VRになぜ注目が集まるのか?開発者が考察するVRの今後

VR(バーチャル・リアリティ)

はじめまして。@WheetTweetと申します。Oculus Riftを知ったことで小さかった頃から思い描いていたVRの実現性を感じ、VRのソフトを開発しております。また、初期よりOcuFesに参加し、出展や登壇させていただいております。
今回は、Virtual Reality(VR)の今後について考察してみます。
本記事の内容は、2014年10月25日に開催されたOcuFes開発者会で「Oculus ConnectからみるVRの今後」というタイトルで発表した内容に基づいています。

はじめに

VRは今の私たちにとっては生活にほとんど含まれていない、新しい仕組みです。新しい仕組みは、これまでに前例がないものほど、一定数の否定的な意見が出ることが多く、VRも例外ではありません。全員に聞くことはできていませんが、VRに可能性を感じる方(肯定派)と懐疑的な方(否定派)の意見はこんな感じが多いです。

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VRに関する考え方

今回は、VRの今後として、VRが生活に入り込む可能性を4つの観点から考察いたします。

1. 技術の進歩

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技術進化の例

Oculus Riftはほぼ半年刻みで新型が発表されるペースで急速に進化しています。さらに、今年9月に開催されたOculus ConnectではGPUメーカーのNVIDIAがVRへの取り組みを表明したため、PC等のハードウェアを含めたさらなる進化が期待できます。また、Oculus VR社 Chief Scientist Mihael Abrash氏は、スマートフォンやウェアラブルデバイスの技術進化が相互作用してこの進化を助けるだろう、と講演の中で話していました。他にも、Project Morpheus、ハコスコ、Durovis Dive、CardBoard、など、多数のVR向けヘッドセットが登場しており、これらも合わせて互いに進化していくでしょう。
VRのような新しい仕組みが広まるには技術が進歩し続けることが必要ですが、現時点での進化の早さ、NVIDIAの参加、関連技術の進化との相互作用から、技術の進歩は今後も続くとみてよいかと思っています。

2.注目度

Oculus Riftが発売されたのは2013年の4月ですが、開発者版であるにも関わらず、日本でも海外でも多数の注目が集まっています。特に興味深いのは、早くもゲームと関連が薄い企業が展示会などで採用していることです。例えば、株式会社ドワンゴ、日本電信電話株式会社(NTT)、海上自衛隊、株式会社NEXT、日産自動車株式会社、ノルウェー軍が取り入れています。

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注目度

このように、ゲーム以外でも使えることが多くの企業で認知されています。
これまでVRに関わっていた主な関係者は、大学の研究者、軍事、製造関係の一部の企業研究者でした。したがって、技術が集まるコミュニティも当然バーチャルリアリティ学会人間工学学会のように学会が中心で、限られた研究者のみの集まる分野でした。
先端技術の研究者が学会に集まるのは今でも同じですが、Oculus Riftの登場によって、これまでそれらの分野が専門でなかった関係者も集まりつつあります。私の知る限り、OcuFesのメンバーの多くはOculusRiftに出会ってからVRのソフトウェア開発を始めています。
VRの発展はコミュニティの力にもかかっているという話がOculus Connectの講演でありました。このように多くの人、企業が注目し集まることで新しい流れが生まれやすくなると考えられます。

3.Oculus VR社への人材集中

Oculus VR社は2012年に設立されたまだ新しい会社です。しかし、以下のように多数の超有名かつ超優秀な方を引きつけています。

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OculusVR社への人材集中

個人的には、OculusVR社への人材集中がGoogle創業期に似ていくような予感がしています。
初期のGoogleは、以下の3つの方法で超天才学生を集めて少数精鋭で計算機科学分野(インターネット分野)で発展した、という話があります。

(1)創業者のLarry Pageがスタンフォード大学教授に優秀な学生の紹介を依頼
(2)学生にビジョンを語り勧誘。入社してくれた学生から、自分の知る他の天才学生を教えてもらう
(3)Larry Pageがその学生にアプローチ

