「東京ゲームショウ2020 オンライン」注目のインディーゲーム8選

特集

9月23日から27日の5日間(※23日はオンライン商談のみ)に渡って開催された「東京ゲームショウ(TGS2020)2020 オンライン」。2020年は新型コロナウィルスの感染拡大の影響から、千葉・幕張メッセでの現地開催が中止。史上初となるオンライン形式での開催になった。

インディーゲームも25日に実施された「センス・オブ・ワンダー ナイト」のイベントで様々なタイトルが紹介されたほか、個人や販売を請け負ったパブリッシャーが多数出展した。

開催前の9月21日にも独立系ゲーム開発者コミュニティ「asobu」主催の「asobu INDIE SHOWCASE」、翌22日にはパブリッシャー「PLAYISM」主催の「PLAYISM Game Show」という2つのインディーゲーム特集番組も放送され、注目を集めた。

そんな今年度、東京ゲームショウに展示されたインディーゲームの中から、注目の8作品を紹介する。いずれもPC向けの体験版が配布されているタイトルで、ダウンロードすれば自宅で遊ぶことも可能となっている。(※一部タイトルはSteamアカウント必須)

作品をまとめて振り返る記事としてご覧いただければ幸いだ。

目次

  1. 『Drone Swarm』
  2. 『朝はどこ』
  3. 『Pull Stay』(ぷるすてい)
  4. 『Wingspan』(ウイングスパン)
  5. 『30XX』
  6. 『Dandy Ace』(ダンディー・エース)
  7. 『A Space for The Unbound』
  8. 『SOLAS』
  9. 終わりに:出展作品の導線を設けなかったことについて

『Drone Swarm』

『Drone Swarm』はオーストリアのstillalive studiosが制作したリアルタイム戦略ゲーム。
突如として宇宙から飛来した大量のドローンに襲われた地球。壊滅的な被害を受ける中、わずかに生き残った超能力者達によってドローンを逆に操ることに成功する。そして侵略によって荒廃してしまった地球に変わる新たな住処を探すため、宇宙船「アルゴ」と32000機のドローンが宇宙へと旅立つ事となる。

本作ではアルゴ号の周囲を漂うドローンを駆使し、脅威となるエイリアンを排除していくことになる。羽虫の群れ(swarm)のごときドローン群の動きは圧巻の一言で、「大量の軍勢を意のままに操る」というリアルタイム戦略ゲームの醍醐味をマウスドラッグ一本のシンプルな操作で味わうことができる。ぜひTGS2020に合わせて公開された公式配信などの動画やデモ版からドローンが蠢く様子を観察してみてほしい。

ドローンの群れを突撃させる体当たり攻撃、ドローンを張り巡らせて盾とする防御のほか、流れてくる隕石をドローンで弾き飛ばして敵の宇宙船にぶつけるなどの周囲の環境を使ったアクションが可能。ドローンの数には限りがあるので役割の配分も重要になる。戦況に応じた的確な戦術を取っていこう。
本作はSteamにてデモ版が公開中のほか、2020年10月20日に製品版がリリース予定。日本語表示にも対応している。
(真野 崇)

[基本情報]
タイトル:『Drone Swarm
作者:stillalive studios
対応OS:Windows
価格:$24.99 (約¥2500)
オンラインブース:https://tgs-online.eventos.tokyo/web/portal/309/event/1214/module/booth/33324/19579

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『朝はどこ』

ホロウさま氏が開発中の『朝はどこ』は眠りから目覚めた幽霊の少女となって「スイレイ」と呼ばれる怪物と闘いながら水没した世界をさまよう横スクロールのアクションシューティングゲーム。プレイ可能なデモ版がBOOTHとitch.ioで公開されている。

本作の特色はその操作感覚。地上をトコトコ可愛らしく歩いている状態から「飛行モード」ボタンを押してふわりと地上を離れて舞い上がり、空中を泳ぐように駆ける浮遊感への切り替わりに手触りの良さが感じられる。作中の水没した世界を彩る藍色を基調としたビジュアルも組み合わさり、どこか浮世離れした幻影のようなイメージを生み出している。

加えて本作にはランダムに性能が付与された武器を入手して自身の強化を図っていくハック・アンド・スラッシュの要素が存在する。入手できるものは「テノヒラ」や「フカイネムリ」と言った儚げな単語の添えられた銃器が主だが、中にはこれは武器なのか?と思わせるような物も混ざっている。公開中のデモ版においても、プレイ可能なストーリーの範囲の終了後もエンドレスで先に進んで武器集めができるようになっているので、レアアイテム集めに熱中するという人にも楽しめるだろう。
(真野 崇)

