これからの「ゆるゲー」の話をしよう。 RucKyGAMES×井上明人対談(前編・全3回)

インタビュー,スマホゲーム,フリーゲーム

突然ですが、RucKyGAMESさんをご存知でしょうか?

今をさかのぼること2年前、突如アプリ市場を席巻した『ぐんまのやぼう』。群馬県の特産品を収穫し、貯めた「G(GUNMA)」を消費して各都道府県を制圧していく……というアプリです。Twitter上で「長野県は群馬県になりました」などと、謎のツイートを見かけた方も多いはず(これ以上の説明は野暮なので、サイトを見てそのゆるい雰囲気に飲まれてください)。RucKyGAMESさんは、この作者として知られています。

懐かしい?いやいや、RucKyGAMESさんのことを『ぐんまのやぼう』でしか知らないなんて、もったいない!RucKyGAMESさんは、バカゲーでも、クソゲーでもなく、いわば「ゆるゲー」とでも言うべきゲームを作り続けています。今までに世に出したアプリの数は、なんとiPhone,Android合わせて200本以上。全アプリの累計ダウンロード数は「たぶん1,000万ぐらい」とのこと。その実績もさることながら、ご本人のなんともいえない、ゆるっとしたキャラクターで人気をあつめています。

さらにさらに、『ぐんまのやぼう』が2014年夏、ニンテンドー3DSでダウンロード配信決定!!
夏ってもうすぐじゃないか!!こちらも詳細は今後あきらかになっていくことでしょう。目が離せない……!

全国を群馬県にするゲーム「ぐんまのやぼう」にニンテンドー3DS版 なぜか立体視対応
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1406/13/news082.html

ぐんまのやぼうのニンテンドー3DS版がでるらしいです
http://d.hatena.ne.jp/rucky19/20140613/1402639310

一方、井上明人さんは新進気鋭のゲーム研究者。「1000本ゲーマー」と称してプレイ経験豊富な井上さんは、じつはRucKyGAMESさんのファン。とあるイベントでは、海外からSkypeごしでRucKyGAMESさんと話した井上さんでしたが、今回がっつりと、RucKyGAMESさんと対談していただきました!

この穏やかに流れる時間を、あなたにおすそ分け。今回から3回にわたって、RucKyGAMESさんと井上明人さんの「ゆるゲー」対談をお届けします。

image12RucKyGAMES( @RucKyGAMES )
ゲーム制作者。「ぐんまのやぼう あぺんどじゃぱん」などのゆるゲー作者として知られる。サイトはこちら。最新作『パワースポット一網打尽』『11人いればサッカーできる』『刺身工場』『Pentomino』も、絶賛公開中。

image05井上明人 ( @hiyokoya6 )
ゲーム研究者。1000本ゲーマーを公称。ゲーム言論界においては、豊富なゲームプレイ経験から来る切り口の鋭い意見で独特の存在感を持っている。著書『ゲーミフィケーション』など。サイトはこちら

ゆるさの履歴書。

井上
まずは単純な疑問からなんですが、「RucKyGAMESさんの、なんともいえないゆるさはどこから来るのか?」というのを聞きたいと今日は思っていました。もともとは、『なめこ』のところで働いていらっしゃったんですよね。
RucKyGAMES
そうですね、DSが出るちょい前に入って、……5年半ぐらいかな。
井上
ちゃんと社会人をなさってたんですね!
RucKyGAMES
ちゃんとお仕事してました。……あんまり、会社でちゃんとしてた記憶はないんですけど。
井上
そのときは、プログラマーとして働いていらっしゃった?
RucKyGAMES
一応、プログラマーで入って。最初の半年ぐらいは壮絶でした。最初のプログラマーは4人いたんですけど、開発終わる頃にはプログラマー一人と、新人のぼくしか残ってなかった。メインの仕事以外が新人のぼくにくるという、つらい仕事で……。普通「そこで鍛えられました」って言えればいいんですけど、正直あんまり鍛えられなかったんじゃないか、という。
井上
あんまり鍛えられなかったとおっしゃいますが、コンテンツ界隈のちゃんとした基礎教養みたいなものは、実はかなりきちんとしてますよね。『ぐんまのやぼう』のゆるっとした絵を見ると、「あっ、下手」とか思う人がいるかもしれないんですけども、決してそうではないですよね。単に下手な人だと、あれは絶対描けないじゃないですか。

