短編フリゲアドベンチャー『イキシテル』。「心の言葉」に耳を傾け、夢の世界から脱出しよう

RPG,アドベンチャー,フリーゲーム

現実のような空間でありつつも、空想や幻想の入り混じる、夢の世界。フリーゲームではそんな夢の世界を題材とする作品も見受けられる。例えば『ゆめにっき』などは、まさに夢のような世界観を舞台にした人気のアドベンチャー作品だろう。

今回は、そんな「夢の世界」を舞台にしたフリーゲーム『イキシテル』を紹介する。
本作は、少年「怜太」が突如迷いこんだ夢の世界を探索し、現実世界に戻ることが目的のアドベンチャーRPGとなっている。クリアまでの時間は2~3時間ほどの短編で、物語はマルチエンディング制を採用している。探索のほかにRPGとしての戦闘要素もあるが、戦闘の難易度は低めなので、戦闘の苦手なアドベンチャー好きにも安心してオススメできる作品となっている。

夢の世界を彷徨い、自分を見つけよう

本作は、主人公の少年「怜太」が、まるで現実の学校を模したような空間である「夢の世界」に迷い込んでしまうところから始まる。誰もいない教室、違和感のある風景。不思議な校舎内を歩き回っているうちに、突然「黒の住人」という謎の存在が現れ、怜太は襲われてしまう。なんとか黒の住人を倒した「怜太」だが、その目の前に「ノア」と名乗る謎の少年が現れる……。

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突然、校舎のような建物の中で目が覚める主人公「怜太」

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探索を行なっていると、「黒の住人」という謎の存在に襲われる

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曖昧な言葉ではあるが、怜太のサポートをしてくれる夢の住人「ノア」

ゲームの進め方としては、基本的には、夢の世界を探索しつつ、現実世界に戻るための手がかりを見つけていくことになる。必要となるアイテムを探していくほか、謎解きもいくつか存在するので、ヒントを手がかりにしながら解答していこう。

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作中にはいくつかの謎解きも存在する。ヒントを参考にして解いていこう

夢の世界では、ノアのほかにも何人か登場人物と出会うことがある。彼らの中には、探索に役立つ情報などを教えてくれる者もいれば、黒の住人のように戦闘になってしまう者もいる。

本作の戦闘は、基本的にはランダムエンカウントではなく、黒の住人に話しかけることで戦闘に入るシンボルエンカウントとなっているので、戦闘が苦手な人でも、戦う前に入念に準備を整えた上で望むことが出来る。また、ノアなどの夢の住人も戦闘に参加してくれるので、状況に応じたコマンドを選んで一緒に敵と戦おう。

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黒の住人は言葉を話せるものの、どうにも不気味な存在だ

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夢の中で出会った住人と協力して戦闘を切り抜けよう

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戦闘はオーソドックスなコマンド入力式になっている。レベルは自然と上がっていくので、敵を倒していくだけで進行に必要なレベルには達しているだろう

本作は、物語の舞台が「夢の世界」ということで、どこか現実から逸脱した浮遊感のある世界観が特徴となっている。たとえば、探索中に本棚などを調べたときに見ることが出来る、誰かの「心の中の言葉」に思えるメッセージは、探索する世界自体は学校の校舎などの現実的な空間なのに、どこか現実から離れている不思議な世界観を演出するのに一役買っていることだろう。

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世界のそこかしこに存在する意味深なメッセージ……

夢の中の住人たちと協力し、夢から覚めよう

夢の世界で出会う住人は、怜太に対して複雑な思いを抱えているような言葉を投げかけてくる。時には怜太の意志を探るような言葉を放ち、翻弄しようとする。当初は物語の筋はハッキリしないが、探索を続けることによって、徐々に世界の謎、怜太の抱える事情、そしてノアたちや黒の住人などの存在の背景が明らかになっていく。ここからは、そんな本作の物語の一部を紹介してみたい。

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夢の中で出会う、少し素っ気無さを感じさせる「イリス」。このように、ノアのほかにも怜太を助けてくれる住人が登場する

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ゲーム中には、PVのような短いアニメシーンが挿入されることも

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次々と囁かれる住人たちの言葉に、怜太はどう反応するか?

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夢の世界の果てには何が待つのだろうか

夢の世界を舞台にした探索、謎解き、戦闘、そして様々な人との出会い……。ゲーム中で探索する世界はどこか現実から離れた浮遊感を持っていて、プレイ当初は物語も掴みきれないものと感じるかもしれない。しかし、後半に進むにしたがって、主人公である怜太の背景、そしてなぜ夢のような世界で彷徨っているのかが明らかになっていく。2-3時間ほどでクリアできる短編アドベンチャーとなっているので、気になる人はぜひプレイして見てほしい。

[基本情報]
タイトル 『イキシテル』
制作者 路地の浦(制作者様サイトはこちら
クリア時間 2時間~3時間ほど
対応OS Windows 2000/XP/VISTA/7/8
価格 無料

ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/8865

  • poroLogue(@poroLogue

    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。