もぐらゲームス執筆陣の選ぶ 2019年おすすめフリゲ・インディゲーム14選

インディーゲーム,フリーゲーム,特集

2010年代最後の年であるとともに、平成から新元号・令和へと移り変わった2019年。時代の節目となった1年、皆様はどのようなゲームと共に過ごされただろうか?
本稿では、もぐらゲームスの執筆陣が、2019年にプレイしたゲームの中で特におすすめできるフリーゲーム・インディーゲーム14作品を一挙特集する。

各執筆者が2019年に遊んだ中で「これは!」となった作品の数々を紹介していくので、気になった作品があればぜひ手に取ってほしい。

昨年の記事はこちら。
もぐらゲームス執筆陣の選ぶ 2018年おすすめフリゲ・インディゲーム15選

やっぱり王様がいちばん!

動画配信サイトが普及し、人々が生放送を気軽に行えるようになった昨今、もはやゲームとは切り離せない関係となっている「ゲーム実況」の文化。逆にそうしたゲーム実況文化をゲームの側がモチーフとした作品もまま見受けられるようになった。
マテンロウ計画制作の『やっぱり王様がいちばん!』もそんなゲーム実況をモチーフとした作品のひとつだ。

本作ではアザラシ王国に住まう王様が隣の海域に住むライバルの姫との「おやつ権」を賭け、横スクロールシューティングゲーム『SUPER AZARASHI』に挑戦することになる。こっそりと王様の実況付きで。

シューティングゲームとしてはパロディな風味の強いオーソドックスな内容。難易度もそれほど高くはないが、ポイントになるのが「王様による実況」と「視聴者数」の存在。王様は自機の体力が減ってピンチになると激しくお叫びになられるので、字幕が大変邪…自己主張を始めてくるという困ったちゃん。しかしピンチのほうが撮れ高も高くなるという危険行為推奨な一面もあり、着実に進むか撮れ高を狙うかのアンビバレンツが発生することになる。いかにギリギリを攻められるかがポイントだ。

そしてキュートなキャラクター達も魅力的。何のかんの言っても、やっぱり王様がいちばん可愛い。
(真野 崇)

タイトル: やっぱり王様がいちばん!
制作者: マテンロウ計画
クリア時間: 10~15分
対応OS: ブラウザ
価格: フリーウェア
プレイはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/19766

装甲断姫

地中深くから発掘されたAI搭載型戦闘装甲車「装甲断機」。その研究を行うニオ博士のもと、装甲断機「ブラスタリア」のドライバーとなった少女・リンネは、博士の依頼で車載AI・ウズメと共に謎の生物「シュマム」を探す旅に出る。

『装甲断姫』はフリゲRTS『雛型戦略』などを制作したっK氏による作品で、レーシングとシューティングとRPGを組み合わせたキメラティックな異色作。2019年年始よりBOOTHにて公開・販売されている。

レースはトップビュー視点で進行し、サーキットではコースを周回しつつ敵を撃ち落としていく。レースとシューティングを同時にこなすとなると忙しそうに聞こえるが、本作では車の運転はAIが行う自動運転に任せてしまうことができるという、レースゲームとして見ると大胆なシステムでこれを解決している。
堅い敵相手にはAIにハンドルを任せてローギアからの武器パワー供給で攻撃に集中し、サーキットを先行する速い敵には自身で運転してショートカットを使って先回りをする、などというように自動操縦と自力操作の二人三脚の配分が光る

装甲断機同士の対決となる「バトルレース」では車の運転は完全にAI任せとなり、プレイヤーは車載ドローンを操作して対戦相手を妨害しレースを援護する形式で戦うことになる。加えて、コース内やマップを探索してパーツを集め、車両やドローンをカスタマイズすることも可能。通常のステージではマニュアル操縦を活用してパーツを探し、チューンナップを施してバトルレースに備えよう。
(真野 崇)

タイトル:装甲断姫
制作者: 水弍(っK)
クリア時間: 5時間~
対応OS: Windows
価格: ¥200
ダウンロードはこちらから
https://booth.pm/ja/items/1158000

PIANOFORTE

『PIANOFORTE』はサークル・ヘビサイドクリエイション制作のRPG。
漆黒の世界「ゼレ」に落とされた少年「ユー」となり、妖精の「フェーツヴァイ」らをはじめとする仲間たちと共に、旅をしながら「ガイスト」と呼ばれる怪物と戦っていく。

