空前絶後の”ケモノ+筋肉”タイピングゲーム『コトダマッスル』 筋肉と言葉の力は裏切らない…

今も昔も、PCを用いた業務に携わる人間にとって、キーボードの「ブラインドタッチ(タッチタイピング)」は無くてはならない技能の一つだ。

それを学ぶのに最適なのが、PC向けに作られたキーボード操作で遊ぶ「タイピングゲーム」である。同ゲームは今もなお、キーボード操作を学ぶ、極めるに当たって欠かせない存在であり、家庭用も含め、多種多様な作品が制作され続けている。

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そんな作品の中でひときわ個性の強い一本、『コトダマッスル』を今回は紹介する。本作は2018年8月19日、フリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」にて公開された、ダブリス竈(かまど)氏制作によるWindows PC用タイピングゲームで、「第10回WOLF RPGエディターコンテスト(通称:ウディコン)」参加作品。同コンテストでは熱中度、遊びやすさのそれぞれの部門で1位、物語性部門で2位、総合グランプリで2位の好成績を収めている。

正統派タイピングバトルゲーム。しかし、妙な要素が……。

内容の紹介に入る前に一つ、注意事項を。本作はタイピング練習用のゲームではない。(事実上の)極める方向に特化したゲームだ。なので、タイピング操作を全く習得していない、これから習得に励むプレイヤーにはおすすめしがたい。後述するが、難易度選択機能はあって、簡単な難易度も用意されているものの、それでも初歩レベルのタイピングができなければ厳しい。チュートリアルにも、タイピング習得に必須となる「ホームポジション」を練習するものは用意されていない。よって、本作に興味があっても、最低限のタイピング技能がなければ、別の練習用ソフトで基礎を習得してからがよい。あえて、突撃して試練に挑むのも一興ではある。しかし、筆者個人の意見としては初歩レベルでもいいので、習得してからを強く推奨する。そのことを留意いただきたい。

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注意事項を書き記した所で本題に入ろう。

基本的には、画面に表示される単語を始めとする文字列をキーボードで入力していく、スタンダードなタイピングゲームだ。シチュエーションは戦闘主体で、ストーリーに沿って立ちはばかる敵をタイピングで撃退していく形となる。

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敵への攻撃は、指定される文字列を入力し終えるごとに行われる。最終的に体力ゲージを空にすれば勝利。逆にミスタイプを繰り返して敵の攻撃を何度も浴び、こちらの体力ゲージが空になるとゲームオーバーだ。ミスタイプを防ぐ意図で、ゆっくり入力することを心がけたとしても、敵側の体力ゲージ下に表示されたオレンジ色のゲージが無くなれば、問答無用で攻撃されてダメージ。よって素早く、且つ正確なタイピングが勝利へのカギ。いかにも戦闘主体のタイピングゲームらしいバランスにまとめられている。

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もちろん、必殺技も存在。画面左側に表示されたゲージが貯まった時にエンターキーを押すと技が発動し、相手に大ダメージを与えられる。ゲージは全10段階あるが、1段階でも溜まれば発動可能と条件は緩め。しかし、満タンの10段階にすれば、それ相応の強力な一撃が繰り出されるので、狙ってみる価値は大いにある。

とは言え、意外に10段階まで溜めるのは至難の業。というのも、画面左下の「COMBO」を一定数重ねるのではなく、「UHO」の文字列を入力することで溜めるのだ。なので、提示される文字列に「UHO」と入力できる部分がなければ、ゲージを溜めることすら適わず。運と機会に左右される仕組みになっているのである。

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他に戦闘も、文字列をそのまま入力するだけのものに限らない。中には提示される文字列から見出される答えを入力しなければならない、特殊パターンも存在する。当然ながら、間違った答えを入力すれば返り討ち。プレイヤーの思考力、洞察力も試されるのだ。

基本的な手触りはタイピングゲームの基本に忠実で、特段、斬新なところはない。しかし、
必殺技の発動条件、特殊な戦闘などの個性的な要素が揃っていて、ただ提示される文字列を打ち込んでいくだけに終始しない、起伏のある内容になっている。肝心の戦闘も一騎打ちもあれば、雑魚敵軍団との連続戦、巨大ボス戦などの様々なバリエーションが用意されていて、単調さは全く感じさせない。

何より、ストーリーの濃さがいいアクセントになっている。

「ケモノキャラクター+筋肉」空前絶後のコラボレーション

紹介が遅れたが、本作にはストーリーが存在。本編も登場キャラクター達の会話パートを挟みながら、各種タイピングバトルを繰り広げていく構成になっている。

肝心の内容も実にユニーク且つ、空前絶後で革新的(?)な作風だ。

擬人化したウサギが生活を営む「ウサギニア国」、同じく擬人化した犬が生活を営む「イヌトピア国」の二つの国が東西に位置する世界。両国は互いを認めず、長きに渡って聖戦という名のもとに……かどうかは分からないが、果てしない戦いを繰り広げていた。

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そんな中、ウサギニア国に住む少女「クロエ」は、成人として「言紡師(げんぼうし)」になる記念日を迎えていた。言紡師とは、言葉に眠る力を呼び起こす技を持った能力者のことである。

