伝説の魔人となって自由に世界を巡り、目的を成せ―二重構造のストーリーも必見のアクションRPG『巡る頂に立ちて』
人間、魔族、魔人の3種族が絶妙な均衡を保っていたこの世界は、「4大宝玉」と呼ばれる悪魔の力が封じ込められた秘宝が人間、魔族に2つずつ渡ったことで、勢力図が大幅に書き換えられることになった。
人間と魔族の4勢力は、宝玉の絶大な力を背景に魔人の2勢力を追い詰め、ついにはそのひとつ「ラグナロ帝国」が滅亡。帝国の生き残りたちは残る「アゼグルジア王国」へと逃れるも、そこも人間と魔族の4勢力によって窮地に追いやられていた。
種族存亡の危機に瀕した魔人たちは、4勢力の宝玉を手にした者たち「四天将(してんしょう)」を倒し、彼らの宝玉を奪還するため、伝説の魔人「コ・コロ」を復活させる。その昔、人間と魔族、魔人の連合軍によって討たれた脅威そのものとも言えるコ・コロは、召喚士「アムカ」により、王国内の神殿で復活を遂げるのだが、当の本人は記憶を失ってしまっていた。
自分が何者か、なぜ復活させられたかも分からない状況下で種族の命運を託され、戸惑うコ・コロだったが、アムカを始めとする魔人たちの切実な願いと現在の勢力図を知り、立ち上がることを決心。かくして世界の均衡を取り戻すと同時に、魔人の存亡をかけた戦いが始まるのだが、記憶も何もかも失ってしまっているコ・コロ。その行く末には何が待つのか。
『巡る頂に立ちて』は、そんなスケールの大きな世界観と記憶喪失の主人公が辿る運命を描いた「RPGツクールMZ」製のWindows PC向けフリーゲーム。2025年3月より、フリーゲーム配信サイト「フリーゲーム夢現」にて配信中の作品である。
4つの宝玉を奪還するために各地を巡れ。巡り方は各々の自由だ。
基本的な内容(ジャンル)はアクションRPGとなる。
プレイヤーは伝説の魔人「コ・コロ」となり、人間と魔族の4勢力が支配する国々を巡り、その頂点に立つ宝玉を手にした者たち「四天将」の討伐および宝玉の奪還に挑む。
アクションRPGということで、敵との戦闘は見下ろし視点のフィールド上でリアルタイムに展開。剣に槍、ナックルといった多彩な武器による通常攻撃と、「戦技」と称された溜め攻撃を使い分けながら立ち回るスタイルとなっている。
通常攻撃は最大3連撃出せるほか、武器の種類に応じてリーチや攻撃範囲などが変化。剣は広範囲をカバーするのに対し、槍は直線状に限定されるもリーチが長いといった個性付けが図られており、それぞれで違った戦い方が楽しめる設計だ。
……え、なに?武器の中に斧はあるのか?
そ、それは実際にゲームをプレイしてお確かめくださいませ……(小声)。
もうひとつの戦技は対応するキー(もしくはゲームパッドのボタン)を長押しすると繰り出せる強力な技となる。少し変わっているのは、この技は戦闘以外にマップの仕掛けを動かすに当たっても活躍すること。離れた場所にあるスイッチを動かすといった時でも、戦技を活用することが試されるのである。
これらのアクションと、特定のキーとの組み合わせによりリアルタイムで発動する回復技を活用しながら敵と戦ったり、探索を進めていくのが基本の遊び方となる。そんな本作最大の特徴は遊び方にも関連する部分だが、ルート構築自由度の高さである。
前述したように、本作は「四天将」を討伐するため、彼らの国々を訪れてはイベントを進めていく形なのだが、どこから攻略するかは完全にプレイヤーの自由。好きなところから始められて、好きなところで中断したり、そのまま一気に進めて終えたりもできる設計なのだ。
行動制限がかかるのは、本編の序盤も序盤だけ。あとはプレイヤーそれぞれの好きな順番で進められる。なんとも大胆で、思い切った構成を採用しているのである。
しかも、基本的に国々への移動やマップ探索、イベント(クエスト)進行もスピーディ。国々への移動については本編開始間もなく、一度訪れた箇所へ即座にワープできるファストトラベルが解禁。
好きなところから行けてしまう利点を利用してすべての国を訪れれば、行きたい放題にできるのだ。また、本作のマップは全体マップと局地マップに分けられており、基本的に国ごとのスケールは小さくされている。
