【デジゲー博2023】静岡県浜松市のドラゴンが活躍する左右対称パズルゲームは、なぜ『鏡のパズル ドラミラド』へと生まれ変わるのか。その経緯をドラゴンご本人とマネージャーさんに直撃してみた

イベントレポート,インディーゲーム

11月12日、東京・秋葉原で開催された同人&インディーゲームオンリー展示・即売会「デジゲー博2023」。そんな「デジゲー博2023」に以前、もぐらゲームスにて取り上げたとあるブラウザ向けフリーゲームのパワーアップ版が出展されていた。

そのゲームの名は『Dragon’s Crystal』紹介記事)。

静岡県浜松市でジャグリングのパフォーマンスショーを繰り広げている魔界出身のドラゴン「ヒョウガ」が、幼馴染の東洋竜「マグマ」と共に謎の館からの脱出を目指す思考型パズルゲームだ。左右対称の法則に基づいて動く2匹を操作し、水晶体の全獲得を目指す脳みそフル回転なゲームシステムと、100を超える膨大なパズルステージを特徴としている。

なお、本作の主人公「ヒョウガ」は、静岡県浜松市にて活動中の”本当に”実在するドラゴンである。大道芸フェスティバル、ショッピングモールなどのイベントで、ジャグリングのパフォーマンスを披露するといった形で活躍している。
ちなみに筆者は『Dragon’s Crystal』の記事執筆当時、実在するとは存じていなかった。知ったのは掲載後のヒョウガさんご本人(?)のX(旧Twitter)での反応によってだった。

その節はすみません……!

そんな『Dragon’s Crystal』がこのたび、『鏡のパズル ドラミラド』と装いも新たに登場することになった。供給先はスマートフォン(iOS、Android)、PC(Steam)で、前者は広告ありの無料タイトル、後者は買い切り型の有料タイトルとしての配信が予定されている。時期は辰年(竜年)ということで2024年初頭を予定しており、最初にスマートフォン、その後にPCという順番で展開されていくようだ。

「デジゲー博2023」には、そんな『鏡のパズル ドラミラド』が出展。現地ではヒョウガさんのマネージャー兼プログラマーである竜半氏が案内を務められていた。

2023年11月現在は、「ゲームアツマール」からフリーゲーム投稿サイト「PLiCy」に移行した『Dragon’s Crystal』だが、なぜ今回、『鏡のパズル ドラミラド』へと生まれ変わることになったのか。このたび、プログラマーの竜半氏とヒョウガさんご本人にうかがった。

実質ディレクターズカット版となる『鏡のパズル ドラミラド』

まず、インタビューの前に『鏡のパズル ドラミラド』のゲーム内容を少し紹介したい。

基本は『Dragon’s Crystal』と同じで、左右対称の法則に基づいて動くヒョウガとマグマのドラゴン2匹を操作し、部屋(Room)に配置された水晶体の全回収に挑む思考型パズルゲームとなっている。


▲オリジナル版『Dragon’s Crystal』より

本編はヒョウガとマグマが閉じ込められた謎の館内部を調査する探索パート、館のあちこちにある扉の先にある部屋(Room)の攻略に挑むパズルパートの2つを交互にこなしながら展開。パズルを一定数攻略すると、館内のマップにある大扉が開放され、先のフロアへと進めるようになって探索範囲が広がっていく。最終的にはこの流れを繰り返しながら館の出口を発見し、脱出するというのが主な目的となる。

なお、本編に用意された部屋は100近く……というのが『Dragon’s Crystal』の記事掲載当時(2020年12月時点)での情報だった。

掲載後、『Dragon’s Crystal』では不定期的にアップデートが実施され、用意された部屋の数が増加。なんと2023年11月現在、300以上に膨れ上がっている。さらに記事掲載当時には存在しなかった新しい仕掛けも追加され、パズルのバリエーションも拡張されている。


▲オリジナル版『Dragon’s Crystal』より

もし、記事掲載当時に遊んで以来、ご無沙汰しているという人が遊べば、間違いなく「なんだこれ!?」とビックリすること請け合いである。それぐらいボリュームが凄いことになり、大作と言っても大げさではない作品に進化している。
なお、単純にエンディングを目指すだけなら全ての部屋をクリアする必要はない。ただし、ベストなエンディングを目指すとなれば、全部屋の攻略は不可避である。

