昔のゲームを知らなくてもプレイしてほしいのが『ケロブラスター』―『ケロブラスター』レビュー(hahaha)

インディーゲーム

初めまして!インディー・ゲーム座談会「Hotline Tokyo」によく参加しているhahahaです。ゲームのレビューは「Playism」さんでの『To The Moon』レビュー企画でしか経験したことがないのですが(一年半前の低レベルなレビューなので、見たい人だけ探してください..)、「Hotline Tokyo」をもっと多くの人に知って欲しい!と思いまして、『ケロブラスター』レビュー祭りに参加させていただきます。

昨今、8bitゲームや日本のRPGに影響を受けた海外ゲームなどがインディーゲーム界隈のトレンドとなっていると思います。しかし、それらのゲームは「懐かしい」だけで片付けていいのか?と思うのです。筆者は8bitゲームをリアルタイムでプレイしてきたわけではありませんが、「懐かしい」というある種の思い出補正的なものがなくてもこれらのゲームは楽しめると思うわけです。むしろ、経験してこなかったからこそ新鮮なのです。8bitゲームを知らない人でも、そのようなインディーゲームを楽しめるんだということを伝えていきたいです(このレビューでは伝え切れてないかもしれませんが)。

なお、筆者は『ケロブラスター』の動くiOS機器はiPadしか持っていなかったため、PC版でのレビューとなります。また、今回はレビュー祭りということなので、「ゲームプレイ」、「音楽」など要点を絞って書いていきます。

トライ&エラーが楽しいクリアまで僅か数時間で高品質の体験ができるゲームプレイ

ゲームプレイはトライ&エラーが楽しく、プレイヤー自身の成長とキャラクターの成長を実感できる爽快感のあるものとなっています。
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 『ケロブラスター』の操作方法はタイトル画面で示されます。操作はタッチパネルに最適化されているためか、非常にシンプルです。見れば分かるように、カーソルキーは3つしか使いません。これが意味するのは、下方向へのショットが無いということです。これはゲームプレイにも反映されていて、『ケロブラスター』は下方向へのショットが無いという前提のゲームデザインになっているのです(下方向に強い武器は存在する)。筆者はFPS・TPSをプレイしていた経験から、PCシューターからコンソールシューターが主流になって、上下の視点移動をあまり要求されないゲームデザインに変わっていったことを個人的に思い出してしまいました。コントローラーでプレイすること前提でゲームデザインも変化していったシューター。そして、『ケロブラスター』はタッチパネルで操作すること前提でデザインされているわけです。操作デバイスの違いによりゲームデザインも変わるって面白いですね。

操作は非常にシンプルですが、それでも最初は高難易度だと感じるでしょう。ですが、プレイを続けることで自分が上手くなっていく感覚を味合わせるのが上手く、カジュアルとハードコアのバランスが絶妙だと思います。最近では『ダーク・ソウル』などが代表例ですが、いわゆる死に覚えゲーに近い感覚を『ケロブラスター』からは感じました。『ケロブラスター』にはお金の要素があり、お金を使用することで武器の強化やHPの最大値をアップさせるなどが出来ます。プレイを続けて何回も死ぬことでプレイヤー自身の実力だけではなく主人公の性能も上がるので、アクションゲームが苦手ならば時間さえかければゲームを有利に進めることが出来るのです。ここまでなら、ただのよくある死に覚えゲー。ですが、『ケロブラスター』には死んだらお金を落とすなどの要素はなく(筆者は何かをロストすると、プレイ時間が無駄になったと感じることがあるので重要!)、死に覚えゲーのようなハードコアゲームとカジュアルゲームの中間あたりのバランスでどちら側のプレイヤーでも満足できることでしょう。
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ライフが0になると、プレイヤーは「とねかわ病院」に搬送されてステージの最初からやり直すことになります。『ケロブラスター』は死に覚えゲー的な難易度なので、画像の場面は何度も見ることになるでしょう。死に覚えゲーと言いましたが、病院に搬送されるから実は死んでなかったんですね。実は死んでないということから、お金や武器のレベルを引き継ぎできる理由にもなっているのではないでしょうか。筆者は死んだら病院からリスタートというのは『Grand Theft Auto』シリーズを思い出してしまいました。あれは死んだら治療費がかかるので、多少のロストはありますが、『ケロブラスター』にはそのような要素はありません。何度も何度も搬送されるのに「とねかわ病院」やさしいですね。主人公がサラリーマンだし、そういう保険でもあるのかな(笑)。

『洞窟物語』と比較すると、『洞窟物語』にもキャラクターの成長要素はありましたが、お金の要素がないからか武器のレベルやHPの最大値はゲームを進める段階によって限界が決まっていました。ですが、『ケロブラスター』はゲームの序盤でも時間を掛けてお金を貯めれば、HPの最大値をかなり早くカンストさせることが出来ます(現実的ではありませんが)。このような成長要素の拡張のおかげで、『洞窟物語』よりも『ケロブラスター』は間口が広がったと言えるでしょう。

ストーリーに関しても『洞窟物語』と同様にして、ゲーム全体はポップな雰囲気です。ですが、そこはもちろん『洞窟物語』の作者のゲームであるので、少しだけ考えさせられる内容のストーリーが展開されます。また、主人公のカエルはサラリーマンですから『ケロブラスター』は子供の頃に8bitゲームに触れて育ち、現在サラリーマンになった人が一番楽しめるのではないでしょうか。
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 主人公がサラリーマンなので、上司に怒鳴られるなんて場面も..。ああ、カエルに共感できる日が来るなんて!