ステージ中の移動はオートで進行し、戦闘では行動ゲージが溜まった際にキャラクターの行動を入力していく、いわゆるアクティブタイムバトル方式が取られている。
最大3キャラクターからなるパーティを組み、プレイヤーは隊列の先頭のキャラクターを操作する。残りの味方はオートで行動し、オフェンシブ/ディフェンシブのモード切替によって行動の指針を変更することが可能だ。

パーティの状況や敵の行動に合わせてモード切替を判断していくだけでなく、ボス戦時はボス敵の行動マーカーに合わせてモード切替を行うことでボーナスが得られるリズムゲーム的な要素や、HPを犠牲に行動ゲージを高速で溜める「ソウルブースト」からの攻撃連打で敵を畳み掛けるなど、単調過ぎず、性急すぎずの適度な忙しさのあるバトルが楽しめる。

ボス敵となる「ガイスト」は悲しみに囚われて怪物と化してしまった人間という存在だが、戦闘がリアルタイムに進行することを活かして、ボス戦と平行してその「ガイスト」のバックグラウンドが語られていく演出が鮮烈。
”心の闇の克服”という王道的テーマと、画面の奥行きを使った演出や大きく影を落とす照明、ピアノが奏でるクラシック曲の数々が組み合わさり、さながら演劇を観ているような気分になれる。

本作は2019年8月に開催されたコミックマーケット96にて初頒布された後、デジゲー博などの各種即売会で頒布が行われている。2019年12月時点では販路が即売会での頒布のみで入手性に難があり気軽には薦めがたいが、もしも機会に恵まれた折には是非とも手に取ってほしい。
(真野 崇)

タイトル: PIANOFORTE
制作者: ヘビサイドクリエイション
クリア時間: 2~3時間
対応OS: Windows
価格: ¥1000
公式サイト: https://www.heaviside-creations.org/pianoforte

TANUKI sunset

ピンクと水色のショッキングカラーに彩られたビジュアルイメージと、「チョップド・アンド・スクリュード」などのエフェクトによる気だるい音色作りが特色のvaporwave(ヴェイパーウェイヴ)という奇妙な音楽ジャンルがある。vaporwaveは水面下で流行を見せていたジャンルで、近年では任天堂『スプラトゥーン2 オクト・エキスパンション』でフィーチャーされた事でご存知の方も居ることだろう。
『TANUKI sunset』はそんなvaporwaveの意匠が感じられるスケボー・ドライブゲーム。Webサイト上から直接プレイできるほか、より多機能なダウンロード版も用意されている。

障害物に衝突したりコースアウトしないようにTANUKIを操りつつ、アイテムを拾ってスコアを稼いでいき、ゲームオーバーまでのスコアを競う。ボタンを押しながらコーナリングをすることでドリフト走行、スティックを下に入れると180度ターンを行うことができ、ジャンプ台を使ったジャンプや障害物ギリギリを攻めるなどの各種トリックによって更なるスコアアップを狙うことが可能だ。
シンプルなルールだがそれ故に熱中でき、気の抜けたシンセサウンドに合わせてスタイリッシュにドリフトを決めたり衝突時に軽快に吹っ飛んでいくTANUKIの様子がクスッとした笑いを誘う作品となっている。

なお、本作について日本語話者がまず胸中に抱くであろう「お前はタヌキじゃなくてアライグマだろ」というツッコミについては、vaporwaveというジャンルにおいて「怪しい日本語」は重要な構成要素のひとつとされており、つまりTANUKIであることはvaporwave的に正しいといえるようだ。奥が深い。
(真野 崇)

タイトル: TANUKI sunset
制作者: Squid Squad
クリア時間: エンドレス
対応OS: HTML5対応ブラウザ , Windows
価格: フリーウェア
ダウンロードはこちらから
https://squidsquadgames.itch.io/tanuki-sunset

グミシューター

『グミシューター』はsimatten氏制作によるワンボタン操作のランゲーム。Android版とWindows版がそれぞれ公開されている。
二挺拳銃の少女を走らせゴールを目指すことになるが、画面のボタンをタップすると「前進」と「射撃」を同時に行い、タップを離すとバク転で後退したのち停止する。銃には残弾数が設定されており、敵を射撃で倒したときに出てくるアイテムを取るか、静止し続けることで補充することができる。敵とぶつかって体力が無くなるとゲームオーバーとなる。

