“カクカク動作”×火力全開のド派手バトルが痛快でクセになるローグライク“マス目”アクションRPG『Guidus Zero』
「ローグライク」と「ローグライト」。この2つのジャンルの定義については、いまだにさまざまな議論が存在する。
とはいえ、近年では「ターン制システムの有無」がひとつの目安として定着しつつある印象だ。たとえば「プレイヤーが1歩動くと敵も1歩動く」といった仕組みは、ジャンルの始祖『Rogue』を象徴する要素のひとつである。
また、「キャラクターの移動がマス目(グリッド)単位で行われるかどうか」も、かつてはローグライクとローグライトを分ける基準の一つと見なされていた。
しかし、マス目単位でありながらリアルタイム進行する作品も登場しており、この点についてはもはや目安とは言いがたい。
そして、今回紹介する『Guidus Zero』(ガイダス・ゼロ)も、まさにそうした分類の曖昧さを体現するタイトルのひとつだ。
先に結論を述べると、本作は「ローグライク特有のアドリブ的なゲームバランスに抵抗があるプレイヤー」に特におすすめしたいタイトルだ。
というのも、敵や仕掛けのパターンが明確で、戦術的なプレイをしやすいため、プレイヤーの上達を実感しやすい設計となっている。
謎の陥没穴「傷」の最深部を目指せ―盤上で展開するローグライク・アクションRPG
『Guidus Zero』は、2024年11月24日にSteamで早期アクセス版が配信開始され、2025年3月26日に正式版へとアップデートされたアクションRPG。
2021年にスマホ向けにリリースされたローグライクRPG『ガイダス』(ガイダス : ドット絵ローグライクRPG)の前日譚にあたる作品だ。ただし、前作を知らなくてもまったく問題なく楽しめる内容になっている。
本作の舞台となるのは、かつて種族間の戦争が繰り広げられた「中央大陸」に突如現れた巨大な陥没穴、その名も「傷」。プレイヤーは探検隊の一員として、この「傷」の奥に眠る謎を解き明かすため、危険なダンジョン探索へと挑むことになる。
ゲーム開始時に操作できるのは、エルフの見習い騎士「ダリア」のみ。物語が進むにつれて、「チャトリ」「ジン」といった他のキャラクターも順次使用可能になる。
ジャンルとしては、ローグライク要素を備えたアクションRPGとなる。見下ろし視点のマップを、マス目(グリッド)単位で移動しながら進んでいくスタイルだ。探索するダンジョンは階層構造になっており、部屋の配置、出現する敵、宝箱の中身などはプレイするたびにランダムで変化する。
探索中に倒れてしまうと、拠点へ戻されて最初の階層からやり直しになるうえ、レベルや「遺物(キャラクター強化アイテム)」といった取得要素もすべて失われてしまう。
ただし、「精製された黒血」や、装備中の「ストーン」は保持される。前者はキャラクターを永続的に強化できる稀少アイテム、後者は装備することでステータスの上昇を図れるアイテムだ。
なお、武器はキャラクターごとに専用のものが設定されているため、ロスト対象からは外れている。別の武器へと変更するのも不可能だ。そのため、リスクはありつつも全体的には“やさしめ”の設計で、ローグライク初心者にも手に取りやすいバランスとなっている。
最大の特徴は、マス目単位(グリッドベース)で展開されるアクション。移動も攻撃も「1マスずつ」という“カクカク”とした手触りが独特だが、実際の操作感は軽快で、コンボやキャンセル、回避行動なども用意されており、アクション性は高い。
特定のアクションではスタミナゲージを消費するなど、操作に工夫の余地があるのもポイントである。
スクリーンショットの感じだと、見た目はクラシックなローグライク。だがその中身は、まるでアクションゲームさながらのスピード感を持ち合わせている。まさに“ローグライク・グリッドアクション”とでも呼べる個性的な一作だ。
意外にもランダム性控えめ?パターン化しやすく、上達も実感しやすい遊びやすさ重視の作り
本作の魅力は、パターン化のしやすさにある。ローグライク作品らしくランダム要素もあるが、その影響は控えめで、極端なアドリブを求められることはない。
なぜかと言えば、全体的に固定要素が多い。特にエリア構造。前述したように、本作は舞台となる「傷」内部に設けられたエリアを踏破していくのが主な流れとなる。各エリアは、3つの階層マップで構成。最終的に3つの階層マップを攻略すれば、次のエリアへと進む。
この構成は、ローグライク要素を持つダンジョンRPGとしては定番だが、本作では階層ごとの局面が完全に固定されている。第1階層は雑魚戦+中ボス戦、第2階層は雑魚戦のみ、第3階層はボス戦のみと、構成に変化がない。
中ボスや大ボスの面子も毎回同じで、行動パターンや攻撃がランダムで変わったりすることもない。マップに設けられたトラップもトゲ床など種類は少なめに加え、不意に出現するタイプもなく、後半になっても状況が混沌と化すレベルの増加も見られない。
一応、ランダム要素として宝箱から入手できるアイテムはあるが、それ以外に強く運に左右される要素は少ない。むしろ、最初こそ脅威に感じられる部分も、プレイを重ねることで安定した立ち回りが可能になる。
そのため、本作はパターン化しやすく、繰り返し遊ぶほどプレイヤーの上達を実感できる設計になっている。加えて、永続強化要素の影響も大きい。
本作には、ダンジョン内で手に入る「精製された黒血」を消費し、攻撃力や体力などのステータス底上げを図る永続強化要素がある。
