坂本龍馬が異世界転移で薩長同盟の危機!?史実に隠された特殊能力で戦う弾幕アクションSTG『サカモト危機弾発』

インディーゲーム,シューティング

坂本龍馬(さかもと りょうま)とは、いかなる人物か?
ざっくり紹介するならば、江戸幕府を倒すきっかけを作ると同時に、後の明治維新にも関与したことで知られる土佐出身の藩士で、幕末における偉人の一人である。

そんな坂本龍馬には、歴史の教科書にも記載されていない秘密がある。
それは「時間停止」と「瞬間移動」の特殊能力の持ち主であること。

周囲の時間を一時的に止め、相手に気付かれないうちに背後を取ったり、何人たりとも通さない壁を易々とすり抜ける。まさに人間離れした驚嘆に値する能力で、彼はその力をもって降りかかる火の粉を払い、生き延びてきたのだ。

その坂本龍馬の秘めたる特殊能力を余すところなく堪能できるのが、こちらの『サカモト危機弾発』なるゲームである。主人公はもちろん、坂本龍馬その人だ。さあ、歴史の闇に隠され、教科書からも削られた真実の坂本龍馬が持つ秘めたる力を追体験し、あらゆる難局を乗り越えていくその勇姿を刮目して見るのだ!

……説明するまでもないが、どれもこれも立派なフィクションである。そがな能力の使い手であるはずがないろう。真面目に受け取ったりしたら負けぜよ。

だがしかし、坂本龍馬という人物には謎が多い。一例としては「知名度の割には日本の歴史にそれほど影響を与えていない」説だ。また、彼が暗殺された近江屋事件についても、誰が実行犯だったかは今なお解き明かされていない。

ゆえに坂本龍馬という人物はロマンの塊とも言える。そんなロマンがあるからこそ、本作のようなフィクションも生まれた……のかは知らんぜよ。

薩長同盟締結の大ピンチを脱するため、坂本龍馬が異世界からの脱出に挑む!

とにもかくにも、本作『サカモト危機弾発』は2025年6月19日よりSteamで販売中のWindows PC向けタイトルだ。

制作は身体改造によってローションが出続ける身体にされた織田信長となり、忍者城からの脱出を目指すアクションゲーム『ローション侍を代表作とする烈帝国。同作に続く、歴史の偉人をテーマにしたゲームの2(+α)作目である。

ジャンルはステージクリア型の弾幕アクションシューティングゲーム。プレイヤーは主人公の坂本龍馬を操作し、行く手を阻む障害物や敵を手持ちの銃で撃退しながら、見下ろし視点(トップビュー)で構成されたフィールドを進む。そのまま最後に待ち構えるボスを倒せればステージクリアとなる。

最終目標は「ふわふわランド」からの脱出である。「今、なんて言った?」とのツッコミが飛んできそうだが、改めて本作のストーリーを紹介しよう。

時は(たぶん)1866年、薩摩藩と長州藩の仲を取り持ち、幕府を倒すため「薩長同盟」の場を設けた坂本龍馬は薩摩の藩士・西郷隆盛のもとを訪れていた。だがそこに突如としてワームホールが発生し、坂本龍馬を始めとするその場にいた偉人たちは、マスコット的生物が闊歩する異世界「ふわふわランド」へと転移させられてしまった。

このままでは締結間近の薩長同盟が失敗してしまう!坂本龍馬はこの危機を打開するため、手持ちの銃を片手に転移に巻き込まれたと思われる西郷隆盛を始めとする偉人たちを探し始める。果たして、全員を無事に発見できるのか。そして、薩長同盟は成功するのか!?

とりあえず、言えることは「考えたら負け」だ。そういうものとして受け止めよう。

あと、本作の坂本龍馬は薩長同盟締結後に起きたはずの寺田屋事件をなぜか経験しているという設定なのだが、それもそういうものとして受け止めよう。考えたら負けぜよ。

ゲーム内容に戻るが、特徴的なシステム(およびアクション)としては「時間停止」と「瞬間移動」が挙げられる。(Xboxコントローラ使用時)Aボタンを押すと、坂本龍馬周辺の時間が停止。そのまま目前に迫る弾幕を無傷で潜り抜けたり、壁の奥にある通路にワープするという離れ技を決められるようになっている。

ただし、時間停止できるのは専用の青いゲージの限りとなるため、延々と使うことはできない仕組みだ。ゲージ自体は消耗しても自動回復するため、何か専用のアイテムを取らないと戻せないような制約はない。

