戦闘に探索、システムまで気持ちよさに全振りした、爽快アクションRPG『らせつ封魔伝』

時は妖魔と人間、神が存在する架空の江戸時代。
強力な封魔の力を持つ鬼族の姫「羅刹(らせつ)ラキ」は、その弟子である桃之介と共に妖魔退治の旅を続けていた。

ある日、二人は異変が起きていると噂される「ヤツミ村」に訪れる。この村では、強力な力を持つ狐族が結界を張り、村と住民たちを護っていたのだが、近頃、村の近辺にも妖魔が現れるようになる事態が起きていた。護られているはずの村で何が起きているのか。真相を突き止めるため、ラキたちは護り手である天狐、暗月の元へと向かうが……?

『らせつ封魔伝』は2020年9月24日より、同人誌・同人ゲームなどを販売するDLsiteにて販売中のWindows PC向けアクションRPG。戦略シミュレーションゲーム『Fantasy of Alice』で知られる同人サークル「exeCUTE」開発の新作で、同サークルとしては2作目になる。

また、製品版発売前の9月5日から「ふりーむ!」、「フリーゲーム夢現」にて、最初のボス戦までを遊べる無料体験版も公開中だ。

爽快感と豪快さ重視のハイテンポ・アクションRPG

ゲームは主人公の羅刹ラキを操作し、「ヤツミ村」の周囲に点在する「エリア」を攻略していく形で進行。各エリアの最終目的は最深部への到達、およびそこで待ち受けるボスの撃退が主で、ステージクリア型アクションゲームの色が強い構成になっている。

アクションRPGを名乗ることから、マップの隅々を調べて抜け道を探したり、パズル的な仕掛けを解く探索・謎解き要素の存在を連想するかもしれないが、本作はどちらも控え目。それ以上に敵である「妖魔」との戦闘に焦点を当てた、アクション重視のゲームデザインとしている。RPG部分は、ラキの成長と育成に特化している感じだ。

そのため、本作はプレイヤーのアクション周りが驚くほど多彩。標準装備の刀を用いた基本攻撃(斬撃)を始め、「気力」と称されたゲージを消耗して繰り出す「剣技」、広範囲を巻き込む強力な術攻撃こと「結界術」、敵が使う遠距離攻撃をかき消す「切り払い」とそれを相手に跳ね返す文字通りの「跳ね返し」など、色んな技と戦術を駆使した妖魔との戦いが楽しめるようになっている。

攻撃以外にも瞬間的に素早く移動する「ダッシュ」、敵を押し出す「体当たり」のアクションを用意。どちらも発動に当たっての制約はなく、思うがままに使えて、思い通りにキャラクターを動かせる。まさにアクションゲームの醍醐味全部乗せと言わんばかりで、とにかく動かしているだけでも気持ちよい仕上がりになっている。

裏を返せばアクションが多彩な分、敵の攻撃は激しい。基本的に雑魚敵は集団で出現し、数の暴力を駆使してラキに襲い掛かるので、こちらの持ち得る全ての手段を使い、一網打尽にすることが求められる。戦闘のテンポも大変スピーディ。そして、早いなりにこちらが大ダメージを喰らうのも一瞬。敵の基本戦術が数の暴力だけあって、下手に突っ込んだり、立ち止まれば、ものの数秒で体力の半分が”ゴッソリ”奪われる。酷いと力尽きてしまうほどだ。こうも”やられるまでは一瞬”だけあって、緊張感も相応なものになっている。

もちろん、対処法も相応。強い武器や防具などを装備したり、レベルを上げたりなど、RPG特有の手段が取れる。ただ、いずれもその仕組みはやや特殊。

中でもレベル周りはかなりユニーク。上げ方は単純に敵を倒した際に得られる経験値を稼ぐだけなのだが、その上がる勢いがとんでもなく早い。どれほど早いかは、ゲーム序盤の時点でレベル20~30ぐらいまで上がる、と言えば想像できるかもしれない。文字通り”ガンガン”上がるのだ。だが、幾らレベルが上がってラキの攻撃力や防御力などは上昇しない。上がるのは体力だけ。

何故かと言えば、本作の強化システムはポイント割り振り方式になっている。しかも、デフォルトでは体力にそのポイントが集中的に貯まっていく仕様。他のステータスを上げたいのなら、体力に貯まったポイントを拝借し、他の部分へと割り振る必要があるのだ。なので、ある程度レベルが上がって体力以外を強化したいなら、ステータス画面を開いて貯まったポイントを振り分けなければならない。逆に言えば、振り分け方はプレイヤーの自由。加えてポイントの振り分けも好きなタイミングで行えるので、手ごわいボスに対しては早期決着を狙い、火力重視のステータスに調節して突撃する、なんてやり方もありなのだ。