「前に走る」「銃を撃って敵を倒す」「アイテムを拾って弾丸を補充する」という3つのアクションがひとつのボタンで連鎖するのが非常に気持ち良く、ワンボタン操作ながらプレイ感覚は驚くほどに”ラン&ガン”。時にはノンストップで敵を倒しつつ駆け抜け、時には立ち止まり敵との距離を慎重に詰めていこう。操作に慣れるための冒頭部で敵のラッシュからタイトルのカットインへと繋がる切れ味鋭い演出もクールだ。

ボスを倒した時点でゴールとなるためプレイ時間は非常に短いが、そのぶん果汁たっぷりのグミキャンディよろしく小粒のなかに味が凝縮された作品といえる。クリア時にはタイムが記録されるので、繰り返しのタイムアタックでよく噛んで味わおう。
(真野 崇)

タイトル: グミシューター
制作者: simatten
クリア時間: 120秒~
対応OS: Android , Windows
価格: フリーウェア
ダウンロードはこちらから
※Android版(Google Play)
Google Play で手に入れよう

※Windows版
https://simatten.itch.io/gummy-shooter

Gato Roboto

遡ること15年前、ゲームボーイアドバンスで任天堂より発売された『まわるメイド・イン・ワリオ』のミニゲームにネコロイドなるものがあった。

アームキャノンを装備した猫をソフト内臓の「回転センサー」で転がし、敵を撃ち倒していくアクションシューティングゲームなのだが、元ネタの『メトロイド』の面影は皆無で(※でも音楽と効果音はメトロイド)、初めて遊んだ時は「出オチか!」と言いたくなった。
2018年、ニンテンドー3DSで発売された新作『メイド・イン・ワリオ ゴージャス』にも同ゲームは収録されるどころか、続編『ネコロイドII ニャムスリターンズ』まで登場する衝撃の展開があったのだが、こちらもジャンルは前作と同じ。この設定で探索型を作る考えはないのかと、若干、メトロイドシリーズの制作陣に問いてみたい気持ちがあった。

そんな続編から1年後、アメリカのインディーディベロッパー「doink Soft」がやってしまった。正真正銘のネコロイド、『Gato Roboto』誕生である。
その内容も紛うことなきメトロイド系探索型アクション。ニャムスじゃなくて「キキ」がご主人の「ゲイリー」を助けるべく、謎のSOS信号が発信された小惑星内に広がる軍の研究施設の探索に挑む。猫でも使えるパワードスーツを装着して。

「マジでやりおった……!」の一言である。
システム周りも隠す気皆無のメトロイド。ショット攻撃で開くゲートを潜り、怪物を撃退しながら迷宮のような研究施設を進み、SOS信号の謎に迫っていく。アクションも敵に大ダメージを与える「ミサイル」こと「ロケット」、攻撃判定有りの体当たり「スクリューアタック」こと「スピンジャンプ」と、これまた隠す気ないほどメトロイド。しかし、前者はオーバーヒート式で連射できなくしていたり、後者は二段ジャンプを可能にするアクションで、体当たりの威力も低くするなど、ちゃんと差別化されている。

そして、最大の特色「バトルスーツ着脱」。(Nintendo Switch版の場合)Xボタンを押すと操縦主のキキがスーツを脱ぎ、単身外へ飛び出す。以降、壁の駆け上がり、狭い通路の突破など、スーツ着用時にはできない機動性の高いアクションが可能になる。
ただ、生身なので攻撃手段はないし、敵やその攻撃に接触すれば即ゲームオーバー。そんなダメージあり・なしのパートが交互に展開される緩急の激しい構成になっており、独特の遊び応えとスリルを味わえる。探索周りも次に進むべき道が把握しやすくて非常にテンポがよく、かと言って密度を薄くしすぎない絶妙なバランスでまとまっていて、クリア時間短めながら確かな手応えを得られる。また、探索型アクションの醍醐味、タイムアタックのやり込みに気軽に挑めるのも魅力。もちろん、「カートリッジ」を始めとするアイテム収集要素も完備。その際には高度なテクニックも試されたりと、コアなプレイヤーの心を揺さぶるフィーチャーも揃っている。

