実は泣きゲーでもあるリズムバトルアクション『カンフービート』の勝利のカギは、動きを見切るチカラと三蔵法師LOVE!?
その日、少女「蓮華(れんか)」は拳法の師範である祖父と一緒に映画『西遊記』を観ていた。そこで蓮華は、カンフーマスターの三蔵法師が敵をなぎ倒すシーンに大きな感銘を受ける。
「私も三蔵法師になる!」。そのように決心した蓮華は映画鑑賞の後、祖父から拳法を学ぶ。結果、一朝一夕の勢いで彼女は拳法の基礎を会得。才能を開花させる。
そして、蓮華は祖父の弟子たちに戦いを挑んで、拳法をさらに極める旅の旅に出るのである。果たして蓮華は、三蔵法師のようなカンフーマスターになれるのだろうか?
そんなオープニングと共に幕を開けるのが『カンフービート』である。2025年2月20日より、Steamで販売中のWindows PC向けタイトルだ。
なお、言うまでもないが、三蔵法師がカンフーマスターというのは作中の映画の話。紛うことなきフィクションである。世の中にはスクーターにまたがって天竺を目指したり、飲酒と喫煙と博打を好む架空の三蔵法師の例が多数ある。本作もその一例だ。真に受けぬよう。
リズムに乗って動き、攻撃し、避けて相手を圧倒!リズムゲーム×バトルアクション
とにもかくにも、タイトルの通りに本作は「めざせ!カンフーマスター」な2Dバトルアクションゲームとなる。主人公の蓮華になり、祖父の弟子たち(対戦相手)とのカンフーバトルを繰り広げていくのが主な内容だ。
本編はステージクリア方式で進行。厳密には弟子たちが待ち受けるエリアを選択し、好きな所から勝負を繰り広げていくステージセレクトシステムを軸にした形になっている。なお、本編開始時点では2ステージしか選べないが、一定数のステージを攻略すると、選択範囲が広がっていく。
バトルは相手を打ち負かすことができれば勝利。逆に蓮華の体力が尽きてしまうと敗北だ。
フィールドは1画面内に収まっており、上下左右にスクロールする構造にはなっていない。また、バトルは勝敗数を競うラウンド制ではなく、1本勝負。どちらかがやられれば、その時点で勝敗が決する短期決戦仕様だ。
そして、フィールド下には三角のアイコンが飛び交うと同時に、中心にひし形のような何かがある。これこそが本作の個性を表す象徴、リズムノーツとリズムボタンである。
本記事の見出しからしてバレバレだが、本作の真のジャンル名は、2Dリズムバトルアクションゲーム。リズムに合わせてタイミングよくボタンを押し、移動、ジャンプ、攻撃の動作を繰り出していくゲームなのだ。
そのため、バトルにおけるキャラクターは、音楽のリズムに沿って移動。そして、それに合わせて、相手の出方に応じた適切な行動を取っていくのが基本の遊び方(戦い方)となる。リアルタイムのターン制で展開されるバトルアクションゲーム、とも称せるだろうか。
また、リズムを取り続けて「コンボ」を決めていくと、画面左上の「テンション」のゲージが溜まっていく。これが一定量に達すると、相手に大ダメージを与える「技」が繰り出せるように。
「技」は(Xboxコントローラ操作時)BXYボタンへそれぞれ1つ(合計3つ)セットでき、対応するボタンを1回押すと繰り出せる。ゲーム開始間もない頃は技が1つしかないが、ステージをクリアしていくと数が増加。さまざまな戦法を試せるようになる。
「技」とは別に「構え」なる要素もある。これは1つしかセットできないが、選ぶことで蓮華の体力最大値を上げたり、テンションのゲージが上がりやすくなるといった恩恵を得られる。バトルで有利に立ちたい、効率的に攻めたい時に便利な要素だ。ちなみにこちらは「技」と違い、ステージクリア時の成績に応じて獲得できる「★」を一定数集め、アンロックしていく形になる。
これらの仕組みと要素を駆使して、カンフーマスターをめざすのが本作のキモであると同時に特徴だ。まさに2Dリズムバトルアクションの名を体現した体験を凝縮した作品になっている。ちなみにバトルのスタイルから、バトルアクションというよりは対戦格闘な感じがあるが、本作には複雑なコマンド入力などはないため、対戦格闘っぽさはない。
もうひとつ、バトルアクションたることを強烈に物語る部分があるのだが……それは後ほど。
簡単操作で攻撃を見切る楽しさ。バトルアクションならではの起伏ある展開にも注目
一連の特徴からも明らかな通り、本作の魅力はリズムゲームとバトルアクションを掛け合わせたシステム。ターン制で展開されるバトルアクション、もしくは対戦格闘ゲームっぽい遊び心地と戦術が異彩を放つ。
面白いのがプレイヤーキャラクターも含め、移動や攻撃といった行動全般をコマ単位で表現している点。特に対戦相手は、攻撃を仕掛けるたびに必ず事前動作をし、次のリズム(ターン)で必ずそれに沿った動き(攻撃)をする確約がされている。
つまるところ、こちらがそれに沿った行動を取れば、確実にそれを避けられる。逆に避けられなかった場合は、動きに沿った行動を取らなかったプレイヤーの責任と、ダメージの形で分かりやすく返ってくる。
まさに納得感のあるゲームバランスというものが確立されているのだ。同時に相手の動きを手軽に「見切る」楽しさが表現されている。本作には防御のアクションがなく、基本的に相手の攻撃は背後に回って避けることが要求される。
見切り自体は対戦格闘ゲームのほか、アクションゲームなどでも活用されるテクニックだ。ただ、リアルタイムゆえに素早い判断と動体視力(瞬間視)が求められるため、使いこなすには一定の努力が不可欠。加えて、どうしても個人差が生まれやすいこともあり、楽しめる人と楽しめない人で分かれてしまうものでもある。
