罪人は5人の中の1人。理想と痛み飛び交う真相解明ADV『UTOPIACHE』

目を覚ますと、世界は壊れていた。

ある日、小都市「空居(うつろい)」は大規模な天災に見舞われる。
主人公・名取響(なとり ひびき)は帰宅途中、巻き込まれてしまうが、何者かによって救われ、崩壊した街を見渡せる謎の施設の中で目を覚ます。そこには救出された一般市民のほか、響を含む「戦士」と称された5人の男女がいた。

そんな彼らに突如、施設の主たる暮樹(くれき)は告げる。
「この中に罪人が紛れ込んでいる。」

凶悪犯罪組織「失楽園」の構成員を捕えていた監獄が先般の天災で損傷し、野放しになってしまった。その一人が施設内に紛れ込んでいるという。そして、暮樹は続けて言い放った。

「お互いのことを調べて、罪人と疑わしき者を告発するんだ。」
……と。

やがて彼らは互いに疑いの目を向かい始める。
果たして、誰が罪人なのか。

以上、これより紹介する真相解明アドベンチャーゲーム『UTOPIACHE』のあらすじである。2019年9月3日、フリーゲームとして公開。対応OSはWindows。また2019年11月20日、追加ルート実装のアップデートが実施。現在公開されているのは、それを含むバージョンとなる。

探索、情報収集、交渉、そして……告発

ゲームは俯瞰(見下ろし)視点のマップを歩き回りながら、情報を集めていく探索系のアドベンチャー。本編は情報収集などを行う4日、罪人を告発する1日の計5日間で構成された「chapter」をこなしながらストーリーを進めていく。最終目的は5人の中の”罪人”を白日の下に晒すこと。いわゆる「デスゲーム」的なものである。

本格的な捜査、推理が求められそうな概略だが、やることは主に他の4人への聞き込みと資料の調査。選択式アドベンチャーの基本に則ったものになっている。ただ、聞き込みの過程はやや特殊。相手との「交渉」を行う形になる。

交渉は相手の性格、聞きたい話題を尋ねながら選択肢を決定していくものになっている。適切な選択肢を決定すれば、相手側に表示されたハートの体力ゲージが減少。3つ全てを空にできれば交渉成功になって、相手から情報のほか、助力を頼めるようになる。逆に選択肢を誤ったりすると、こちら側の体力ゲージが減少。空になれば交渉失敗になってしまう。(※中には1回でも選択を誤ると即失敗になる例も)

失敗すれば例によって情報を得られないほか、助力が頼めないなどの弊害が出る。一応、間違えてもペナルティなしで選びなおせるケースもあるため、難易度はそこまで高くないが、ある程度の慎重な判断が試されるシステムになっている。

また、主人公の響も含む5人には「能力」がある。物に憑依したり、粉々にされた物を復活させるなどの離れ業を使えるのである。これを用いた謎解きもあり、情報収集に当たって活用する場面が挟まれたりもする。

そして最終日開催の告発では、交渉時からさらにスケールアップした”戦闘”が展開。得られた情報をもとに5人それぞれの出自、過去を暴きながら真相に迫っていく。最終日だけに決着までに要する時間も長く、それぞれの主張も激しく展開。まさに緊迫感溢れるシーンになっている。

このような特徴的なパートを交互に挟みながら、罪人を白日の下に晒すストーリーを追う。基本こそシンプルな探索系アドベンチャーだが、パートごとの特徴も相まって、独特の手応えと緊張感を味わえる作品に完成されている。

このストーリーには”大きすぎる罠”がある

本作の魅力はストーリーに集約される。
「デスゲーム」の言葉からもお察しの通り、内容的にはかなりヘビーなものである。
そして、思いもしない展開でプレイヤーの度肝を抜く。

特にゲーム最序盤の「chapter1」は、本作の思いもよらなさを象徴する内容に完成されている。最初の章なので、世界観の説明とキャラクターの紹介などに徹するのだろう、と始めて間もない頃は推測するかもしれない。ゲームシステムの解説に関しても。大体、ご想像通りである。能力や交渉を始めとする本作のシステムを紹介しつつ、5人の戦士の経歴に触れていく内容にまとめられている。

だが終盤、思わぬ展開が。そこではストーリー紹介でも触れた「告発」のイベントが発生し、5人それぞれが様々な情報を元にして罪人を白日の下に晒そうと議論を重ねていく。だが、その締めくくりががく然としてしまうものになっている。