2019年は年明け間もなく、本家メトロイドシリーズ最新作『メトロイドプライム4』が開発体制変更で無期限延期になる大変残念な報せがあったのだが、本作はその寂しさを補ってくれる見事な傑作に仕上がっている。ひとつの探索型アクションとしても、ホドホドの難易度と手頃なボリュームもあって、ジャンルの経験が浅いプレイヤーも気負わず遊べる内容だ。猫がバトルスーツをまとって戦う設定にピンと来たなら、すぐにでも遊んでみていただきたい。ネコロイド、オモロイド。

ちなみに本作の日本語翻訳を務められたのは、自らも猫好きの小川”とら猫”公貴氏。「にゃおん」と「みゃおん」をシーンによって使い分けると言った、プロフェッショナルなこだわりが炸裂した翻訳の数々は必見。
(シェループ)

[基本情報]
タイトル:『Gato Roboto』
制作者: doinksoft(※販売:Devolver Digital / 日本語ローカライズ:架け橋ゲームズ)
クリア時間: 2~3時間
対応OS: Nintendo Switch、PC(Windows)
価格: ¥820

購入はこちらから
※Nintendo Switch版
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000013633

※PC版(Steam)

Untitled Goose Game 〜いたずらガチョウがやって来た!〜

平和な村に現れた名もなき1羽のガチョウさん。村を散策しながら、おじさんの帽子を盗んだり、突然鳴いてビックリさせるなどして、彼らの日常をどんどん台無しにしてまいります。
そんな愉快なストーリーが繰り広げられる『Untitled Goose Game ~いたずらガチョウがやって来た!~』は、オーストラリアのディベロッパー「House House」制作のステルス・サンドボックス・ガチョウシミュレーター。相手に気付かれないようコッソリ動きながら、様々なお題(ToDoリスト)に挑戦していく内容となっている。

お題はイタズラゲームらしく愉快なものばかり。椅子を引っ張って尻もちをつかせる、頭めがけてバケツを落とす、洗濯物を奪って噴水に投げ捨てるなど、ドッキリ番組の仕掛け人になったような気持ちになるラインナップとなっている。あくまでもやるのはイタズラで、怪我を負わせるなどの暴力的なお題・演出は皆無。ターゲットの住民もイタズラ遂行中に見つかっても追い払う行動を取るだけでやられることは絶対にない上、一部、ガチョウに好意的な反応を示す人達もいたりと、とても平和的で優しい雰囲気が醸し出されている。

お題遂行に当たっては相手の行動パターン、タイミングを見極めなければならないなど、ステルスゲーム特有の戦略性もバッチリで、上手く成し遂げられた際には大きな達成感としてやったり感が味わえる。演出も住民が気付いてない時は無音、気付いた時はピアノ主体の音楽を動きに合わせて流し、ドタバタ感を表現するなど、コメディ作品らしい工夫が凝らされている。イタズラを仕掛けた時に見せる住民達のリアクションも楽しい。筆者イチオシは”紳士”。彼に対して”ゴーン”と決めるお題は、ベタと言えばベタなのだが、あまりに期待通りのリアクションを見せることから、つい笑ってしまうはずだ。


▲紳士とガチョウさん。

初お披露目の時から、シュールな設定とガチョウさんの性悪さが注目の的となっていた本作。満を持してリリースに至った製品版はその期待に違わぬ仕上がりで、プレイ中、終始笑顔のままになる心地よい楽しさがある。ボリュームもクリアだけなら短めだが、その後に特別なお題が大量追加されるので、全てをやり切るとなれば結構な充実感が得られる。
ダッシュ移動時に方向転換する際のレスポンスが独特だったり、一部の隠し通路(裏ルート)の隠し方が意地悪だったりする難点もあるが、あまり類を見ない平和的なステルスゲームとして綺麗に仕上がった良作。

当初はNintendo Switch版、PC(Epic Games Store)版のみだったが、2019年12月17日からPlayStation 4、Xbox One版もリリースされた。PlayStation 4版には、ガチョウさんが鳴くとDUAL SHOCK 4のライトバーがオレンジに点灯する仕掛けも追加されているので、既に他機種版でプレイ済みの方もご覧いただきたい。

ちなみにこのPS4版の機能、日本語版の販売を担当したパニック・ジャパンは知らなかったようで、Twitterで慌てふためく一幕があった。
まさにパニック・ジャパンがジャパンでパニック。
(シェループ)

[基本情報]
タイトル:『Untitled Goose Game ~いたずらガチョウがやって来た!~』
制作者: House House(※販売:Panic)
クリア時間: 3~4時間
対応OS: Nintendo Switch、PlayStation 4、Xbox One、PC(Windows、Mac)
価格: ¥1,980

