経営SLG『Youtubers Life』でユーチューバーの“実態”を体験!? 名声と充実を掴め!

Steam,シミュレーション

動画の時代である。ゲームメディアで文章を書かせていただいている身分だが、あえて言おう。いまや流行は文章だけではなく、動画でもって決まる時代だ。ゲーム実況者・ユーチューバーこそ、新たに登場した流行の旗振り役なのかもしれない。ゲームに限ってみても、その影響力は大きい。

image02
 
現在ではユーチューバーが属する「UUUM」 などのプロダクション企業の出現や、また海外のリズムローグライクゲーム『Crypt of the Necrodancer』の作者であるRyan氏は、もぐらゲームスにて以前に行ったインタビューなどで、ゲーム実況に関してのプラスの側面を述べている。

Ryan氏へのインタビュー:
「ゲーム実況者に感謝したい」―『ネクロダンサー』制作者インタビュー

もちろん、どのようなゲームでも実況が売上に結びつくか、という部分は明確ではない点があるものの、少なくとも制作者に好意的に受け入れられている側面や、一定の影響力は存在しているようだ。

だが、その影響力とは裏腹に、日本のゲーマーの中には、ユーチューバーを敬遠されている方もいるかもしれない。ユーチューバーを敬遠する理由は人によって様々であろうが、その多くは「好きなことを適当にやって金が稼げるのだから楽だよな」という思いだろう。

しかし、果たしてユーチューバーという職業は本当に楽なのであろうか?今回紹介する『Youtubers Life』はそんなユーチューバーを疑似体験できるゲームだ。

image14

『Youtubers Life』はスペインのインディディベロッパー「U-Play Online」が開発した経営シミュレーションゲームだ。Steam Greenlightと早期アクセスを経て、先日の2017年2月3日にフルリリースとなった。

「U-Play Online」はモバイルゲームを専門に開発してきたディベロッパーで、本作が同ディベロッパー初のPC向け作品だ。日本語を含めた多言語対応も早期アクセス中になされており、本作が同ディベロッパーの世界へと事業を拡大する挑戦だったようだ。その挑戦は見事成功を納め、本作は2016年のSteamベストセラーTOP100入りを果たす人気作となった。

ちなみに、日本語化については誤訳やミスがあり遊びづらさを感じるかもしれないが、十分遊べるレベルだ。

意外と大変!動画制作の工程をゲーム化!

 
image16
 
さて、そんな本作の特徴はなんといってもユーチューバーという特殊な職業をゲームへとしっかり落とし込んだところだ。

ユーチューバーの仕事をざっくり見れば、動画を制作、公開して広告収入を得ているわけだ。が、その動画の内容は千差万別だ。ゲーム配信でいえば、ただ単に遊んでみただけなのか、攻略動画のような踏み込んだ内容なのかで全く違う。

本作はこうした動画という様々な形を持つ成果物の制作工程を、「ネタ選び」「動画の方針決定」「撮影」「編集」と段階に分けてシステム化。あたかも本当に動画制作を行っているような雰囲気を感じるゲームプレイへと昇華している。このゲームの基本的な流れを追いながら、そのゲームシステムを見ていこう。
image00
 
ユーチューバーとして動画を作るにあたって最初に行うのはなにか。それはネタ選びだ。

本作は現在ゲーム動画、音楽、料理という3つのジャンルのチャンネルを運営することができる。全く違うチャンネルであるが、基本は同じだ。ゲームであればどのゲームを選ぶか、音楽ならばどんな曲を演奏するか、料理ならば何を作るか。まずはそれを決めねば話は始まらない。もちろんゲームにせよ音楽にせよ料理にせよ、世間の流行が存在する。この流行を押さえてネタを選んでこそ動画の再生数アップにつながるわけだ。このあたりは経営ゲームらしい部分だろう。

image06
 
さて、動画のネタが決まったところで次はそのネタをどんな動画にするか決めねばならない。歌ってみたなのか、演奏してみたなのか、はたまたオリジナル楽曲なのか。いやいやセッションするという選択肢もある。どんな動画なら人気が出るのか?動画の方針が再生数を左右する。

もちろん発売してずいぶん経ったゲームのファーストインプレッション動画を撮ったり、下手なゲームのスピードラン動画を撮ったりしたところで反感を買うだけだ。時流や自身の状況も鑑みて動画の方針を決めよう。

image05
 
だが、ユーチューバーデビューしたてでいきなり高度な動画を撮ることはできない。動画を何度も撮影し、スキルを高めることで様々な動画に挑戦できるようになる。このゲームにはレベルが存在し、レベルアップに応じてスキルポイントが手に入る。これをスキルツリーに割り振ることで、様々な動画を撮ることができるようになる。自分がどういうユーチューバーを目指しているのかでスキルビルドが変わってくるだろう。この辺りはかなりゲーム的な味付けがなされている。

