ゲーム実況者がコントローラーの次に握ったのは楽器だった?――ゲーム実況者わくわくバンド2ndコンサートレポート

イベントレポート

今、ゲーム実況者がニコニコ動画を中心に人気を集めている。

もともとあった「ゲーム実況」というジャンルが爆発的な人気を得るようになったきっかけは2009年のボルゾイ企画の『青鬼』実況だと言われている。そこからM.S.S Project最終兵器俺達などの人気実況者グループが誕生し、ニコニコ動画の総合ランキング上位に実況動画がランクインするのは、もはや当たり前となっている。ゲーム企業の公式生放送にも多くの実況者が出演し、イベントもほぼ毎月開催。そこには実況者目当てに多くの若い女性ファンが集まる。

このファンの力もあってか、最近では人気実況者が実況したフリーゲームは必ず人気がでるという現象が起こっている。中には『青鬼』、『ゆめにっき』、『霧雨が降る森』……と映画化やコミック化したものもある程、その影響力は大きいものである。

リリースから4ヶ月でコミック化決定の『霧雨が降る森』 今、なんでフリーゲームが女の子に人気なの?(ねとぽよ)

ゲーム実況動画、そしてゲーム実況者はフリーゲームを語る上でも無視できない存在になりつつあると言っても過言ではないのだ。
ここまで読んだ人のなかには「そんなの知ってるし、何を今更……」と思われる方もいるかもしれない。

では、ゲーム実況者がコントローラーではなく楽器を握り、日本各地でワンマンライブを大成功させていることは、皆さんご存知だろうか。

彼らの名前は”ゲーム実況者わくわくバンド”。
2014年3月、Zeppダイバーシティ東京で開催されたイベントで、一夜限りのバンドとして結成されたのをきっかけに、ワンマンライブを開始。毎回、開場を満員の観客で埋める。ニコニコチャンネルも開設され、毎月定期的に生放送が配信されている。

いきなり言われて「一体、どういうこと?」と思う方も多いだろう。
それもそのはず。そもそもゲーム実況者とはゲームを実況する人のことを指すもの。それが楽器を握って、さらに人気を集めているとなると……いよいよ訳がわからなくなってくる。

そこで今回は、ライブで彼らがどんなことをしているのか。そして、ファンはどのように楽しんでいるのかを、実際のライブレポートともにご紹介していく。
そこには、ただゲームを実況するのとも、ただ楽器を演奏するのとも違う。ゲーム実況者らしいバンドの姿があった

うたプリを歌う観客と、二曲で楽器を置くメンバー……?

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8月25日、渋谷CLUB QUATTROで彼らの2ndライブは行われた。
ゲーム実況者わくわくバンド(以降わくバン)は全員で5名。
チーム湯豆腐の湯毛(Gt.Vo)フルコン(Dr.)、課長とモリ君のヒラノ課長(Gt.)、最終兵器俺達のフジ(Ba)とゲーム実況好きなら一度は耳にしたことのある豪華メンバー。そしてせらみかる(Per.&笛)は絵師として活躍する傍ら、実況関連の公式生放送やイベントにも数多く出演している、実況ファンにはお馴染みの顔だ。

彼らの1stライブは東京と大阪で開催され、今回の2ndライブでは福岡と東京をまわる。その中でも今回のライブハウスは最大のキャパシティ、800人を誇る。

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ブロマガで公開されているメンバーの映画パロディポスター

通路には彼らの公式ブロマガや生放送で作られた小道具等が展示され、写真をとるファンの姿もあった。そこを通り、会場へ入ると観客は既にサイリウムを手にして、準備万端。テンションも既に高く、BGMで「おジャ魔女カーニバル!!」が流れるとみんなの合いの手を入れ、「マジLOVE2000%」では合唱。思わずこれには会場でも拍手が起こった。このような、全体的なノリの良さはゲーム実況ファンの特徴とも言えるだろう。

