もぐらゲームス執筆陣の選ぶ 2020年おすすめフリゲ・インディゲーム15選

インディーゲーム,フリーゲーム,特集

2020年も多種多様なフリーゲーム・インディーゲームが登場した。
みなさんはどんなゲームをプレイされただろうか?

新型コロナウィルスの感染拡大の影響から、外出の自粛が呼びかけられている2021年の年明けのこの時期は、例年にも増してこれから遊ぶゲームを探し求めている人が多いかもしれない。そんな読者の方々に向け、今年ももぐらゲームスの執筆陣が2020年にプレイしたゲームの中から、特におすすめできるフリーゲーム・インディーゲーム15作品を一挙紹介する。

各執筆者が2020年に遊んだ中で「これは!」となった作品の数々を紹介していくので、気になった作品があればぜひ手に取って遊んでみていただきたい。

昨年の記事はこちら。
もぐらゲームス執筆陣の選ぶ 2019年おすすめフリゲ・インディゲーム14選

Maiden & Spell

アメリカ合衆国・アトランタに所在を置くmino_devによる『Maiden & Spell』はキュートな魔法少女たちが織りなす対戦型2Dシューティングゲーム。見ているだけでも楽しくなる華やかなビジュアルデザインが目を惹く作品だ。日本語表示にも対応している。

2Dシューティングゲームと言えば派手なショットで敵を次々と倒したり、花火のごとき弾幕を次々と潜り抜けたりといった点がクローズアップされることが多いが、対戦型シューティングというジャンルではさながらチェスや将棋のように、いかにして相手の動く道筋を封じて詰みに追い込めるかという点も醍醐味といえる。

本作では攻撃の体系が主に「自機狙い」と「自機外し」の2種類に分かれていて、「自機外し」で逃げ道を無くしてから「自機狙い」で撃ち抜く、あるいは逆に「自機狙い」を避けさせて「自機外し」を引っ掛ける…というように狙いが分かりやすいシンプルな構成をしている。そのため相手を追い込む醍醐味を感じやすく、対戦型シューティングゲームの入門作としてオススメできる内容となっている。ネットワーク対戦が完備されている点も嬉しいポイントだ。
(真野 崇)

関連記事:
対戦型弾幕STG『Maiden & Spell』体験版公開 ほか ~今週のフリゲ・インディーゲームトピックス 

[基本情報]
タイトル:『Maiden & Spell』
制作者: mino_dev
クリア時間: 3時間~
対応OS: Windows
価格: $12.99

購入はこちらから
(STEAM)

(itch.io)
https://mino-dev.itch.io/maiden-spell

ボクはキミのロボット

『ボクはキミのロボット』はドッド工房が制作したノベルゲーム。2020年12月末現在、RPGアツマール、booth、Google Playから遊ぶことができる。ふりーむ「1分ノベルコンテスト」ならびに第23回「3分ゲーコンテスト」の参加作品であり、プレイ時間は極々小。この場の説明を読む時間でプレイしてしまった方が早いくらいだろう。ぜひ説明を読み飛ばして先入観無しでプレイしてみてもらいたい。

本作ではある家庭用ロボットの視点から、4人の持ち主達との出会いと別れが描かれる。それぞれに異なる事情を抱えた持ち主達の姿から、物言わぬあなたは何を垣間見て、そして何を思うだろうか。主人との別離と共に待ち受けているロボットの「初期化」が、様々なストーリーを見るために冒頭から繰り返しプレイするというノベルゲームの構造とマッチしている点も見逃せない。そしてロボットはメモリーを失うことを拒むかのごとく「故障」していく…

短編と言うにしてもあまりにも短いが故に言葉多くにして語ることは難しいが、心震える体験が眠っている、そう言い切れる一本だ。
(真野 崇)

[基本情報]
タイトル:『ボクはキミのロボット』
制作者: ドッド工房
クリア時間: 5分~
対応OS: Windows, Android
価格: フリーウェア

ダウンロード/プレイはこちらから
(RPGアツマール)
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm14630

(booth)
https://booth.pm/ja/items/2641163

(Google Play)
Google Play で手に入れよう

まつろぱれっと

SleepingMuseum『まつろぱれっと』は、画家となって意思を持つ呪いの絵画の少女と呪われた7日間を過ごすスマートフォン向けホラーアドベンチャーゲーム。2020年2月19日より各アプリストアで配信が開始されている。

本作は絵画の呪いを解くため、携帯電話に着信する過去の犠牲者からのメールをヒントにアトリエを探索して絵を描くためのモチーフを探しだし、少女のリクエストに応じて絵画の中へ所定の位置と色で描きこむことによって進行していく。少女のリクエストに沿わない物を描けば呪いによる無慈悲な死が待ち受けている。豊富な死にっぷりのバリエーションが用意されているので敢えてミスをして死因のパターンを楽しむのも一興だ。