それほど自由度、カスタマイズ性に秀ででている。ガンガン上がる豪快さに留まらず、プレイヤーが好き勝手にいじれる楽しさを重視した、意欲的な仕組みになっているのだ。始めは仕様の奇怪さに戸惑うかもしれないが、分かった後はラキをいじり放題。若干、意味深な表現になってしまったが、この手のシステムが好きな人にとっては辛抱たまらないだろう。

もうひとつの装備品も敵を倒す、宝箱を開ける以外にも、「素材」を集めてエリアの中継点兼拠点の「ヤツミ村」の店で作って買うという、「ハック&スラッシュ(ハクスラ)」を意識した独特なもの。装備ごとに用意された「スロット」に「お札」をセットし、性能強化を図るなど、カスタマイズ要素も押さえている。

こんな具合に本編の進行と戦闘はアクションゲームに全振り、育成及び強化面にRPGを全振りと明瞭に分けているのが本作の特色。双方の最も気持ちよい所が味わえる工夫が施されたアクションRPGに完成されている。

”気持ちよさ”にこだわり尽くした作りと執念

このゲームの魅力は、何と言っても気持ちよさ。アクションと戦闘もさることながら、育成と強化部分に至るまで、とことんプレイヤーに気持ちよく感じ、楽しんでもらいたい、というこだわりに満ちている。

アクションに関しては、何よりも操作性が抜群によい。移動から攻撃、各種技に至るまで速やかに反応を返してくれる。そして何より、小気味よい効果音が鳴り響くのが見事。攻撃の命中、ダッシュによる高速移動など、いずれにも相応の音が鳴り響くので、それぞれのアクションを決めたとの気持ちよい手応えを感じ取れる。

幾ら操作性がよくても、それに対する反応が地味だったり、逆に生々しい音が鳴り響いたりすれば、折角の気持ちよさも台無しになってしまう。単にボタンを押しただけ、という事実が返ってくるだけの空しいものになりがちだ。そんな操作性の良さを確実なものにするためにも、小気味よい効果音は欠かせない。それをちゃんと押さえているだけでも、本作が気持ちよい操作性というものをちゃんと理解し、まとめたのがうかがい知れる。

強いて言うならば、アクションが多彩な反動もあって、ゲームパッドが推奨される設計であり、キー操作の大元をPlayStation 4のDUALSHOCK 4準拠にしているため、Xbox 360コントローラでプレイした場合、キー配置で戸惑いやすい所はある。また、ボタンのキーコンフィングが細かく行えない(※パターン変更しかない)のも、人によっては煩わしく感じるだろう。ただ、そのように振り切ったのもあってまとめ方は綺麗。何より、1回動かすだけで「これは間違いなく良い」との確信を得られる魅力がある。直接触ってみないことには分からないのがもどかしくもあるが、前述の通りに無料体験版があるので、気になればそちらで試していただきたい。気持ちよさの極致というものを見るはずだ。

戦闘も1人で大勢の敵を一網打尽にするのが基本だけに、爽快感は申し分ない。そもそも、こちらの持つ大きな力をぶつけて仕留めるのが気持ちよくないはずがなかろう(力説)。それでいて、油断すれば一気に体力を削られかねない危険が付きまとうのがいいアクセントになっている。特にボス戦はそのバランス特有の緊張感が味わえるので要注目だ。もちろん、それが苦手な人に向けたレベルを上げ、回復アイテムをため込んで、力で押し切る選択肢も確保。その強化の仕方もポイントの割り振りを基本にしているだけに、プレイヤー好みの性能で容易に戦えてしまうのも楽しく、上手く作戦がハマった時は大変気持ちよい。

ポイントを貯めるに必要なレベルの上昇も、驚くほど速いテンポで上がっていくのもあって笑ってしまうほど爽快。また、テンポ良く上がるからこそ、レベル上げも気持ちよく展開できる。しかも、敵を倒せば新たな装備品の作成や強化に必要な素材、お札などが手に入るのだ。レベルの上昇に留まらず、何かしらのメリットが得られる仕組みにしているのも退屈させない、気持ちよさに浸って欲しいとのこだわりが現れている感じだ。