本作はコマ単位での表現と簡単操作もあって、見切り自体のハードルが低め。動体視力(瞬間視)に自信がなくとも、相手を“ヒラリ”と避ける楽しさを味わえるのである。
絵的には地味だが、これが結構気持ちよく、慣れてくると踊るように相手を攻めるのが快感になってくる。
そして、やればやるほど、対戦格闘ゲームのプロと言われる方々により一層の尊敬の念を持つようになる……かもしれない。かの方々は、この一連の見切りと、それを踏まえての攻めを目にもとまらぬ速さの環境で成し遂げているのだ。やればやるほど「凄いんだなぁ……」となってくるのは確実。
その意味では本作、プロの凄さを強烈に認識させられるゲームと言える。まあ、そもそも試合を観戦するだけでもプロの凄さは十分、分かるのだが……本作のように、駆け引きの仕組みを手軽に知れるゲームを通せば、3割増しだろう。
ただ、あくまでもバトルアクションゲームであることにご注意を。でも、ここまでの感じだと基本、1対1の対人戦を繰り返す内容なのではと思うところ。
ところがどっこい。本作の戦闘は1対1の対人戦ばかりではない。ステージによっては1対多の戦闘もあるのだ。それこそが本作がバトルアクションゲームたる意味。実は山あり谷ありの展開続きなのである。
特に対戦相手のハチャメチャさには、嫌でも「これは対戦格闘ゲームではない!」と確信すること間違いなし。だって、パンダと拳で語り合ったりするのだから。

「なんでもありにもホドがある!」だが、マジでそんな内容である。それもあってやればやるほど、カンフーのアクロバティックで奥深き世界と中国四千年の歴史を思い知らされるのだ。ついでにパンダの怖さも。
このハチャメチャな展開は、実際に遊んでこそ分かるサプライズもたっぷりなので、興味があればぜひ挑戦を。並行してプロの凄さを再認識させられる駆け引きにもご注目あれ。
……あ、言い忘れていたが、キョンシーも出てきますよ。
実は泣きゲー!?涙腺刺激しまくりのストーリーも侮りがたい、やり応え十分の良作
なお、難易度は1種類のみで選択機能はない。全体的な塩梅も高めで、何度もトライ&エラーを繰り返すことになるだろう。ただ、前述したように失敗がちゃんと可視化されるため、納得感があって不快になりにくい。
また、“壁”となるステージを設け、プレイヤーの上達とシステムのさらなる理解を促す工夫も凝らされている。そこを乗り越えれば、立ち回りにも変化が生じて、より戦うのが楽しくなる。そういった乗り越える快感と変化を味わえるまとめ方をしているのには、難易度を1本に絞り込んだなりのこだわりを感じるはず。これぞまさに拳法を極める旅と言わんばかりの説得力も出している。
易々とはいかないことにもどかしさも感じるかもしれないが、この確かな上達を感じられる作りは美しさすらあるので、ぜひ踏ん張ってみていただきたいところだ。逆に根気が試されるため、苦手な人は注意が必要だとも補足しておく。
ほかに本作の見所としてストーリーがある。オープニングのノリや、対戦相手の傾向からして「Don’t think feel!」な内容であるのは察せるかもしれないが、実は……泣けます。最後は涙が止まらなくなります。そして、エンディングが終わった後のタイトル画面でさらに泣けちゃいます。セーブデータを絶対に消したくなくなります。
どういうことかはシンプルに「最後まで戦い抜け」である。さすれば本作、人によっては紛うことなき名作となるはず。そして、主人公の蓮華がより好きになってしまうでしょう。実際、蓮華は本編でも可愛らしい様子を見せてくれるので、そちらも必見だ。
そんな「泣きゲー」の顔も持った本作だが、ユーザーインターフェース(UI)絡みには若干課題あり。特にステージセレクト画面(地図)だが、新たなステージが出現したことを指す情報表示がなく、時々、どこが新ステージか気づきにくい。主にビルなどの特定施設に連なった場所は見落とししやすく、「New!」などの表示があれば……と思ったところだ。
もうひとつがゲームパッド操作。操作性そのものは全く問題ないのだが、ボタンアイコンがPSコントローラのデザインのみで、Xboxコントローラのデザインが用意されていないのは少々気になる。一応、配置が不一致みたいなことはないので支障はないが、できればXboxコントローラのデザインにも対応してほしいと筆者は思ってしまった次第である。
ほかに相手の体力ゲージが表示されればとか、セリフ送りの速度がもう少し早ければと感じる部分もあった。ただ、総合的な完成度は高く、個性的なシステムと納得感のある難易度で楽しませてくれる良作に完成されている。おまけに泣きゲーである。
見た目はゆるいが、攻防の駆け引きを分かりやすく楽しめ、やり込める深みも持ち合わせた本作。一連の特徴にときめくものがあるなら、ぜひ挑んでみてほしい1本だ。
そして、ハンカチとティッシュをお忘れなく!
誇張抜きに人によっては、ガツンと刺激されます。ご注意(?)あれ。
[基本情報]
タイトル:『カンフービート』
作者:ブルーオニキス
クリア時間:2~3時間
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):470円
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