「東京ゲームショウ2017」注目のインディー作品8選

イベントレポート,インディーゲーム

9月21日から24日にかけて開催された「東京ゲームショウ2017」では、今年もインディーゲームコーナーが開設され、国内外から多様な作品が出展された。また、インディーゲームコーナー以外でもインディー発のタイトルを見かけることができた。

今回は、東京ゲームショウで本誌が注目したインディータイトル8作品をご紹介する。諸事情により掲載が遅くなってしまったが、さまざまなジャンルの作品をピックアップしたので、東京ゲームショウの注目作をまとめて振り返る記事としてご覧いただければ幸いだ。

『Battle Chef Brigade』

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人間(ヒューマン)、オーク、エルフ、アンデッドと言った種族が住まうこの世界ではかつて、飢えをしのぐため、モンスターを狩ってその素材を元に調理する技法を習得した者達が居た。いつしか彼らは戦う料理人「バトルシェフ」と呼称され、旅団を編成して活動するようになった。そして今、四種族の若きバトルシェフ達が自らの腕前を競い合うべく、トーナメント会場に集う……という、ユニークな世界観とストーリーを特色とするアクションRPG。

アメリカ・シカゴのインディースタジオ「Trinket Studios」が制作。2014年の9月27日にクラウドファンディングサイト「Kickstarter」にて発足したプロジェクトで、38,000ドルの目標額を設定したところ、最終的に100,000ドルを超える支援を募ることに成功した経緯を持つ作品でもある。

https://www.youtube.com/watch?v=StKZvUC5uw8

TGSの試遊では、オープニングのチュートリアルから最初の料理バトルまでをプレイできた。ゲームは横スクロール方式で、目前に現れるモンスターを「ダガー」などの近接武器で攻撃して倒し、素材を手に入れ、それを材料に料理を作っていく。フィールドは料理を行う「厨房」とモンスターが徘徊する「平原」が地続きで繋がっていて、その二つを行き来しながら料理を進める。

料理を作る方法も変わっていて、鍋に投入した素材を他の同じ色の素材同士と組み合わせ、消していく落ちモノパズルとなっている。素材を消せば消すほど料理の完成度は上がっていき、高い数値を出せれば審査員から良い評価を得られる。しかし、単に素材を消して数値を上げていけばいい訳ではなく、例えば「辛い料理」というお題が出された時は、それに連なる赤い素材を重点的に投入、消していくようにしなければならないなど、頭を使う必要が生じる。かの『料理の鉄人』よろしく、料理のお題も提示される(ご丁寧にも鹿賀丈史風の進行役も登場する)ほか、それを作るのに必要な素材を落とすモンスターが強敵だったりもするので、戦闘で致命傷を喰らわないよう立ち回るアクションゲーム的なテクニックも要求されるため油断ならない。
 
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ゲームシステムの面白さと独自性が光る内容で、アクションとパズル、それぞれの醍醐味を凝縮した作りが魅力。操作性もレスポンスがよく、キャラクターが機敏に動く様子も相まって『オーディンスフィア』、『朧村正』と言ったヴァニラウェア作品を彷彿とさせる動かす気持ちよさがある。更にパズルの骨組みは『パズル&ドラゴンズ』風、月単位でストーリーが進行し、料理バトルを軸に展開していく構成はアトリエシリーズ風など、日本の著名な作品からの影響も至る所に見受けられる。

しかし、それ以上の見所は全編手描きのアニメ風グラフィックで、アニメのキャラクターをそのまま動かしているかのような手応えがある。キャラクターのデザインも『天元突破グレンラガン』などのガイナックス作品(或いは『キルラキル』、『リトルウィッチアカデミア』などに代表されるトリガー作品)を彷彿とさせる造形で、日本人も抵抗なく受け入れられるものになっている。

2017年末(11~12月頃)にNintendo Switch、PlayStation 4、PC(Steam)にて配信予定。日本語ローカライズも実施済み。先も挙げたが『オーディンスフィア』、『朧村正』と言ったヴァニラウェア作品が好きなプレイヤーならば要チェックの一本だ。

公式サイト:http://www.battlechefbrigade.com

※本稿執筆後、2017年11月20日にNintendo Switch、PC(Steam)で配信されることが告知された。いずれも日本語対応。PlayStation 4版はその後のリリースとなるようだ。

『YIIK: ポストモダンRPG』

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大学を卒業し、故郷に戻って来た男性・アレックスがオカルトめいた不条理な出来事に巻き込まれていく様を描いたロールプレイングゲーム(RPG)。