そして、これらの特色は『鏡のパズル ドラミラド』でもほぼそのまま踏襲されている。
というより、竜半氏いわく「99%ほぼ同じ内容」とのことだ。


▲『鏡のパズル ドラミラド』体験版より

ただし、ストーリーにおいては一部内輪ネタのカット、新規一枚絵の追加が実施されているとのこと。さらに既存のパズルにも、『Dragon’s Crystal』の動画配信をされたストリーマーの方々のゲームプレイを参考に一部再調整を実施。主に分かりにくい部分が分かりやすく改良されているようだ。
いわゆる”ディレクターズカット版”と言うに相応しい作りになるとか。

また『Dragon’s Crystal』当時からの大きな魅力である、絶妙な”山”が描かれた難易度も継続。新しい仕掛けが登場する時はまず簡単なパズルをプレイヤーに挑戦させ、そこから徐々に難易度を上げていくという手法だ。
これは『鏡のパズル ドラミラド』でも健在であり、プレイヤーを退屈させず、負担を与えすぎずの気を遣ったバランス調整が図られているとのことだ。

気になる収録パズル総数は本稿執筆時点の『Dragon’s Crystal』と同じく300以上になるが、本作初登場の新しいパズルが10個ほど追加される模様。また、完成版が配信されて以降もアップデートでパズルの追加を行っていくとのことで、最終的には収録総数400を目指しているとか。

そこまでとなると、誇張抜きに思考型パズルゲームの大作を通り越して、超大作になるのは確実……かもしれない。

ドラゴン御本人とマネージャさんにリニューアルの経緯を直撃

そんな『鏡のパズル ドラミラド』と、オリジナル版『Dragon’s Crystal』誕生のきっかけなど、気になることを竜半氏のほか、とある科学の魔法術式を用いてジャグリングドラゴンことヒョウガさんご本人にも直撃した。

――まず最初に……ジャグリングドラゴンことヒョウガさんの自己紹介をお願いします。

ヒョウガさん:
 ジャグリングドラゴンヒョウガです!浜松市に実在するジャグリングをするドラゴンです!大道芸フェスティバルに呼ばれて全国で出演したり、ショッピングモールやイベントごとなどで呼ばれて人前でパフォーマンスをしています。

 ゆるキャラグランプリにもエントリーしたことがあって……ただ、順位は正直ネタにするには微妙なところでした!
運が良ければゆるキャラ系のイベントでもお目にかかれるかもしれません。X(旧Twitter)で大道芸のイベントなどの出演予告などはしていますので、興味のある方は是非とも近くで公演するときに見に来てくださいね!

――ありがとうございます!続いて竜半さんの自己紹介をよろしいでしょうか。

竜半さん:
 『鏡のパズル ドラミラド』と『Dragon’s Crystal』メインプログラム、パズル制作、ディレクションなどをしている竜半と申します。「ジャグリングドラゴンヒョウガ」のマネージャーとしても活動しています(笑)。

――ありがとうございます。ここからは竜半さんにお伺いしていく形となりますが、『鏡のパズル ドラミラド』の元である『Dragon’s Crystal』はどのような経緯から作られることになったのでしょうか。

竜半さん:
 ドラミラドは制作エンジンはRPGツクールMVなのですが、実はこのゲームはとても昔にVisual Basicを使って作ったことがあったのです。と言っても当時は今ほどギミックは多くなく、ステージ数はそれなりにあったのですが、あまり練られて作られていなかったので無駄の多いパズルが多い状態でした。
 ただ、その状態でもやってくれた友達はけっこうおもしろいと言ってくれていたんですよね。

 それ以降はしばらくゲーム制作などはしていなかったのですが、コロナ禍に入ってしまったのでヒョウガが人前でパフォーマンスする機会が激減してしまいました。

 そこで、以前からちょっとやってみたかったRPGツクールに手を出したのですが、色々と作る前に、まずは慣れるためにルールは既にイメージのあったこのゲームをリメイクしてみようと思って作ってみたところ、思いのほか上手くいきまして、半年くらいで最初のバージョンを「ゲームアツマール」に公開することができたんです。

――マップ探索要素のある思考型パズルゲームになったのはどういった経緯から……?