文脈を知らなくても素晴らしいと思わせる「新鮮」な BGM

筆者はファミコンなどの8bitゲームにはリアルタイムで触れていないため、音楽に関して昔のゲームのBGMには詳しくありません。ただ、それでも8bitライクなゲームは昨今の流行なので、いわゆるチップチューン(チップチューンの説明に関しては、リンク先のニコニコ大百科が簡潔で分かりやすい)については全く聴いたことがないというわけではありません。

『ケロブラスター』のサントラの簡単なプレビューを未プレイの人のために貼っておく。大体の雰囲気は掴めるでしょう。

チップチューンについてあまり詳しくはありませんが、このゲームの音楽には個性があると断言できます。あまり言葉では上手く説明できませんが、よくある8bitライクなゲームのチップチューンは、チップチューンじゃなくもっともっと音色を増やしたときにどう感じるのかなって思うことが個人的に多かったわけです。『ケロブラスター』は昔のゲームの音楽の模倣というレベルでは無い新鮮さがあると感じます。Youtubeでチップチューンを調べたり8bitライクなゲームの音楽を聴いてみても、「うーん、懐かし補正ないと辛くない?昔っぽいだけじゃない?」と感じることが多かったので、『ケロブラスター』の音楽は新鮮さすら感じられて凄いと思いました(具体例は思いつかなくてスミマセン)。

また、ある人は言いました。「『ケロブラスター』は天谷さん(作者)の新譜だ」と。これは本当で、『ケロブラスター』の音楽を聴くことにより、チップチューンとは昔懐かしいだけの音楽ではないと思いました。今もなお、進化を続けるゲーム音楽シーンの最前線であり、ゲーム音楽の「クラシック」なのです。 『ケロブラスター』のBGMは、ただ良いBGMというだけでなく、チップチューンという音楽ジャンルについても考えさせられる素晴らしい物になっています。

ケロブラスターは四億点のゲーム。だが、尖った部分があまりなくて物足りない部分も?

まとめます。『ケロブラスター』はあまりに完成されすぎていて、作者の狂気すら感じるほどの作り込みの優等生すぎるゲームです。ただ、インディー・ゲームには尖った部分があってこそと筆者は思います。


例えば『Hotline Miami』なら、プレイヤーと敵両方がほぼ一撃で死ぬような極端なダメージバランス、暴力的でありながら暴力に対する問いが入ってるかのような複雑なストーリーなどが尖った要素であると思います。『ケロブラスター』にはそこまで極端な尖った要素が無いと筆者は感じます(深読みすれば、『ケロブラスター』はブラック企業を取り扱っているか?)。

これは『洞窟物語』をプレイした時にも感じたことです。筆者の思うインディーらしさ(尖った部分が何かある)というよりも、『ケロブラスター』からは任天堂のゲームのような全てが高水準で完成度が高いゲームのような感覚を覚えます。『洞窟物語』の時代では8bitライクゲームであること自体が尖った要素だったのでしょうが、今の時代にはこのようなスタイルのゲームは和ゲー・洋ゲーを問わず大量に制作されています。個人的に、あまりに完成度の高いゲームはSNSなどで語ることが難しいと感じています。なので、尖った部分が無く、完成度の高すぎる『ケロブラスター』はあまり語られることが無く、当時は8bitライクゲームであること自体が尖った要素だとみなされていたと思われる『洞窟物語』ほどはヒットせずに風化してしまう可能性があると感じてしまうのです。

筆者は尖ったゲームが好きなので、個人的な願望として、開発室Pixelの新作では優等生なゲームではなくもう少し尖ったゲームをプレイしたいなと思いました。求めるものの違いというのはあると思います。僕のような尖ったゲームをプレイしたい人には『ケロブラスター』は物足りないかもしれませんが、普通に完成度が高くて面白いゲームをプレイしたい人には『ケロブラスター』は合うと思います。

個人的な感情を書きましたが、『ケロブラスター』自体は『洞窟物語』からのファンや全てのゲームファンにプレイして欲しい作品です。尖った要素はあまりありませんが、恐ろしく万人受けのする内容の四億点ゲームなのですから。

[タイトル]
Kero Blaster

[ソフトウェアタイプ]
シェアウェア
windows 720円
iOS版 500円

[対応OS等]
Windows,iOS

日本語版、英語版

[ダウンロード]
PC版

Playism

iOS版

[制作者」
開発室Pixel

[プレイ時間]
2~3時間

ケロブラスターレビュー祭り 他のレビューはこちら!

第1回:全要素がスマホ向けにフルチューニングされた至高のアクション。それが『ケロブラスター』だ―『ケロブラスター』レビュー(ニカイドウレンジ) – もぐらゲームス

第2回:『ケロブラスター』は開発室pixelのマリオか?―『ケロブラスター』レビュー(hamatsu) – もぐらゲームス

第3回:「kero blaster」・「洞窟物語」の伝説化という過大評価と桜庭和志の悲劇問題―『ケロブラスター』レビュー(EAbase887) – もぐらゲームス

第4回:もぐらゲームス | カエルの為に胸高鳴る ―『Kero Blaster』レビュー(HayanieMozu)

  • hahaha(@hahaha121

    あんまりインディーゲームやらないけど、「Hotline Tokyo」が好きで「Hotline Tokyo」で取り扱われるゲームだけはプレイしたいと思っています。ただの、「Hotline Tokyo」ファン。「NYDGamer」管理人のファンでもある。自称「NYDGamer」の秘書。