アメリカ・ニュージャージー州に拠点を構えるインディースタジオ「Ackk Studios」が制作。今なお根強いファンを持つ名作RPG『MOTHER2 ギーグの逆襲』にインスパイアされた作品で、作中の舞台が20世紀(具体的には1999年)、ドット絵を意識した色彩の3DCG、電話を使ってのセーブなど、同作を知るプレイヤーならばニヤリとするフィーチャーが揃っている。

実際に筆者が遊んで間もなく出てきた言葉も「あ、MOTHER2だ…」だった。しかし、作中の世界観はそれ以上にカオス……同作で例えるなら、全編ムーンサイドと言わんばかりに不条理で(念の為、「はい」と「いいえ」が逆転するようなことはない)、得体の知れない怖さが漂う。

特にオープニングが始まって間もなく訪れるダンジョンに入ると、「プロビデンスの目」が刻まれたピラミッドが中央にそびえ立つ異空間に送り込まれるというだけでも、その不条理さが察せるだろう。更にダンジョン内には謎解きも用意されているのだが、それを解く際に(何故か)剣と盾を装備したパンダを召喚したり、猫を直線状に飛ばしたりなど、理解が追いつかない奇天烈な行動を取っていくことになる。行く先々に現れる登場人物達も、こちらの理解を妨げる突拍子もない台詞を放ってくるので、主人公アレックス同様、両手で頭を抱えたくなってしまうこと確実。

RPGとしての作りは盤石で、世界観は不条理ながら、謎解きを程よく絡めたフィールドは探索し甲斐十分。バトルシステムも王道のコマンドバトルだが、攻撃を行う際にタイミングよくボタンを押すことでコンボ技を叩き込めたり、防御時にも同様にボタンを押すことでダメージを最小限に抑え込めたりと言ったアクション要素があり、コントローラを一切手放せないスリルと熱中度がある。

日本語ローカライズも実施されており、台詞回しは独特の世界観とMOTHERシリーズっぽさを漂わせた、読み易くも強い個性の滲み出たものになっている。
先の『Battle Chef Brigade』の試遊台にて、「ぜひ、時間があったら本作をプレイしてみて欲しい」とお薦め頂いた日本語版ローカライズ及びパブリッシングを務める架け橋ゲームズのマネージャー、ザック・ハントリ氏によると、『Undertale』の日本語版に携わった福市恵子氏が本作にも翻訳で携わっているとの事なので、その完成度は折り紙付きと言ってよいだろう。

海外では2017年内にPC(Steam)のほか、PlayStation 4、PlayStation Vita、Nintendo Switchにて配信。日本語版に関しては現在、ローカライズ作業中との事で、来年(2018年)になる模様。興味のある方は猫のヒゲをいじくり回しながら待とう。

公式サイト:http://yiikrpg.com

『Iconoclasts』

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キーボード+マウスの個性的な操作性や、90年代のメガドライブ、スーパーファミコンで発売された様々な名作アクションゲームにインスパイアされた演出で好評を博した『Noitu Love 2: Devolution』で知られる個人開発者「Konjak」こと、Joakim Sandberg氏がノルウェーの開発スタジオ「Bifrost Entertainment」と協力し、7年の歳月をかけて製作した2Dアクションゲーム。メカニックの少女「ロビン」とその仲間たちと共に、崩壊の危機に瀕した世界に隠された真実を探っていく。
 
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ゲーム内容としては『メトロイド』、『悪魔城ドラキュラ(※月下の夜想曲以降)』などに象徴される探索型で、「ノード」と呼ばれるボルトのようなオブジェクトをロビンの持つ「レンチ」で動かし、扉を開けたり、リフトを起動させたりしながら進めていくギミック重視型の構成になっている。試遊では三つのステージを選択でき、筆者は探索に重点を置いた一番目の通常ステージを選択した。その他にボス戦を体験できるものもあったが、残念ながらこちらは時間の都合もあってプレイできず。

しかし、通常ステージでも本作特有の魅力は十分に感じられた。特に操作性が素晴らしく、基本的な移動からレンチを使ったギミック操作、急降下攻撃と言った特殊アクションまで、非常にスピーディ且つ、レスポンスよくキビキビ動いてくれる。レンチとは別に武器として用意された「銃」も、近くに敵が居ればそちらに狙いを定めてくれるオートエイム機能を実装しているので、直感的に立ち回ることができる。レンチを使った謎解きも単純ながら、程よく頭を使うバランスの取れた難易度でまとめられており、アクションゲーム特有のテンポを損ねない工夫が凝らされている。『Noitu Love 2: Devolution』で異彩を放った高精細なドット絵で描かれたグラフィックも素晴らしい出来。

