今後のアップデートと完成が期待される、注目の制作途中フリーゲーム3選(2022年2月号)

フリーゲーム,連載

日々、個性豊かな新作が誕生し続けているフリーゲーム。その中には完成品に限らず、現在制作途上のものもあり、公開後も都度実施されるアップデートで完成に向け、着々と進歩し続けている。

本記事では、そんな制作途上のフリーゲームより注目の3本を紹介。

今回は初見殺し満載の探索型アドベンチャー、思考型と誘導型のパズル2本の計3タイトルをピックアップした。いずれも今後のアップデート、完成版の登場が期待されるタイトルだ。機会があればぜひ、実際にプレイしてその魅力を確かめてみて欲しい。

目次

  1. Chronicle of Grim Reapers
  2. パズルラビリンス シアのふしぎなバケーション
  3. たすけもの

Chronicle of Grim Reapers

何者かによる追撃を振り切るため、謎の屋敷へと逃げ込んだ男の抵抗を描いた探索型アドベンチャーゲーム。

見た目はよくある探索型アドベンチャーゲームだが、驚くほど”死にやすい”のが最大の特徴。マップの随所に初見殺しの罠が張り巡らされており、少しでもその近辺を通ったり、調べたりすれば即座にゲームオーバーになる。そして、そんなゲームオーバーを繰り返すことを当たり前にした作りになっている。

というのも、本作のストーリーはゲームオーバーになることで語られる。普通にプレイしている時は男の正体など、断片的な情報しか分からないままなのである。しかも、罠ごとに固有のストーリー情報を設けているので、ひとつの罠に何度やられようと新たな情報は得られない。全容を確かめるなら、率先して色んな罠にハマるしかない。そんな自滅推奨とも言える衝撃の作りになっているのだ。また、ゲームオーバー時には危機回避に関係するヒントもストーリーと同時に開示。なので、1回罠にハマれば、あとは楽々回避可能にもなる。そんな良心的な設計にされているのも見所のひとつである。

ノーミスの攻略が推奨されないというだけでも、まさに異色の極み。こんな作りだけにゲームオーバーの種類もやたら豊富で、一部、笑いを誘うものも用意されている。演出面でも音楽は環境音主体にしていて、罠にハマッた時の驚きと探索中の緊張感を高める工夫を凝らしているのが何とも嫌らしくて面白い。肝心のストーリーも男の過去にまつわるエピソードなど、興味をそそる場面多し。また、中盤からの思わぬ展開には目が離せなくなってしまうはずだ。
執筆時点で公開中のものは前編で、ストーリーは途中で終わってしまうのだが、自滅推奨な設計と計算された演出もあって、結構な印象を残す出来。一風変わった探索型アドベンチャーをお探しの人にはお薦めだ。さあ……自滅しよう。

[基本情報]
タイトル:『Chronicle of Grim Reapers』
作者:TEAM海の藻屑
クリア時間:30分~1時間半
対応プラットフォーム:ブラウザ
価格:無料

プレイはこちら
※ゲームアツマール
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm22196

※ふりーむ!(※要:ふりーむ!ID)
https://www.freem.ne.jp/win/game/26779

パズルラビリンス シアのふしぎなバケーション

魔法世界の学生「シア」が、同級生2人と一緒に出かけた様々な土地で、不思議で愉快な出来事を体験する様子を描いたステージクリア型パズル迷路ゲーム。

机に岩といった物を上下左右から押して動かし、道を確保しながらゴールを目指すというのが基本ルール。端的に言えば、歴史ある思考型パズルゲーム『倉庫番』をオマージュした作りだ。