過去にもイベントレポートで取り上げたことのある作品だが、最後までプレイできるようになって舌を巻いたのが物語の構成。絵と向かい合う中で明らかになっていく少女をめぐる過去と、徐々に築かれていく呪いの絵の少女との関係性が巧みで胸を打つ。生殺与奪の権を握る恐怖の対象であり、腹立たしさも覚える傍若無人な性格をしている彼女だが、それだけではない想いもまた抱くことだろう。
(真野 崇)

関連記事:
「TOKYO SANDBOX 2019」で見つけた注目のインディゲーム12選+α

[基本情報]
タイトル:『まつろぱれっと』
制作者:  SleepingMuseum
クリア時間: 3時間~
対応OS: iOS, Android
価格: 無料/アプリ内課金あり

ダウンロードはこちらから
(App Store)
Download on the App Store

(Google Play)
Google Play で手に入れよう

5D Chess With Multiverse Time Travel

この作品ほどタイトルを見て「なんじゃそりゃ」と言いたくなる作品もそうそうないだろう。5Dの“D”はdimension、すなわち次元を意味するもので、縦と横の二軸による2D、縦横に奥行きを加えた3Dはコンピュータゲームの表現手法でお馴染みであるし、縦横奥に更に時間の概念を加えた4Dも我々人間が生きている次元としてのほか、某ネコ型ロボットの「4次元ポケット」などで見かける言葉ではある。しかし5Dとは果たしてどういうことなのか。まったくもって「なんじゃそりゃ」である。

『5D Chess With Multiverse Time Travel』はConor Petersen氏が制作した、ボードゲームの「チェス」をアレンジした作品。白と黒のプレイヤーに分かれ、「ポーン」「ナイト」「クイーン」など動かし方の異なる様々な種類の駒を交互に動かし、相手の「キング」の駒を取るようにすれば勝ち、という基本的なルールはチェスと全く同じ。本作ではそこにタイムトラベルや次元の移動の要素が加わっている。各駒は過去の盤面へも移動することが可能になっており、過去へ移動することで平行世界が発生し、枝分かれ以降は平行世界の盤面をそれぞれ進行させていくことになる。

駒が過去や平行世界を行き来することにより、本来1体だけのはずのキングやクイーンが盤面に2体も3体も存在するという通常のチェスではあり得ない状況が発生する。また、タイムトラベルした分だけ平行世界の数が次々と増えていき、平行世界が増えた分だけ考えなければならない駒の動きも増大していき、人間業では全ての手筋を読みきることは困難を極めていく。何気なく動かしたつもりの駒が過去に存在しているキングを詰ませて決着するといったこともまま起こることだろう。「時空を越えた戦い」と言うものがいかなるものなのかを体感させてくれる本作、奇妙奇抜な体験を求める人は是非とも触れてみてほしい。
(真野 崇)

[基本情報]
タイトル:『5D Chess With Multiverse Time Travel』
制作者: Conor Petersen
クリア時間: 15分~
対応OS: Windows
価格: $11.99

購入はこちらから
(STEAM)

密密(ひそひそ)

個人としてはこの話題を切り出す事は本意ではないが、2020年という1年を語る上では、COVID-19、俗に言う新型コロナウィルスの存在というものはいかにせん避けがたい。感染症対策として対人接触の禁止や自粛が各地で呼びかけられたことにより、インディーゲーム周辺においても展示会・即売会の中止やオンライン化を中心に影響が及んでいる。また、小池百合子東京都知事らによって呼びかけられたスローガンの「三密」など、コロナやそれにまつわる事象を作品の源泉とする事例も見られ、公開される作品たちの作風にも決して少なくない影を落としている。

それらコロナ禍の中から生まれた作品のなかでも、unityroomが開催している「Unity1週間ゲームジャム」の「密」をテーマとした回から、椎名アクタロ氏・ますだたろう氏ら7名による共作の『密密(ひそひそ)』をピックアップしておきたい。

『密密(ひそひそ)』は提示された文章をキーボードで正確に入力していく事が目的のタイピングゲームだが、一風変わっているのが「ないしょ話」をモチーフにしている点。キーボードを高速で打鍵すると話し声が大きくなり、巡回者に話をしていることがバレてしまうとゲームオーバーとなる。すなわち本作は素早く入力出来ることが高評価に繋がるというタイピングゲームの常識を覆した作品となっているのである。