そして、それを終えた後に始まる次の「chapter2」。
率直に言って、全く先が読めなくなる。このストーリーの最終的な着地点が分からない……もとい、分かるのだが、本当にそうなるとも言い切れない展開になるのだ。その過程たるや、ずっと苦虫を噛み潰したような顔になってしまうほど。さらに以降、先ほどは紹介しなかった別のシステムが解禁。詳細は伏せるが、これによって登場人物たちとのコミュニケーションがより入り組んだものになる。そして、その加減次第で最終的な結末も変化。下手すれば、地獄へ急転直下する。

がく然の度合いが高すぎるため、ボカしながら紹介したが、実際に「chapter1」の一部始終を見れば、その理由も理解できるだろう。ある意味、デスゲームらしいと言えばらしいのだが、「それってアリ?」な展開になっている。

また、結末が変化するとの通り、本作には3種類のエンディングがある。だが、どの結末も大半のプレイヤーは釈然としない思いに苛まれるだろう。さらに冒頭に書いた通り、3つ目のエンディングはアップデートで追加実装されたもの。その解禁条件も非常に特徴的であり、語られる内容もがく然……を通り越し、パニック状態に陥るものになっている。

例によって、詳細は伏せるが一連のストーリー展開、結末に対して言い切れるのはただひとつ。作品名が表す”エグみ”を思い知らされること。いい意味でも悪い意味でも、強烈な印象を残すと同時にこだわりに満ちた内容だ。同時に本記事に載せたスクリーンショットの大半が、序盤のものに限定された理由も知るはずである。

ただ、これがアダになってしまっている箇所も多数。特に「chapter1」は、ストーリーだけでなく、ゲーム的にプレイヤーをハメるに等しい作りになってしまっているのは頂けない。多少バラすとエンディング分岐に関係する”要素”なのだが、一言で言って罠がすぎる。プレイヤーの性(サガ)を否定するような仕掛けになってしまっているのである。筆者はこれに見事ハメられ、無駄に時間を費やす羽目になってしまった。いくら意外性を出すためとは言え、それをゲーム上の”罠”にするのはいかがなものか。さすがに厳しく指摘せざるを得ない。

また、交渉と告発など、特徴的なシステムが終盤、ストーリーの都合でやや空気化するのも勿体ない。そちらを重視したがゆえの意図的な犠牲とも見て取れるが、可能であればもう少し、見せ場を作って欲しかったところだ。

理想と痛みを重ね、衝撃の結末を目撃せよ

また、少し気になった点で操作周りがある。基本的にキーボード主体で、(Readmeを読む限り)ゲームパッド操作は想定しておらず、キー配置を設定するオプションも存在しない。しかし、ゲームパッドでも操作は可能。だが、メニュー画面の開閉、仲間キャラクターを同行させた際の解散はキーボード側で行う形になる。

正直な話、筆者のようなゲームパッドで遊ぶ人間としては、中途半端に対応させているのなら、思い切ってキー設定を導入するなりして完全サポートして欲しかった。あまりその辺のプレイヤーを意識していないのは少し残念に感じた次第だ。

他に探索要素がある割には行動範囲が狭く、やることもキャラクター同士の会話が中心なので、このシステムであえてやる必然性が薄いのも引っかかる。ただ、キャラクターのドットを含め、全編オリジナルのグラフィックは素晴らしい出来で、仄暗い独特な雰囲気を醸し出している。音楽も全体的に静かな楽曲中心に選出しているのも、この雰囲気とマッチしている。

幾つか難点や気になった箇所を挙げてしまったが、ストーリー的には見所満載、そして強い訴求力を持った内容に完成されている。登場人物が多くなりがちなデスゲーム系の作品で、5人という僅かな人数に留めているのも分かりやすさを際立たせており、若干ながら異彩を放っている(もちろん、脇役も複数登場する)。探索アドベンチャー、推理系のゲームとしても難易度は低めで、このストーリーを通して見るだけでも相応の満足度は得られる出来。理想郷(UTOPIA)と痛み(ACHE)、その言葉が混ざる意味を示す一部始終をその目で目撃しよう。その先に待つのは……”真の罪人”?

[基本情報]
タイトル:『UTOPIACHE』
作者:路地の浦
クリア時間:7~10時間(※全ルート:15~20時間)
対応OS:Windows
価格:無料

※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/20994


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