[基本情報]
タイトル:『朝はどこ
作者: ホロウさま
対応OS:Windows
価格:未定
オンラインブース:https://tgs-online.eventos.tokyo/web/portal/309/event/1214/module/booth/33324/21525

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(BOOTH)
https://booth.pm/ja/items/1693715
(itch.io)
https://horou.itch.io/wanderdawn

『Pull Stay』(ぷるすてい)

『Pull Stay』はNito Souji氏が制作中のアクションゲーム。ひきこもりの青年が自宅に押しかけてくる人々から最後の一線である自宅の自室を守るため、召喚した「ROBO」で侵入者を撃退するという内容で、本作は開発者自身の10年来に及ぶひきこもり生活が反映された私小説的作品でもあるとのこと。Steamにてデモ版が公開されている。

ジャンルは格闘技を駆使して敵の大群を倒していくベルトスクロールアクションゲーム。一味違う点として、ゴールへ向かって進んで行くのではなく、一定期間の間攻めてくる敵を自室に進入させないようにすることが目的となる。また資源を集めてトラップを仕掛けることができ、ベルトスクロールアクションにタワーディフェンスの要素が組み合わさったものになっている。

仕掛けることのできるトラップはいきなり主観視点に切り替わるパンチンググローブやつい添い寝してしまう抱き枕、ムービーから確認できるものでは敵をえび天にしてしまう天ぷら揚げ機など珍妙なものばかり。民家に押し入る人々をファニーなトラップで撃退していく光景には別な意味でホームにアローンするものを連想してしまうのは筆者だけだろうか…?
また、ROBOは敵を倒していくごとに成長して様々な技を覚えていくのだが、中にはどこかで見たような技も混ざっており、ベルトスクロールアクションのファンならばニヤリとしてしまう一作になりそうだ。
(真野 崇)

[基本情報]
タイトル:『Pull Stay』
作者:Nito Souji
対応OS:Windows
価格:未定
オンラインブース:
https://tgs-online.eventos.tokyo/web/portal/309/event/1214/module/booth/33324/21501

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『Wingspan』(ウイングスパン)

ポーランドのMonster Couchが開発した『WINGSPAN』は野鳥の保護を題材としたボードゲーム。ボードゲーム大国ドイツでも高い評価を獲得した同名アナログボードゲームのデジタル版となる作品だ。TGS2020直前となる2020年9月18日にSteamでPC版がリリース済みで、日本語表示にも対応。オフライン・オンラインでのマルチプレイも可能だ。

プレイヤーは自身が所有する野鳥の保護区へカードとなった野鳥を招き入れ、エサを集めたり卵を産ませたりしながら保護区を広げていくことが目的となる。野鳥カードは集めたエサと卵を消費して保護区へ配置することができ、「エサを追加で集められる」「山札から野鳥カードを捕食して得点にする」といった様々な能力を持っている。鳥の住み家や卵の数といったゲーム開始時やラウンドごとに提示されるテーマを加味しつつ、野鳥の能力を上手に連鎖させて効率よく保護区を拡大させよう。プレイヤー間の妨害要素は控え目で、のどかに遊ぶことができる作品だ。

また、野鳥カードにはタイトルの由来である「翼長」(ウイングスパン)や生息地などの解説が書かれているほか、カードをクリックする事で実際の野鳥の「鳴き声」を聞くことができるというデジタルならではの要素も。遊べば野鳥に詳しくなれるかも!?
(真野 崇)

[基本情報]
タイトル:『Wingspan
作者:Monster Couch
対応OS: Windows, macOS
価格:$19.99 (約¥2000)
オンラインブース:https://tgs-online.eventos.tokyo/web/portal/309/event/1214/module/booth/33324/19560

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『30XX』

2017年にPC、家庭用ゲーム機向けに発売された『ロックマンX』のオマージュ作品であるローグライク・アクションゲーム『20XX』(紹介記事)の続編。「統合意識」の発明によって人類が衰退した数千年後の未来を舞台に、「ニーナ」と「エース」の新たな戦いが描かれる。

内容は前作『20XX』と同じく、プレイする度に地形、敵配置などが変化するステージを駆け抜けつつ、ボスの撃破を目指すというもの。攻撃手法の異なる2人のプレイヤーキャラクターのほか、『ロックマンX』由来の単発とチャージの2種類の「ショット」、「壁蹴り」、「ダッシュ」なども前作から踏襲されている。もちろん、オンラインとローカル双方に対応した2人協力プレイも継承。
前作から大きく変わったのはグラフィックで、背景とキャラクター共に16~32ビット時代をモチーフにしたドット絵で描かれている。さらにステージがスケールアップ。中間地点となる場所に中ボス戦、雑魚敵集団との戦いが挿入されるようになっている。道中の敵にも新種が追加されており、中でも盾型の敵にはロックマン経験者なら苦笑い間違いなしだ。

