夫婦と猫二匹が生み出した『Salt and Sanctuary』は、高難易度アクションRPGの入門に適した傑作

昨今のアクションRPGでは、高難易度を売りとする作品もジャンルの顔として存在感を示すようになった。いわずと知れたフロム・ソフトウェア制作の『デモンズソウル』、『ダークソウル』に代表されるソウルシリーズのヒットによるものだ。

同シリーズの人気は海外でも高く、その難易度とゲームシステムに影響を受けたインディー作品も幾つか誕生している。当もぐらゲームスでもレビューを掲載している『Momodora: 月下のレクイエム』もその一つ。
 
image1[1]
 
今回は、そんなソウルシリーズに影響されて制作されたインディー作品で、最も「らしさ」に富んだ『Salt and Sanctuary(ソルト アンド サンクチュアリ)』を紹介する。

開発はアメリカのインディーデベロッパーで、James Silva、Michelle Silva夫妻によって結成されたSka Studios。更にTeam Renegade Radioなる猫二匹のチームがコンサルタントとして参加している。一体、何を言っているんだと思ったかもしれないが、二匹はれっきとしたSka Studios所属メンバーである。どういう事かはSka Studios公式サイトの「About」をご参照頂きたいにゃん。

本作は2016年にPC(Windows、Mac)用ゲームとして、Steamでリリース。その後、PlayStation 4に移植された。同年7月のアップデートで日本語にも対応し、その一ヶ月後にはPlayStation 4版が国内向けにリリース。2017年4月にはPlayStation Vita版も発売された。
 
image18
image17
 
内容は横スクロールのアクションRPGで、船の転覆事故により、生ける亡者達が徘徊する島に流れ着いてしまった主人公(プレイヤー)となり、船内で護衛していた姫君と脱出の手がかりを見つけ出すため、島を探索していくというものだ。

横スクロールで描かれる、紙一重の死闘

image4
 
ゲームはまず、プレイヤーの分身たる主人公のメイキングから始まる。ここで髪型、目の色などを設定し、自分なりのキャラクターを作り上げていく。メイキングが完了するとオープニングシーンへと移り、転覆事故の一部始終を追体験することになる。それを一通り終えると、舞台となる島へと漂着。本番開始となる。
 
image3
 
基本的にゲームは島の各所に点在するエリアを調べる、行く手を阻む亡者達と戦うの二つを繰り返す形で進む。プレイヤーが操作する主人公は攻撃、回避、防御のアクションを行う度、画面上部に表示された緑色の「スタミナゲージ」が消費される仕組みになっており、空になるとゲージが回復するまでの数秒間、どのアクションも連続して出せなくなってしまう。そのため、亡者達との戦いにおいては、このゲージを意識した立ち回りが要求されてくる。

亡者達との戦い、或いは探索時の事故などでダメージを受け、赤色の「体力ゲージ」が空になってしまうと主人公は死亡。レベルアップに必要な経験値こと「ソルト(塩)」を止めを刺した亡者、或いは件の「ソルト」から誕生した獣に全て奪われ、セーブ兼リトライポイントの「礼拝堂」に戻されてしまう。

止めを刺した亡者、または塩の獣を倒せれば奪われた「ソルト」は取り返せるが、その間に別の亡者に殺されるといったミスをしてしまえば、奪われた「ソルト」は永久に消失。ゼロから集めなおすことになってしまうのだ。そういった危険と隣り合わせで亡者と戦い、「ソルト」を集めて主人公の強化を図り、島の各所を探索していく。

簡単だが、以上が本作の大まかな流れだ。
 
image11
 
ご覧の通りだが、基本的な仕組みはソウルシリーズを踏襲。セーブ兼リトライポイントの「礼拝堂」、そこで祈りを捧げる(セーブを行う)ことで補充される回復アイテムと復活する敵、「ボトルメッセージ」という形でほかのプレイヤーに注意を知らせる「非同期型オンラインシステム」などもあり、同シリーズの経験があるプレイヤーであれば、スムーズに入っていける作りになっている。