▲がっぽり。

このこだわり尽くした作り込みは圧巻の一言。地味な所でボリューム周りにもそれが光る。具体的にはエリアごとの密度だが、全体的に長すぎず、短すぎずの丁度良い塩梅に収まっている。また、戦闘に焦点を当てている関係で道中の仕掛けは大人しく、起伏が弱いのだが、全体の構造や新たな敵の登場などで気にならない程度にカバーしている。中盤以降になると迷路的なマップ、スイッチの切り替えと言った仕掛けも登場し、変化に富んだ展開が楽しめるなど、一貫して戦闘だけとしていないのもいい塩梅だ。

加えてメインストーリーもエンディングまで早くて10時間以内と適度な長さで、中だるみはほとんどなし。もっと遊びたいプレイヤーに向けた収集品集め、高難易度の無限ダンジョンを用意し、フォローしているのも抜け目がないの一言だ。

こんな具合に全編において、本作には気持ちよさにこだわり尽し、プレイヤーに至福のひと時を提供する作りを徹底している。
一方でその代償が出ている部分もあり、例えば「剣技」と「結界術」は最初から使える技が万能すぎて、他が空気同然で使用機会に恵まれにくい。ゲームバランスも敵の量や火力が増す中盤以降は通常攻撃の使用機会がほぼ減り、「剣技」がその中心になる戦術の偏りが生じるなど、大味さが際立っている。雑魚敵戦は素早く倒すのが最適解だが、裏を返せば相手を怯ませて動けなくする手段に欠ける感じで(※ボスや一部の強敵には「ブレイク」なる怯みを発生させる概念がある)、主に中盤にワンパターンさが際立ってくるのが厳しい所だ。

ただ、あえてそれらを残した上でも気持ちよさ重視という、熱意溢れるまとめ方は圧巻。実際、粗があろうが気持ちよさのために遊び続けてしまう所はあり、中毒性も相応だ。代償を得ようも、目指すべきものを目指す。そんな執念にも近いものが込められているのも、本作の魅力なのである。特にアクションゲームに対し、何らかのこだわりの強い人は、この方向性に何らかの共感を得てしまうはず。繰り返しになるが、少しでも気になった場合は無料体験版で触りの部分を確かめてみていただきたい。

意外な展開を見せるストーリーも見逃せない良作

ゲームプレイに焦点を当てたが、ストーリーもよく出来ている。村を護る狐たちに起きた異変の真相を突き止めるため、妖魔と戦いながら冒険を続けていくという王道の構成だが、終盤にひと捻り加えた展開が待ち受けている。どんな展開かは見てのお楽しみだが、少しだけ言及すると、初めてエンディングを目にした時は「え?」と声が出るほど困惑するだろう。

また、愉快な掛け合いも多く用意されている。中でもキーパーソンの狐たちは非常に個性が強いので、強く印象に残るはずだ。主人公ラキの天真爛漫な性格とある場面で見せる、理性が崩壊した様(!?)もお見逃しなく。

他にグラフィックも3DCGとドット絵をミックスさせた独特の構図ががユニーク。音楽も世界観マッチした和風の楽曲が揃っていて、イベントや戦闘シーンを盛り上げてくれる。機能面でも(Xbox 360コントローラの場合)Backボタンを押せば、最後にセーブを行った「地蔵」まで瞬時に飛べたり、その「地蔵」自体もワープポイントの役割を備えていたりと、二度手間を無くす工夫が凝らされていて好感が持てる。

前述の大味なバランス以外にも、主にヤツミ村では木の枝葉にキャラクターが隠れて見え難くなる点があったり、村人に話しかけたり、地蔵をチェックする際の当たり判定が狭くて反応が悪いなど、細かな粗はあって、もう一歩と思えてしまう所はある。だが、全編において気持ちよさに振り切って突き抜けた作りは痛快の極みで、アクションRPGとしてもアクションゲームとしても、ジャンルの醍醐味を押さえきった良作に完成されている。

いずれかのジャンルが好きな方はもちろんのこと、とにかくストレスなく気持ちよく遊べるゲームを欲している人には強く推したい1本だ。多彩で豪快な技とアクションを駆使して、妖魔を狩りまくってスッキリしよう。おやつに「団子」を用意した上でプレイすれば、より楽しく甘美な気持ちになれる……かもしれない。

[基本情報]
タイトル:『らせつ封魔伝』
作者:exeCute
クリア時間:12~15時間
対応OS:Windows
価格(税込):¥1,870

購入はこちら
https://www.dlsite.com/home/work/=/product_id/RJ293864.html

体験版はこちら
※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/23866

※フリーゲーム夢現
https://freegame-mugen.jp/action/game_9025.html


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    シェループ(@shelloop

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