暗い世の中にクスリとした笑いを届けてくれるコメディタッチのシチュエーションも本作の魅力。ないしょ話とは別のところでタイピングが鈍ること請け合いだ。
(真野 崇)

[基本情報]
タイトル:『密密(ひそひそ)』
制作者: ボブ寺150
クリア時間: 15分~
対応OS: ブラウザ
価格: フリーウェア

プレイはこちらから
(unityroom)
https://unityroom.com/games/hisohiso

千里の棋譜 ~現代将棋ミステリー~

20年以上にわたり良質なシナリオが魅力のADV・RPGをリリースしているChild-Dreamが2020年2月、無償のアプリゲームとして公開されていたADV『千里の棋譜』のリメイク移植という形でついにコンシューマに進出。長年のファンとしても記念すべき年となった。

将棋を題材としたミステリーADVという本作。せっかくなのでと将棋ライターとしても活躍されているアライコウ氏に打診し、将棋ものとしての見どころにも踏み込んだレビューを執筆いただいた。こちらの記事でも将棋がわからなくても大丈夫という話はしていただいているが、筆者の方でも改めて、将棋がほとんどわからない人視点(かつ、原作アプリ版既プレイ者視点)で語らせていただきたい。

将棋を知らない人に向けたフォローは用語集といったシステム面でも整っているが、物語の面ではやはり、主人公の一人である一ノ瀬歩未の存在が大きいだろう。将棋を知らなくても物怖じせず持ち前の人懐っこさで棋士達に迫っていき、その世界に魅了されていく彼女に視点を重ねることで、少しずつ将棋を理解しながら、作品世界に違和感なく入り込んでいくことができた。

対局シーンもカットイン付きのモノローグや、戦いを見守る者達による実況解説、戦況に応じて移り変わりテンションを上げていく音楽と、あたかも能力バトルもののような演出で、細かいことはわからなくても「場の空気」は十分感じられるものとなっている。

こうして築き上げられた、将棋好きも知らない人も等しく楽しめる土台の上で描かれるのは、勝負の世界で生きる人々の熱く深みのある人間ドラマだ。ミステリー作品としての謎やどんでん返しもあるが、それと同じくらいキャラクターへの先入観を利用したミスリードも見事。ある人物の印象がたった一言で180度反転してしまうようなシーンは、原作アプリ版をプレイして既に先を知っていても改めて息を飲んだ。ここぞというシーンにはボイスも追加され、よりいっそう感情移入できるものとなっている。

コンシューマ化にあたって追加された、完全新規シナリオである第二部も大きな見どころ。将棋やその歴史を題材としたフィクションとしての謎の部分では、第一部と同じかそれ以上に「そんなまさか!」と驚愕する設定が盛り込まれている。現実をベースとしつつもそこから一歩踏み出したいい意味で奇想天外なネタも、Child-Dream主宰の宮下英尚氏が紡ぐシナリオの持ち味と言えるだろう。

そして棋士の勝負を描くドラマの部分では、プロ棋士を目指して奨励会三段リーグ戦に臨む長野圭と雪村香蓮という、棋士の視点における二人の主人公にフォーカスが当たる。原作アプリ版では示唆されつつも描かれなかった「その先の物語」、すなわち将棋ものの宿命とも言える年齢制限を軸に物語が展開。厳しい現実に触れざるを得ない難しいテーマに正面から向き合い、納得感のある描写の積み重ねで描ききるさまは圧巻だ。

リメイクにあたり、『逆転裁判』シリーズ3、5、6作などの楽曲で知られる岩垂徳行氏によって全曲書き下ろしで一新された音楽も素晴らしく、とくにPVでも使用されているメインテーマ曲は無音による「溜め」を置いてからの「感情を揺さぶる最高の一撃」として繰り出されることが多い印象。さまざまな名場面と共に記憶に残るものとなっている。

練り込まれたシナリオやオリジナルのテーマ曲が高く評価されたツクールRPG黎明期の名作『Lost Memory』から始まったChild-Dreamの、ひとまずの集大成とも言えるような作品。将棋がわからなくても全く問題なく楽しめることは筆者がその身をもって保証するので、将棋の知識の有無に関わらず、熱い人間ドラマや予想を上回るような展開が好きなすべてのADVファンに、自信をもってお勧めしたい。
(中村 友次郎)

[基本情報]
タイトル:『千里の棋譜 ~現代将棋ミステリー~』
制作者:Mista Stories(Child-Dream) / KEMCO
対応環境:PC/PS4/Nintendo Switch/Android/iOS
価格:ダウンロード版 3,000円(税込)※iOS版は3,060円、パッケージ版 3,666円(税込)