竜半さん:
 『ドラクエ3』(ドラゴンクエストIII そして伝説へ…)とかで、ボスを倒した後に一時的にフィールドに敵が出現しない時があるんですけど、そういう時にフィールドやダンジョンなんかをめぐるのが好きだったんですよね。

 オープンワールド系のゲームも、敵と交戦しないで走り回るのとか気持ちよかったりするじゃないですか。そういう感触が好きなのがパズル+探索という形につながったと思っています。

 このゲームは自発的にパズルを解きに行かなければ交戦することも無いので好きにフィールドの中を走り回ることができます。プレイヤーさんには基本的にはパズルをやってもらったらいいけれど、ちょっとパズルに疲れたら、その辺に置いてあるツボやタルなんかを調べたら、全部違うテキストが返ってくるようにしたりとか、探索も少しでも楽しくなっているといいなぁと思っています。

ヒョウガさん:
 テキストを読むのが面倒くさい人は多分そういうのは飛ばすと思うので、RPGとかで片っ端から人に話を聞いたりとかツボを全部調べるような人には楽しんでもらえるんじゃないかなぁ。

――オリジナル版『Dragon’s Crystal』で特にこだわったところはどこでしょうか。また、差し支えなければ制作に当たって苦労した部分がありましたらお伺いできればと思います。

竜半さん:
 パズルを解いたときに「気持ちいい!」という感想がもらえるようになっているんじゃないかなと思っています。

 このゲームのパズルは、「この方法でないとクリアできない」というのは少なめだと思っているんですが、なんとなくこういう解き方になるだろうな、というのはあって、プレイヤー側も多くのパズルを解いていると、「多分最後に取るのはこのクリスタルだろうな」というのはわかってくると思っています。ギミックの中に二匹のドラゴンが同時に乗らないと取れないクリスタルがあるんですけれど、そういうクリスタルを最後に取るクリスタルにしておいたりとかすると少し気持ちいいんじゃないかな、と思って、最後にそういうクリスタルを取れるように配置しておいたりしています。

 あと、先にも触れたんですが、探索パートで、置いてあるオブジェクトを調べると、すべて違う反応が返ってきます。ただ「ツボが置いてある」っていうメッセージが表示されることもあれば、ツボについて二匹のドラゴンが話し始めることもあったりとか。
テキスト量の多さはなかなかのものだと自負していますので、そこも楽しんでいただけるとありがたいです。

――今回、『鏡のパズル ドラミラド』へと一新されることになった経緯はなんだったのでしょう?

竜半さん:
 このゲームの前身の"Dragon’s Crystal"はニコニコ動画のコンテンツである「ゲームアツマール」で公開していたんですけれど、ゲームアツマールが閉鎖することになって(実は閉鎖前からスマホアプリにはしてみたいなぁと思っていたのですが)それなら、今公開している部分で不満なところはちゃんと改善して移植しようと思ったんですね。

 ありがたいことに、旧バージョンで実況動画を作ってくれた人がいたりとかして、そういうのはもれなく見ているんですけれど、見ていて、「あ、ここのパズルの作りが甘かったな……」と思うことも結構ありまして、置き換えたパズルというのもあります。

 「ゲームアツマール」では他のゲームも出していたんですが、その時に学んだのが「ゲームタイトル(とサムネイル)は超重要」ってことでして。そりゃ今となっては当たり前なんですが、公開当初は未熟だったものでそこまで考えてなくて。というわけで、タイトルは真っ先に変えました。置き換え後のタイトルは結構気に入っています。

――ズバリ『鏡のパズル ドラミラド』のセールスポイントは?

竜半さん:
 パズルの多さと、難易度設定には自信があります。このゲーム、300のパズルがあるんですけれど、必ずしも難易度順になっているわけではなくて、新しいギミックが登場したときには必ず難易度を下げてギミックに慣れてもらうパズルというのを作っています。


▲体験版には19個のパズルが収録されている。(うち4個はチュートリアル)

 なので、サクサク進むところもあれば、うーーん、と頭を悩ませるところもあったりと、常に難易度に波があるようにできているんじゃないかなと思います。

――ちなみに話は変わるのですが、『Dragon’s Crystal』以外にもヒョウガさんと竜半さんは『ホムンクルスの肉』というホラーアドベンチャーゲームを「ゲームアツマール」にて公開されていました。こちらも将来的には『鏡のパズル ドラミラド』のような形での復活を予定されているのでしょうか?