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RucKyGAMES氏も群馬県の出身。

RucKyGAMES
ヘタウマ系というか……ヘタウマじゃないな(笑)。ゆるい感じで。ゲームがある程度分かる人には、「ちゃんとしてる!」って言ってもらえますね。分かんない人には雑で……楽そうに思われるんですけど。

ちゃんとしちゃうのを、しょぼくしようって

井上
画面の統一感とか、ちゃんとありますもんね。
RucKyGAMES
そうですね、一応気にしながら作っています。
井上
でも、チームとしてグラフィックの方もいらっしゃるんですね。
RucKyGAMES
はい。うち、二人でやっていて、グラフィッカーさんもいるんですけど、そっちはちゃんと……ちゃんとした人で。
井上
グラフィッカーとして。
RucKyGAMES
お願いしたら、大体できるという。ただ、それをうまく使わないのがうち。だからよく、「グラフィッカーさんいるんだ」って言われますね。
井上
『ぐんま』は、オープニングのあそこがそのグラフィッカーさんですか。image11
オープニングのあそこ。カッコいい
RucKyGAMES
そうですね。
井上
この特産物とかもグラフィッカーの方。
RucKyGAMES
そうですね、絵描きたくなかったんで。
井上
特産物多いですもんね……、あたらしい『ぐんま』は。

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特産物が多い

RucKyGAMES
あとはボタン系は、一回グラフィッカーさんの描かれたものを、上からなぞるっていう。
井上
え、それは、なんでなぞったんですか(笑)
RucKyGAMES
劣化させるために……
井上
ちょっと綺麗すぎた?
RucKyGAMES
ちゃんとしちゃうんですよ。なので、それをしょぼくしようっていう。「劣化させる」という仕事をやったりしました。
井上
それは重要なグラフィックのお仕事ですね。
RucKyGAMES
で、ほんとうに劣化するっていう。

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劣化させるという仕事の結果

井上
もしかして、うすた京介さんの作品とかお好きですか?
RucKyGAMES
『ピューと吹く!ジャガー』の、ラーメンを……「そぉい!」ってやる感じとか。すごく好きですね……!

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©うすた京介/集英社

井上
そぉい!!
RucKyGAMES
シュール系は独特の世界観があるので記憶に残るし、読み返したくなるものが多いですよね。改めて見ても、「すごいな、よく書けるなこんなものを」って。あとは、とりあえず爆発させるのが好きです。
井上
爆発ですか。
RucKyGAMES
ガンガンコミック系で『すすめ!!ダイナマン』っていう爆弾をもった主人公が出てくる漫画があって、全部爆発オチ……。ああいう勢いは好きですね。

ふなっしーのことはまだ許せてない

井上
ここ数年のゆるキャラの動きとかは、どんな感じで見つめておられるんですか。
RucKyGAMES
ゆるくないな、っていう……
井上
ああ、すごくわかります(笑)
RucKyGAMES
2, 3年前からビジネスのにおいがしてしまっているので。今のタイミングで逆に地元の戦隊モノとかつくってるところが、好きです……。
井上
上位のキャラは全然ゆるくない。
RucKyGAMES
ふなっしーも、まだ許せてない気持ちが少しあるっていうか……
井上
許せてない!それは、どこらへんが……
RucKyGAMES
僕、(ふなっしーが)はやったあと、知っちゃったから……遅れたから、「もう、しらない!」って。ちゃんと見たら、楽しかったんですけどね。
井上
なるほど……。どこだったかのゆるキャラが、戦隊物どころか、ドンキかなんかで売ってるようなテキトウな既成品のきぐるみ着てやってるやつがあったんですけど、あれとかはどうですか。いいですよ。ええっと、なんだったかな…岡山県?いや、石川県だったかな……確かね、岡山だったと思うんですけど……。
※編集注:井上さんがおっしゃっていたのは、山形県朝日町の非公認キャラクター「桃色ウサヒ」だったようです。

コンプガチャらしきものを再現しよう

井上
数年前にコンプガチャの話題がでて、「やばい!」「コンプガチャ部分をぜんぶ削除しよう」とソシャゲ業界が一斉に動いた時に、ちょうど流れに逆行して……というか挑戦してというか、『ぐんまのやぼう』のなかに、コンプガチャ的な仕組みを実装されましたよね。
RucKyGAMES
そうですね。
井上
あれはカッコ良すぎるなと、尊敬の念を新たにしたんですが。

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合併前の市町村を集めると、平成の合併後の新市町村カードが手に入る。上は北群馬郡吉岡町のレア。

