そのKanji……良しっ?いかがわしさ全開の間違い探しゲーム『SushiCup Legend』で、目指せMenkyo-Kaiden
寿司屋といえば、寿司以外に何が思い浮かぶだろう?
……え、ラーメン?うどん?
いや、確かに近ごろの寿司屋(主に回転寿司屋)はサイドメニューも象徴的っちゃ象徴的だけども、それ以上に昔からの定番があるでしょうよ。
そう、魚の漢字がずらりと描かれた湯呑みだ。
あれには「SushiCup」という名前があるらしい。
そして、そんな「SushiCup」には「SushiCup Master」なる職人がいて、日々、次世代の「SushiCup Master」輩出のための育成と、自らの「Judge Power」を鍛錬するための修行に明け暮れているという。
そんな「SushiCup Master」の修行を追体験できるのが、こちらの『SushiCup Legend』である。
さあ、このゲームを通して寿司屋の象徴的存在たるSushiCupの成り立ちと、それを作ってはONOREを鍛え続ける職人たちの血と汗と涙の奥深きHistoryを追体験してみよう。
念のためだが、すべてフィクションです。フィクションであってくれ。
(寿司屋の湯呑み専門とか、どうやって生計立てるのよ……)
アナタは「SushiCup Master」。弟子が仕上げたSushiCupを見定め、良し悪しをJudge
余計なお世話にして、考えたら負けの極みなボヤキをしてしまったが、とにもかくにも。
本作『SushiCup Legend』は、2025年4月18日よりSteamで販売中のWindows PC向けタイトルだ。開発は「空手の騎士」こと「Knight of Karate」なるナゾのインディークリエイターチームが担当している。もしかすると、クリエイターではなくてグラディエーターのチームかもしれない。
ゲームとしてはズバリ「間違い探し」である。プレイヤーは寿司屋の湯呑み「SushiCup」専門の職人「SushiCup Master」になり、弟子が作り上げた「SushiCup」の仕上がりを全角度(表面のみ)から見て、その良し悪しを判定していく。
良し悪しの決め手は、SushiCupに描かれた漢字……もとい、Kanji。そこに正解として提示されるKanji以外の“なにか”が描かれていたならSushiCupを投げ割り、逆に正解のKanjiだけがちゃんと描かれていたらGreen Teaを注ぐ。
ゲーム的には「良しっ!」「悪しっ!」のどちらかをポチッと選ぶだけである。
(ところで「悪しっ!」の読みは普通に「あしっ!」でいいのだろうか。)
もし、正解以外のKanjiが描かれているのを見落としてGreen Teaを注いじゃったり、正解通り描かれているのに間違って投げ割っちゃったり、制限時間内にJudgeできなかったりでもしたら「落第」と書いてFAILED(ゲームオーバー)だ。
このルールにしたがって、ステージごとに提出されるSushiCupの全問連続正解に挑むというのが主な内容となる。
具体的な流れとしては、Step(段位)ごとに用意されたステージを1つずつ攻略していく形である。Stepの最後には総まとめステージ(アクションゲームなどで言うところのボスステージ)があり、それをクリアできると次のStepへと進める。これを繰り返し、最終的にはMenkyo-Kaidenを目指すのだ。
なお、SushiCupに描かれるKanjiはすべて魚介類にちなんだものになる。また、全問連続正解ゆえ、失敗は1度たりとも許されない。失敗すれば、どんなに連続して正解していようがゲームオーバーとなり、ステージの最初(1問目)からやり直し。
SushiCup Masterは完璧でなくてはならないのだ。Masterたるゆえんである。
襲い来る4行5列の魚介類Kanjiとゲシュタルト崩壊に打ち勝て。安心しろ、SHOUKIはある!
本作の魅力にして、Masterに扮する我々が経験する悪夢。それはゲシュタルト崩壊だ。
ゲシュタルト崩壊とは、文字・図形を持続的に注視し続けることで、認知が低下してしまう知覚現象。わずかに見るだけなら何の文字か、図形かを判断できるが、長い間見続けると判断しにくくなって間違えやすくなってしまうのである。
あえてここで宣言しよう。本作をプレイすれば、大半の人がゲシュタルト崩壊のなんたるかを理解すると同時に、それと戦わざるを得なくなる!
なぜなら、魚介類のKanjiを見ながら、間違いを見極めるのがメインのゲームだからだ!

「いやいや、そんな……」と思うのなら、体験して見てみるがよい。SushiCupに並ぶ4行5列の魚介類Kanjiを!基本、魚介類以外のKanjiは出てこない設計もあって、やればやるほどに全部が同じKanjiであるかのように見えてきてしまうはずだ。
そして、段々とゲシュタルト崩壊状態になるONOREと、理想のONOREとの戦いに向き合わねばならなくなる。そう、SushiCupのJudgeとはONOREとの戦いであり、その真髄と恐怖を本作では余すことなく堪能できるのだ。これこそが本作の魅力。そしてある種、地獄に等しい悪夢だ。
「ヤバそう……」となったかもしれないが、実物は思った以上どころか、斜め上にも突き抜けている。また、ゲシュタルト崩壊が起きるなりの難しさと納得感がゲームバランス全体で表現されているのにも注目である。
特に間違いを見落とし、ゲームオーバーになった時は、自らが「ゲシュタルト崩壊に負けた」という納得感が勝るのもあって、あまり理不尽さがない。そして、思わず笑いがこぼれてしまうほど、楽しく感じられるものになっているのだ。
全体の構成面でも、意外に適切なバランス調整がされている。前述したように本編はステージクリア方式で展開。ステージが進むたび、正解として提示されるKanjiの数、問題の総数が増えていく。
Kanjiは最大10個以上、問題は最大5個以上に増えるのだが、この限界値が絶妙。苦しくありつつも、ギリギリ突破できそうな希望を感じられるものになっている。
そして、正解として提示されるKanjiもホドよく覚えられて、かつキツさも感じられるラインナップ。加えて、間違いとして示されるKanjiも凄く分かりやすい。
なぜなら、ほとんどが創作。現実に存在しないKanjiなのだ。