日本語ローカライズも実施済み。僅かなシーンを見た限りだが、翻訳も違和感のないものになっていたので期待して良さそうだ。ドット絵好き、探索型アクションゲーム好きなら、まさに「Don’t miss it」の一作。2017年冬にPC(Steam)、PlayStation 4向けにリリース予定だ。

公式サイト:https://konjakpress.tumblr.com

『ピコンティア』

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TGSのインディーゲームコーナーは会場の9~11ホール内に設置されていたが、企業ブースが設置された1~8ホールにも幾つかのインディーゲームが出展されていた。そんな1~8ホールのインディーゲームが遊べるブースの中でも一際目立っていたのがフライハイワークス。
そこで展示されていたタイトルの中で、特に印象に残った作品が『ピコンティア』。ニンテンドー3DSのダウンロードソフトとして発売されたアクションRPG『フェアルーン』、『フェアルーン2』、最近ではNintendo Switchのダウンロードソフトとして発売された『神巫女 -カミコ-』で知られるインディーデベロッパー「スキップモア」制作のスローライフRPGだ。会場ではNintendo Switch版が出展されており、牛を四匹探しだすクエストをプレイすることができた。
 
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イベント出展用という事で、行動範囲が限られていたり、「果樹園」と呼ばれるエリアで本来はゲーム内で時間が経過しないと収穫できない果物が取り放題の特別仕様になっていたが、それでも十分にスケールの大きさ、やり始めたら止まらなくなる中毒性が備わる可能性を感じさせる内容になっていた。特にフィールドは制限がありながらも非常に広く、歩く度に素材を回収できる地点があったり、敵が常に出てくるので衝動的にそちらに足を運び、寄り道してしまう面白さがある。

アクションRPGの普遍的なスタイルを踏襲したプレイヤーアクション、マップデザインも不思議な安心感と懐かしさに満ち溢れており、特に90年代の同ジャンル作品に慣れ親しんだ世代ならばノスタルジーを喚起させられる。操作性も移動速度、攻撃のレスポンス共にスピーディで、動かしているだけでも楽しい。ドット絵によるグラフィックも素晴らしく、可愛らしいキャラクターデザインも相まって、ほのぼのとした世界観を作り上げている。ただ、クエストで探しだす牛を発見・回収する際、「ドローン」を呼び出してそれに持っていってもらうヘンテコな一面も。テキストも愉快で、行動範囲制限の名目で橋を食った「液体ビーバー」の台詞には思わずクスッとしてしまった。

完成にはまだまだ時間がかかるようで、リリース時期も未定だが、規模の大きな作品になる魅力を十分に感じさせられる内容。『牧場物語』、『ルーンファクトリー』と言ったスローライフを題材にした作品が好きなプレイヤーならば要注目の一本だ。
ちなみにNintendo Switch以外にニンテンドー3DS、PlayStation 4、PC(Steam)でも発売予定だ。

公式サイト:https://picontier.tumblr.com

『ジラフとアンニカ』

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日本のインディー開発者である紙パレットさんが制作する『ジラフとアンニカ』は、主人公である猫耳少女アンニカを操り美しい世界を冒険する3Dアドベンチャーゲームだ。Epic Gamesのインディーデベロッパー支援プログラムを受けた作品で、世界的に見ても非常に注目の集まっている作品と言える。絵本から飛び出してきたような愛らしいキャラクターの魅力に言語の壁はないようだ。
 
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本作は3Dで表現されたふしぎな島「スピカ島」を歩き回り探索するアドベンチャーゲームで、ユニークなのがいわゆるボス戦がリズムゲームになっているところだ。本作を開発する紙パレットさんはゲーム会社に現在も務めており、合間をぬって本作を開発されているそうなのだが、このお仕事でリズムゲームを手掛けた経験を活かし、アドベンチャーゲームへのアクセントとしてリズムゲーム要素を盛り込んだそうだ。イラストが差し込まれる演出も相まってボス戦だというのにどこか優しい、牧歌的な『ジラフとアンニカ』ならではの空気が演出されていた。完成が非常に楽しみな作品だ。

