「ガンブーツ」という発明がマリオを超えた。『Downwell』のゲームデザイン

初めてその画面を見たのは約1年前。白黒に赤色を加えた3色のみで画面が構成されており、棒人間のようなキャラクターがなにやら足からショットを撃ちながらどんどん下に降りていく。一度見たら忘れようがない強烈なインパクトを持つゲームだった。

そのゲームがとうとう配信開始となった。タイトルは『Downwell』。井戸を下っていく下スクロール型のアクションゲームだ。ゲーム内容のユニークさもさることながら、当時、大学生がたった一人で作っているという説明を読んで目玉が飛び出した。

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制作者は、ハンドルネーム「もっぴん」氏。今作が処女作で、制作を始めたのは大学在籍中だったそうだが、現在は大学を辞め、今後はインディーゲーム制作者として生計を立てていくつもりのようだ。

「そんな無謀な」と思われるかもしれない。当初はおそらく無謀だっただろう。しかし発表以降、多方面から注目を集めた結果、インディーゲーム系のパブリッシャー「Devolver Digital」から声がかかり、さらに有名インディゲームに関わったサウンドクリエイター2名が協力するなど、協力者が次々と現れたことによって現実味を帯びてきた。

ちなみに、筆者も協力者のひとりである。開発初期からテストプレイヤーとして色々意見を言わせてもらっていたのだ。間接的にとはいえ開発に関わっているため、客観的なレビューをすることはできない。なので、主観的な意見だという前置きをさせて頂いた上で主張させて頂く。『Downwell』は、筆者が今までプレイしてきたアクションゲームの中で10本の指に入るくらいに面白いゲームだと思っている。

もちろん、テストプレイの過程で自分の好みが色々と反映されていたり、また完成までずっと見守ってきたことで情が移ってしまった影響もあるかもしれない。しかし「私はDownwellをものすごく面白いと思っている」これは誰にも覆しようがない、紛れもない事実だ。

私は、『Downwell』が完成していく様をテストプレイヤーとして眺めながら、長期にわたってこのゲームの面白さについて考え続けてきた。今回は「Downwellは“なぜ”面白いのか?」について、このゲームのゲームデザインについて語りたい。

『Downwell』は下に降りるジャンプアクションである

まずはDownwellがどのようなゲームかについて解説していこう。

百聞は一見にしかずだ。公式のプレイ動画があるのでまずは見ていただこう。

ジャンルとしては、『スーパーマリオブラザーズ』のような横視点のジャンプアクションゲームだ。マリオ同様、敵は踏んで倒すことができる。決定的に違うのは「下方向に進むゲームである」という点と「真下にショットを撃つ“ガンブーツ”がある」の2点だ。

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操作は、左右ボタンで移動、ジャンプボタンでジャンプ。そして、ジャンプ中に再度ジャンプボタンを押すと、主人公が履いている「ガンブーツ」で、ホバリングしながら真下にショットを撃つことができる。ガンブーツで落下速度を制御しつつ敵を蹴散らし、井戸の中を下へ下へと降りていくゲームだ。

ガンブーツには弾数の概念があり、一回のジャンプで撃てる回数に制限がある。着地することでリロードできるので、残弾数に気をつけつつ、こまめに着地しながら進めていくのが基本となるだろう。

しかし、着地せずに敵を連続で倒すことで報酬が得られる「コンボ」のシステムがある。リロードは敵を踏んだ際にも行われるため、ショットで落下を制御しつつ、敵を次々と踏みながら降りていくことで着地せずに敵を倒していくことが可能だ。非常にテクニカルで最初は難しいが、コンボを上手く決められたときのスピード感と達成感はぜひ体験して頂きたい。

パワーアップアイテムを選んで強化していく要素や、ジェムを集めて買い物をする要素はあるが、ゲームをやり直すたびにリセットされる「ローグライク系」の仕組みとなっている(マップも自動生成だ)。蓄積によってオマケ要素がアンロックされるが、長くプレイしたからといってだんだんゲームが有利になっていく仕組みはない。己の腕が全ての、純粋なアクションゲームだ。

マリオのファイアボールの進化形、それが「ガンブーツ」だ!

唐突だが、『スーパーマリオブラザーズ』のファイアボールはなぜ斜め下に飛ぶのだろうか?

『スーパーマリオブラザーズ』はジャンプアクションゲームである。マリオで最も重要なアクションは「ジャンプ」だ。敵を踏むためにジャンプしたり、穴を飛び越えるためにジャンプしたり、ブロックを叩くためにジャンプしたり…。『スーパーマリオブラザーズ』はとにかく「ジャンプをするゲーム」なのだ。

筆者の推測だが、ファイアボールが斜め下に飛ぶ理由は「ジャンプの楽しさを促進するため」だ。 例えばファイアボールでマリオより上にいる敵が倒せてしまったら、ジャンプする必要性が減ってしまうだろう。ファイアボールが低い位置にいる敵を倒しやすい軌道にすることで、ジャンプしながら撃ったり、高台から撃ったりなど、よりジャンプを活用したくなるのだ。