作品公式サイト
https://www.kemco.jp/game/kifu/ja/

Fanastasis

筆者はこれまでさまざまなフリーゲームをプレイしてきたが、「Fanastasis」を遊んだときの衝撃が忘れられない。広大なダンジョンに張り巡らされた隠し通路や隠し宝箱、各地にばらまかれた大量の謎、そして全編を通して描かれた人間の底しれぬ狂気……こんなゲームが存在するのかと、背筋が凍った。

Fanastasisは、抜け殻の魂である主人公が「カノン王国」を巡り、自身の記憶を取り戻す長編探索系RPGだ。プレイヤーは複雑に繋がりあったダンジョンを自由に探索し、その世界に隠された真実を探ってゆく。ダンジョンには隠し扉、隠し床、隠し宝箱が巧妙に配置されており、そのギミックの量が桁外れに多い。次々と現れる隠し扉を見つける快感に一度ハマると、底なし沼のように抜け出せなくなるだろう。

探索するたび、世界もどんどん広がっていく。海賊たちの沈没船、雷音が響く険しい峠、荘厳な大聖堂、錬金術師たちの実験跡が残る洞窟……何処までも果てしない世界は常に驚きを与えてくれる。一方で、探索するほどカノン王国への違和感を覚えるはずだ。そもそも、まともな人間と会うことはほぼない。各地に残された“残留思念”からは、この地で何かが起きたことが伺える。

明かされていくのは、「聖人」と呼ばれる者への信仰、禁忌に手を染めた錬金術の実験、倫理を逸脱した拷問、悪魔との契約……知れば知るほど、カノン王国の裏に不穏な影がつきまとうのだ。もし真実を知ろうとしてしまったのなら、もうあなたは逃れられない。何処までも深き地獄へと落とされるだろう。
(ノンジャンル人生)

関連記事:聖人、禁忌、拷問、悪魔……長編探索RPG「Fanastasis」が描く、狂気と再誕の物語

[基本情報]
タイトル:『Fanastasis』
作者:もさもさ
クリア時間:50~70時間(第一部 30時間~)
対応OS:Windows
価格:無料
備考:流血表現有り
※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/21044

ミマモロール!

可愛いけど、実はゾンビ(ゾンビドール)な男の子3人組が100人の友達を作るため、冒険を繰り広げていく友情と絶望のショタっ子長編探索RPG。念のためだが、れっきとした公称である。「ゴルトオール」と呼ばれる砂漠の王国の城下町を拠点に、様々な土地へと向かってクエストを攻略しながら進めていく。

そのビジュアルと公称が物語る通り、可愛い男の子が沢山登場するストーリーと世界観が最大の特徴。しかし、主人公3人組がゾンビという設定なりに根っ子はシリアスで、最初は「友達100人作れるかな」の愉快なノリだったのが徐々に暗く、重い作風へと変わっていく急転直下な構成になっている。特に「愛」と「成長」、「生と死」について焦点を当てた展開が素晴らしく、巧みな台詞回し、キャラクター描写でプレイヤーをグイグイと引き込んでいく。演出面でも暴力的、猟奇的な表現が容赦ない勢いで挟まれつつ、それでも前を向いて生きようとする男の子3人組の姿が大変に健気。思わず「頑張ったね……」と、ヨシヨシしたくなる衝動に駆られること間違いなしだ。同時に新たな性癖に目覚めちゃったりするとか、しないとか。

戦闘で勝利しても経験値を得られないため、友達を作った時に得られる「ともだちポイント」を消費し、ステータス強化を図るなど、システム周りでも意欲的な試みが満載。力尽きても3ターン後復活する仕様からゴリ押し容易に見えて、準備がいい加減だと返り討ちにされる、手応えのある難易度も意外性があってユニークだ。演出も全体的に派手かつ、”可愛い”に全振り。メニュー周りのデザインでも、その特色を余すことなく描くほどこだわり尽している。

作風的にやや人を選ぶが、素直に傑作と言える完成度。一風変わったRPGをお求めならぜひ、遊んで……もとい。見守ってみて欲しい1本だ。
さあ、3人の男の子たちのママになりましょう!
(シェループ)

関連記事:3人の子供の友達100人作れるかな大冒険!長編”見守り”RPG「ミマモロール!」

[基本情報]
タイトル:『ミマモロール!』
作者:psycho02
クリア時間:6~8時間(※じっくりプレイした場合は10~15時間)
対応OS:Windows
価格:無料
備考:暴力、流血、犯罪表現、不適切行為を仄めかすイベントあり、ブラウザ版とPCダウンロード版とのクロスセーブ対応