それでいて、ソウルシリーズを遊んだことのないプレイヤーにも優しい
 
image13
 
それを際立たせるのが横スクロール。直感的にキャラクターを動かし、的確な対応を行える「分かりやすさ」を第一としたゲームデザインが図られている。特に亡者との戦闘において、攻撃、回避の方向が上下左右の四方向に固定されているので、どの動きを取ればベストかの見極めが付けやすい。目前の脅威にテンポよく対応できるのだ。

マップも横スクロールだけあって、エリアごとの構造の把握が容易。基本的にどのエリアも横に繋がる形で構成されているほか、次の区画への扉も明確に示す工夫が凝らされているので、長時間右往左往することにもなりにくい。テンポよく、エリアからエリアへと足早に進めていけるのもまさに横スクロールさまさまで、プレイヤーを退屈させない面白さが描かれている。

かと言って終始、詰まることなく進めていける訳ではない。ゲームが進むと扉の鍵を探す、踏破したエリアを再び調べるといった謎解きが挟まれ、入り組んだ展開を見せていく。
 
image5
 
戦闘の難易度もソウルシリーズに影響されているだけあって非常に高い。力押しお断り、少しでも気を抜けば一瞬で死亡の二文字がさん然と輝くことになる「心折(しんせつ)設計」だ。
 
image15
 
中でもボス戦はその真骨頂であり、常にいつ死ぬか分からない恐怖に襲われる展開になる。しかも、中盤以降になると複数体で襲い掛かってきたり、たった数発喰らうだけで即死に至る攻撃を仕掛けてくるタイプも登場し、厳しさが増していく。まさに冷酷非情を絵に描いたバランスだ。慈悲の二文字など存在しない。

しかし、動ける方向が限られているからこそ、被害を少なくするのにどう動いていくかといった戦略は立てやすい。一見、「どうしろと…」と絶望を覚えるボスも、特定のタイミングで必ず隙を見せるので、出しゃばり過ぎない程度に攻撃を行っていけば、ノーダメージでの撃破も狙える。
 
image7
 
そういった行動の取りやすさもあって、高難易度のアクションRPGを遊んだことのないプレイヤーも気軽に遊べる程度にハードルは低く、入門用に最適な内容に完成されている。それもあって、ソウルシリーズ未経験者にも優しいのだ。

とはいえ、幾ら入門に適した作りをしていても根っ子は高難易度のアクションRPG。猫を撫でる気持ちで触れば、豪快に肉をえぐり取られる怖さもあるので、油断してはいけにゃいよ。

広がる行動範囲と方針によって変わる成長曲線

ソウルシリーズらしさにフォーカスしてきたが、本作ならではの要素もある。それが「焼き印」だ。ゲームを進めていくと、行く先々で島に流れ着いた元冒険者といった人間達に出会うのだが、その中に印を手に焼き付けてくれる者が存在する。印を焼き付けられると、主人公は特殊アクションを習得。以下のような事ができるようになる。
 
image16
▲天井を歩く
 
image6
▲壁を蹴りながら三角飛びをする
 
image10
▲空中を高速移動する

そして、これらの習得と同時に今まで足が届かなかった部屋に行けるようになったり、敵を無視できる近道を使えるようになるなど、行動範囲も拡大。一度踏破したエリアに戻って隠されたアイテムなどを見つけ出す寄り道への意欲も大いに刺激され、探索がより面白く、深いものになっていくのだ。
 
image8
 
また、このような要素があるからこそ、最速クリアを狙うタイムアタックのやり込みも熱い。特にボスは全部倒す必要がないので、「焼き印」と併用すれば、10時間以内のクリアも狙える(※平均クリアタイムは20~30時間)。我こそはというプレイヤーはぜひ、この試練に挑んでみて欲しい。
 
image9
 
探索要素が敵と戦いながら「ソルト」を集め、プレイヤーを強化する育成の楽しさを引き立てているのも面白い。そして、その中身たるや、まさに「底なし沼」。レベルを上げる度に手に入るアイテム「黒の真珠」を消費し、枝状に繋がれたスキルを取っていくのだが、選べるスキルの数というのが膨大で、レベル1の時点で相当な数を選べるのもあって、プレイヤー好みの主人公像をいとも簡単に作り上げることができてしまうのだ。
 
image2[1]
 
