回避も必要だけど、一番大事なのは突撃―弾幕“スラッシュ”アクションシューティング『Rotschwert(ローシュヴェート)』
本記事で紹介する『Rotschwert(ローシュヴェート)』は、画面全体を縦横無尽に動き回れてしまう開放的な楽しさと、敵の懐に飛び込む爽快感を売りにした弾幕アクションシューティングゲームである。
正直、弾幕系ゲームのプレイ経験が少しでもあるなら、縦横無尽の四字熟語に首を傾げるかもしれない。
それもそのはずで、弾幕系ゲームと言えば、画面の半分以上を敵の弾が覆い尽くすのが特徴であり、ジャンルの象徴。覆い尽くされてしまうがゆえ、プレイヤーが動ける範囲も必然的に狭くなり、動きも細々としたものになってしまう。
このようなゲームに「縦横無尽」の四字熟語は筋違いでは、と物申したくなるのも無理はない。また、懐に飛び込むことにしても自滅行為の印象を抱くかと思われる。
ところが、本作はその四字熟語で表現できる。さらに、懐に飛び込む行為が自滅にならないうえ、立派な戦術として成り立つ特徴があるのである。詳細は後々に紹介していこう。
結論として、本作は「飛び込む覚悟が正義」とも言える戦術性とゲームバランスが異彩を放つ意欲作なのである。
蒼きウサギとなり、最後まで生き延びることに挑む横スクロール型弾幕アクションシューティング
アクションシューティングと称したが、実際の内容はどちらかというとシューティングゲームに沿っている。主人公(自機)「ブルー・ラビット」を操作し、「セグメント(Segment)」と称された、強制スクロールで進行するステージを順番に攻略していくというものだ。
スクロール方向は横。敵は四方八方から現れるため、その位置に応じて自機を動かし攻撃を展開するのが基本戦術となる。ここまでは一般的なシューティングゲームと変わらないが、システム面には独自の工夫が凝らされている。
まず、ステージクリア条件。多くのシューティングゲームでは最後に現れるボスを倒すことがクリア条件となるが、本作ではほとんどのステージで「生き残ること」が求められる。ボスは存在するものの、倒すことが条件となるのはごく一部のみだ。
もうひとつに主人公のライフ。本作はダメージ制を採用しており、1回の攻撃で即ミスにはならない。代わりに数値化されたライフが減少し、0になるとミスとなる。
仕組みそのものは別に真新しいものでもないのだが、このライフの初期値がやたら高めに設定されているのが本作特有のもの。なんとゲームスタート時点で「16」ものライフを宿している。しかも、基本的にダメージを受けた際に減るのは1。
加えてこの数値は最大値ではなく、後々のステージで回復アイテムを獲得すればさらに増やせる。つまるところ、やたらと打たれ強いのである。
ただ、ダメージ時の無敵時間は存在しないため、多段ヒットが入るとゴッソリ減ってしまう。しかしながら、最初から簡単にやられないほどの耐久力を自機が宿している点でも異例だろう。その特色もあって、本作の独特さを物語る象徴になっている。
そして、さらなるものが主人公のダメージ判定と仕様だ。というのも、ダメージを受けるのは敵弾を受けた時だけ。それ以外の敵への接触ではダメージを受けない。それどころか、敵への接触そのものが攻撃手段のひとつとされている。
攻撃自体はほかにも2種類のショットが用意されているのだが、それらとセットで敵への接触という名の体当たりも使える。これにより、敵に張り付いてダメージを与えながら、ショットも叩き込むという鬼に金棒の極みな戦術が決め込めるのだ。
本来なら、接触自体もダメージになってやられてしまうのが、逆に敵への攻撃手段になる。それどころか、ショットと併用して大ダメージも与えられる。この仕組みだけでも、相当にぶっ飛んでいるのが察せるだろう。同時にシューティングゲームとしても異例の試みが炸裂しているのだ。
しかも、このような仕組みがあるからこそ、敵の懐にも飛び込み放題。そのまま攻撃を仕掛けてくる前に黙らせたり、「背中がガラ空きだぜぇ!」な一手を決めることもできる。時によっては、その行為自体が回避として成り立つこともある。一般的なシューティングゲームなら自滅行為も同然なのに、そうはならない時点でもこの仕組みの異質さが察せるかと思う。
これら3つの仕組みにより、本作は弾幕がテーマのゲームとしては異例の縦横無尽な立ち回りを実現。加えて懐にも飛び込み放題、攻撃も叩き込み放題という大胆の極みにもほどがある戦術まで可能にしているのだ。
基本の作りこそ、シューティングゲーム寄りだが、肝心の中身は異例の試みが異彩を放つ仕上がり。文字通りの意欲作となっている。
弾幕系に限らず、純粋なシューティングゲームとしても異例の突貫推奨スタイルが光る
魅力もここまでに紹介した通り。縦横無尽で懐に飛び込み放題なことだ。
特に弾幕系となると「定位置キープ」が基本戦術となるが、本作ではそれがほとんど通用しない。むしろ積極的に動き回ることが推奨される。
前述したように、主人公の攻撃手段には体当たり以外に2種類のショットが用意されている。ひとつは前3方向に分身を飛ばすワイド型のショット、もうひとつが分身をマシンガンのように連射し、近くにいる敵を追尾する性能を持ったショットだ。
いずれも単体でも十分敵に対抗可能と思えるほど、優れた使い勝手を持っていそうに見える。実際、使い勝手は優れているのだが、威力はあまり高くなく、耐久力の高い敵に対してだと、そこそこ撃ち込む必要がある。しかも、本編ではその種の敵が結構、頻繁かつ複数出現しがち。そのため1体ずつ相手していると、弾幕を展開されかねない。