※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/22761

※ブラウザ版(RPGアツマール)
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm8250

ロストヘヴン -Lost Heaven-

記憶喪失の主人公と少女が己の過去を辿るために旅立ち、やがて己に課せられた宿命と対峙する壮大なストーリーを描いた長編RPG。約6年もの製作期間を費やし、完成へと至った経緯を持つ大作でもある。

ストーリー重視を謳うなりに、その進行を妨げるストレス要因を徹底排除し、王道の良さを突き詰めた作りが最大の特色。「ボーナスゲージ」を始めとする特徴的な要素も存在するが、基本は街、ダンジョンなどを巡り、探索しながらストーリーを進めていく素直な内容に徹している。難易度も低め。特にボスはストーリー上の強敵であれ、状態異常が効きやすい仕組みで、どれも初見撃破を狙いやすい。このため、ゲーム的な手応えを求めると肩透かしだが、誰かひとりの単騎プレイには陥りにくく、個々のキャラクターの長所と短所が活かされる展開が維持される、調整の妙が炸裂した低難易度にまとめられている。それがストーリー上のキャラクター同士の関係性を表現する演出になっているのも巧みで、戦闘もストーリーの大事な一幕と位置付けているのが圧巻だ。

肝心のストーリーも息つく暇すら与えぬ怒涛の展開が連発。下手すれば徹夜寸前にまで追い込まれるほど、絶妙な引きと伏線の回収劇で楽しませてくれる。演出も凝っていて、主に戦闘ではスキル使用のたびに派手なカットインが挿入。2020年12月下旬のアップデートではなんとボイスも追加され、より賑やかなものへと進歩している。(今後もサブクエスト追加などが予定されているとか)

ストーリーが面白く、難易度も低めなRPGをお求めの人には間違いなく刺さる1本。2020年のRPGツクール製作品の象徴的一作と言っても過言ではない完成度の高い逸品なので、未プレイならばぜひ。おすすめです。

ただ、ストーリーの訴求力は本当に桁違いなので、時間を吸われすぎないようご用心。(※気づいたら徹夜してた経験者は語る)
(シェループ)

[基本情報]
タイトル:『ロストヘヴン -Lost Heaven-』
作者:なみだ
クリア時間:15~20時間
対応OS:Windows
価格:無料
備考:流血表現有り

※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/23154

レトロ自販機クエスト

令和の現代では絶滅危惧種に近い存在となった「食品自動販売機」(以下、食品自販機)。それらを取り扱う、「オートパーラー」、「オートレストラン」などの店舗を制圧及び破壊し、新しき時代の流れを打ち立てんとする謎の企業「TOTTIS(トッティス)」の暴挙に「レトロ自販騎士(レトロナイト)」に選ばれた昭和生まれの主人公が立ち向かう、荒唐無稽すぎるストーリーを描いた長編RPG。

関東1都5県に点在する「オートパーラー」、「オートレストラン」などの店舗を訪れ、その地を支配するTOTTISたちを追い払う拠点解放に特化した”店舗巡り”ならではのテンポの良さ、プレイヤーを退屈させないよう工夫を凝らした多彩なイベントの数々が特徴。ストーリーも設定通りの荒唐無稽ぶりで、終始「どうしてこうなった!」と叫びたくなる超絶怒涛のツッコミ祭り。だが主人公の台詞を始め、古きを知り、新しきを知る”温故知新”のテーマが裏に込められており、時代の流れと共に忘れ去られていく物への接し方などについても考えさせられる、侮りがたいものになっている。登場する食品自販機も大半が実物で、ドット絵も忠実に再現。一部の店舗も実名で、許可を取れた所に限定し、2018年9月時点のデータを元に作り込んでいる辺りに作者のこだわりが光っている。

ボリュームもメインストーリーだけで12~15時間以上と大きめ。称号集め、クリア後の高難易度ダンジョンと言ったやり込み要素も用意されている。ネタ色強めだが、2020年度屈指の熱血RPGと筆者は思ってやまない傑作。難易度も低め、かつ気軽に遊べるので、興味があればプレイいただきたい。

この荒唐無稽に次ぐ荒唐無稽の横殴り暴風雨を全身の毛穴で受け止めろ!全てを終えた時、アナタは各地のオートパーラーなどへ足を運びたくなること間違いなし!
(シェループ)

関連記事:俺たちには守護らねばならぬ自販機(レガシー)がある。愛と正義の熱血長編RPG『レトロ自販機クエスト』

[基本情報]
タイトル:『レトロ自販機クエスト』
作者:アフロマンサー
クリア時間:12~15時間(※やり込み要素コンプを除く)
対応OS:Windows、Mac
価格:無料
備考:PC版ダウンロードには「ふりーむ!ID」の作成が必須、実名店舗のデータは2018年9月時点のものを使用