だが、実は永続強化要素はこれに限らない。ダンジョン内で手に入るステータス上昇アイテム「ストーン」の装備、拠点の拡張機能も永続強化要素として存在し、プレイヤーの強化に貢献してくれるのだ。しかも、ストーンは5つまで装備できるのに加え、装備中のものはロスト対象ではないため、温存すれば強化もそのまま。
こうした要素の存在もあって、プレイを重ねるほどエリア攻略がどんどん楽になっていく。十分に育てれば、序盤エリアの中ボスや大ボスを一瞬で倒せるという、RPG的な戦略
も効くようになる。実力以外の手段でも突破が可能な、懐の広いゲームバランスを実現させているのだ。
とはいえ、何も考えずに進めばクリアできるほど甘くはなく、一定の操作技術は求められる。それでも、全体としては非常に遊びやすく、トライ&エラーも苦になりにくい。ローグライクのアドリブ性やランダム性が苦手な人にも優しい設計だ。
逆に、予測不能な展開や高い緊張感こそローグライクの魅力だと感じる人にとっては、固定要素の多さが単調に映るかもしれない。
とはいえ、ローグライクやローグライトの作品が飽和状態にあるこの頃。本作のように遊びやすさや攻略しやすさに重きを置いた作品は貴重だ。特に、そうしたジャンルに疲れた人には、しみじみと響くだろう。
それに決して“簡単”というわけではない。後半に登場するボスは攻撃パターンを読み切る必要があり、対処を誤れば一気に押し込まれる。中には、単にダメージを与えるだけでは倒せない変則的なタイプも存在する。
また、宝箱から入手できる「遺物」や、経験値の蓄積によるレベルアップ時に選ぶ強化項目も戦術に影響する。強化の選択によってプレイスタイルが変化するため、毎回異なる攻略が求められる。
そして、より手ごわい戦いを求める人に向けた高難易度モードといったコンテンツもある。感じ方に個人差はあれど、少なくとも決して簡単なゲームではないことは分かるはずだ。ただ、遊びやすくて攻略法も幅広く、間口が広い。
アクションゲーム的なパターン化の醍醐味も味わえれば、RPGの時間をかけて突破口を切り開く攻略法も楽しめる。まさしくプレイヤーの好みに応じた遊び方ができる作品なのだ。
繰り返しになるが、特にランダム性とアドリブ性の強さに苦手意識がある人なら、かなり刺さる。高難易度傾向のトレンドに疲れ気味の人にも嬉しい設計なので、何か気軽に遊べるものを探しているならオススメだ。
マス目単位ながらも動かす楽しさもバッチリ。若干の粗もあれど、遊びやすさと間口の広さが素敵な一作
なお、アクション性は高めで、見た目に反して一定のスピード感もある。ただし、マス目単位での進行ゆえ、スタイリッシュな動きや素早い判断力を要求されるような場面は少ない。
敵の攻撃も、どのマスに影響が及ぶかを事前に示してくれる仕組みがあり、接近した瞬間に不意打ちを食らうような理不尽さはない。ボス戦も同様で、公平な戦いを楽しめる設計となっている。操作感も仕組みとは裏腹にスムーズなので、動かしていてストレスを感じることはなし。アクションゲームらしい動かす楽しさと、上達の実感もバッチリで、堅実な仕上がりに安心感すら覚えるはずだ。
ただ、遠距離攻撃(具体的には着弾しての範囲攻撃)を仕掛けてくる敵に関しては、事前予告の表示が分かりにくいため、初回は悩まされるかもしれないことは言及しておく。
また、本作のグラフィックは全編にわたり精巧なドット絵で描かれており、非常に美しい。ただし、光と影の表現がやや強いこともあって暗所が見えにくいなど、演出が行き過ぎている部分も見受けられる。
エフェクトも派手な反面、「遺物」の入手で攻撃手段が増えると、画面全体が見づらくなることがある。特に雑魚戦では顕著だが、ボス戦では視認性が比較的保たれているのが救いだ。とはいえ、可能なら光と影の表現に関しては調整オプションが欲しかったところだ。
ほかに本作は、ストーリーが語られるイベントデモが節々に設けられているのだが、台詞の送りがフルオート限定でマニュアル操作に非対応。プレイヤーのペースで読み進められないので、結構不便に感じてしまうものになっている。肝心のストーリーも前日譚ゆえの困った箇所があるのだが……ひとまず、あまりスッキリしないオチであるのは覚悟していただきたい。
こうした難点はあるものの、ローグライク・ローグライト作品としての遊びやすさは確か。グリッドベースのアクションは独特の緊張感があり、キャラクターを操作する楽しさにも優れている。初回クリアまででも9〜10時間と十分なボリュームがあり、やり込みを目指せば倍以上は楽しめるだろう。
パターン化のしやすさについては賛否が分かれるかもしれないが、それが遊びやすさやテンポの良さにつながっており、他の作品とは一線を画す魅力となっている。アクションゲームやアクションRPGが好きな人には、ぜひ触れてほしい一本だ。ローグライクやローグライトが好きだけれど、高難易度に疲れてしまったという人にもオススメできる。
「傷」との名称とは裏腹の遊びやすさ満点のダンジョン探索を楽しもう!
[基本情報]
タイトル:『Guidus Zero』(ガイダス・ゼロ)
開発:izzle(※販売:Com2us Holdings)
クリア時間:12~25時間
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):1,700円
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