課せられた回帰の運命を断ち切れ。「時」を探索する2Dアクション『DragonLoop』
古代ギリシアの「ウロボロス」、古代エジプトの「メヘン神」、北欧神話の「ヨルムンガンド」、中国の「猪竜(ズーロン)」。世界各地に点在する「自らの尾を噛んで輪となった蛇・竜」のモチーフは、始まりと終わりが一致するその姿から「永劫回帰」や「無限」を象徴するものとされている。今回紹介する作品もまた、その名が示すように竜と回帰をモチーフとした作品であり、廻り回ってきたものに少なからず想いを馳せたくなるのである。
『DragonLoop』(『衔尾:龙之铃』)は中国の沙因氏と小阮氏の2名が開発した、手書き風のビジュアルを特色とした探索型2Dアクションゲーム。2025年6月18日よりSteamにて配信が開始されている。
竜人少女大暴れ。軽快かつ強力なアクションを駆使せよ
『DragonLoop』は角の生えた少女シー(Xi)となり、人魂のような姿の相棒ウロ(Ouro)と共に、迷宮内を探索して能力を集め、その能力を駆使する事で更に迷宮の奥へと進んでいく探索型の2Dアクションゲームとなっている。
本作の魅力としてまず挙げたいのが軽快な操作感と強力なアクションの数々だ。一例として、ウロをグラップリングワイヤーのように伸ばす基本アクションは、中継ポイントがあれば壁越しであっても掴んで移動でき、敵を掴めば懐に飛び込みつつ空中回転切りを繰り出せるようになっている、という具合である。他には主に移動面で役立つ召喚獣的な存在である「パール」(Pearl)なども1つのアクションに対して複数の役割が持てるように構成されており、どの能力も駆使し甲斐のあるものとなっている。
自身が強力な一方で、行く手を阻むボス敵もまたスピーディで苛烈な攻撃を仕掛けてくるようになっており、高速で繰り広げられる攻防は白熱する一方で慣れも要する。ボス敵の攻撃パターン自体は比較的明瞭にできているので繰り返し挑んで相手の動きを把握して勝利へと結びつけていこう。HP回復を行うアクション「リリー」(Lily)が効果を発揮するまでに時間がかかる点も曲者で、残りHPが危なくなってから慌てて回復しようとするのではなく、余力があるうちに先んじて回復するように心がけるとよいだろう。
繰り返す時の流れ。ループを抜け出す道を探り出せ
旅の中で、シーはとある龍が発生させた5日間のタイム・ループの中に囚われていることが判明する。各地にある9つのシンボルを集めて封印されている龍を解放し、このループから脱出することがシーの旅の目的となる。
時間の経過については、迷宮内のコリドー(Corridor)と呼ばれる中継地点に到達することで1日が経過する。どの場所で日数を経過させたかによって分岐が発生し、5日目を終了した時点でループによってスタート地点へと戻される。各分岐点へはスタート地点やコリドーからジャンプすることができるので、逐一やり直すのではなく分岐の途中から別の分岐を試すことも可能だ。経過した日数に応じて敵の強さや地形などにも変化が生じ、例えば露店を広げていた旅の商人が別の場所へと移動していたり、地底のエリアでは時間の経過によって浸水が進行するなどの変化が起こるようになっている。
コリドーに到達すると1日が経過する、という点を逆手に取り、コリドーを訪れないようにして経過日数を抑えて進むことで残り日数に余裕をもたせて先のエリアを探索することができるようになる。これまで探索してきたマップや回り道に使えそうな能力を吟味し、より早い日数で奥深くの地点へと到達できそうな道順を見つけると共に、コリドーを使わないことによって長丁場になる道中をどうこなしていくかの順序立てを考えるのも本作を攻略していくうえでの楽しさといえるだろう。
確かな独自要素とボリュームを備えた秀作メトロイドヴァニア
探索型2Dアクションゲームの華といえる収集要素も豊富に散りばめられている。迷宮内の隠された通路を探したりミニゲームをクリアすることで入手できる様々なアイテム、中ボスを倒すことでそのボスの攻撃を使用できる「スピリット」(Spirit)などの他、時間経過の要素を使った変わり種として「狐コイン」(Fox Coin)という為替相場が存在しており、適切なタイミングで売り買いできれば資金源として活用することが可能だ。
物語についても、記憶喪失の状態で倒れていたシーは旅の中で龍の封印のシンボルと共にある、失われた記憶の断片を紐解いていくことになる。5日後に世界に破滅をもたらすとされる龍、龍の命を付け狙う謎の導師フーシー(Fuxi)、そしてシーとウロのコンビらの関係は思わぬところへと着地していく。
日数システムによって自由な往来がしにくいことと、日本語化されていないことが大きなネックではあるが、可愛らしいキャラクターに軽快なアクションとハイテンポなボス戦、何よりもマップを埋めて収集物を集めておしまいにさせない「ルート構築」という一捻りをきかせた探索要素はその欠点を補って余りある。一味違った探索型アクションゲームをプレイしたいという人にうまくマッチすることだろう。
[基本情報]
タイトル: DragonLoop(衔尾:龙之铃)
制作者: 沙因、小阮
クリア時間: 15時間~
対応OS: Windows
価格:$8.99 / ¥1000
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