記憶を求めて30日。少女と喋るぬいぐるみが織り成す経営SLG『MEMORIES AGAIN -メモリーズアゲイン-』

錬成術士の少女「ルーシア」は10年前、突如失踪した同じく錬成術士の父親「ヴィンセント」の行方を捜していた。ある日、彼女は辺境の町「ファルジア」の錬成術工房に3年前、ヴィンセントが暮らしていたとの情報を町長の「クリス」より送られてきた手紙を通して知る。

早速、ファルジアへやってきたルーシアはヴィンセントの行方を探るため、1ヶ月間、工房で生活することになった。そんな工房で、彼女は喋るぬいぐるみ「リヒト」を発見。彼はヴィンセントによって錬成されたゴーレムだった。ずっとここで暮らしていたと話すリヒトもまた、生みの親であり親友のヴィンセントを探していた。

かくして目的を同じくし、共に生活することになった二人。
1ヶ月の間に、ヴィンセントの行方を突き止められるのだろうか?

そんなオープニングと共に始まる『MEMORIES AGAIN -メモリーズアゲイン-』は、2019年12月27日に公開されたWindows PC用フリーゲームだ。ダウンロードはフリーゲーム配信サイトの「ふりーむ!」のほか、「BOOTH」からも行える。
また、本作はドネーションウェア(カンパウェア)でもありBOOTHのこちらのページから作者のタワタリ氏宛に寄付することもできる。

工房を発展させ、住民と交流を重ねて父親の行方を辿る30日間

ジャンルとしては経営シミュレーションゲームとなる。1ヶ月(30日)の期日中に失踪した父親の行方を突き止めるため、工房を発展させつつ、町の人々と交流を重ねながら情報を集めていく。

具体的には喋るゴーレムこと「リヒト」の記憶を完全に蘇らせるのが最終目標。彼に町の住民から聞き出した情報をひとつずつ伝えて、工房で暮らしていた時の思い出や再び姿を消した経緯を辿る形になる。とは言え、父親に関する情報はそう簡単に聞き出せるものにあらず。彼が暮らしていたのは3年も前なので、関わりのあった住民はおぼろげな記憶しかない。それを思い出してもらうために交流を重ね、時にはイベントをこなしたりして、根気よく取り組んでいくのが達成のカギとなる。

また、並行して工房の発展にも取り組んでいくことになる。
ただ、やることは単純。錬成術で作り上げた商品を販売するだけである。販売の手順も簡単で、工房内にある「販売ボックス」に完成させた商品を入れれば、あとはリヒトが自動的に売りさばいてくれる。


▲売れた商品の数に応じてお金をゲット。

商品の作り方も単純明快。現在所持している素材アイテムを使い、作りたい商品を選んで決定していくだけだ。ただ、作れる商品は「レシピ」を所持していて、尚且つ必要素材が揃っているものに限定される。


▲素材は「郊外」のマップで拾う、「商店」か「町長宅」で購入、もしくは住民から貰う形。「レシピ」は「町長宅」にて特定日に販売される。ただ、たまに住民から頂けることも。

さらに錬成を行うと強制的に時間が経過。

朝に錬成を行えば、次にメインの移動画面へ戻ってきた時には昼になる感じだ。1日は朝・昼・夜の3つに分かれ、夜の時に何らかの行動を取れば、次の日になる。このような時間の移動を踏まえて各種行動を判断し、実行に移していくのが基本だ。

何らかの行動と記したように、錬成以外にも時間が経過する要素がある。工房2階のベッドで寝ること、そして特定の住民との間で発生するイベント「キャラクターエピソード」だ。
特に後者は父親の行方を突き止める最終目標と強く関連しているため、極力こなしていくことが求められる。ただ、時間経過によって工房側で商品を錬成する時間が奪われるほか、無視すれば再発生まで一定日時を挟む無駄が生じることになる。時には先送りしたがために別のイベントと発生が被り、際どい判断が迫られることも。

工房にしても、発展はリヒトの記憶にも強く関連付くので、手を抜く訳にもいかず。そんな限られた時間を最適なタイミングで費やしては、最終的な目標達成に影響が及ばないように調整していく。

まさに制限付きの経営シミュレーションならではの”時間との戦い”満載の作りで、この手の要素が好きな人にはたまらないゲームに仕上げられている。
なお、本作はあくまでもシミュレーションのため、ロールプレイングゲーム(RPG)的な要素は皆無。フィールド間の移動はメニューで行えるほか、戦闘イベントも全くない。純粋に経営と交流(ストーリー)だけを楽しめる設計だ。

