「『ぐんまのやぼう』、ヒットすると思ってたら殴られそう」 RucKyGAMES×井上明人対談(中編・全3回)

前回から引き続き、『ぐんまのやぼう』作者のRucKyGAMES氏、ゲーム研究者の井上明人氏の対談をお届けします。終始和やかな雰囲気ですが、時々ドキリとするようなことを話すRucKyGAMESさん。どんどんと、真面目にゆるゲーを語ってもらいます、今回はどんな話が飛び出すのでしょうか。

『ぐんま』がヒットすると思ってたら殴られそう

井上
「ゆるゲー」という文脈で言うと、海外では、2000年代中盤ぐらいから、一発ネタとして流行ったものが出てきていました。毒のあるところでいうと、『Five Minutes To Kill ( Yourself )(5分間で自殺するゲーム)』とか、『Kick Your Boss(上司を蹴飛ばすゲーム)』とかですね。海外では、「ネタだけどちょっと面白いぞ」というものが流行った経緯があったわけです。
RucKyGAMES
ありますね。
井上
一方、日本はゆるゲーの市場はあまりなくて。いわゆる「バカゲー」路線ですごい狭い市場はあったと思うんですけど、それでも5万本、10万本ヒットすればいい、ぐらいで。それか、完全に「クソゲー」ラインになってしまうか、という。
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『Five Minutes To Kill (Yourself)』。タイトルは物騒だが、ビジュアルは(海外ゲーにしては)ほのぼの。
RucKyGAMES
自然的にクソゲーになるところが多いですよね、日本は。
井上
「クソゲー」か「バカゲー」の2ラインしかなかったところに、『なめこ』ときて『ぐんま』。ゆるゲーラインの歴史が、ここでかたく確立されたわけです
RucKyGAMES
ゆるゲーラインですか……(笑)
井上
『なめこ』はあそこまで、ヒットするとは思っていなかったタイプのゲームだとは思いますが、『ぐんま』の場合はRucKyGAMESさんがフリーになって、エイヤッと出しているわけで……。「ゆるゲーで食っていこう」という明確な意思決定は、どういうふうにされていったんでしょうか。
RucKyGAMES
まあ、『ぐんま』もヒットすると思ってなかったですけどね。ヒットすると思ってたら殴られそう……。
井上
ま……たしかにヒットすると思われてはいらっしゃらなかったでしょうね…
RucKyGAMES
こうなっちゃった、って言ったらあれですけど、こうなった影響がでかいのは、最初は『メイド イン ワリオ』で、あとは『バイトヘル 2000 』 が一番影響が大きいかもしれないですね。「あ、これでいいんだな、ゲームは」って。面白いし。
井上
なるほど。
RucKyGAMES
元いた会社は少人数だったんで、ある程度企画もやるという流れがあって。そういうゲームをペラ1の企画書で書いていたけど、100%通らないんです。真剣に頑張っても、いくらやっても通らない。その流れで、会社で仕事として FLASH ゲームを作ってたんです。技術的には、これなら家で作れる!と思って。
井上
確かに家でつくれそうな……。
RucKyGAMES
会社で出せないなら、家でやろう!っていうので、最初の方は家でも FLASH ゲームを作っていて、その流れで、「より多くの人に触れてもらえる環境」ということで、iPhone アプリに……なんだろ、カッコイイ表現だけど違うな(笑)。なんだろうな……
井上
なんだろう……。
RucKyGAMES
まあ、単純に「iPhoneアプリが儲かるって聞いたからiPhoneに行った」って感じで!とにかく会社で表現できなかったから、自分でやろうって。
井上
なるほど、なるほど。
RucKyGAMES
ゲーム制作で、タイムアタックモードとか、モードを増やして、それらしく4,800円のパッケージゲームを成り立たせないといけない、みたいな感覚が凄く嫌だったんですよ。無料だったらなんでもいいや、85円ならなんでもいいやみたいな感じで……てきとうに。
井上
いや、適当大事ですよ。たいへんに大事だと思います。
RucKyGAMES
結局今あるゲームって、カルピスを薄めてるみたいなもんだと思うんですよね。続編とかだとちょっと違うかもしれないんですけど。ステージ増やしたり。それって無駄だなあ。と。最初の30分で面白さが分かるんだったら、それで終わってしまえばいいじゃないかと思って。こっちのほうがいいなと。
井上
ちなみに、『ぐんま』の想定プレイ時間はどれぐらいなんでしょう。
RucKyGAMES
想定プレイ時間はそれほど考えてないですけど、ユーザーが触れる時間は30秒ぐらいでいいかなって。
井上
とりあえず、出落ちで。
RucKyGAMES
起動して「なんだこれ、もういいや」って思ってもらう想定で作ってたんで。そんなに遊ばれるとは思ってなかったですね。
井上
その割に皆、2週間、3週間とプレイしていますよね。
RucKyGAMES
そうなんだ、みんな群馬県やりたいんだって。
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完璧な群馬県とは