そのため、イベント進行や探索も局地マップことエリアに訪れれば即座に開始されるなど、到達までの時間を要することもなく進行するのだ。この辺は一般的なRPGでもお馴染みのもので、別に斬新な要素でもなんでもないが、この形式の採用によって本作は自由度とテンポを損ねないゲームデザインを確立。まさに気ままに動き回れる冒険を楽しめるのだ。
自由度を象徴するのはこの限りではない。レベルアップ周りも自由度が高い。本作は戦闘やイベントで得られる「エナジー」を消費する形で主人公の強化を図るのだが、どの能力を上げるか否かはプレイヤーが自由に決められる。
バランスよく上げたり、特定の能力に特化して伸ばすのも自在なシステムになっているのだ。しかも、レベルアップ自体はマップ上に置かれたセーブポイントにて実施。強化を図るタイミングも、プレイヤーが自由に決められるのである。
ただし、レベルは全能力の合計値で200までとの制限がある。上げられる能力は4つあるのだが、その合計値が200に達してしまうとそれ以上の強化は図れないのだ。よって、強化のさせ方を多少、工夫する必要も出てくる。
だが、一度上げたレベルは自由にリセット可能なので、そこまで神経を使う必要は皆無。そこからあえて能力特化型を試すとか、バランス重視に考え直すといったことをやってみるのも自由だ。
こんな具合に本作は遊びの面における“自由”を随所で強調。それも進め方に留まらず、強化の仕方から戦術まで幅広く選べてしまうという懐の大きさが際立つ、非常にチャレンジングなアクションRPGに仕上げられている。
実は二重構造のストーリー。しかし、それをどう進めるかも自由だ。
魅力も分かりやすく自由度の高さ……なのだが、それ以上に異彩を放つ点でストーリーの構成がある。
前述したようにメインは「四天将」を倒して4つの宝玉を奪還することである。だが、それとは別のストーリーとして、主人公コ・コロの記憶を辿るエピソードも収録。実は二部構成の形式を採用した内容になっているのだ。
しかも、このエピソードのボリュームがメインに匹敵、もしくは若干上回る規模。加えて進行もメインとは違い、決められた順番に沿って進めていく形式であるほか、会話イベントも豊富とほとんど別のゲームも同然の作りになっている。
根幹たるアクションRPG部分はメインと一緒なのだが、用意された戦闘はすべてエピソード独自のもので、ボスにしても然り。さらに進行形式が決まっていることにちなんだ変化球的な展開も用意したりと、驚くほど盛り沢山な内容にもまとめられている。
こんなメインとは別のストーリーまで用意された中身こそが本作最大の見所となる。そしてこれもまた、遊ぶか否かはプレイヤーが自由に決められる。序盤に手に入る「深淵の手鏡」なるアイテムを非戦闘エリアで使えば楽しめるのだが、強制要素とはなっていない。興味があれば、といった感じの位置づけになっているのだ。
こんな規模のエピソードもお任せという所にビックリだが、おかげで気軽に取り組める魅力もあると同時に、自然と興味を誘う要素として活きている。最終的にはとある出来事を経験すると、プレイしないとダメなのではとの認識になるのだが、それでも徹底してお任せにしている辺りに強いこだわりを感じさせられる。
だが、筆者としては本作をこれから遊ぶなら、ぜひこちらもプレイしてほしい。ストーリーに対する理解がより深まるのみならず、1つの作品に2本のアクションRPGが収録されているに等しい大胆さがほとばしっているので、タイミングを見計らってお試しいただきたい。より一層、本作の盛り沢山ぶりを思い知ることになるだろう。
自由度以外の見所では戦闘もある。実は本作、難易度が高め。特に敵から受けるダメージが結構重く、安易な力押しを試みようとすると即座に体力を空にさせられる。
ただ、相手の周りを動きながら攻撃を仕掛けたり、遠くから魔術を仕掛けるといった戦術を駆使すれば安定しやすいほか、その選択幅が広くて自由度があるという点で安易に難しいとは言いがたい塩梅になっている。それに不意に敵の攻撃が飛んでくることもない。必ず事前動作が入ってから繰り出してくる決まりを徹底している。
