盲目体験ウォーキングシム『盲目の手探り』で、“盲目という感覚”を手探りする

インディーゲーム,シミュレーション

日々ディスプレイとにらめっこをして目を酷使する生活をする中にあって、ふと、もし明日にでも自分の目が見えなくなったら、という考えが頭をよぎることがある。杖をかち鳴らして器用に駅の階段を登っていく人を横目に見るときに、あのような目の見えない生活を自分はこなせるのだろうか、という考えが脳裏をよぎることがある。この作品に興味を惹かれたことは、ある種の必然だったのかもしれない。

『盲目の手探り』(原題『Blind Touch』)は、Flygogo Gamesの制作による盲目体験ウォーキングシム。2026年2月4日よりSteamにて配信が開始されている。

白杖(ガイド・ケイン)をしるべに

ゲームを開始すると…先が見えない。かろうじて見えるベッドなどからどうやら病院らしき場所であることがわかる。医師が言うには事故によって記憶と視力を失っており、様々な場所を歩いて失った記憶を呼び戻すための手がかりを探すことになる。

闇の中を進む補助となるのが白杖(ガイド・ケイン)だ。杖を使った動作として、杖を真上へ振り上げて落とすノック動作と、杖を左右に振るスイープ動作を行うことができる。白杖の先が触れた場所からは波紋が発生して触れた場所の周辺が判明していき、音と触覚によって物を探り当てる行為を表現している。

また本作では立体音響が採用されており、音がどの場所で鳴っているのかの聞き分けが可能となっている。ヘッドホンを着用したうえでプレイすれば、より臨場感が得られるだろう。

一寸先の闇の先へと踏み出す

先述したように、本作では全てが完全に見えないわけではなく、白杖から出る波紋のガイドによってある程度視覚的に物が探り当てられるようになっている。それでも闇の中を歩くことは困難を極める。先が見えない中では「自分が今どちらの方向を向いているのか」の方向感覚を失いやすく、常に道に迷っているかのような感覚に陥ることになる。その中にあって地面に設置された誘導用の点字ブロックは白杖で触れると色付きで強調されるようになっており、その存在のありがたさが身に染みる。

また、なにしろ白杖で叩いてみなければ始まらないので、杖で叩いた拍子に目覚まし時計を棚から落としたり、ゴミ箱や三角コーンを倒してしまうなど、物を散らかしてしまうこととは無縁ではいられない。

横断歩道を渡るのは緊張の一瞬だ。歩行者用信号が青になっているのかが見えず、往来の音が鳴り止まず車が本当にいないのかどうかの判別ができない状態で横断歩道を進もうとすることは、ゲームの中の出来事だと分かっていてもなお相応の覚悟が必要だった。これを日常的にこなすということを考えたときに湧き上がってきた感情は、おそらく「畏敬」と呼ぶべきもので間違いはないだろう。

思い出の品を辿る

本作は全5ステージで構成されており、それぞれの場所で思い出の品を見つけることでゴールとなる。また、それ以外にもステージ内には白杖で触れることで認識できるアイテムが用意されており、アイテムを収集していくことも目標のひとつとして提示されている。忍耐力に自信のある人は挑戦してみてもよいだろう。

本作は海外開発であり、日本語訳については一部に難は見られるが、ゲームを進める分には支障のない範疇に感じられた。また、盲目の人が文字を認識するために粒状の突起の組み合わせで文字を表現する点字が各所で用いられているが、そちらは言語設定を変更してもアルファベット表記で固定となっている。なじみの無さ故に取っつきにくく感じる部分だが、逆に点字のアルファベット表記を調べて作中の点字を読むのに挑戦するのも一興だ。

言語化しづらい感覚を表現し共有できることは、コンピュータゲームの持つ力のひとつである、と、そんなことを再確認させられた作品だ。

[基本情報]
タイトル:盲目の手探り (Blind Touch)
制作者:Flygogo Games
プレイ時間:1時間~
対応環境:Windows 
価格:899円

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  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。