購入はこちらから
※Nintendo Switch版
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000014142

※PC版(Epic Games Store)
https://www.epicgames.com/store/ja/product/untitled-goose-game/home

※PlayStation 4版
https://store.playstation.com/ja-jp/product/UP3971-CUSA23079_00-HONKHONKHONKHONK

※Xbox One版
https://www.microsoft.com/ja-jp/p/untitled-goose-game-%e3%81%84%e3%81%9f%e3%81%9a%e3%82%89%e3%82%ac%e3%83%81%e3%83%a7%e3%82%a6%e3%81%8c%e3%82%84%e3%81%a3%e3%81%a6%e6%9d%a5%e3%81%9f/9mvtctdthh23

Forager

2019年の新作の中で時間泥棒とも言えるゲームは何かと聞かれたら、『Forager』を挙げる。植物に岩、鉱石をツルハシで伐採・採掘しながら素材を集め、新たな装備や施設を造ったり、溜めたお金で領地を広げていくサンドボックスゲームだ。ストーリーはなく、ひたすら素材熱めと領地拡大を繰り返していく内容。

だが、領地を広げていくにつれて迷宮が姿を現すことがあり、そこでは探索と謎解きが交互に展開されるアクションアドベンチャーに。敵との戦闘もあり、場所によってはボス戦も展開される。敵に関しては迷宮のみならず、外のフィールドにも出現することがあり、手にした装備で撃退すれば素材と経験値をゲット。後者は一定量溜まればレベルが上がって「スキルポイント」が手に入り、メニューのスキル一覧内から1つスキルを選べば、新たな能力獲得のほか、装備、施設などの作成解禁を実施できる。

そう言った様々なことを延々と繰り返しながらプレイする。概略だけなら作業感の強さが滲み出ているが、本作が恐ろしいのはプレイ中に起こす行動全てに”無駄”がないこと。特に伐採・採掘による素材集めでも敵との戦闘同様、経験値が溜まるので、高いレベルに育て上げたいとなれば、ずっとそのことに没頭してしまう。そして1レベル上がったと思えば、もう少し上げたいとの欲が生じて伐採・採掘を続け、また上がったと思えばさらに上に……と言った具合にどんどん止められなくなっていき、気付いた頃には3~4時間が経過していた、という具合に時間が”ゴッソリ”盗まれる。しかも、レベルアップとスキル習得で、やれることも増えるので、ますます持って「止められない、止められない」のスパイラルに。

極め付け、伐採した素材元は一定時間が経過すれば復活。放置していれば歩行範囲がなくなるほどの密集状態になるので、安定して行動できるフィールドを維持したいならば伐採・採掘は止めてはならない。そして結果、次々と素材が手に入っては経験値も手に入り、レベルアップして新たなスキルを習得し、作成できるものが増えてプレイヤーが強くなり、領地も広がって……(以下略)

そんなこんなで、極めて毒性の強い……猛毒級の熱中度を持つゲームに完成されている。また、本作はPCのほか、Nintendo Switch、PlayStation 4で発売されているが、中でもNintendo Switch版は携帯モードとの相性が悪魔的によく、場所を選ばず遊べるのもあって、自重しなければ本当に止められなくなる。同モード時の操作性が良好であるのも拍車をかけており、まさに”混ぜるな危険”。

一部、実績を習得できないバグが存在し、現時点でもアップデート実施が不透明だったり、強化が最上位に達すると放置ゲーに等しい感じになる残念な箇所もあるが、もし、年末年始に時間を忘れてゲームを遊びたい思いがあれば、ぜひお試しいただきたい1本だ。例によって、中毒性の高さを最も感じ取れるNintendo Switch版がおすすめである。2019年に発売された最新モデル『Nintendo Switch Lite』と共に鬼に金棒の極みを味わってみよう。なおスケジュール、生活リズムの狂いが生じても自己責任で。
(シェループ)

[基本情報]
タイトル:『Forager』
制作者: HopFrog(※販売:Humble Bundle / 日本語ローカライズ:架け橋ゲームズ)
クリア時間: 20~25時間
対応OS: Nintendo Switch、PlayStation 4、PC(Windows)
価格: ¥1,980(Nintendo Switch、PlayStation 4)、¥2050(PC)

購入はこちらから
※Nintendo Switch版
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000013005