特にボス戦はその調整の真価が発揮された仕上がりになっているので、あれこれ試しながらぶつかってみれば選択幅の広い作りの意味を思い知らされるだろう。
これでさらに痛快なのが、別にこの難易度でプレイする必要がないことだ。実は本作、装備欄から難易度をいつでも変えられるようになっていて、どうせならゴリ押し上等でやりたいなら、そちらで進めてしまうのもアリなのだ。もちろん、その難易度を選ぶことによって特定のストーリー展開が見られなくなるみたいなこともなし。
色んな意味で「いいのか、それ!?」となるが、これが本作。全編に渡って自由を重視しているからこその配慮も成しているのだ。ちなみにこの難易度にすると、体力などのステータスも底上げされるため、伝説の魔人らしい暴れっぷりも楽しめる。
ストーリーの設定的には、通常難易度で遊ぶのが自然なのだが、あえて肩書き通りにやるのもまた自由。どこまで緩いんだとなるが、こんなところでも本作は自由なことにこだわり尽くしていて、色んなプレイヤーの欲求にこたえてくれるのだ。
それでいて、収録された要素も盛り沢山で、やるかどうかも自由という極め付きである。こうした特徴と魅力もあって、本作を遊ぶと心の底から「自由すぎる……!」と思ってしまうこと必至。それでいて、大胆でもある内容になっているのである。
伝説の魔人はいかなる冒険の軌跡を描くのか。それを決めるのはアナタ(プレイヤー)だ。
とは言え、行き過ぎている部分も。特にレベルアップに関しては、意外に早く上限値の200に達してしまうところがあり、遊び方によってはレベルリセットによる振り分けが繰り返されるカスタマイズ系アクションゲームのような煩わしさが生じてしまう。
自由なりの結果と言えば結果なのだが、もう100ぐらい上限値は高くても良かったのではと思ってしまったところである。
また、一部はツールの限界ゆえに仕方がないとはいえ、腑に落ちない部分も見られる。特に敵が仕掛けてくる魔法攻撃が壁を普通に貫通するため、時々画面外攻撃を受けて瞬殺されることがあるのはさすがに理不尽だ。
そもそも、プレイヤーのいる場所から離れたところで待機している敵がこちらを察知し、遠距離攻撃を仕掛けてくる設定が不可解。正面から対峙していない敵は動かさないみたいな工夫があればと思ってしまった。
それとストーリー。記憶を辿るエピソードは詳細に描かれている一方で、メインはザックリ描き気味なところがあり、所々前提知識がないと置いてきぼりにされたり、唐突に感じるものが目立つのも気になる。これは構造上止むない部分もあるのだが、せめて「四天将」のイベント周りはもう少し掘り下げの余地があるように感じてしまった次第だ。
ほかにゲームパッド操作だとボタン配置がいささか奇妙なことになるなどの点はあるのだが、これもツールの関係で止む無い側面があるので強くは物申せない感じだ。
これらの粗い部分の存在は惜しまれるが、それでも自由度の高さによっていかようにも遊べる作りは強烈で、遊んでいれば嫌でも印象に残る作品に仕上げられている。
ボリュームも2つのストーリーを収録しているなりに大きく、じっくり取り組むだけでも15時間以上は要する。かと言って片方のストーリーだけ取り組めば、4時間ほどでひと区切り着けられるなど、ボリュームもある程度、自由に制御できてしまうのも面白いところだ。
よくも悪くも自由に遊べてしまう作りと、二重構造のストーリー、そして手応えがありつつも力押しも容認された難易度など、非常に多くの見所と遊び応えを持ち合わせた本作。ちょっぴり某ソウルを思わせる演出も必見の力作だ。どんな風に冒険していくかは完全に自由。難しさや育て方もまた自由。色んな遊び方を試してこのスケールの大きな世界を堪能しよう。
[基本情報]
タイトル:『巡る頂に立ちて』
作者:リガルド
クリア時間:4~10時間
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):無料
◇ダウンロードはこちら
・フリーゲーム夢現
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_13410.html






