※『ホムンクルスの肉』:正式名称『ホムンクルスの肉<ホラーゲームが苦手なひとのために”最大限”配慮したホラーゲーム>』。ホラー演出直前になるとネタバレの予告ナレーションが挿入されるなど、度を越えた過保護っぷりを売りとする短編探索アドベンチャーゲーム。2022年掲載の「もぐらゲームス執筆陣の選ぶ 2021年おすすめフリゲ・インディゲーム18選」にてピックアップしている。(※2023年11月現在は公開休止中)

竜半さん:
 是非復活させたいですね。
 「ホムンクルスの肉」は、今まで作ったゲームの中で1番実況していただいたゲームです。

 "Dragon’s Crystal"が「ドラミラド」になったように、やはり今のホムンクルスの肉で少し直したいところがありまして、それを修正してからのリリースにしたいなと思っています。

――楽しみにしております!そんな『鏡のパズル ドラミラド』を「デジゲー博2023」にて遊んでいただいた方々、本作に関心を持っていただいている方々へのメッセージをお願いできればと思います。

竜半さん:
 まずは、このゲームに興味を持ってもらってプレーしていただいた方全ての方に感謝させていただきたいです。
 今回このような機会に出展するのは初めてだったもので、誰も来ないんじゃないかなと心配していたんですが。
 杞憂どころかずっとブースに人がいる状態でして、おひるごはん用に買った一本満足バーですら食べることができない状態でした。

 このような機会を経験できただけでまず僕にとってとてもプラスだし、この場を提供してくださったデジゲー博の関係者の方々にも深い感謝をしたいです。

 そういえば、デジゲー博の前日にデザインフェスタというイベントでヒョウガの出演があったんですが、「それを見ましたよー」っていう人が数人いたんですよね。めちゃくちゃびっくりしました。

 あと、当日お手伝いを「ドラミラド」のタイトル等の絵を手掛けてくれた赤宮文也さんにお願いしたのですが、準備すべきものの相談などを嫌な顔一つせずに手伝っていただきまして、本当に心強かったです。
 正直今回のイベントは僕の中ではとても成功だと思っているんですが、90%くらいは文也さんのおかげです。

 将来的には文也さんも自作ゲームをこういった機会に出していきたいとのことですので、個人的にも応援させてください。

――ありがとうございます。最後にヒョウガさん、今後の活動予定などお伝えしたいことがありましたらお願いします!

ヒョウガさん:
 12/2に浜松市で「異世界住人のパフォーマンスライブ」という、ヒョウガ主催のイベントが開催されます!こちら日本各地で活躍している選りすぐりのパフォーマーさんが集まるイベントですので、どうぞおこしいただけるとありがたいです!

竜半さん:
 どうしても東海地方中心の活動になってしまうのですが、全国各地で出演予定もありますので、パフォーマーとしてのヒョウガを見たい方は是非ともX(旧Twitter)などで出演予定を確認の上来ていただければと思います。ゲーム好きドラゴンと言うこともあってゲームがモチーフのショーですので、きっと楽しんでみていただけるものと思ってます。

 もちろんパフォーマンスだけでなく、自作ゲーム方面でももっと活動していくつもりです。(Unityも勉強して今後はUnityでもゲームを作れるように!すでに構想はあります!)何卒よろしくお願いいたします。

――今後の活躍を期待しています。お忙しい中、ありがとうございました!

冒頭で紹介したように『鏡のパズル ドラミラド』はスマートフォン(iOS、Android)、PC(Steam)で配信予定。思考型パズルゲーム好きにはボリューム的にもやり応え抜群の作品なので、興味のある方はぜひこの機会に。

なお、「デジゲー博2023」に出展された体験版は「PLiCy」のほか、ジャグリングドラゴンヒョウガ公式サイトこちらのページからダウンロード可能だ。

[作品情報]
タイトル:『鏡のパズル ドラミラド』
作者:竜半、ジャグリングドラゴンヒョウガ
対応プラットフォーム:iOS、Android、PC(Windows、Mac)
価格:未定

◇公式サイトはこちら(※体験版も公開中)
https://www.jugglerhyoga.net/dragonmirrored

◇「PLiCy」の体験版はこちら
https://plicy.net/GamePlay/164774

◇オリジナル版『Dragon’s Crystal』はこちら
https://plicy.net/GamePlay/151593

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