また、この時間停止状態で敵の放った弾、もしくはトラップに接触すると坂本龍馬の武器である銃がパワーアップ。連続して接触し続けるとレベルが上昇し、時間停止を解除すれば強力なショットを放てるようになる。ただし、パワーアップは一時的なもので、時間停止解除後に少し時間が経つと初期レベルに戻ってしまう。

そのため、常に強力なショットを撃ち続けるには積極的に敵弾やトラップに当たっていくことが求められる。しかし、時間停止も発動できる時間に制限があるため、その範囲内でこなす必要がある。

設定的にハチャメチャすぎるが、そのような戦術的な立ち回りを試す要素も持っていて、なかなか油断ならない展開を作り出すシステムになっている。さらに少し珍しい点で、本作にはショットするのに対応するボタンを押す(押しっぱなしにする)必要がない。フルオートで直線状に射出される仕組みになっているのだ。

ゆえに操作に使うのはコントロールスティックとAボタンだけと非常に簡素。敵に狙いを付ける「エイム操作」もなく、直感の赴くがままにキャラクターを動かして、弾幕の嵐を潜り抜ける展開や敵との戦闘を楽しめる。

こんなお手軽な設計も特殊能力に並ぶ本作の特色の一つだ。ストーリーからしてやりたい放題で、史実もなんのそののハチャメチャぶりではあるが、ゲームとしての作りはびっくりしてしまうほど堅実。それでいて、独自の駆け引きを始めとする遊びもしっかりと味わえる、色んな意味で意外性フルスロットルな作品に仕上げられている。

ネタゲーそのものな見た目の印象を劇的に裏切る、堅実で真面目な仕上がり

作品としての魅力は、見た目とその設定とは裏腹すぎる堅実で真面目な作りにある。

特に難易度は決して甘くない。ちゃんと敵の動き、弾幕が来る方向やスキマを見極めながら「時間停止」と「瞬間移動」の能力をここぞという時に発動させ、潜り抜けていくことが常時求められる。

ライフ制を採用していることから「被弾=即ミス」とはならないほか、ステージ中にもチェックポイントが複数配置され、ミスした時もそこから即座に何度でも再開できるため、過度にシビアという訳ではない。だが、油断すると手酷い返り討ちを食らう。舞台となる「ふわふわランド」の雰囲気やビジュアルなどから“ユルい”ものを感じるかもしれないが、遊べば確実に(いい意味で)「偽りあり!」となること請け合い。

そして、弾幕シューティングの醍醐味や駆け引きもしっかり押さえていることにも唸ってしまうだろう。具体的には「時間停止」を使うことによるショットパワーの強化と、坂本龍馬の中心部に設定された「痛覚」を利用したテクニック。

後者は紹介が遅れたが、プレイヤーの操作する坂本龍馬の中央部には「痛覚」なる赤いアイコンがある。いわゆるダメージの判定箇所で、ここに敵弾などが接触すると、坂本龍馬はダメージを受けてしまう。

逆にこの痛覚すれすれで敵弾などを回避すると、「時間停止」用のゲージが通常時よりも早く回復される。それによって、さらなる回避行動に加えて、ショットのパワーアップチャンスを得られる恩恵にあずかれるのだ。

ギリギリの回避を要求されることから、使いこなすには一定の練習が避けられないが、使いこなせるようになれば華麗でスタイリッシュな立ち回りが可能に。同時にショットのパワーアップという火力による力押しも実現し、ボスを始めとする強い敵の迅速な撃退と、短時間のステージクリアも成し遂げられるといった上達の結果も分かりやすく現れる。

正直、ネタゲーとしての特徴を先行したのもあって、ここまでの紹介に大きな戸惑いを覚えるのも無理はない。場合によっては「冗談で言っているのか?」と物申したい気持ちも起きたかもしれない。

だが、あえて大きな声で言おう。事実だ。確かにガワはネタゲーそのもの。しかし、中身は本当に堅実で真面目。それでいて、弾幕シューティングゲームとしての醍醐味や面白さもきちんと押さえ、「時間停止」と「瞬間移動」の特徴的な要素が演出する戦術性と駆け引きの面白さも表現されているのだ。

加えて、プレイヤーが挑むことになるステージ、立ちはだかるボスたちも“ガチ”。本編が進むたびに新たな敵、仕掛けが登場すると同時に、それに応じた立ち回りが試される。ボスにしても、見た目はゆるふわだが、時間停止と瞬間移動の活用による回避は言うまでもなく、ショットのパワーアップも適宜図っていかないと容易に倒すのも難しい。