※PlayStation 4版
https://store.playstation.com/ja-jp/product/UP3864-CUSA13967_00-JPPS400000000001

※PC版(Steam)

ポルト・ガーディア

2019年に遊んだフリーゲームの中で最も印象的だった1本は、と聞かれたら『ポルト・ガーディア』を挙げる。ロールプレイングゲームと落ちモノパズル、そしてローグライクもほんの少しブレンドした革新的な傑作だ。

魔王と勇者が争う王道一直線のファンタジー世界を舞台に、港を守る「港守人」になって交易品を整理しながら、時々襲い来る魔物を迎撃する内容。

見た目は落ちモノパズルゲームだが、物資に当たる「ブロック」の落下はプレイヤー側の決定によって即実施される、リアルタイム性を廃した独特のシステムを採用。素早い判断の必要もなく、じっくり積み上げ方を考えられる高い戦略性と取っ付きやすさを両立した作りを最大の特徴としている。また、ブロックは模様ごとに消した際に様々な効果があり、それがステータス強化、アイテム・お金の入手と言ったRPG由来のものになっている。さらにスコアが一定数値に達すると戦闘が発生。連鎖を決めながらの激しいパズル勝負ではなく、ターン制のコマンドバトルで、通常攻撃と手に入れたアイテムを駆使するRPG以外の何物でもない展開となる。勝利すれば経験値が手に入って、一定量到達でレベルアップ。そのままパズルへと戻って、再びブロックを消してステータス強化やアイテムなどを取って次の襲撃に備えるのを繰り返し、最後に現れるボスの討伐を目指す。

ルールはシンプルながら、数々の個性的な味付けによって、革新的な遊び心地が表現されており、夢中になって遊んでしまう面白さがある。パズル中に起きるイベントの数々も面白い。ブロックはステータス強化、アイテム入手以外にイベントを発生させる種類も含まれており、連鎖課題に挑んだり、ギャンブルに挑戦したり、時にはアイテムを買ったり、融資を支払うことを迫られたりする。それによって、強力なアイテム入手に大幅なステータスアップの恩恵も得られれば、酷ければステータスダウンで弱体化し、厳しい戦いを強いられることも。コツコツ組み立ててきた戦略プランが崩れ去った時の絶望感はなかなかで、常に油断ならない展開を描き出す。そして、新規事業おじさんへの憎悪の念が膨らむ。

ステージも進む度に新たなブロックが登場したり、特殊な制約が課せられるなどレベルデザインがちゃんとしていて攻略し甲斐十分。ストーリーも大筋は王道ながら、脇を固めるキャラクターがクセモノ揃いで、愉快な台詞と合わせて強烈な印象を残す。中でも新規事業おじさんは何度も言及したくなるぐらいに憎たら愛らしいキャラクターになっているので必見だ。あの守銭奴め。

純粋なパズルに挑むモードも用意されているほか、クリア後にも追加の高難易度ステージ、実績(アチーブメント)や全4種類ある内の未クリアの難易度に挑戦すると言ったやり込み要素も盛り沢山。何より、リアルタイム要素を廃しているので、パズルゲームに苦手意識のある人もじっくり手順を考えれば連鎖を組めるハードルの低さが光る。なのに連鎖の手順を教えるチュートリアルがない、ステージ解禁のために支払うお金の額が割高な点が惜しくもあるが、完成度は高い。見た目のユルさに少し警戒するかもしれないが、出来は本物。パズルゲーム好きからそうでない人もぜひ、この新感覚の防衛戦に挑んでみていただきたい。

そして、新規事業おじさんへの憎悪を膨らませよう。
おいしい話には裏があるのだよ。
(シェループ)

関連記事:革新系フリゲRPG『ポルト・ガーディア』 魔王は勇者に任せて守るは港!そして、胡散臭い話に釣られてガッポリ大儲けの大破産じゃい!?