さて、ネタも動画の方針も決まったら早速撮影だ。動画なのだから、ゲーム動画や料理ならうまいコメントを言ったり、音楽ならカッコいいシャウトをきめたりして、いい感じの映像にしたい。

image04
 
本作はこういった撮影時のリアクションをカードとしてシステム化している。自身の取るリアクションを事前に選んでデッキを作り、撮影時のシーンに合わせて手札からリアクションを選んで行う。リアクションがなされてはじめてカットが完成するというシステムだ。リアクションカードの種類はレベルが上がるにつれ増えていく。

image03
 
リアクションカードにはそれぞれ下部に点数が書かれており、行ったリアクションの点数がそのカットの点数になる。さらに、シーンに合った適切なリアクションならばカットの点数が上がり、シーンにそぐわないリアクションだとカットの点数が下がってしまう。点数が高いほどクオリティの高い使えるカットというわけだ。うまいリアクションを取って、使えるいいカットを撮影しよう。

image15
 
撮影が終わってそのまま公開……なんて手抜きはユーチューバーには許されない。編集で更なるクオリティアップを図ろう。本作でアップロードできる動画の長さが決まっており、最大7カットまでの動画しか上げることができない。また、カットの点数には脚本や音声といった4つの種類があり、全ての項目にまんべんなくポイントがなければ退屈な動画になってしまう。なるべく点数が高くなるようカットを選別しなければいけない。

だが、カットには前カットからの受け口と次のカットへつなぐ差し口が設定されており、これをうまく繋げないとブツ切りの動画になりクオリティが下がってしまう。まんべんなく点数を割り振りつつ、動画のつながりを意識して動画を編集しよう。

image11
 
どうしてもある要素が補えない!というときは編集段階で足りない要素を後付けし、動画のクオリティを底上げすることもできる。しかしこれには機材のスペックが必要だ。人気ユーチューバーになればなるほどファンの要求は高くなる。定期的な機材のアップグレードも重要だ。

編集が終われば、動画の総合評価が数値化される。動画の出来が芳しくなければ、公開しないのも一つの手だ。クオリティの低い動画はチャンネル登録者数を減らすきっかけとなる。十分考えたうえで公開しよう。

公開を決めれば編集データのレンダリングがはじまる。ゲーム内で数時間待ってレンダリングが終わればやっと動画の完成だ。公開すれば再生され、ユーザーからの評価が付き、収益が上がる。この作業をコンスタントにこなしていくのがこのゲームの基本サイクルとなる。

このように、自分好みの動画を制作して公開する一連の流れをきっちりとゲーム化しており、ユーチューバーになった気分をうまく味わうことができる。ユーチューバーというミーハーな職業を題材にしているが、経営シミュレーションの商品開発パートとして非常に堅実で、雰囲気をよく捉えた巧みな作りだろう。

このゲームにはユーチューバーの人生が詰まっている

 

image01
 
そしてこのゲームのもうひとつの特徴が『Youtubers Life』と銘打っているように、ユーチューバーの人生をも体験できるところだ。

ここで重要になるのがゲーム内時間と体力ゲージ、そして好感度システムだ。

本作は人気ユーチューバーを夢見る学生としてスタートする(人気ユーチューバーになってどうしたいのかはキャラメイク時に設定する)。最初は安い機材しか持ち合わせておらず、スキルも未熟で簡単な動画しか撮影することができない。

ユーチューバーとして成功するためにはどんどん動画を公開し、ファンを増やし、スキルを高めなければいけない。だが、まだプレイヤーは学生だ。学生の本文は勉強である。勉強をおろそかにしてテストの点数が悪ければ、お母さんが怒ってパソコンを取り上げられてしまう。そうなればなにもできなくなり、動画のアップが止まってやっとの思いでつかんだファンが離れてしまう。

それだけではない。このゲームには空腹度と眠気、二つの体力ゲージが存在する。体力がなくなると何もできなくなるだけでなく、動画制作時のリアクションポイントが体力に合わせて減少してしまう。満足のいく動画を作るためにも、十分な食事と睡眠が必要だ。

さらに、ユーチューバーとして大成するためにはお金も必要だ。動画制作のためのPCだけでなく、ゲーム機本体、ゲームソフト、楽器、楽曲使用ライセンス、調理器具、食材……。出費はかさむ一方だ。最初はアルバイトもこなさなければやっていけないだろう。

そう、時間はいくらあっても足りないのだ。

image08
 
ではいかにしてユーチューバーと普段の生活を両立するか?先ほどちらっとレンダリングについて触れたが、これが非常に重要だ。動画を撮影、編集するところまではすぐに完了できるが、動画を公開するためには動画のレンダリングとアップロードの時間が必要で、ゲーム内時間で数時間は待たねばいけない。