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その通過儀礼として、新たな知識を学ぶための「言魂(ことだま)」を召喚するべく、東にある大樹の根元へと向かうクロエ。だが、そこにはヒャッハー全開世紀末な山賊が!さらに、彼らに襲われている研究者と思しき人物の姿も。

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案の定(?)、山賊にお持ち帰りされそうなピンチに陥ったクロエは、言紡師の力を駆使し、言魂に助けを求める。

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すると間もなく、轟音と共に言魂が召喚された。その者とは……

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ムキムキマッチョな「イシカワ」さんでした。
かくして、予想だにしない言魂を召喚してしまったクロエは、この後、二国の将来をも左右する、とんでもない出来事へと巻き込まれていくことになるのでした。

思わず二度見してしまうようなあらすじだが、ウソ偽り何もなく本当にこの通り。ムキムキマッチョな半裸の男性(の言魂)、擬人化ウサギの少女が様々な戦いに身を投じていくストーリーが展開されるのである。

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そのため肉密度、むさ苦しさ共に特濃。それを推し進めるかのように、イベントでは数々の筋肉用語が飛び出しては、筋肉こそ全て、筋肉があればなんでもできる、筋肉は希望を人々に与える、力押しモリモリ豪華一点主義の展開が繰り広げられ、プレイヤーに筋肉は決して裏切らないことを嫌になっちゃう癖になっちゃう勢いで思い知らせてくる。

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そうも濃すぎる人物にクロエを始めとする、ケモノなキャラクター達が続々と絡む。大変失礼な一言であるが、褒め言葉として言わせていただこう。頭おかしい。そもそも、どうしてケモノと混ぜた。何故、その発想に行き着いた。訳が分からない。筋肉愛にも限度がある。

こんな人物構成になっているのもあり、かなり人を選ぶ……というか、不快感すら抱きかねない内容だ。実際にそのようなプレイヤーへの配慮からなのか、ゲーム起動間もなく筋肉流注意書きが表示されるほどである。前代未聞すぎる。

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例によって、ストーリーも二国間が争っている背景とは裏腹にギャグ……もとい、筋肉漫才新喜劇である。とは言え、登場人物達から言紡師を始めとする用語など、設定は詳細にまとめられていて作り込みは深い。戦闘もストーリーの状況に見合った内容のものが多く、それが先の特殊な展開へと至らせるなど、運ばせ方も理に適っている。

何より、終盤の展開が熱く、演出的にもタイピングゲームならではの独自性が強く出ている。特に最終ボスにトドメを刺すまでの流れは、ストーリーとタイピングがフルシンクロする、とても印象深いものになっているので必見だ

ボリュームとしては1時間に満たない短編だが、要点を押さえた展開と登場人物達の愉快さもあって、なかなか見応えのある内容にまとめられている。最初はイロモノすぎる設定と組み合わせに困惑必至だが、中盤を越える頃にはその違和感もほぼ消え失せる。

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人を選ぶ部分があるのも否定しないが、プレイすれば題材以上の満足感とキャラクター達への愛着を得られるだろう。そして、改めて次の至言を呟いてしまうかもしれない。

筋肉は裏切らない…。

イロモノっぽく見えて、実は秀作

先の通り、ストーリーは短編の密度だが、ゲーム側は五種類の難易度、正打率などのやり込み要素が用意されていて、クリア後も楽しめる。特に正打率100%クリアは歯応え抜群。しかも、ステージと難易度別に記録される仕組みのため、一筋縄ではいかない。

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五種類の難易度も独自の味付けが施されており、特に最高難易度「むずい」はタイプミスの許されないシビアな戦闘を堪能できる反面、「おきらく」ではタイプミスをしない限り、敵から攻撃されることのないスローテンポでユルい流れでゲームを進めていける。それでも、タイピングを全く習得していないプレイヤーには、操作面でもどかしく感じてしまうところがあるが、様々な遊び方を許容するサポートの手厚さは素晴らしいの一言だ。これぞ筋肉的慈悲。地味だが、戦闘画面右側に次に入力するキーの候補を表示してくれる機能が設けられているのにも、同様の慈悲を感じさせられる。

他にキャラクター、インターフェース周りのデザインも本作の持つ独特な雰囲気、ケモノな世界観特有の可愛らしさが表現されている。イベントなど、背景が実写の写真で描写されているのも面白いところだ。ちなみにロケ地は石川県とのこと。

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ケモノ+筋肉という常軌を逸した組み合わせゆえの濃さと人を選ぶ側面はあるものの、意外にも(失礼)秀作に完成されている。先の通り、タイピングの練習ソフトとしての側面はないため、それ目的での遊ぶのはおすすめできない。ただ、最低限のタイピング操作を習得しているプレイヤーには、さらなる習熟を目指すに当たって最適。タイピングをマスターしているプレイヤーにも、ストーリーの面白さでおすすめできる魅力がある。題材とは裏腹に、とてもよく出来ている本作。興味があればぜひ、プレイしてみていただきたい。

Remember, the muscles never lie.

[基本情報]
タイトル:『コトダマッスル』
制作者: ダブリス竈(かまど)
ロケ地: 石川県
クリア時間: 1~1時間半
難易度:初級~上級者向け(※要:タッチタイピング)
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考: ケモノ成分50%+肉密度70%

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/18309

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