※プレイはこちら(RPGアツマール)
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm16942

※ダウンロードはこちら(※要:ふりーむ!ID)
https://www.freem.ne.jp/win/game/24334

Valfaris(ヴァルファリス)

鮮烈な暴力表現、重厚なヘビーメタルサウンドが特徴のアクションゲーム『Slain: Back from Hell』を手掛けたアメリカ・テキサス州の独立系開発チームSteel Mantisの新作。2019年に海外先行で発売。日本国内はXbox One版が2019年11月、翌2020年1月にNintendo Switch、PlayStation 4版が発売された。

遠距離用の銃火器、ブレードを始めとする近接武器を使い分けて襲い来る魑魅魍魎どもを蹴散らし、暗黒の地へと化した要塞「ヴァルファリス」を進み、その真実に迫るノンストップ構成の横スクロールアクションゲーム。銃火器を照射しながら敵を倒していく流れから、いわゆる「ラン&ガン」を想像する所があるが、実際は的確な動作が攻略の要となる、堅実なアクションゲームに仕上がっているのが特徴。特にボス戦は手に汗握る一進一退の攻防の連続。具体的には近接と遠距離の使い分けが熱く、サブウェポンや防御シールドを使うのに必要な「エネルギーゲージ」の回復仕様(近接攻撃を当てると回復)がそれを引き立てている。ゲームが進むと各種武器も増え、戦術の幅が拡大。さらに「ブラッドメダル」なるアイテムを消費すれば強化も図れるが、入手のために寄り道(探索)が試されるなど、一筋縄ではいかない仕組みにしているのが面白い。

グラフィックも息を飲むほどの濃さ。音楽もバリバリのヘビーメタルで、演出周りもメッタメタのブワンブワンである(武器入手時によく分かる)。

難易度も高めながら、トライ&エラーを重ねる度にどんどん動きが洗練されていく、アクションゲームの勘所を押さえたバランスが絶品。操作性も良好、区切りなくノンストップで進むステージも山あり谷ありで飽きさせない。大変濃ゆい見た目だが、その実は凄く丁寧に作られた良作。アクションゲーム好きなら要チェックだ。
(シェループ)

[基本情報]
タイトル:『Valfaris(ヴァルファリス)』
発売・開発元:Steel Mantis / Big Sugar / eastasiasoft
クリア時間:4~5時間
対応OS:PC(Windows)、Nintendo Switch、PlayStation 4、Xbox One
価格(税込):¥2,500(Nintendo Switch、PlayStation 4)、¥2,900(Xbox One)、¥2,570(Steam)
CERO:D(17歳以上対象)※暴力・出血表現あり

購入はこちら
※PC(Steam)

※Nintendo Switch
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000023028.html

※PlayStation 4
https://store.playstation.com/ja-jp/product/JP0078-CUSA17815_00-VALFARIS00000000

※Xbox One
https://www.microsoft.com/ja-jp/p/valfaris/9nddsfpb5w56?activetab=pivot:overviewtab

Fury Unleashed

かつて人気を博したコミックシリーズ「Fury Unleashed」の作者ジョン・コワルスキーはスランプに陥っていた。その原因を突き止めるため、「Fury Unleashed」の主人公フューリーはジョンの過去作を遡っていくという、一風変わった設定のアクションシューティングゲーム。

銃火器を乱射しながら敵を撃退していくアクションゲームこと「ラン&ガン」、『Dead Cells』に象徴されるローグ系要素を持つ探索アクションを重ね合わせたゲームシステムが特徴。また、漫画の世界が舞台にちなんで、マップはコマ割り構成で、1コマごとに戦闘と探索をこなす、”いかにも”なものになっているのも見所だ。

戦闘も基本、銃火器と近接用の武器を駆使して敵を問答無用で倒していく痛快なもの。ただ、ダメージを受けず連続して倒すとコンボが発生し、それが多いほどフューリーの基礎能力強化に必要な「インク」を沢山獲得できるので、ある程度考えながら動くことも試されるのが攻略面に深みを与えている。インクで強化できる能力も永続されるため、繰り返しプレイすればするほど、大胆な行動が可能になっていくバランスが絶妙。さらにローグ系のゲームが苦手な人を対象にした「イージーモード」も完備。しかもゲーム速度、ダメージ量、回復量に敵の体力まで設定可能な超親切設計である。