ここまで言っても見た目が見た目だけに半信半疑かもしれないが、とりあえず騙されたと思ってプレイしてみていただきたい。そうすれば、言っていたことに納得するはずである。

▲『ローション侍』はNintendo Switch版も発売中。Nintendo Switch 2でも遊べます。

元々、制作チームの前作たる『ローション侍』も、設定とは裏腹すぎる堅実で真面目な作りを特徴としているのだが、本作も同作に引き続き、その路線を踏襲している。ゆえに『ローション侍』の経験者ならば「またやってくれたか!」と唸ると同時に、未経験者なら(いい意味で)「なんか思っていたのと違う!」となること確実。

繰り返しになるが、それほどまでにしっかりしたゲームなのだ。あまりにしっかりしているため、『ローション侍』未経験者なら同作への関心も増してしまうほど。

そのようなプレイヤーが現れることを見越してか、『ローション侍』(※SteamのPC版)の購入システムもゲーム内に実装している!本編クリア後の「エクストラステージ」経由で行けるので、興味があれば検討してほしい。

史実の謎に新たな仮説を立てるストーリーも必見!?色んな意味で野心的で怖いもの知らずな一作

なお、ステージ総数は本編ステージ6つ+ボスステージ3つ、エクストラステージ2つの計11ステージ。本編だけなら、クリアまで1時間も満たない。進行は1本道の地続きではなく、1個1個のステージを攻略していくタイプで、途中経過もオートセーブされる仕組みだ。

正直、本編の堅実で真面目な作りが異彩を放つのもあってか、人によっては物足りなさを覚えるかもしれない。一応、タイムアタックとノーダメージクリアのやり込み要素は用意されているのだが、高難易度モードなどのさらなる歯応えを求めるプレイヤーに対する要素は用意されていない。

強いて言えば、本編の全9ステージを通しでプレイする「アーケードモード」みたいなものはあってもよかったのでは、と思うところだ。ステージごとにタイムアタックランキングを搭載している都合、実装するにしても手間がかかって大変だった可能性も考えられるが、あれば物足りなさを緩和できていたと思うだけにちょっと惜しい。

また、視認性に関しては敵弾は見やすい一方、痛覚は真っ赤な点で描かれている関係でやや見えにくく、意図せずダメージを受けてしまうような機会が多いのも気になるところ。敵が基本、事前予告を挟んだうえで攻撃を仕掛けてくるため、不意打ちを食らうことがそれほどないのがせめてもの救いだが。

ほかにステージの背景パターンが少なく、変化に乏しいのも惜しいところではある。ただ、その辺は色々とツッコミどころ満載なストーリー展開と登場人物たちの掛け合いでフォロー。そもそも、ストーリーに関してはあまりにぶっ飛んだ展開も相まって、どんな形に収束するのか読めない面白さがほとばしっている。

加えて坂本龍馬以外に登場する偉人たちも語尾に「おりょ」と付く坂本龍馬の妻たる「おりょう」こと楢崎龍、最近1万円札となり、皆々様のお財布にもお供するようになった資本主義の父にして薩長同盟無関係の渋沢栄一など、ツッコミどころ満載。

さらにはマシュー・ペリーかの有名な開国の台詞と共に登場する。しかも、予想外の運命にさらされるおまけ付きである。

だが、ストーリーに関する真の見所は結末。坂本龍馬にまつわる謎に新たな仮説を打ち立てたものになっている。それがどんなものなのかは例によって秘密だが、おそらくその辺の歴史を知る人なら「確かにあり得る……」となるかもしれない。

逆に「ねえわ!」と異議を申したくなる可能性も無きにしも非ず。とにかく、気になったのならその目で確かめていただきたく。

そして、ゲームとしての出来栄え諸々の紹介にも興味と違和感を持ったならば製品版へと突撃して実態を確かめてほしい。あまりにもネタゲー臭全開の見た目ながら、弾幕シューティングゲームとしては非常に堅実で真面目。さらにやり応えも申し分ないという意外性が突き抜けている本作。この手のジャンルが好きな人は言うまでもなく、幕末の歴史に関心がある人も一見の価値ありの小さな野心作だ。

さあ、坂本龍馬の隠された能力と薩長同盟の裏で起きた驚愕の出来事、そして幕末の歴史における謎に新たなる仮説を打ち立てた展開の数々をとくと見よ!

そして、考えんで感じろ!感じるがです……!

[基本情報]
タイトル:『サカモト危機弾発』
作者:烈帝国
クリア時間:1~2時間
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):350円

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