本作特有のものとしては「魔法」。貫通効果を持った魔法を5マス先まで放つという特技だ。主に物を動かす際に邪魔な障害物を消すに当たって用いる。だが、3回までという制限があり、無計画に使えば一部の障害物が消せなくなって詰む。障害物の数も制限とは裏腹に多く、1個ずつ確実に消すように使っても詰みを招く。なので、極力1回の内に多く消せるよう、貫通と5マス先まで放たれる各種効果を踏まえた考え方が重要。そのような物を押す以外のことも試される設計で、ともすれば単調になりやすいパズルの過程に起伏を加える要素として位置付けられている。
また、ステージにも複数の物を指定の場所に動かして配置するという、特殊な条件を課したタイプも用意。基本となるゴール到達の条件にも、特定のアイテムを取り、行動範囲を広げていく種類もあり、ワンパターンにならないための工夫が凝らされている。

冒頭の通りストーリーもあり、ステージクリアのたびに愉快な会話劇が繰り広げられるのもステージ攻略へのモチベーションを高める要素として機能している。何気に登場人物も多く、それぞれ明確な個性付けが図られているのにも注目だ。
現時点で公開中の体験版は一部のステージ、ストーリーしか収録されていないが、起伏あるステージ構成に象徴される、確かな作り込み具合は十分に堪能できる仕上がり。思考型パズルゲーム好きには注目の1本だ。

ちなみに本作、実はケモノな要素も満載。
その手のものが好きな人も、気になるのであればぜひ。

[基本情報]
タイトル:『パズルラビリンス シアのふしぎなバケーション』
作者:ネコイタチ
クリア時間:30分~1時間
対応プラットフォーム:Windows、ブラウザ
価格:無料

※ダウンロードはこちら(※要:pixiv ID)
https://booth.pm/ja/items/3483755

※プレイはこちら
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm23464

たすけもの

森で迷子になっていた盲目の少女を助けるため、獣人族の少女と少年が奮闘する誘導型パズルゲーム。前進し続ける少女が崖から転落しないよう、障害物を取り除いたり、逆に行き先を阻んだりしながらゴールへと導いていく。

特徴はその個性的すぎるゲームシステム。プレイヤーは獣人の「イレーヌ」、「クウマ」の2人を動かすのだが、いずれもカーソルで対象を選び、移動を始めとする指示を与える形式になっている。さらに盲目の少女「ロゼ」も含め、行動はターン制に基づいて実施。「時間を進める」というコマンドの実行と共に獣人の2人は与えられた指示に則った行動を取り、少女も1歩前進する。その流れに沿って、進路を誘導していくのが基本。さながらストラテジーとローグライク由来のターン制を合体融合させたかのような仕組みになっているのだ。

そんな仕組みゆえ、1歩でも行動を誤れば誘導失敗は確定になる程度に難易度も高め。常に次の動きを見据えた一手が求められる。獣人2人の行動も移動に留まらず、「スキル」を使っての障害物除去などがあり、状況によってはこれを確実なタイミングで繰り出すことも試される。さらにゲームが進むと誘導を邪魔する”何か”も現れ、より高度な戦略的思考が必要とされたりも……。

グラフィックが物語る通り、見た目はほのぼのとしているのだが、肝心のゲームはドが付くほど硬派。システムも独特なだけに、ゲーム熟練者も手を焼くほど、やり応え抜群のパズルゲームになっている。
体験版は序盤の数ステージしか遊べないが、それでもやり応えはかなりのもので、おなかいっぱいになってしまうほど。これが完成版でどこまでパワーアップするのか、考えるだけでも恐ろしい。主に思考型パズルゲーム好きなら挑戦いただきたい1本。
ただし、手ごわさは本物なので、必ず心の準備をした上で。
驚くべきことに出血表現もあるので、そこにも要注意。

[基本情報]
タイトル:『たすけもの』
作者:Hiroita
クリア時間:30分~2時間
対応プラットフォーム:Windows、ブラウザ
価格:無料
備考:出血表現あり

※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/27397

※プレイはこちら
https://game.nicovideo.jp/atsumaru/games/gm23858

  • シェループ(@shelloop

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