漫画の世界が舞台なりの演出や表現も満載で、ラフスケッチ調のコマが舞台になる場面は絵的にインパクト十分。見た目はラン&ガンらしい重厚、かつ暴力的な香りを漂わせつつ、その実はローグ系のアクションゲームが苦手な人から好きな人まで門戸を開いた優しい内容。アクションゲームとしても操作性などの基礎部分の完成度が高く、手触り感抜群の仕上がりになっている。日本語にも完全対応しているので、設定などに惹かれたならぜひ、お試しいただきたい良作だ。
(シェループ)

[基本情報]
タイトル:『Fury Unleashed』
発売・開発元:Awesome Games Studio
クリア時間:4~7時間
対応OS:PC(Windows、Mac、Linux)、Xbox One
価格(税込):¥2,050(Steam)、¥2,350(Xbox One)
IARCレーティング:16歳以上(激しい暴力)
備考:海外ではPlayStation 4、Nintendo Switch版も発売中

購入はこちら
※PC(Steam)

※Xbox One
https://www.microsoft.com/ja-jp/p/fury-unleashed/9msrmb4l8lrj?activetab=pivot:overviewtab

疾風戦記フォースギア2

カプコンの人気アクションゲーム『ロックマン』のオマージュ作品『疾風戦記フォースギア』(紹介記事)の続編。横スクロールのステージクリア型アクションとしての基本形、ステージセレクトや相性の概念などのロックマン由来の要素を踏襲しつつ、究極進化を遂げた作品に仕上がっている。

取り分け印象的なのはプレイヤーキャラクターの機動力とゲーム全体のスピード感向上。前作では条件達成で解禁されたアクションの2段ジャンプがデフォルト化、高速ダッシュの新規追加により、ステージ攻略とボス戦がより激しく、スピーディに展開されるようになっている。チャージ攻撃のたびエネルギーゲージを消費するシステムも、空になると自動回復する仕組みに改められ、主にボス戦時の相性を突く戦術が取りやすくなった。ステージ内で獲得した「Eクリスタル」を用い、ステータス強化を図るシステムも対象範囲が拡張したほか、新たに特殊能力を付与する「カスタムチップ」の登場で、より自分好みの強化を図れるようになっている。さらに残機制の廃止、チェックポイントの可視化、難易度選択機能の実装などで遊びやすさも向上。第二の主人公「セツナ」の追加で、倍増した本編ボリュームも大きな見所になっている。

前作はロックマンの面影が強かったが、今作では豊富な成長要素と柔軟性の高い難易度を特色とする、独自の味付けが光るアクションゲームへと進歩。グラフィック、演出周りも究極進化を遂げており、特にボスたちの躍動感溢れる動きと多彩な攻撃アニメーションの作り込み具合には度肝を抜かれること請け合い。

ストーリーが前作の続きな点で若干、ハードル高めだが、アクションゲーム好きならそれを乗り越えてでも遊ぶ価値のある力作。ただ、前作プレイの上で遊べば、進化具合の驚きが”究極的に”増すので、できればセットで遊んでみて欲しい。
(シェループ)

関連記事:究極進化を遂げた、巻き込まれ系武装少女が戦うアクションゲーム正統続編『疾風戦記フォースギア2』
関連記事(前作):序盤と終盤のギャップが際立つ、”ロックな”フリーACT『疾風戦記フォースギア』

[基本情報]
タイトル:『疾風戦記フォースギア2』
制作者: Master.typeX
クリア時間: 1時間半~2時間(※難易度「ノーマル」時)
対応OS: Windows
価格: 無料

ダウンロードはこちら
※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/21774

※BOOTH
https://mastertypex.booth.pm/items/1759172

※itch.io
https://mastertypex.itch.io/shippu-senki-forcegear-2

※SYAKERAKE
https://www.syakerake.jp/89

ベビーシッター2XXX

「3文字で敵を殺すRPG」を呼称する、ステージクリア形式のノンフィールドRPG。手持ちのかな文字を使って3文字の「コトダマ」を作り出し、攻撃に防御、回復などの行動を起こして敵を撃退していく”ことばのパズル”な戦闘システムが最大の特色。

しかも、手持ちのかな文字は使い捨ての資源。無計画に使いすぎれば、コトダマが作れなくなってしまう。持てるかな文字も最大18個、追加分を手に入れる機会も限定されているに加え、何が手に入るかも分からない(※ランダム)。それもあってどれを使い、どれを残すかの判断が常時試される、取捨選択の面白さと難しさがあり、思考型パズル、マネジメント系ゲームが好きなプレイヤーには心底たまらないRPGに仕上がっている。特に18個しかかな文字を持てない制限が絶妙で、文字入手のランダム仕様も相まって、プレイするたびに違った展開になる。同じかな文字を3つ揃えると発動する「ぞろ目コンボ」なる必殺技の存在も面白く、窮地を容易に打開するほどの威力を持ちつつ、どこでそれを発揮させるか、複数回分貯めるかなど、あれこれ考えるきっかけを与えてくれる。それらの特徴も相まって、何のコトダマを作るか考えるだけで軽々と30分、酷いと1時間以上吹き飛ぶことも。

