第13回ウディコンで発見!独自システムが光るフリゲRPG3選

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毎年7月から8月にかけて開催されている、ゲーム制作ツール「WOLF RPGエディター」製フリーゲームのコンテスト「WOLF RPGエディターコンテスト(通称ウディコン)」。第13回目を迎えた今年も60本を超える力作が集まった。

WOLF RPGエディターは“RPG”と銘打ちつつもジャンルを問わず2Dゲーム制作全般に幅広く対応しており、ウディコンに投稿される作品も、非常にバラエティに富んだ個性的なものばかり。その中から自分のお気に入りを見付け出すのも、順位を競うのとはまた別の本イベントの醍醐味と言えるだろう。

今回は、戦略を立てて一手一手の意志決定を行うようなバトルがとくに好きな筆者がウディコンで出会った、独自のシステムが光るRPGを3作品ご紹介する。広大なウディコンの世界のあくまで一側面を切り取った形となるが、気になる作品があればぜひ触れてみていただければ幸いだ。

終末の案内人

まだ見ぬ名所を求めて世界中を旅している少年「ストーレ」が、かつて世界を滅ぼしかけたという魔獣を封印する使命を帯びた「ネリネ」とその付き人「アイリス」という二人の少女と出会うことから物語が展開するRPG。3体の大精霊から魔獣封印のための力を借りるために世界各地のダンジョンを攻略していく。

戦闘はターン制で、あらかじめセットしたスキルがターン開始時にカードとしてランダムに配られ、パーティ共有のリソースである「PP」をコストとして自由に組み合わせて使用できるという、デッキ構築型カートゲーム風のシステムが特徴だ。

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攻撃、回復、バフといった各メンバーのさまざまなスキルを、PPの範囲内で自由に組み合わせて戦っていく

戦闘におけるもう一つの特徴が、敵に攻撃を当てることでゲージを削り「ブレイク状態」にできるシステム。ブレイク状態にされた敵はダメージが与えやすくなり、次の行動時に攻撃力が大幅に低下する。とくにボスなど一部の敵が数ターンおきに発動する強化状態「オーバードライブ」は、ブレイクで解除しないとパーティ壊滅級の大技を食らってしまうことも。オーバードライブが発動するタイミングは明示されているので、そこに備えて必要な手札をどう揃えていくか……といった駆け引きが本作の攻略における大きなポイントだ。

戦略においては前衛・後衛の概念もポイントで、各メンバーは前後の立ち位置をターンごとに変えられる。前衛が攻撃を受けやすいというほかに、前衛が多いほどそのターンに使えるPPが増え、後衛のメンバーは次ターンにカードを1枚多く引ける仕組み。また前衛・後衛の概念は敵側にもあり、多くの攻撃スキルは前衛がいる場合後衛を攻撃できない。弓使いであるアイリスのスキルは後衛を直接攻撃できるものも多いので、他の二人で前衛を削りつつアイリスが後衛をひとまず牽制としてブレイク……というように、立ち回りや役割分担が程よく複雑化するのが面白いところだ。

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敵のHPの下に六角形の数で示されるゲージを削ることで敵をブレイク状態にできる。ダメージを与えやすくなるだけでなく攻撃力を下げられるので、すぐには倒せない敵の牽制にも有用

スキルはゲーム進行に応じて新たに使えるものが増えていくが、実際にセット可能にするにはダンジョン探索や敵を倒すことで入手できる素材を消費して習得する仕組み。スキルはベースとなるもののほかに2種類の派生パターンがあり、どのスキルを習得して戦術に組み込んでいくかが悩ましくも楽しいところだ。

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スキルはベースとなるもののほか2タイプの派生版を習得可能。戦闘スタイルや状況によって使い分けられるほか、同系統スキルの複数セットも可能となっている

全体的なプレイ感としては、RPGとしてオーソドックスなパーティバトルと、デッキ構築型の中間といった印象。ブレイクのような仕組みを戦術要素の中心に据えた作りは戦闘システムに凝ったRPGの定番の一つだが、これに使えるスキルがランダムという要素が加わることで戦況にゆらぎが生じ、ザコ戦も含め飽きずに楽しめるものとなっている。

そのほか稀に☆印が付いたカードが配られ、そのカードを使うことで溜まる「SP」を消費して発動できる必殺技があるなど、長期戦になりがちなボス戦などで真価を発揮するシステムも。ボスをはじめ敵の能力・行動も練られており、複数のシステムが有機的に噛み合って完成度の高いゲームプレイを生み出している良作だ。

[基本情報]
タイトル:終末の案内人
制作者:チーム・あーく
公称プレイ時間:6時間
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
http://teamark.starfree.jp/game/shumatsu/

やかまシルフのヒァナ ~天才魔法剣士は自爆しない~

風の精シルフにして四属性のマナを操る魔法剣士「ヒァナ」とその盟友である意志を持つ剣「ヒペリカム」のコンビが、魔王との戦いで失った力を取り戻しながらリベンジに向かう短編ノンフィールドRPG。ランダムに入手して最大4つまで所持できるスキルを入れ替えながら進めていくという、ローグライクの要素も持ち合わせている。

ゲームを起動するとまず目に付くのが、画面の右上と、ヒァナのHPの横に存在するガラス玉のような4色の玉だろう。これがマナで、戦闘では手持ちのマナを消費してスキルを使うことで戦っていく。戦闘システムは自分と敵が交互に行動する1vs1のターン制で、スキルごとに設定された属性のマナがあれば1ターンに複数回行動も可能。マナはターン開始時に右上のストックから1つずつチャージされる仕組みで、チャージのたびにストックにはランダムでマナが供給されていく。