なので、読み方さえ把握していれば「勝手にKanjiを創造するな!」と即座に気づける。逆に気づけなかったら、ONOREのMUCHIを呪いたくなってしまうほどなのである。
そのような分かりやすいものを交えた工夫がされており、適切なバランスに収まっている。Busyuの違った現実に存在するKanjiも途中から出てくるようになるのだが、それも本編が後半に近づいた頃と、タイミング的に理にかなっていて、イジワルに感じにくい。

確かにゲシュタルト崩壊に悩まされる側面があるのは否定しないし、それで苦しむこともAMATAだが、いざやってみるとバランスの良さに驚かされるはず。同時にやり過ぎないよう、ストレス最小限に笑って楽しめる塩梅を心がけようとする本作を作られたグラディエーター……じゃなかった。クリエイターの信念みたいなものも感じられるはずだ。
こうした工夫もあって、本作でしか得られない栄養と遊びが詰まった内容に完成されている。特にバランス調整の上手さはやればやるほど「意外にいい塩梅だ……」と唸ってしまう魅力があるので、プレイする機会があったら注目いただきたいところだ(ちなみに難易度も4段階から選べるので、好みの塩梅で楽しめる)。
ついでに本作は魚介類のKanjiがこぞって登場するのもあり、それに詳しくなれるメリットもある。何度かプレイすれば、実際の寿司屋に置かれた湯呑みのみならず、メニュー表もスラスラ読めるようになり、ゆくゆくは魚介類のスペシャリスト中のスペシャリスト「さかなくん」さんに迫れる……かどうかはONOREの努力とやる気次第です。
弟子のMenkyo-Kaidenを成し遂げた時……これ以上のことは「See for yourself!」
もうひとつの魅力としてストーリーもある。
最初から最後まで、間違い探しの問題を解き続けるだけの単純なクイズ系ゲームと思いきや、実はちゃんとした(?)ストーリーもセットで語られる作りになっているのだ。
あらすじ自体は単純で、主人公の「SushiCup Master」が弟子の成長とONOREの鍛錬に励むというもの。最終的に弟子が「SushiCup Master」の修練に耐え、無事、Menkyo-Kaidenを果たせるかを見届けるまでの過程が最大の見所……ではない。
残念ながら、これ以上はSecretだ。ONOREのEyeでCheckするのである。
きっと腹の底から「そんなバカなッッ!!」と叫びたくなって、「脳を壊す気か!」と悲鳴をあげたくなってしまうだろう。
そして、驚異の“アハ体験”に襲われてMONZETSUすることをお約束する。
ストーリーについては、この設定の全てから漂う“いかがわしさ”も何とも言いがたい味わいがある。あまりにもいかがわしすぎるため、考え始めた時点で負けである。負けるのはゲシュタルト崩壊だけでいいのです。思考を持っていかれぬよう気を付けましょう。
ほかに本作は、(無意味に)高精細でフォトリアルなSushiCupが醸し出す圧倒的ホンモノ感もインパクト十分。
ただ、こうも高精細なグラフィックにしてしまった反動で、動作条件も若干高めという地味に困った難点もあったりする。
人によっては、グラフィックカードのドライバー更新を余儀なくされたりもするので、今後、プレイを検討される場合は念のため、ストアページの動作条件をチェックしておくことをお薦めしたい。(以上、ドライバーの更新を強制された人間からの忠告でした。)
グラフィック以外では演出も注目。とりわけ「悪しっ!」を選んだ時に鳴り響く音には、よく耳を傾けてみよう。前述した「そんなバカなッ!!」とアハ体験周りのMONZETSU諸々も変なこだわりが炸裂しているので、これまた注目である。
リトライのテンポが悪かったり、4種類ある難易度の違いが制限時間の差異しかない、最も簡単な「NORMAL」でも20秒の制限はややシビアに感じやすいなど、気になる点もない訳ではない。だが、遊べば確実に唯一無二の体験と知見が得られる作品である。実はボリュームも結構あってスゴいんですヨ(初見なら5~6時間はかかるかもしれない)。
アナタはSushiCup Masterである。Masterたる者は常に完璧であるのがSADAME。ゲシュタルト崩壊に屈しない精神と、魚介類の正確な知識を鍛え上げるため、この修練に挑むのであります。SushiCupの道を極め、TrueのMasterを目指すのである。

でも、集中しすぎて目が疲れてきたり、眠気が強くなってきたら大人しく寝ましょう。とは言え、三日続けて休まぬよう。
「Kanji、三日会わざれば刮目して見よ」です。
[基本情報]
タイトル:『SushiCup Legend』
開発:Knight of Karate
クリア時間:5~6時間
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):580円
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