ポケモンも、ドラクエも、クソゲーも

井上
さきほど、『メイド イン ワリオ』と『バイトヘル 2000』のお話が出ましたが、他に「心のゲーム」のようなものはあるんでしょうか。
RucKyGAMES
スタンダードになるんですけど……
井上
ええ……
RucKyGAMES
『ポケットモンスター』というゲームがありまして。
井上
それはなんというか……ええっと、確かにそういうゲームがありますね……!(笑)
RucKyGAMES
これがこの業界にすすむきっかけになりました。小学校高学年の時に出たのかな。なので、「ザ・ポケモン世代」というか、第一次ポケモン世代で。こういうゲーム作れる仕事につきたい!!って思っていたら、こうなっちゃった(笑)。
井上
なるほど。
RucKyGAMES
当時の僕からするとなんでこうなった感が若干あるんですけど、もともとポケモンに関わりたいっていうので、高校を出て、ゲーム専門学校へ行って、学校の先生にゲームフリークに入るのは大変だ、って言われて諦めて。
井上
確かにそれは大変でしょうね。
RucKyGAMES
それで前の会社に入ったんですよ。それでちょっとだけポケモンの仕事に関われたので、満足しちゃったんですよね。
井上
他にはなにか印象にのこったタイトルはありますか。
RucKyGAMES
あとはまあ……『ドラゴンクエスト』っていうゲームがありまして(笑)。
井上
おっ、それはまた……立て続けにベタなところきましたね。
RucKyGAMES
スタンダードなゲームが大好きなんですよね。一番印象に残ってるのはファミコン版の『ドラゴンクエスト3』かな。兄のセーブデータを消してしまって、本気で恐れた記憶があります。こわかった……。
井上
いま、例えば大作に関わるっていう話があったら、どうですか?
RucKyGAMES
あまり、大作にあこがれはなかったですね。ポケモンに関わりたい、というのが一番強かったので。あとは、ゲームを作れればよかったんです。なので、現状で十分かなと思ってます。夢がなくなったさみしさは、あるんですけど。
井上
ポケモンの世界観、ゲームシステムのどちらが良かったんでしょうか。
RucKyGAMES
自分はゲームシステムですね。RPGって、一番最初の3~4時間が一番楽しいですよね。仲間に入った時の戦力の増え方とか。レベルが上がったことによって強くなっているという感じ。あれが本当にわかりやすく表現されているのがハマった理由なのかなと思います。
井上
あれはとても秀逸なつくりでしたね。
RucKyGAMES
あとはレベルファイブの『ローグギャラクシー』かな。世間的にはクソゲーの類に入るかもしれないけど、個人的には好きなゲームの一つなんですよね。
井上
確かにある種の文脈ではクソゲーと名高いアレですね。
RucKyGAMES
一回目の中ボスを倒したつぎに監獄に入れられて、そこから逃げるためには監獄から出るしかないけど、いきなりそのへんの雑魚がさっき戦った中ボスより強い、っていう。
井上
いいクソゲーですね。
RucKyGAMES
一体を頑張って倒して、戻ってセーブして、っていう感じでクリアしていくのが凄く楽しかったんですよね。ああいう感じのゲーム、もう一度やりたい。
井上
ああ、それはわかる気がします。クソゲーといわれればそうなんだけれども、むしろよく出来たゲームが忘れ去ってしまった理不尽バランスによってもたらされる達成感みたいなもの。
RucKyGAMES
あとは、プレステ2で無双に出会って以来、ぼく全部遊んでます。楽しい!