ならば、どうするのかと言えば……ズバリ、突貫である!ショットを発射しつつ、敵をまるでペンでなぞるかのように動き回ってダメージを与えながら一網打尽にすればいいのだ。当然ながら、これは定位置をキープする立ち回りだと絶対に不可能。むしろ、それを意識しすぎると、返って敵の攻撃を増やす結果に繋がってしまう。
そのような調整が図られているのもあって、縦横無尽に動き回ることが有利に働くこと多し。どちらかというと定位置キープが望まれやすいシューティングゲーム(特に弾幕系)としては、異例のゲームバランスを確立させているのだ。これをひと言でまとめるならば、危険行為推奨ならぬ突貫推奨シューティングになるのだろうか。
実は突貫そのものが回避になるパターンはほかにもあったりする。と言うのも本作の敵の多くは、攻撃するまでに一定の間を挟む。画面内に現れて間もなく攻撃してくることがなく(※後述するが難易度によっては異なる)、一旦、シグナルのエフェクトを出してから撃ってくるのである。また、基本的に攻撃の大半は敵の前方に繰り出される傾向も高い。
これが何を意味するかと言うと、相手の背中(後方)はガラ空きになりがち。そのため、突貫自体が最も安全な回避策として成立しやすい。正面に攻撃を繰り出されるよりも前に後ろを取ってしまって、そこから体当たりと追尾性能のあるショットでハチの巣にするやり方が普通に通用してしまうのだ。
「そんな無茶苦茶な……」と思うかもしれないが、実際に試してみれば、驚くほどカンタンに背中を取れてしまうのが分かるはずだ。同時に定位置をキープしながら、隙間を潜り抜けながら弾幕を避けてショットを叩き込む弾幕シューティングのお約束が覆された仕上がりに、「なんと大胆で豪快な!」となってしまうこと請け合い。
こんな無茶苦茶なことができながら、一方的かつ楽々な展開にならないようにバランスが調整されているのも必見。敵が突飛な動きをしながら現れたり、耐久力の低い複数の敵に混じりながら硬い敵が現れるなど、ちゃんと突貫行為を戦術のひとつとして活用することが要求される展開が節々に仕込まれている。また、いくら敵に接触してもダメージがないとはいえ、弾は接触すれば問答無用でダメージだし、場合によってはそれを潜り抜けることも必要になる。
お約束を覆しつつも、それによる破綻を生じないように穴を埋める。そのような気配りも徹底されていて、単にジャンルとしての奇抜さ優先で作ったわけではない本気を実感させられるだろう。同時にシューティングゲームはアクションゲームなどと違い、画面内の全範囲に動き回れるという、地味ながら大きな特徴を最大限生かしたものにも仕上げられている。
特徴諸々から奇抜さが勝っている節はあるが、それだけに終わらない遊び応えもある。繰り返しになるが、少しでも仕組みが気になったのならぜひ、試してみていただきたい。ちなみに無料の体験版もあるため、触りだけ確かめる味見プレイも可能だ。どちらの選択肢でも構わないので、この縦横無尽の新しさと面白さを確かめてみていただきたい。
定位置に留まるな、動け。そして、懐に飛び込みまくって仕留めろ。
ゲームプレイ全般に焦点を当ててしまったが、舞台となるステージの構成もまるで何かの映像作品を見ているかのような体験を味わえる作りになっていて面白い。スクリーンショットの印象だと、背景パターンの少なさとグラフィックの色数の少なさから、無機質な印象を抱いてしまうかもしれないが、実は結構、演出的に激しい。
加えて、これらの演出と音楽が絶妙に連動した作りにもなっている。弾幕系に限らず、シューティングゲームは音楽がゲーム側の展開や背景と上手く重なると、気分が高揚されやすい特徴があったりするが、本作はその気持ちよさにもこだわり尽くしている。場面によっては、あまりに絶妙すぎてトリップ状態になったり、鳥肌も立ったりするような感覚が得られるので、要チェックである。
また、本編のステージ総数は4つと短めで、デコボコとした地形のような起伏はあまりないのだが、その分、敵の出現パターンやイベント、演出で個性付けを図る形でフォロー。1ステージ当たりの規模も若干長めというのもあって、(個人差はあれど)物足りなさは感じにくい。
物足りないと感じた場合も、加減の異なる4種類の難易度が用意されているので、あえて苛烈な戦いに挑んでみるのも一興だ。ちなみにその苛烈な戦いが楽しめる上位難易度「Vivid Nightmare」「AlterEgo」は誇張抜きに手加減無用の難しさである。
突貫行為の活用のみならず、弾幕回避のセンスも問われ続けるので、腕に自信があるならば最初からこちらを選んでみるのもアリだ。逆に「できれば手加減の上で……」とあれば、まずは無難に「Relaxed Reverie」から始めましょう。
総じて弾幕系シューティングとしては異例の縦横無尽さに象徴されるように、独自の個性と手応えを追求しきっている本作。各ステージのクリア条件が生存メインでボス戦が少なめゆえ、若干盛り上がり所が少なかったり、一部、ダメージ前提と思しき場面が見られるといった好みの分かれる部分もある。
ただ、この敵弾のみ気にすればいいだけの開放感と懐に飛び込んで敵を仕留める手ごたえは間違いなく唯一無二と言える。
前述したように体験版もあるので、少しでも興味があればそちらからお試しを。そして、ちょっと変わった弾幕系のゲームをお探しであれば、ぜひプレイしてみていただきたい。作中の世界観は悪夢の中とされているのだが、遊びそのものはむしろ吉夢だ。
さあ、存分に動き回りましょう。当たりにいきましょう!
[基本情報]
タイトル:『Rotschwert(ローシュヴェート)』
作者:Winged Fox
クリア時間:20~25分
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):580円
◇購入はこちら



