開発のBatterystaple Gamesが現在公表している情報によれば、アクションも「エース」には炎を纏ったアッパーカットと言った新技が追加されるほか、ボスを倒すと獲得できる特殊武器にも副攻撃が備え付けられるなど、より戦術的な立ち回りが楽しめるようになっている模様。一度生成されたステージが一周クリアまでずっと固定される、パターン化狙いの攻略を楽しめるゲームモードも追加されるようだ。

発売はその名の通り30XX年……ではなく、2021年内を予定。ステージが長くなった点は賛否分かれそうだが、前作を楽しんだプレイヤーには注目の1本だ。執筆時点でもSteamストアページから体験版のダウンロードが可能。前作同様、日本語にも対応するとのこと。
(シェループ)

[基本情報]
タイトル:『30XX』
作者:Batterystaple Games
対応OS:Windows
価格:未定
オンラインブース:https://tgs-online.eventos.tokyo/web/portal/309/event/1214/module/booth/33324/21504

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『Dandy Ace』(ダンディー・エース)

前述の『30XX』に引き続き、こちらもローグライク作品。碧眼の奇術師「レレ」によって呪われた鏡の世界に閉じ込められたマジシャン「ダンディー・エース」を操作し、襲い来る敵を退けながら脱出を目指す見下ろし(俯瞰)視点のアクションゲーム。

特色は道中で手に入る魔法のカード。これを4つのボタンごとに設けられたスロットに装備することで、カードに応じた魔法を放てるようになる。ダメージ判定のある高速移動、拡散弾、地雷など様々な種類が用意されており、基本的にこれらを駆使して敵を撃退していく形になる。また、カードにはサブスロットもあり、ここに別のカードをセットすることで元カードの魔法に補助効果を付与することが可能。地雷に拡散弾のカードをセットすれば、爆発と同時に拡散弾も散らばって追加ダメージを与えられるなど、意外なパワーアップを遂げたりもする。組み合わせも1000通り以上と膨大で、どのような効果を発揮するのか、都度試したくなる面白さがある。ローグライクだけあって、手に入るカードもプレイする度に変化するので、毎回新鮮な気持ちで楽しめるのも大きな魅力だ。

他にも敵を倒した際に得られる「シャード」を消費しての永続強化など、昨今のローグライク作品で定番の要素も網羅。どことなくインディーゲームのヒット作『Transistor紹介記事、『Dead Cells』を意識した部分が目立つ作りだが、アクションゲームとしてのスリルを重視した戦闘シーン、軽快な操作性、カードゲーム由来の取捨選択の楽しさで魅せる1本。ローグライク好きのほか、頭を使うタイプのアクションゲームをお求めの人には注目のタイトルだ。

2021年2月に発売予定。PCのほか、Nintendo Switch、PlayStation 4、Xbox Series Xの家庭用ゲーム機向けにも提供予定となっている。
(シェループ)

[基本情報]
タイトル:『Dandy Ace』
作者:Mad Mimic(販売:NEOWIZ)
対応OS:Windows、Nintendo Switch、PlayStation 4、Xbox Series X
価格:未定
オンラインブース:https://tgs-online.eventos.tokyo/web/portal/309/event/1214/module/booth/33324/19590

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『A Space for The Unbound』

架空の1990年代後半を舞台に、インドネシアの片田舎に住む高校生カップルの物語を描いたアドベンチャーゲーム。『A Space for the Unbound 心に咲く花』の邦題で2020年冬にNintendo Switch、PlayStation 4、Xbox Oneで発売予定。日本語版の販売はコーラス・ワールドワイドが担当する。また、SteamでWindows PC版の発売も予定されている。

ゲームは横スクロールのフィールドを移動しながらイベントをこなしたり、謎を解きながら進行。最大の特徴は「魔法の赤本」を使った謎解きで、これで相手の心の中へと入り込み、それぞれが持つ悩みを解決していく形になる。解決する際には現実世界側で特定のアイテムを入手する手間が生じるなど、意外に一筋縄ではいかぬ構成でやり応え十分。フィールドも複数のエリアで区分けされていて結構広い。しかし、猫の「ボルケ」が次の行き先を歩みながら案内してくれるので、スムーズに進めていける。システム的にも世界観に違和感なく溶け込んだものになっているのが面白い。ちなみにボルケ以外にも猫は沢山登場し、撫でるなどの交流も楽しめる。極め付けに日本語版の翻訳も探索型”ネコ”アクション『Gato Roboto』の小川公貴氏が担当されているという盤石ぶりだ。