ならば、この間に学校へ行ったり、ご飯を食べたり、睡眠をとってしまえばいい。一分一秒を惜しみ、時間を有効に活用することが人気ユーチューバーへの第一歩なのだ。

だが、どれだけ頑張って動画をアップしたところで最初の収入なんて雀の涙ほどだ。これではいつまでたってユーチューバーとして独立することはできない。そこで、大事になってくるのが人間関係だ。

image13
 
このゲームでは自分以外にも多くのNPCが、動画やSNSを用いて情報発信、交流している。彼らにももちろんファンやフォロワーがついている、そんな彼らに動画を見てもらうことで、自身のチャンネルの知名度を上げてもらえるのだ。下世話な話であるが、友人を増やし、彼らと良好な関係を作ることが、自身のチャンネルを盛り上げる有効な手段なのだ。

image09
 
人間関係を向上させるのは一朝一夕で済む話ではない。チャットしたり、パーティに出かけたり、多くの時間をかけなければいけない。もちろん遊びに行くならお金はかかるし、パーティに出かけるならドレスコードを守らなければいけない。微々たる収入を動画制作以外に使うのはつらいかもしれないが、パソコンに向かって動画ばかり作っているだけでは人間関係はよくなるどころか悪くなってしまう。

image07
 
プライベートを充実させる利点はまだある。最初は企業からの依頼なんてこれっぽっちも期待できないが、友人たちは駆け出しの自分に動画制作の依頼をしてくれ、なおかつ報酬まで払ってくれる。良好な関係を築ければ、自身の動画に出演してもらうこともできるし、かなり先の話になるが業務提携して事業拡大も行える。プライベートのために時間を使うことは決して不利益ではない。

image12
 
こうしたユーチューバーとプライベート双方の努力が実を結べば、動画チャンネルは軌道に乗りはじめる。そうすれば母親の手を離れ独り立ちしてアップロード速度の速い住居に引っ越すことができるし、学校を卒業したあともユーチューバーとして食べていくことができるだろう。

だが、成功と呼ぶにはまだまだ稼ぎもチャンネルの規模も小さすぎる。より大きな成功を掴むため、忙しい日々はまだまだ続くのだ。

このように本作は、ユーチューバーとしての業務部分だけでなく、プライベートもゲームの大事な要素として取り入れている。時間という限られたリソースを、どこで、何に使うか?不安定な職業で成功を目指すプレーヤーの人生がそこに描かれるのである。

果たしてプレーヤーの人生が華々しいものになるのかどうか?ぜひ、あなたもユーチューバーという高い壁に挑戦してみてほしい。

image10
 
また、プライベートでどうしても気になる子がいるのなら猛烈にアタックをかけるのもいいだろう。アタックを続ければ、カップルになれるかもしれないし、結婚することだってできる。恋愛や結婚にユーチューバーとしてのメリットはそれほどないのだが、プライベートでも成功を収めてこそ真の成功者と言えるだろう。

さらに増える選択肢。今後も目が離せない。

 

image17
 
フルリリースとなった本作だが、本来なら3種類の動画チャンネルに加えて、ファッションチャンネルとライフスタイルチャンネルも実装される予定であった。だが、多くのユーザーがゲーム配信チャンネルで遊んでいる現状を鑑みて、ゲームの完成を優先、フルリリースにこれらのチャンネルは実装されなかった。

だが、フルリリース後もアップデートを継続して行い、追加チャンネルも実装すると開発は述べている。非常に手堅い作りの経営シミュレーションなだけに、経営の選択肢が増えることはとてもありがたい。今後も動向に注目していきたい。

本稿をお読みの方の中には、もしかしたらユーチューバーなんて嫌いだと敬遠している人もいるだろう。だが、時代はすでに動画に移り変わりつつある。ここはひとつ、ゲームからユーチューバーの世界に触れてみるというのも一つではないだろうか?

[作品情報]
タイトル『Youtubers Life』
制作者 U-Play Online
対応OS Windows XP以上/Mac OS X 10.8以上/
プレイ時間 10~20時間程度
価格 2,999円

購入はこちらから

  • 洋ナシ(@younasi

    海外インディゲームの情報同人誌を作っているただのオタクですが、声をかけられゲーム記事を書くことになりました。人生何があるかわかりませんね。そういうことがあるのは、もっとこう絵がうまかったりマンガが面白かったりする人だけだと思ってました。他の執筆者の方のように輝かしい実績はありませんが、世界で初めてSurgeon Simulatorでペン回しに成功したという地味な実績があります。

    ブログ:http://tukedai.minibird.jp/blog/