強大な力とその代償、染まる乙女の復讐劇。ノンフィールドRPG『赤き轍のジャンヌ』

RPG,フリーゲーム

「同じ轍を踏む」という言葉がある。轍とは車輪の跡の事、転じて先例を指し、過去の失敗を繰り返すことの慣用表現としてポジティブな意味では使われない言葉である。本作のタイトルを初めて見た時に、はて読み方は「てつ」だっただろうか「わだち」だっただろうかと混乱しながらもその言葉のことを思い、そして本作の全ての終わりを見届けた後にも、同じ言葉のことを想った。

『赤き轍のジャンヌ』はうにか氏が制作したノンフィールド型ロールプレイングゲーム。2025年9月5日よりノベルゲームコレクションにて公開されており、ダウンロードとブラウザ上からのプレイが可能となっている。

「たとえこの体が 心が ねじ曲がり汚れようとも」

物語は牢ともとれる地下に佇む、ある男の視点から始まる。鋭い目つきに強い憎しみをまとわせた男の懐には「赤い実」が熱を帯びていた。

「赤い実」の力によって魔物の姿へと変貌した男は地下を抜けて王都を蹂躙し、国王を易々と殺害する。更には別の領主もまた魔物、否、「魔王」と化した男に殺される。領主の傍らには彼の娘がいた。娘は気丈にもその場に残された剣を取り魔王に立ち向かおうとするも一蹴され、魔王は挑発とも取れる台詞を残して去っていった。

私が殺す
殺さねばならない 悪を

かくて乙女は修羅の道を行く

本作では領主の娘として父の仇である魔王を討伐することが目的となる。20歩を1ステージとした全6ステージで構成されており、画面をクリックすることで一歩ずつ先へと進み、進んだ先では様々な出来事が発生する。

敵と出会った場合は戦闘となる。戦闘は「攻撃力-防御力」でダメージを与えてHPを減らし切れば勝ち、というシンプルなもので、緻密な計算は不要だがそのぶん実力差を覆すことは難しい。道中であれば逃げることも可能だが、各ステージの最後に待ち受けるボスとの対決では逃げることができない。そこでいざという時に状況を打破する方法として、プロローグにおいて男も使用していた「赤い実」が存在しており、画面右下に点灯している「赤い実」をクリックすることで自身を魔物化させパワーアップを行える。

「赤い実」を使用した時の強化幅は大きく、ボス敵でも一方的にねじ伏せるほどになる。戦闘で敵に勝つごとにEXPを獲得でき、これが満杯になることでレベルアップが発生してHP・攻撃力・防御力のいずれかの能力値を上昇させることができる。攻撃力を上げておかないと敵の防御力を貫通できず完全な「赤い実」頼りになる可能性もありえるので、なるべく攻撃力に成長を振り分けておくのがオススメだ。

付きまとうものは力への代償

本作には3種類のエンディングが存在しており、「赤い実」の使用状況がその条件となっている。「赤い実」の力によって魔物化すると人々から露骨に白眼視されることになるため、心情的には「赤い実」の使用を避けたくなるところだが、現実にはそれで事を成せるほど甘くはない。

旅の途中では仲間になる人物もおり、主に仲間を増やすことで実績が解除され、ゲームを開始した際の初期ステータスにボーナスが入るようになっているので、もしも道半ばにして倒れたり別の道を探りたい場合はこのボーナスを一助にするとよいだろう。

本作は後戻りできない進行や単純な戦闘式などから見ても、どちらかといえば物語を体験することに主眼が置かれた作品と言える。短めの作品ということもあり、これからプレイするという人に向けて踏み込んで語れることは多くは無いが、ノンフィールドRPGという作品形式を上手く使った”歩む”ということの美しさが描かれているように感じられた一本だ。

さて、「同じ轍を踏む」という言葉がある。
貴方の歩みは、どうだろうか?

[基本情報]
タイトル: 赤き轍のジャンヌ
制作者:うにか
クリア時間:  30分~
対応OS: ブラウザ、Windows 
価格: フリーウェア

↓プレイ・ダウンロードはこちらから
https://novelgame.jp/games/show/12193

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。