”がっぽり”容易な緩い経営周りと濃い目のストーリー

ついでに言うと、難易度もそんなに高くない。1ヶ月の制限こそあれど、素材やレシピの購入を下手にケチったりしなければ、スムーズに進めていけるバランスになっている。裏を返せば、ケチれば後々辛くなる。そして、行動を絞り込めば、目標達成が遠のく。「キモには惜しまず金を使え、さすれば道は拓かれる」という真理(?)を突くがごとし作りだ。

なので、経営シミュレーションゲームに精通したプレイヤーには物足りなく感じるかもしれない。特に販売は売れ筋の変動や商品の劣化などの複雑性を演出する要素はなく、相応に価格高めのものを入れておけば、結構な売上が出るので、やり方によっては”ガッポリ”行けてしまう。量とラインナップによっては、最終日付近に工房発展が最大レベルまで達しているほどだ。


▲がっぽり。(しかも、まだ上を目指せる)

とは言え、最初は手探り進行になりがち。”答え”を見つければ一気に目標達成が見えてくるところはあれど、それを達成できるか否かはプレイヤーの計画次第という、キモは尊重したバランスになっている。そう言った適度に緩く遊べて、ホドホドに頭を悩ませる作りが大きな魅力になっている。

また、難易度を緩くしなたりにストーリーは非常に見応えのある出来だ。特に交流イベントはキャラクターごとに5つのエピソードを用意しているほか、選択肢によって成否が変わる分岐要素もあるなど、アドベンチャーゲーム的なやり応えも備えた仕上がりになっている。イベント対象となるキャラクターたちも皆個性的、かつ主人公ルーシアの明るさとの絡みで生き生きとした様子を見せてくれる。

そんなルーシアが最も関係する本筋も、気の強いリヒトとのやり取りのほか、少しずつ明らかになっていく父親のヴィンセントの過去も相まって、終始、見逃せない内容。特に無事、全ての記憶を取り戻した後に明らかになる真相は、何とも言いがたい余韻を残すものになっている。なぜ、父親は突然失踪したのか。そして、リヒトを作り出したのか。彼が記憶を失った背景に何があったのか。全てが事細かに語られる最終局面は要注目だ。

ただ、総じて非常によくまとまった内容とは言え、快適性への気配りが足りてないのが惜しい。イベントスキップ、早送りなどの機能なしの”お古”な作りになってしまっているのだ。なので、キャラクターエピソードでベストな選択肢を選んだプレイをするとなれば、メッセージ送りのため、ボタン連打しなければならなくなる。一応イベント開始の前に始めるか止めるかを選べる上、セーブとロードは常に行えるので、極端に不便な訳ではないものの、できれば備えて欲しかった。この所為で周回プレイも操作面で辛いものになってしまっているのが本当に勿体ない。

また、最終的に明かされる父親の行方に関しては若干、賛否が分かれるかもしれない。人によっては消化不良に感じる恐れもある。そんな書き方をした時点で、賛否の理由が察せるかもしれないが、とりあえず言えることとしては、何か思うことがあるならば行動してみよう、ということだ。”さすれば道は拓かれる”だ。
……首を長くしてお待ちしております。

演出面の細かな作り込みも見逃せない力作

全体のボリュームも早くて4時間、じっくり進めて8~10時間と適度な物量。エンディングも2種類あり、両方の結末を確かめたり、期日内に全ての要素を網羅しきるやり込みにも挑める余地がある。

操作もスキップ機能など、快適性周りの配慮こそ乏しいが、基本的にマウス単体で遊ぶ設計なので取っ付きやすさは上々。インターフェース周りも視認性良好で、これと言ってストレスは感じさせない。また、様々な検証要素があることから、セーブスロットも充実していて、ロード機能もメニュー画面に備わっているのも救いだ。

登場キャラクターの立ち絵も表情パターンが豊富で作り込まれているほか、イベントによっては一枚絵が挟まれるなど、演出面も凝った仕上がり。キャラクターはマップに表示されるディフォルメ版も可愛らしいデザインになっているので注目だ。

経営シミュレーションとしての難易度は低めながら、その分ストーリー周りは濃く、アドベンチャーゲームにも勝るとも劣らぬイベントの豊富さが光る本作。キャラクターや世界観の雰囲気にピンと来た人はもちろん、”がっぽり”稼げる快感を味わえる緩いシミュレーションもたまには遊びたい御方にはおすすめの力作だ。

見た目はどう見てもぬいぐるみな喋るゴーレムと一緒に30日間限定のお店経営と住民との交流を楽しんでみよう。田舎町ならではの雰囲気を堪能するのもアリです。

[基本情報]
タイトル:『MEMORIES AGAIN -メモリーズアゲイン-』
作者:タワタリ
クリア時間:5~6時間(※エンディング分岐あり)
対応OS:Windows
価格:無料(※ドネーションウェア)

ダウンロードはこちら
※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/21695

※BOOTH
https://tatawatari.booth.pm/items/1738966


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