現在の開発進度は大体半分程度とのこと。続報を待とう。

公式サイト:https://www.giraffeandannika.com/

『返校 -Detention-』

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すでにSteamにて販売され、高い評価を得た話題作『Detention(返校)』は台湾のRed Candle Gamesが開発したホラーゲームだ。1960年代当時の台湾情勢や文化、宗教観などを盛り込んだ世界観が魅力となっている。今回のTGSでは10月中に発売が予定される日本語版の展示がなされていた。開発者に伺ったところ、発売より日本語化の要望は多く寄せられていたそうだ。今回、待望の日本語版発売となる。

横スクロールポイントクリックアドベンチャーとしては非常にオーソドックスな作りであるものの、演出のセンスが素晴らしく、プレイヤーを恐怖の淵に叩き込んでくれる。また、1960年代の台湾といえば国民党が圧政を強いていた時期である。台湾の暗い歴史を背景に描かれるストーリーも本作の強い魅力だ。

はっきりとした配信時期などはまだ発表されていないが、すでに10月である。日本語で『Detention』を楽しめる日も近い。(※編集注:本稿執筆後、10月27日に日本語版がリリースされた。)

公式サイト:http://redcandlegames.com/detention/?lang=jp

『ノナプルナイン』

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以前にもイベント展示の際に紹介した『ノナプルナイン』がプレイアブル展示されていた。『ノナプルナイン』は開発中の探索アドベンチャーゲームで、ビルの一室に監禁された主人公となり、記憶喪失の少女に指示を出し彼女の記憶と隠された謎を追う。
 
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本作はポイントクリック形式を採用したゲームで、様々な資料を調べ謎に迫っていくこととなる。本作の大きな特徴のひとつは謎を追う際に何度も見ることになるであろうこの資料が、映像資料であったり、マンガであったりと、よくある文章でサラっと説明するだけの資料でおさまっていない点だ。映像資料ならアニメーションをし、マンガならアオリが出てきてマンガ雑誌の雰囲気を彷彿させる。こうした細かいところまでこだわった演出が本作の魅力となっている。

今回のプレイアブル展示はいくつかのイベントを体験しゲームの雰囲気に触れる簡易的なものであったが、そうしたアニメーションパートや、実写の取り込みなど『ノナプルナイン』の演出の一端を知るには十分なものであった。開発も順調に進んでいるとのことで(ただ、まだまだ時間はかかるそうだ)、今後もその動向を見守っていきたい。

『Break Arts 2』

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スマートフォンでブレイクした『Break Arts』の続編であるPCゲーム『Break Arts 2』の展示に、前作からのファンが詰めかけタイムアタックで盛り上がっていた。『Break Arts』シリーズはロボットをカスタマイズしコースを高速で駆け抜け最速を目指すハイスピードロボットレーシングゲームだ。前作から非常にコアなファンがついており、新作となる『Break Arts 2』に期待が集まっている。
 
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(撮影した写真がびっくりするほどピンボケしていたので、PLAYSIMさんにSSをお借りしました)

開発者に伺ったところ、「来られたファンの方は操作感が前作と少し違うとおっしゃいます」ということで『Break Arts』そのままの移植というわけではなさそうだ。だが「ただ、ファンの方はこの違いが面白くなっているとも言ってくれる」とのことで、違いはあるもののファンの期待に応える作品であることは間違いなさそうだ。

今冬発売を予定しており、開発も大詰めとのこと。開発したい部分とできる部分の取捨選択が非常に悩ましい状況だそうで、特にレースゲームのキモとなるコースの数は多くしたいとのことだ。今作の魅力であるカスタマイズの意義を高くするためにはコースの種類とその性格付けが重要になってくる。ご苦労あるところだろうが、ぜひとも多くのコースを実装し理想に近づけてほしいものである。

公式サイト:http://www.breakarts2.info/

  • シェループ(@shelloop

    様々なゲームに手を伸ばしたがる人。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションを与えると喜びます。

    Webサイト:box sentence

  • 洋ナシ(@younasi

    海外インディゲームの情報同人誌を作っているただのオタクですが、声をかけられゲーム記事を書くことになりました。人生何があるかわかりませんね。そういうことがあるのは、もっとこう絵がうまかったりマンガが面白かったりする人だけだと思ってました。他の執筆者の方のように輝かしい実績はありませんが、世界で初めてSurgeon Simulatorでペン回しに成功したという地味な実績があります。

    ブログ:http://tukedai.minibird.jp/blog/