[基本情報]
タイトル:『ポルト・ガーディア(Port Guardia)』
制作者: サカモトトマト
クリア時間: 2時間(※クリア後を除く)
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考: 英語テキスト対応

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/21111

BRADLEY(ブラッドリー)

米国のとある刑務所。
幼い女の子を襲った罪で服役中の「彼女」が自由の身になる日を迎えた。
精神科医「ブラッドリー」は、模範囚でもある彼女が正常になったかを確かめる最終テストを実施する。
果たして、彼女は正常に戻ったのか。もしくはその逆か。

『BRADLEY(ブラッドリー)』は、大体10~15分で完結する短編ノベルである。
だが、ストーリーを時間内に読む解くのは困難を極める。
2周しても、それは難しい。
では、どうするのか。
自分が納得いくまで周回を重ねるしかない。
台詞の一字一句を読み込むしかない。

だが、重ねれば重ねるほど、何が真実か分からなくなってくる。
他の人はこのストーリーに対し、どんな考えを持ったかを聞きたくなる。
議論したくなる。
しかしその末、答えが導かれるかは全く持って分からない。

全く描かれない登場人物の容姿、解像度の粗い背景、明瞭ながらも時に読み手を混乱させるテキスト。そして、思いもしないどんでん返しに戦慄の結末。

本年度、筆者がレビュー兼紹介記事を執筆した『真昼の暗黒』、『CODA』の2作をお気に召した人なら、ぜひプレイいただきたい短くも難解な怪作である。
このゲームの10~15分はとても短く、とてつもなく長い。

半信半疑に思うなら、すぐにでもダウンロードして体験するべし。
なお、性犯罪絡みの残酷な表現がある。苦手な人は注意。
(シェループ)

[基本情報]
タイトル:『BRADLEY(ブラッドリー)』
制作者: 柘榴雨(ザクロアメ)
クリア時間: 10~15分
対応OS: PC(Windows、Mac)
価格: 無料

ダウンロードはこちらから
※ノベルゲームコレクション(ブラウザ版もあります)
https://novelgame.jp/games/show/2363

※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/21537

同人・フリーノベルゲーム4選

2019年にプレイしたゲームのうち、本稿ではとくにお勧めのノベルゲーム4作品を紹介したい。そのほか、お勧めのRPG『アスクギア』『最果てを目指す』については個別記事を掲載しているのでそちらも参照いただければ幸いだ。
(中村 友次郎)

シロナガス島への帰還

2017年夏のコミックマーケット頒布作品を紹介する記事で未完成版を紹介した作品が2018年末ついに完成、2019年夏には後日談シナリオなどが追加された「完全版」も頒布された。現在はダウンロード版とパッケージ版を各種サイトで購入可能。Steamでの配信も予定されている

絶海の孤島「シロナガス島」を舞台としたミステリー作品。ハードボイルドな私立探偵“池田戦”とその助手を務める天才少女“出雲崎ねね子”が、島に蠢く陰謀に挑む。誰もがどこかしら怪しい登場人物達から殺人事件の犯人を推理するミステリー要素を軸としつつ、アクション、サスペンス、ホラー、さらにはSFまでと幅広く展開し、最後まで飽きさせないシナリオが大きな魅力だ。

ゲームプレイや演出面も凝っており、時間制限の中で選択肢を選び続けて緊急事態を打開するシステムや、背景の一部がアニメーションするといったシチュエーションを盛り上げる動的演出も特徴。イラストはキャラクターグラフィックはもちろん、寒々しい島の空気感や使い込まれた洋館の雰囲気が伝わる描き込まれた背景も見どころとなっている。

全体的にクオリティ高く纏め上げられた作品だが、とくに衝撃の展開を経て加速するゲーム後半は、苦境に立ち向かう池田戦の奮闘やねね子の成長、それぞれの思惑や決意を持って島へとやってきた者達との対立を経ての共闘など胸が熱くなる展開が目白押し。島の真実に連なる物語はおぞましくも切ないもので、「孤島を舞台にしたミステリー」という第一印象からはいい意味で逸脱した、スケールが大きくエモーショナルな作品に仕上がっていると感じさせられた。

それぞれが抱える事情が明らかになるにつれて当初とは異なる側面も見えてくる、個性的で癖のあるキャラクター達も魅力。ちなみに筆者の推しはあどけなさの中に強い意志も感じる謎の少女“アウロラ”です……。

タイトル: シロナガス島への帰還
制作者:TABINOMICHI SOFT
クリア時間: 本編クリアまで6~8時間程度
対応OS: Windows
価格: 500円(ダウンロード版)、550円(パッケージ版)
購入はこちらから
https://shironagasu.tabinomichi.com/

真性終末症候群-World end,eve-

幼馴染みや級友達と賑やかで平穏な日々を過ごす主人公の少年“陸奥睦月”。しかしそこに差し込む違和感、やがて――。日常と非日常が隣接し、主人公の選択が世界の命運を左右するタイプの終末もの。定番のテーマを、綺麗で読みやすいテキストで描いた作品だ。