更に「お試し感」に優れているのも見逃せない。本作には剣、メイスといった多彩な武器が用意されており、それにちなんだ「クラス(職業)」のスキルを習得すると関連する武器が使えるようになるのだが、それと一緒にステータスアップのおまけも付いてくる。

つまり、使う気の無い武器のクラススキルを習得しても無駄にならない。必ずステータスアップの効果が付くので、スキルポイントを消費することが損にならないのだ。この種のいわゆる「マスタリー」のスキルは武器の使用を解禁するスキルを取ると強化に絡んだスキルが解禁され、取得できるようになる、強化すればするほど他の武器の解禁は難しくなっていくというのがお約束だが、本作にはそれがないので、気になるものを次々と取っていける。

あまりスキルポイントの消費に頭を悩ますこともなく、直感的に強化できるというだけでも、育成にRPGの醍醐味を見出しているプレイヤーなら、その魅力に取り憑かれてしまうだろう。興味があるならぜひ、この底なし沼に足を踏み入れて欲しい。きっと這い上がれなくなっちゃうんだにゃ。

高難易度アクションRPGの世界を覗きたいあなたに

image12
 
他にアートワーク、演出周りもマリオネットのように描かれたキャラクター達のデザインと鮮烈な出血・暴力描写によって、独特の不気味さが描かれている。ストーリーもアイテムなどのフレーバーテキストで細かい設定と真相が描かれていく、表現を絞り込んだ設計で、深堀りすればするほどに作り込まれた世界観が明らかになってくる内容。

悪く言えば不親切で、それらに一切目を通していないと終盤の展開がサッパリ分からなくなるところもあるが、一つ一つしっかり追っていけば「そういうことだったのか」と分かる作り。ぜひ、随所にちりばめられたテキストを読み込んで、島と亡者達の真実に迫ってみて頂きたい。
 
image14
 
ゲームに不慣れなプレイヤーなら、確実に心を圧し折られかねない難しさを誇る本作だが、高難易度アクションRPGに興味があるけど、怖くて手を出せない…どうせなら一旦、別の似たような特徴を持つゲームで訓練したいと考えている人には、自信を持ってお薦めしたい一本だ。本作をプレイすれば、高難易度のアクションRPGがいかなる特徴を持った内容なのかがよく分かる。ぜひ、その面白さと恐ろしさを味わってみて欲しい。

もちろん、ソウルシリーズの経験があるプレイヤーにもお薦めだ。濃い目の探索要素、底なしの育成システムと共に描かれた、この横スクロール型高難易度アクションRPGの世界には唯一無二の遊び応えがある。ゲーム制作を生業とする夫婦と猫二匹が生み出した深淵を猫舌フゥフゥの精神で覗いてみよう。

そこを覗き込んだ時、あなたは深淵…ではなく、猫二匹の邪悪な笑みを見るかもしれない。

[基本情報]
タイトル: 『Salt and Sanctuary (ソルト アンド サンクチュアリ)』
制作者:Ska Studios
クリア時間: 20~30時間(※やり込み要素のコンプリートを除く)
対応OS: PC(Windows、Mac)、PlayStation 4、PlayStation Vita
価格: ¥1780

ダウンロードはこちら

※PlayStation 4版
https://store.playstation.com/#!/ja-jp/cid=UP0613-CUSA02353_00-JPPS400000000001?EMCID=jGMsoftware-UP0613-CUSA02353_00-JPPS400000000001

※PlayStation Vita版
https://store.playstation.com/#!/ja-jp/cid=UP0613-PCSE01023_00-JPVITA0000000001


もぐらゲームスでは現在ライター・編集補助を募集しています。 フリーゲームやインディゲームの記事執筆・編集部作業等にご興味ある方はこちらよりお気軽にご連絡ください。
  • image09

    シェループ(@shelloop

    様々なゲームに手を伸ばしたがる人。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションを与えると喜びます。

    Webサイト:box sentence
    ブログ:Box Diary