臓に悪い演出が挟み込まれるキャラクターもいるのも要注意だ。

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ただ、演出面は特に序盤と中盤終わりにかけての雰囲気一変、真エンディングに至るまでの流れなど、非常によく出来ている。ゲームのボリュームも普通に進めても3~4時間、真エンディング到達を含めれば少しだけ伸びるなど、なかなかの物量だ。

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外のフィールドを歩き回る「アノミー」の行動パターンが読みにくい、中盤終わりにある地下道からの脱出イベントが初見殺し気味で極端に難易度が高いなど、避けゲー周りの難易度設定には詰めの甘さがある。特に脱出イベント、”最後の一体”はもう少し、接近まで余裕を持たせて欲しかったように思う。

ただ、全体的には強烈な印象を残す探索型アドベンチャーゲームに仕上がっている。ホラー系の作品としては、中和する演出の多さで若干パンチが弱い……方かもしれないが、その分を世界観、登場キャラクター達が補ってくれる。少しでも興味があればプレイしてみていただきたい、エキセントリックな意欲作だ。

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ちなみに2019年7月12日には、本作と世界観を共有した短編ホラーアドベンチャーゲーム『廃屋の姫は。』が配信されている。奇妙な化け物が住まう屋敷からの脱出、そして”ある人”との約束を果たそうと単身行動する一人の女性の物語が描かれる。本作では僅かに絞り込んだホラー要素を強調した内容に完成されているので、興味があればぜひ。可能であれば、本作を全て遊び切ってからプレイしてみることをお薦めする。

何故かと言えば、こちらもストーリーに大きな見所があるからだ。

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どこが見所なのかは言及しない。ボリュームにして10~30分程度で終えられる短めのストーリーなので、勢いのまま体験いただきたい。
そして、ある条件を達成して真エンディングへと到達しよう。

きっと………ズッコける。

[基本情報]
タイトル:『瓦礫の魔女は。』
制作者: 茸の里(茸沢しめじ)
クリア時間: 3~4時間(※エンディング数:3つ)
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考: 出血、暴力、ホラー表現あり(※対象年齢:15歳以上)

※ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/18000

[基本情報]
タイトル:『廃屋の姫は。』
制作者: 茸の里(茸沢しめじ)
クリア時間: 30分~1時間(※エンディング数:2つ)
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考: 出血、暴力、ホラー表現あり(※対象年齢:12歳以上)

※ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/20574

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