SMILE GAME BUILDERで楽しむゲーム制作 第5回:カナヲ『虚毒ノ夢』②

PR,ゲーム制作,フリーゲーム,連載

※本記事は、1月7日より開始した「SMILE GAME BUILDER」制作実演の連載です。

フリーゲーム作者による「SMILE GAME BUILDER」制作実演連載が開始 完成作はダウンロードして遊べる!

Qpic『スーパーフックガール外伝』 制作連載 / 2 / 3 / 完成作品ダウンロード
カナヲ『虚毒ノ夢』制作連載


 
カナヲです。前回の記事から引き続き、SMILE GAME BUILDERによる『虚毒ノ夢』の制作状況をご紹介します。

3D探索ホラーADV『虚毒ノ夢』制作中!

今作は、2015年公開の探索ホラーADV『虚白ノ夢』の数年後の世界を舞台としたホラーADVです。ただし物語の理解に前作の知識はほとんど必要なく、主要な登場人物はいずれも新規キャラとなっており、 前作に触れていなくても今作単体で楽しめるようになっています。
 
image1
 
記憶障害のせいで記憶が一日しか保てない主人公の未散(ミチル)が、3LDKの部屋に同居する兄の目を盗みながら記憶のかけらを探し、隠された真実に迫っていきます。このゲームの舞台はこの部屋のみで、SMILE GAME BUILDERならではの主観視点を最大限に活かした構造になっています。

『虚毒ノ夢』の登場人物を紹介

 
image2
折原未散(オリハラ ミチル)

主人公。記憶障害を持つ16歳の少女。 眠ると多くの記憶を忘れてしまうため、毎日記憶ノートをつけないと物事を覚えられません。プレイヤーは彼女を操作し、いつの間にかできていた『記憶ノートの謎の黒塗り』に隠された記憶の手がかりを探すことになります。ある画家の絵をとても気に入っているようですが……。
 
image3
折原悠(オリハラ ユウ)
 
ミチルの兄で、21歳の大学生。 現在は大学を休学し、ミチルの世話をするためほぼ一日中家にいます。ミチルをとても大切にしている一方で、時折冷淡にミチルの行動を監視し、咎めます。たとえ彼が睡眠薬を使ってミチルを気絶させたとしても、ミチルは自分がされたことを次の日まで覚えていられないでしょう。彼には、そうまでして隠したいことがあるのでしょうか……。

image6
織原未来(オリハラ ミライ)

ミチルの夢に出てくるガサツな少女。「名前が似ているから」という理由で仲良くなった彼女は、ミチルとどんな関係にあったのでしょうか……。

ポイントとなるゲームシステムとは

今作のメインパートである3LDKの探索時は基本的に、怪奇現象や幽霊などによる恐怖演出が起こりません。ホラー要素は、兄に見つからないように背中を気にしながら「調べるな」と言われた場所や兄の部屋、ときにはその懐を調べる背徳感と緊張感がほとんどです。もちろん、兄に見つかってしまった際は怖めの演出が入る……かもしれませんが、おそらく本質は「もし見つかったら……という見つかるまでの緊張感」にあるのではないかと思います。

こうして見ると、敵から身を隠して進むステルスゲームの独特の緊張感を、ホラーで補強したような感覚かもしれません。ただしこのゲームには、タイミングをうまく見計らって素早く突撃、といったアクション要素はありません。すべては、絶対に見つかるタイミングと絶対に見つからないタイミングの二通りだけです。
 
image5
 
たとえば、兄が今シャワーを浴びていることに気づいたあなた。今ならこっそり兄の部屋を調べられるかもしれませんが、果たして兄はいつまでも長々とシャワーを浴びているのでしょうか? 確率要素もアクション要素もないので、兄の気配などから導き出したプレイヤーの判断、推察さえ正しければ行動は成功です。今作はアクションゲームではないので、それ以外のプレイヤースキルは要求しないことにしています。
 
image4

兄が本当にただの優しい兄なら、なにも恐れることはないのですが、果たして……。

SMILE GAME BUILDERの使用感

SMILE GAME BUILDERは、マップ制作がとても簡単です。それでいて完成したマップは3Dゆえに2Dよりもはるかに没入感あるものになるので、雰囲気を重視したゲームを作りたい場合は相性がよさそうです。さらに3Dの世界を彩るためのカメラワークもイベントで直感的にいじれるため、カメラ操作を駆使してイベントシーンを作り込めば映画のようなワンシーンの制作も夢ではないです。

反面、3Dは自作素材を用意するハードルが2Dより高いため、既存の素材では表現できないようなマップやシーンを作りたい場合は苦労しそうです。また、よく使うイベント内容を丸ごと保存して呼び出せるコモンイベント機能がないため、内部処理で何度も条件分岐させる自作戦闘や探索ゲームなどを作る際はエディタがごちゃごちゃしてしまいがちです。『虚毒ノ夢』でも、兄に見つかった時の処理などをコモンイベントで作れればなお快適……だったかもしれません。

とはいえ、なにより複雑な知識なしに、これまでにないインパクトある演出が作れるのはSMILE GAME BUILDERの強みだと感じました。

次回の記事では、いよいよ完成品をもとにした内容をお届けする予定です。お楽しみに!

※本連載で制作しているゲームは完成後、作品を遊べるようにダウンロード形式で公開することに加え、SMILE GAME BUILDERを持っている人向けに、ゲームの実装の中身を見ることができるプロジェクトファイルも合わせて公開する予定です。

  • カナヲ(@kanawo_tu0

    ゲーム制作サークル「てりやきトマト」代表。代表作となるフリーゲームは、自らの命を絶った少女「ミシロ」が死後の世界で過去を探す探索ホラーアドベンチャー『虚白ノ夢』(2016年3月に小説版も発売)や、墓荒らしダンジョン探索RPG『積層グレイブローバー』など。制作ではシナリオ執筆やグラフィックデザイン、作曲など幅広く行う。現在は『被虐のノエル』を制作中。