ステージ攻略不可能な詰みの状態に陥っても、推奨ステータスに強化してやり直す選択肢も備えているなど、意外に良心的な難易度も大きな魅力。ストーリーも明るくユルいノリで、お金大好きな少女と謎の幼女の愉快な掛け合いが楽しい。作ったコトダマに対し、色々な表情を見せてくれるのも必見だ。
執筆時点でも「第12回 WOLF RPGエディターコンテスト」公式サイトの応募作品ページからしかダウンロードできないのだが、それでも遊んでおく価値と見所が詰まった1本。一風変わったRPGのほか、パズルゲームが好きな人にもおすすめの傑作だ。
(シェループ)

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[基本情報]
タイトル:『ベビーシッター2XXX』
作者:二六千里
クリア時間:2時間~3時間(試行錯誤込みだと約2~3倍)
対応OS:Windows
価格:無料

※ダウンロードはこちら
https://www.silversecond.com/WolfRPGEditor/Contest/entry.shtml#73

旋風の逆転劇

ヴェルドネア帝国の皇帝ヴィルヘルムは大陸統一を目標に掲げ、支配地域を拡大するも、イリミア王国の王子ルイスが旗揚げしたイリミア軍に巻き返されてしまった。破竹の勢いで帝国まで攻め上がる彼らに対し、皇帝は居城に帝国の全兵力を集結。大陸の未来をかけた最後の戦いが始まろうとしていた。

……という、いきなり最終決戦から始まるターン制のシミュレーションRPG(SRPG)。しかも、プレイヤーが指揮するのは皇帝率いる帝国軍!敵側の視点で少数精鋭の王子率いる軍を迎え撃つ、ありそうでなかった設定を追体験できる作品になっている。

戦術面も相手が少数精鋭のため、兵数の優位を活かした人海戦術が基本。だが、解放軍のメンバーは全員が強力な伝説の武器を所持。さらに再行動を発生させる踊り子などの支援メンバーも擁しているので、そう簡単には倒せない。それどころか、帝国軍の精鋭「四風将」の男たちを言葉巧みに誘惑して寝返らせる魔性の王女までいるため、急いで倒さないと戦力が急低下してしまう!そんな最悪の事態を避けるため、自軍の能力を1ターンだけ底上げする「号令」、1人を集中的に叩く戦術など、あらゆる手を尽くして有利な状況を作り上げていくのが勝利(逆転)へのカギとなってくる。

設定通りの胃が痛くなる駆け引きが楽しめるSRPGで、主にこのジャンルに慣れ親しんだ人なら爆笑必至の作り。前述の魔性の王女に象徴される”SRPGあるある”ネタも満載で、特に王子たちが精鋭を育て上げた背景、戦術方針が語られる拠点メニュー「情報収集」の一幕には心当たりのある人なら「ギクッ!」となってしまうはず。マップも1つだけながら密度は濃く、3種+αの難易度もあってやり込み甲斐十分。ストーリーにも少し捻りが加えられていたりと、短編ながら侮りがたい見所がある。

主にSRPG経験者ならぜひ、遊んでみて欲しいアイディア賞モノの逸品だ。
(シェループ)

[基本情報]
タイトル:『旋風の逆転劇』
作者:ふるふる
クリア時間:1~3時間
対応OS:Windows
価格:無料

※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/23608

  • シェループ(@shelloop

    様々なゲームに手を伸ばしたがる人。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションを与えると喜びます。

    Webサイト:box sentence

  • ノンジャンル人生(@nongenre_zinsei

    普段からRPGの考察と『メイジの転生録』の話ばかりしている人です。2016年にはもぐらゲームスにて連載「フリーゲームをはじめよう。」を寄稿し、近年はVR・VTuberの記事なども執筆しました。noteでは「一期崎火雀」名義でゲーム関連のコラムを書いています。

    自身もRPGを制作中。

    note:一期崎火雀(ノンジャンル人生)

  • 中村友次郎(@finalbeta

    フリーゲームと同人ゲーム、日本ファルコム作品をこよなく愛するゲーム好き。システムに凝ったRPGをとくに好んでプレイします。運営型ゲームはメギド72をPvPメインで、あとは原神など。
    過去に十数年ほど、窓の杜の連載記事「週末ゲーム」の編集と一部執筆を担当していました。

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。