そしていよいよ開演。
イメージカラーの服を身にまとったメンバーが爆音とともにステージに現れる。
そして演奏したのは「LOVEマシーン」「Yeah!めっちゃホリデイ」の二曲。1stライブで演奏した曲だったこともあり会場のテンションは急上昇。サイリウムを振る、一緒に歌う、合いの手を入れるなど……それぞれが思い思いに音楽を楽しむ。演奏が終わると、次に始まるのはMCトークだ。彼らの軽快なトークに笑いも起こり、会場全体が温まってくる。

そこから、流れは変わった。

湯毛「もう二曲やったし、えぇやろ。」
会場「えー!」
湯毛「ゲーム実況者なんでね。ほら、お前らも楽器置け!」
ヒラノ課長「喜んで!」
フルコン「はいー!」

各々が楽器を置き、ステージを降りて観客ヨコに設置されたスクリーンの前に移動する。何事かと思われるかもしれないが、これがわくバンのライブの特徴であり、目玉コーナーとも言える。
そう、次に始まるのはゲーム実況コーナーだ。

いきなりハプニング発生? 笑いの止まらないゲーム実況コーナー

この日プレイされたゲームは「ケロブラスター」。

もぐらゲームスでも「ケロブラスター祭り」と題して、一ヶ月にわたりレビューを行った。気になる方はそちらもチェックしていただきたい。
https://www.moguragames.com/entry/keroblaster_fes8

前日に行われた福岡のライブでは3面まで進み、かなり盛り上がったようだ。その期待から観客全員がスクリーンに注目し、さぁいよいよプレイを始めようとしたのだが……。ここでハプニングが起こる。
なんと、プロジェクターが作動しなくなってしまったのだ。このままではスクリーンに何も映らずゲームをプレイすることも、もちろん実況をすることも不可能だ。この危機的な状況はしばらく続いた。

しかし、この間に観客が暇していたかと言うとそんなことはなかった。

フジ「どうするケロブラスターを俺たちが再現とかやる?」
ヒラノ課長「ぐわぁあ!」(襲いかかりながら)
フジ「ガガガガガガガ……って打つんですよ!」
湯毛「何やっとんねん(笑)」

楽器もコントローラーも持たない彼らはトークで観客を沸かせた。昔のプリクラの話、前回のライブの失敗談など。他愛のない話だが、楽しそうに彼らは話し、時には観客に質問を投げることもあった。(ちなみに観客に挙手制で年齢を聞いた所、13歳から40歳まで幅広い層がいることがわかった)
身近な存在であるゲーム実況者らしいトークが続いているうちに、プロジェクターが無事復帰。気を取り直して、ゲームが再開された。
ゲームが始まると、会場からは「うおっ」「あぁ~」という声が響く。アクションゲームということもあり、観客も前のめりで応援してしまうのだ。その光景を見ながら「こういう感じでみんな実況見てるんやろなぁ」と冷静に言うフルコンがなんだか印象的だった。

ゲーム実況のコーナーが終わると、再度演奏タイムに入る。
LUNASEAの「ROSIER」でフジがマイクスタンドを後ろに放り投げ、「ココ☆ナツ」では湯毛が歌って踊る。フルコンとせらみかるは後ろからそれを笑顔で見守り、ヒラノ課長はしきりに「ほんま楽しい!めっちゃ楽しい!」と叫んでいた。

彼らを見ていると「あぁ楽しいのは自分だけじゃなくて、メンバーもなんだ」と感じてきて、なんだか嬉しくなった。誰かが楽しそうにしているのを見ていると、見ているこっちまで楽しくなる――そんなゲーム実況の面白さを、彼らはライブで再確認させてくれた。


アンコールの最後はわくバン初のオリジナル曲「わくわくマイライフ」で締めくくり、あっという間にライブの幕は閉じた。

しかし、これからも彼らの活動は続く。毎月の生放送の他にもブロマガの更新、9月27日には名古屋で追加公演とファンはこれからも大忙しだ。わくバンはこれからも私たちに多くの”わくわく”を届けてくれるだろう。ゲーム、そして音楽と一緒に。

  • ろっくまん(@rockman_385

    Webを中心に活動するフリーライター。普段は女子大生として単位に追われつつ、ニコニコをメインにコンテンツを吸収する日々をおくっている。ちなみに、ゲームはかなり苦手でポケモンバッジは最高でも5個しか集めたことがない。