特筆すべきは、イベントCGと背景を合わせて差分抜きで約200枚に及ぶオリジナルのグラフィック。背景にも力が入っており、平穏な世界からそうでないもの、また幻想的な風景まで、透明感のある筆致で描き出している。

そして本作を語るにあたって欠かせないのが、睦月の幼馴染み“星野彼方”の存在。綻んでいく世界で、特別な存在である睦月と違ってその綻びを認識できないはずの彼方が、しかし「自分には見えていないものが見えている睦月」を見続けることで真相に辿り着くさまは圧巻。それに留まらず、あらゆる意味で「最強の幼馴染み」として物語を牽引していく。

彼女の存在が、「定番のテーマを丁寧に描いた良作」を「唯一無二の鮮烈な印象を残す作品」へとさらに一段階押し上げていると感じさせられた。「終末もの」と「幼馴染みゲー」、どちらかでもピンと来るならぜひプレイしてみてほしい作品だ。

タイトル: 真性終末症候群-World end,eve-
制作者:StarChasers
クリア時間:4~5時間程度
対応OS: Windows
価格: 無料
ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/19991

死線間の友人

思春期に入ると無作為に陥れられる「死線」という現象を経験し変わってしまった少年“金元義人”と、「死線」に興味を持つ少女“高室つる”、二人の視点で描かれる作品。「死線」とはそもそも何なのか?といった謎めいた世界観と、少年少女達が抱える欠落や焦燥感などを描く青春ものが混然となったような、独特の味わいのあるシナリオが特徴だ。

独特の世界観はゲームプレイの全体を通して演出されており、エラーのように画面が歪むグリッチ表現や、さらには一見不具合のように感じる挙動まで、作品にとって意味のあるものとして存在している。選択肢によらないユニークなルート分岐も特徴で、物語も攻略も既存の枠に嵌まらない、いい意味で異質な作品に仕上がっている。

タイトル: 死線間の友人
制作者:疑似集団X
クリア時間:3~5時間程度
対応OS: Windows
価格: 無料
ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/19528

ReIn∽Alter(リーン・アルター)

2019年4月から9月にかけて、連作として公開された作品。現在は全エピソードを1つにまとめた統合版が公開されている。

日常からの脱却を望む主人公の少年“高嶺零”が、未解決の猟奇殺人事件の犯人として噂されている「魔族」の実在を確かめにいくことから物語が展開していく作品。異能力「リーン」に目覚めた零は世界の裏側で巻き起こる戦いに関わっていくことになるが、そうした異能バトルものとしての要素もありつつ、それぞれに孤独を抱えた少年少女達の、ままならない世界に対する悲痛な想いにも強くフォーカスした作品となっている。

ケレン味があってキレのよいテキストが魅力。イベントCGやエフェクト、さらにはEDM系のBGMも合わさって、スタイリッシュに演出されるバトルも見どころだ。物語は終盤にかけて大きく加速し、リーンや世界の謎に迫りつつ、それが零自身の出自とも絡み合いダイナミックに展開する。

なお本作は、2017年に紹介記事を掲載したRPG『Acassia∞Reload』と世界観を同じくする関連作品となっている。物語本編は『ReIn∽Alter』のみで完結しているため『Acassia∞Reload』の事前プレイは必要ないが、逆に『Acassia∞Reload』の物語が刺さった人には、同作のバックグラウンドを補完する作品としても本作のプレイをお勧めしたい。また、同梱の後日談シナリオは『Acassia∞Reload』の外伝的な内容で、RPGの攻略やバトルをノベルゲームで表現したゲーム小説的な楽しみ方もできるものとなっている。

タイトル: ReIn∽Alter
制作者:anubis
クリア時間:5~6時間
対応OS: Windows
価格: 無料
ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/21657

  • シェループ(@shelloop

    様々なゲームに手を伸ばしたがる人。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションを与えると喜びます。

    Webサイト:box sentence

  • 中村友次郎(@finalbeta

    フリーゲームと同人ゲーム、日本ファルコム作品をこよなく愛するゲーム好き。システムに凝ったRPGをとくに好んでプレイします。運営型ゲームはメギド72をPvPメインで、あとは原神など。
    過去に十数年ほど、窓の杜の連載記事「週末ゲーム」の編集と一部執筆を担当していました。

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。