美しいドット絵で描写されたグラフィックのほか、映画『君の名は。』、『天気の子』などで知られる新海誠監督作品をインスパイアした終末的な雰囲気、程よく手応えのある謎解きが大変印象的。選択の手間を減らす会話などのコマンドメニューなど、操作と快適性にも神経を尖らせた仕上がりになっていて見逃せない。

執筆時点で本編序盤を楽しめるプロローグ版が配信中。非常に気になる所で終わってしまう内容だが、プレイすれば製品版の発売が待ち遠しくなること確実。アドベンチャーゲーム好き、ドット絵好き、そして猫好きには要チェックの1本だ。
(シェループ)

[基本情報]
タイトル:『A Space for The Unbound』
作者:Mojiken
対応OS:Windows、Nintendo Switch、PlayStation 4、Xbox One
価格:未定
備考:Nintendo Switch、PlayStation 4はパッケージ版も発売予定
オンラインブース:https://tgs-online.eventos.tokyo/web/portal/309/event/1214/module/booth/33324/19395

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『SOLAS』

闇の侵食によって崩壊した世界で光のパルスを導き、各地を復興していく誘導型のパズルゲーム。マウス操作で遊ぶ作りで、続々と流れてくるパルスの進路上に反射板を始めとする仕掛けを設置したり、時に傾きを変更しながら方向を調節。そのまま全てのパルスが出口に行き渡る進路が完成すれば次のエリアが開放され、進めるようになる構成になっている。

最大の特徴は地続きで構成された各エリア。ルール的にはステージクリア型なのだが、目標達成後に出口部分をクリックすれば、すぐに次のエリアが始まるという継ぎ目のない仕組みになっている。探索型アクションゲームのような作りと言えば、想像しやすいかもしれない。

実際、探索要素もあり、ある程度進むと2種類のパルスを導く分岐が登場。そのどちらかを片方のエリアへと導き、もう片側の行き止まりの要因となっている障害を取り除くという連携が求められてきたりもする。本編と関係しない隠しエリアを探し出す謎解き要素も用意されているほか、既に攻略したエリアへ戻り、パルスの流れを再確認する捻った展開が挟まれたりも。まさにパズルであり、アクションアドベンチャーでもある大変個性的なゲームデザインが施されている。

パルスにも様々な色を設定。その色同士を重ね合わせ、別の色を作り出すことが要求されたりもする。シンプルかつ色鮮やかなグラフィック、シンセサウンド主体の楽曲など映像・音響面にもこだわっているほか、ストーリーも音楽を奏でながら語るという独自の手法を採用。文章や会話も一切なしという思い切りぶりだ。

取っ付きやすいルールとは裏腹に独自の試みが満載で、さらに開発者独自の感性が光る仕上がり。パズルゲーム好きはもちろん、映像と音楽に少しでも惹かれた人もお試しいただきたい1本だ。なお、発売は2021年を予定しているとのこと。
(シェループ)

[基本情報]
タイトル:『SOLAS』
作者:Amicable Animal
対応OS:未定(Windows?)
価格:未定
オンラインブース:https://tgs-online.eventos.tokyo/web/portal/309/event/1214/module/booth/33324/21453

※ダウンロードはこちら

終わりに:出展作品の導線を設けなかったことについて

史上初のオンライン開催となった今回の東京ゲームショウだが、インディーゲームの出展については重大な課題が残されてしまった印象だ。

特に導線に当たる、出展作品を集めたページを主催者側が設けなかった点へは強い異義を申し上げたい。おかげで公式サイトの「出展社」をしらみ潰しに探らねば、ゲームを見つけ出すのも叶わない状態となってしまっていた。

SNS上でも、Twitterのインディーゲーム用公式ハッシュタグが用意されなかったため、情報を整理しにくい・追いにくいの二重苦。結局、インディーゲームの情報を積極的に集めているユーザーを追ったり、作者に呼びかけをしなければ把握するのも困難であった。

初のオンライン開催ゆえ、不慣れな点が出てしまうのは致し方がないことではある。だが、導線を敷かなかったのはさすがに看過できない。来訪側にとって、現地開催の「インディーゲームコーナー」を巡る以上に作品を探すのが苦行でしかなかった。

もし、また来年もオンライン開催の形式を取るなら、主催者側はこの件を重く受け止めていただきたいと物申す次第である。
(著:シェループ)

  • シェループ(@shelloop

    様々なゲームに手を伸ばしたがる人。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションを与えると喜びます。

    Webサイト:box sentence

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。