RucKyGAMES
やってて楽しかったですね。見た目の再現とか。
井上
「ぐんま」本体より、120%あっちのほうが手間かけてつくってますよね?
RucKyGAMES
「ぐんま」の他の部分は、自分の手描きグラフィックなんですけど、あそこだけはちゃんとグラフィッカーさんにお願いして、「あれを真似ろ」と。コンプガチャらしきものを再現しようという、そのためだけにがんばりました。コンプガチャの規制前に出したかったし。
井上
いや、あれは規制かかっても、大丈夫だと思いますけどね(笑)。
RucKyGAMES
楽しかったけど、その後苦労しましたけどね。他の仕様を入れる際に、あの画面だけ統一感をとるのがめんどくさい、っていう。

新たにゲームを生み出す気力もないし

井上
あとは……『刺身工場』。クッキークリッカー的なものを出しましたけど。タイミング的には、どれぐらいでしたっけ。
RucKyGAMES
あれは今年の3月ぐらいに出したのかな。(本家の)クッキークリッカーが流行ったの、去年の9月ぐらいですよね。なんでいまなの、感はすごいあるんですけど……。

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正式名称は『刺身工場~刺身のうえにたんぽぽおいて秒速で1億以上稼ぎたい』

井上
あの『i刺身(※)』の続編ですよね、これ。(※RucKyGAMES氏の初作品。右から左に流れてくる刺身の上にひたすら、タンポポを乗せるゲーム。)
RucKyGAMES
そうですね。もう一個直前に『Pentomino』という、文字通りペントミノのゲームを出していて、起動時画面がほぼ同じなんですよね。このパズルを作るときにグラフィッカーさんにお願いして描いてもらったものがこれで。

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この子どものやってるものを刺身の上にのせるたんぽぽに変えたら面白い!って思って。純粋な子どもが刺身の上にたんぽぽ載せてる絵が面白いから、これを使いたいって思って、強引に作り上げたのが、『刺身工場』で。

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井上
なるほど……。
RucKyGAMES
あとは、クッキークリッカーのパラメーターの動きを実験的に試したかったんですよね。だから、なんでもよかった、っちゃあなんでもよかった。
井上
刺身じゃなくても。
RucKyGAMES
刺身じゃなくても。新たにゲームを生み出す気力もないし、楽そうな過去のを持ってこれないかと思って。「こんなかんじでインフレゲームになるんだ」っていうのを知りたかったんですよね。

「俺の苗字はないのか」

井上
このUFOも、たいへんかわいい。この……。

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RucKyGAMES
『ニンゲンのチョウサ』。
井上
『ニンゲンのチョウサ』も、すごく、大変シュールで……。ゲームといっていいかどうかよくわからないけど。
RucKyGAMES
最近多いですけど、要は放置ゲー的なやつですよね。コレクションゲーム系の。
井上
これ、放置したらなんかなるんでしたっけ?
RucKyGAMES
これ、時間経つとゲージが貯まるんですよ。
井上
あ、そうだったんだ……!全然気づいていなかった。単純にUFOがかわいくて、「佐藤さんとか、山本さんとか、いるよねー、いるわー」って気分になってたんですけど。
RucKyGAMES
レベルアップすると、より色々な苗字が溜まりやすくなるっていう。苗字は、ランキング順ですね。レベル上がると苗字がどんどん出てきて、その繰り返し。それで、1000人の苗字を集めようっていう。

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井上
あ、井上出てきた。苗字ランキング16位。これは、ランキング1000位ぐらいまで入れてるんですか。
RucKyGAMES
一応9999位まで入れてます。
井上
あ、すごい。大体入ってますよね。
RucKyGAMES
でも、入ってない人もちょいちょいいて、「マイナーな苗字多いんだなあ」って。知り合いに「俺の苗字はないのか」って言われたり。ごめんなさい。

>>>中編に続きます!

  • Noah(@powerofgamesorg

    通称のあP。「もぐらゲームス」エグゼクティブプロデューサー&共同編集長。ゲームをする人。「ゲームのちからで世界を変えよう会議」の中の人。経営戦略(ゲーム産業)と金融が一応専門分野。 MMORPG「リネージュ」の元プレイヤー(8年ぐらい、10,000時間ほどプレイ)。長らく一つのゲームをやりこむ派でしたが、最近は雑食気味にいろんなゲームをプレイしています。思い出に残っているゲームはリネージュ、ティアリングサーガ、勇者のくせになまいきだ。or2など