私は直接Googleの方から話を聞いたことはありませんが、初期のGoogle は間違いなく無名の小さな会社でした。その小さな会社が大量採用するのは難しかったはずなので、少数精鋭の天才集団が事業を拡大した、というこの話はありえる気がします。

現在のGoogleは世界中のインターネットサービスを席巻する会社である、と書いても過言ではありません。Googleの設立は1998年ですが、私の記憶では2005年か2006年頃にはすでに「ググる」という言葉が一般的になるほど、Googleのサービスが浸透していました。つまり、設立10年にも満たない企業が世界全体に大きな影響を与えたことになります。
OculusVR社がそうなるか、は現時点ではわかりませんし、ビジネスの範囲が異なるので同列に考えるのは少し難しいかもしれません。ただ、少数精鋭の新しい企業が世界全体に影響を与えることは十分にありうると考えられます。

4.他サービスとの比較

最初は否定されたが、その後広まった例は過去にいくつもあります。

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他サービスとの比較

ここでは、今の私たちが最も多く使用する例としてiPhoneで説明します。2007年にiPhone3Gが発売されたとき、国内では
・ケータイとの互換性がないから使いづらい
・カメラが貧弱
などの意見がありました(※)。他にも2014年11月6日現在、「iPhone 日本 はやらない」などで検索すると当時の記事が複数出てきます。個別には述べませんが、否定的な意見をまとめると、「iPhoneは日本では流行らないだろう」でした。

※リンク先では、2008年当時の筆者周辺でiPhoneが売れない理由という意見のまとめがあり、今回はその意見を参考にさせていただきました。筆者ご自身は将来的にははやる可能性もあると言及されており、客観的に考察していたと考えられます。

また、海外もiPhone否定派の意見がありました。有名なのはMicrosoftの元CEO Steeve Ballmer氏の「キーボードも付いてない機種が売れるわけない」と笑い飛ばしたという話です。それほど新しい製品には否定的な意見が多かったのです。

現在、少なくとも日本においてはiPhoneは広く普及しています。最初は受け入れられにくい新たな仕組みが、多くの人に使われることはありえると考えられます。

実は私たちは少なくともこの20年以内に「今まで存在しなかった仕組みを受け入れて生活が大きく変わった」ということを何度か経験しています。いくつか例を出して説明します。

1つめは携帯電話です。日本では、1994年の「端末売り切り制」、1996年の「携帯電話事前届け出制」という総務省の規制緩和によって(リンク先P.8参照)、携帯電話が一気に普及しました。その後はご存知の通り、携帯電話は日常生活に当たり前の存在になり、コミュニケーションの方法が大きく変わりました。
2つめはインターネットです。インターネットが日本国内で大きく広まったのは、Yahoo!BBを始めとする各社が安価なサービスを開始した2001年以降(P.5-9参照)と言われています。2010年時点の普及率は80%になり、情報収集、伝達の手段が大きく変わりました。

3つめはLINEです。LINEは2011年のサービス開始からまだ3年程度ですが、世界中で1.7億人の利用者がいます。2009年頃と2014年を比較すると、コミュニケーション、ゲーム、販促手段(例:企業スタンプ)などが大きく変わりました。

いずれのサービスも、登場以前にここまで普及すると予測できた方は少ないと思います。もちろん普及しなかった製品やサービスもたくさんあるので、はやりそうなものが全部普及するとは言えません。しかし、これらのように存在しなかったサービスを受け入れて生活が大きく変わる事例は過去にもありました。VRがそうなる可能性もあると思っています。

終わりに

長々と書いてしまいましたが、私としては、VRは今よりも一般的になり、生活の中に入ると確信しています。
また、VRが私たちの生活に入ってくると、ゲーム以外にも医療、教育、エンターテイメント、通信手段などが大きく変わり、今まで普通でなかったことが普通になりえます(バーチャルリアリティ学“バーチャルリアリティ学という書籍でも同様の話が書かれています)。
今後も新しいゲームや体験を開発しつつ、OcuFesなどの開発者のコミュニティに微力ながら参加していくことで、VRの発展に貢献できればと思っています。

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