では話を戻そう。『Downwell』のガンブーツは、マリオのファイアボールを進化させた存在だと筆者は考える。

マリオは、真下にいる敵は踏み、横や斜め下にいる敵はファイアボールで倒す。一方『Downwell』の場合は、「踏み」も「ショット」も真下方向にいる敵への攻撃手段だ。マリオと比べ、より焦点を絞ったチューニングとなっているため、プレイヤーにとって嬉しい状況(敵に攻撃できる状況)が非常に鮮明となっている。

そして、『Downwell』は下へ下へと進んで行くゲームである。必然的に敵も下から登場することになるが、プレイヤーの攻撃は下方向へ特化されている。ということはつまり、「敵が出現した時点ですでにプレイヤーにとって非常に有利な状況となっている」ことを意味する。

マリオの場合は横スクロールであるため、基本的にマリオは一旦ジャンプして敵より高く飛び上がる必要があるが、『Downwell』の場合は、出現した段階ですぐ倒せる状態になっている。マリオのように「一旦飛び上がって敵の上をとる」という面倒な手続きを経由することなく踏むことができるため、非常にテンポが良く、爽快感の密度が高い。この点で言えば、マリオの気持ちよさをさらに濃密にしたものだと言えるだろう。

「降りる緊張感」がもたらす、ガンブーツの爽快感

「敵が常に下から登場するなら簡単じゃないか」と思われたかもしれないが、もちろん、そう一筋縄にいくゲームではない。下方向にめっぽう強いゲームであるが、裏を返せば上や横にいる敵に対して対抗する手段がないということも意味する。

『Downwell』において「下に降りる」とはどういうことか。「ゲームを進行させる」「落下して敵を踏む」というメリットの他に、「不用意に降りると敵に上を取られてしまう」というデメリットもはらんでいる。主人公はあまり高く跳べないため再度上を取ることは難しく、 敵に上を取られることが脅威となる。このため、下に降りる際は常に緊張感が伴う。

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下にいるカメは簡単に倒せるが、頭上にいるクラゲは対処が難しい。

そこで再び「ガンブーツ」の話だ。ガンブーツはショットの反動でホバリングができる。つまり、「下に降りる」というリスクを犯すことなく、下にいる敵を安全に倒すことができる一挙両得の武器なのだ。極端な話、ガンブーツで敵を一通り倒して安全確認をしてから降りることができるなら絶対安全。ショットを撃つことが利点だらけで、心地よい射撃音と相まって、撃つことが非常に気持ちいいのだ。

しかしもちろんだが、そんな単純なワケにはいかない。弾数制限があるため弾切れに気をつける必要があるし、敵もそんなに悠長に待ってはくれない。敵を倒したときに出現するジェム(=お金)は下に落下する。早く降りて回収しないと消えてしまう。

また、ジェムを連続で取り続けるとジェムハイ状態となりパワーアップするのだが、ジェムを取り続けないと元に戻ってしまうため、素早く降りないと逆に不利になってしまう。慎重に丁寧に、かつ迅速に降りていく必要があり、そのジレンマがまた秀逸だ。

遅すぎるとパワーアップが解けてしまうし、早すぎると撃ち漏らしや弾切れでダメージを受けてしまう。繰り返しプレイして上達し両立できるようになったとき、えも言われぬ気持ちよさを体験できるはずだ。

若き天才、もっぴん氏の行動力

もっぴん氏曰く、ゲーム制作の勉強を始めたのは2014年の3月頃だそうだ。それまではゲーム制作をしたことも、プログラミングの知識すらもなかったそうだ。そんな状況で「1週間に1つゲームを作る」というルールを自分に課して数ヶ月修練に励んだ後、すぐに『Downwell』の制作にとりかかったそうな。

『Downwell』はもともと『I WANNA BE THE GUY』のような理不尽系の死にゲーアクションだったが、試行錯誤の過程で試作してみたガンブーツにピンと来て、これを主軸にしたゲームにしようと決意したそうだ。


開発初期はこんなゲームだったようだ

その後も方向性に関して紆余曲折があったことを筆者は見てきたが、様々な案を試しては捨て試しては捨て、といった感じで、考えるより先に行動を起こして「三歩進んで二歩下がる」を繰り返しながらも進み続けてきた。その結果完成した『Downwell』はひいき目を差し引いても素晴らしい完成度だ。

あれこれ悩む前にまず行動してみる。だめだったらやり直せばいいだけ。そんなもっぴん氏の行動力はゴールへ辿り着く力を持っている。端から眺めていて、筆者も何か行動を起こしたくなった。

でも、その前にちょっとだけ『Downwell』をプレイしてもいいかな? 大丈夫ワンプレイだけだから! ゲームオーバーになったらやめるから!

[基本情報]
タイトル
『Downwell』
制作者 もっぴん
クリア時間 腕次第
対応OS iOS/Android/Steam
価格
iOS版:360円
Android版:近日配信(価格不明)
Steam版:10月15日夜配信予定(価格不明)

ダウンロードはこちらから

iOS

Android
未定

Steam


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  • 20140605161552

    ニカイドウレンジ(@R_Nikaido

    Twitterでゲームのこと語ってたら人生が変わった人。Twitterやってただけで文章力と思考力が身について、Twitterやってただけでライターやゲーム制作の仕事を頂きました。個人でゲームも作ってます。詳しいプロフィールや活動内容はプロフィールサイト