そしてそれは敵も同様で、マナのチャージもプレイヤーと同じストックから行われる。敵の行動内容とそれに必要なマナ、敵が持つマナは明示されているので、敵の出方を予測して対策を立てたり、マナをチャージするスキルなどで敵の行動に必要なマナを先んじて奪うことが可能。敵のマナに干渉するスキルもあり、マナのコントロールが攻略のポイントとなる。

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自分も敵も、画面右上のストックからチャージしたマナを使って行動していく

……と、言葉で説明するとどうしても煩雑になってしまうが、実際のプレイ感は非常に直感的。右上から押し出されるように落ちてくるマナを、敵味方で取り合いながら利用していくイメージだ。画面構成は基本的にこの1つだけ、操作もマウスのクリックだけとシンプルにまとめ上げられている。それでいてスキルの組み合わせによる戦闘スタイルの構築やマナを軸とした駆け引きにより、月並みな台詞になってしまうが「シンプルながら奥深い」とはこのことか、と言いたくなるゲームデザインに仕上がっている。

独自性の高いシステムながらチュートリアルもなくいきなり実戦となるが、これも見た目の印象を頼りに触っていけば十分に理解していける作りなればこそ。スキルにはさまざまなバフ・デバフもあり、これらの解説は付属のドキュメントにもあるが、常時画面左側にいるヒァナの台詞や実際に使ってみた結果からもおおむね把握していけるだろう。ちなみにおしゃべりすぎて“やかまシルフ”の異名を持つヒァナは攻略に役立つことから雑談まで、とにかくずっとしゃべりっぱなしで旅路を楽しく盛り上げてくれる。

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ランダムに入手したスキルを、手持ちのスキルと入れ替えて戦闘スタイルをアップデートさせていく

スキルはゲームを進めるほど、発動に必要なマナの数や種類が増える代わりにより強力でユニークな効果を持つものが登場する。また道中ではさまざまなランダムイベントも発生し、この解決にマナを使うことも。さらに「5種類目の特別なマナ」が登場するなどプレイヤーのシステムへの習熟と合わせるように程よくシステムも複雑化していき、短編らしいコンパクトなボリュームの中で密度の濃いプレイを堪能できる。入手するスキルのランダム性もあって周回プレイも楽しめる作品だ。

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ランダムに発生するイベントの解決にマナを使うことも

[基本情報]
タイトル:やかまシルフのヒァナ ~天才魔法剣士は自爆しない~
制作者:まきぬの
公称プレイ時間:初プレイで約30~45分
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/26354

Parallel Challenger ~異界の侵略者達~

世界全土を巻き込んだ大戦から人類が復興を目指す中、国際研究機関「ホフヌング」が危険視されていた「並行世界からの物資輸送計画」を強行。並行世界の浸食を受ける大惨事を引き起こしてしまう。この事態を解決すべく、大戦の生き残りである元アメリカ軍准士官「フリートリヒ」と戦闘用アンドロイド「ココセ」が並行世界の怪物によって汚染された地域の調査を進めていく……というRPG。

戦闘システムはコマンド選択型で、敵・味方ともに時間経過で上昇するゲージがフルになると順次行動する方式。赤・青・緑の3属性の攻撃やさまざまな状態異常などを駆使して戦っていく。

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戦闘は時間経過で上昇するゲージが溜まったキャラクターが順次行動する方式

大きな特徴は、最大HPや攻撃力、速度といった能力値の上昇と特殊技能(スキル)の習得の自由度が高く、さらにそれを何度でもやり直せること。能力値の上昇は経験値にあたる「素材値」というポイントを使用し、耐久重視・速攻重視といった4タイプの上昇方針を選んで上げていくことができる。特殊技能も同じく素材値を使用し、任意のものを習得していく形。これらはいつでもキャンセルして、一切のロスなく素材値に還元することが可能だ。

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能力値は4つのタイプを選んで上昇させていく。タイプの組み合わせも自由

また戦闘中には、敵の各種能力値のほか属性・状態異常への耐性、特殊な行動パターンまでオープンな情報として確認可能。ボス戦などではこれを把握してどう攻めるか、そして敵の大技などをどう凌ぐか、フリートリヒとココセの役割分担も含め戦略を立てていくのが醍醐味となっている。

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敵の各種耐性のほか、特殊な行動パターンまで明示されている。その上でどう対応していくか、戦略を立てることに集中できるわけだ

そのほかにも一定のコストの範囲内で状態異常への耐性などを付けられる「支援効果」や、3つまで選んでセットし戦闘中に溜まる「TP」の消費で発動できる大技「スペシャル」と、戦闘に関わるカスタマイズ要素は多彩。これらを駆使して戦う敵も、各ダンジョンのボスのほかゲーム進行に必須ではない強敵や本編クリア後の裏ボスまで、攻略しがいのあるユニークな敵が揃っている。ボス戦ごとに能力値やスキル構成をカスタマイズするようなRPGが好きな人にとくにお勧めしたい作品だ。

[基本情報]
タイトル:Parallel Challenger ~異界の侵略者達~
制作者:ケイ素
公称プレイ時間:約4時間
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/26318

  • 中村友次郎(@finalbeta

    フリーゲームと同人ゲーム、日本ファルコム作品をこよなく愛するゲーム好き。システムに凝ったRPGをとくに好んでプレイします。運営型ゲームはメギド72をPvPメインで、あとは原神など。
    過去に十数年ほど、窓の杜の連載記事「週末ゲーム」の編集と一部執筆を担当していました。