47都道府県で出したら全部リジェクト

井上
(『ぐんまのやぼう あぺんどじゃぱん』をプレイしながら)これ、前作でゲームデザイン上問題になっているところが正攻法で改善されてますよね。
RucKyGAMES
そういうの、一回やってみたかったんで。
井上
例えば、複数のゲームの要素が循環するような感じになったんですよね。まず、「ぐんま」というポイントをためて各地を制圧すると別のポイントが貰えて、そのポイントでチケットがもらえて、そのチケットでカードが貰えて、カードを手に入れるとレベルが上って、収穫のペースがあがる。本当にまっとうにテコ入れされている。
RucKyGAMES
遊ぶ導線とか。
井上
時々ゲーミフィケーションの話でも質問されるのが、「ポイントをゲットしておめでとう!って言われても、ぜんぜん嬉しくない。そのポイントもらったとして、それが一体なんなの?」ということです。確かに、ポイントそのものに価値を感じられる構造じゃなければポイントを導入しても全く意味がないんですよね。
RucKyGAMES
たしかに。
井上
この問題に対処する方法はいくつかあります。例えば、Amazonポイントみたく「ポイントそのものが現実世界で使える」というようにするのも一つの方法だけど、他にも「ゲーム内の複数の価値システムとの間で、別のポイントや指標に変換して、交換価値だけが延々と回っていく」というループ構造を作れば、ある意味解決します。
RucKyGAMES
そうですね。
井上
今回は後者のやり方を真っ当にやっていますよね。続編を出された理由は、どんなことなんでしょうか。
RucKyGAMES
なにかコラボなり、そういう話がきた時に対応できるようにするためですね。前のは散らかってたんで追加ができないんですよ。それに気づいたんで、空きを用意したという感じです。アップデートの隙間がなくて、これ以上ボタンをつくるのもな、というのもあって、じゃあ空き枠をふやしとこうと。
井上
なるほど。
RucKyGAMES
『ぐんまのやぼう』の都道府県版ということで、Androidだと46個アプリを出してまして。47都道府県でぐんまのやぼうをやってもらおうという。iOSのほうだと、全部リジェクトされたんですけど。
井上
リジェクトされた理由とかは何かあったのですか?
RucKyGAMES
「全部同じものだろ」って言われて。スパム扱いなのかな。なので、これを1個にまとめて、『とどうふけんのやぼう』って形で出して。その流れで、都道府県のカードと特産品も出したんで、それを全部入れた『ぐんまのやぼう』の続編ということで、『ぐんまのやぼう あぺんどじゃぱん』を出しました。
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『とどうふけんのやぼう』Android版一覧。iOS版は1本に。サイトにて公開中。

対談は後編に続きます!次がいよいよ最後!

VR体験施設の検索サイト「taiken.tv」
  • 20140320163135

    通称のあP。「もぐらゲームス」エグゼクティブプロデューサー&共同編集長。ゲームをする人。「ゲームのちからで世界を変えよう会議」の中の人。経営戦略(ゲーム産業)と金融が一応専門分野。 MMORPG「リネージュ」の元プレイヤー(8年ぐらい、10,000時間ほどプレイ)。長らく一つのゲームをやりこむ派でしたが、最近は雑食気味にいろんなゲームをプレイしています。思い出に残っているゲームはリネージュ、ティアリングサーガ、勇者のくせになまいきだ。or2など