鞭ではなく、耳がしなる!『ファラオリバース』はウサ耳トレジャーハンターの荒唐無稽・遺跡アクション

Steam,アクション,フリーゲーム

2016年冬期のダークホースと称され、2017年の同時期にはその人気に応える形で二期も放送されたアニメ『この素晴らしい世界に祝福を!』。その二期のブルーレイ、DVDの初回限定版には『復活のベルディア』なるPC用アクションゲームが特典として付いてくる。

……唐突に、アニメの話から入ってしまったことをご容赦願いたい。しかし、この特典ゲーム『復活のベルディア』は、実はこれまでに『モグラリバース』、『アクションモグラ』などのアクションフリーゲームを手掛けた制作者・クロボン氏率いるゲーム制作グループ「ladybug」が作った作品なのである。

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今回は『復活のベルディア』を機にクロボン氏を知った方々にも向け、氏が手掛けた直近の作品、『ファラオリバース』を紹介。

鞭ではなく、耳がしなる荒唐無稽な遺跡探検アクション

ゲーム内容は横スクロールの探索型アクション。過去の冒険でウサギの姿にされたトレジャーハンターで主人公のジョナサン・バンフィールドを操作し、自らにかかった7日以内に死ぬ呪いを解くべく、そのカギとなる「7つの聖杯」を探し求め、エジプト各地の遺跡を探索していくというものだ。

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ゲームはエピソードごとの舞台として用意された遺跡を探索し、その最深部で待ち構えるボスの撃破を目指す形で進行。いわゆるステージクリア方式で、広いマップの隅々を調べていく探索型アクションとしては珍しい、明確な区切りの設けられた構成になっている。

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主人公のジョナサンは、ウサギに変えられた元人間の設定に則った、ユニークなアクションをお披露目。最大の特徴は耳を使った技で、ウサギらしさと荒唐無稽さの二つが入り混じった、個性的なアクションに完成されている。収縮自在の耳を鞭のように振り回し、目前の敵を狩る。その様子だけでもご意見無用・突っ込み上等、細かいことは気にするなの精神が炸裂しており、プレイする者に鮮烈な印象を残す。

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そんな注目のアクション部分だが、ゲームが進む度に使用できるアクションは段階的に増えていく。その内容も、耳を紙飛行機のような形にして滑空したり、特定のフックに耳を引っ掛けてワイヤーアクションをしたりなど、「そんなまさか!」と思わず声が出てしまう荒唐無稽なものばかり。それでいて、「ウサギだからできて不思議じゃない」と納得させる(謎の)説得力に満ちている。

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もちろん、それらの習得によって行動範囲が広がる、探索型アクションの醍醐味も万全だ。既にクリアしたエピソードに戻ってみることで隠されたアイテムを入手できたりなど、様々な恩恵を得られるので、ドット絵で作られた美しいマップの隅々まで調べ尽したくなる面白さがある。

キャラクターの可愛らしさ、基本アクションの荒唐無稽ぶりから、軽い印象を抱くかもしれないが、その手応えは本格的。奇抜な見た目からは想像もつかないテクニカルな操作、それに連なるスリリングな探索を楽しめる内容にまとめられている。ヘンテコさと堅実さの二つを求め、プレイヤーをあっと言わせる。そんなコンセプトが敢行されたアクションゲームに仕上げられているのだ。

ステージクリア方式の取っつき易さとやり応えを突き詰めた構成

取っつき易いゲームデザインも魅力の一つ。先の通り、今作はステージクリア方式で進行する仕組みになっていて、明確な区切りが設けられている。

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探索型アクションというと、複数のエリアで構成された広大なマップを隅々まで探索し、最終目的の達成を目指すというのが基本的な流れだ。裏を返せば、そこに到達するまでゲームがずっと続く。ストーリーに関連したイベントが終わっても、ボスを倒してもゲームは止まらず、最終目的達成まで続いていく。

自ら止め時を設定するのを考えないと、延々とやり続けることになる。極端な話だが、それが探索型アクションの特色であり、恐ろしいところ。また、区切りが最後の最後にしかないことが初めて探索型アクションを遊ぶプレイヤーにとって、最も戸惑いを覚える箇所でもある。

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そこを今作はステージクリア方式を起用することによって、初めて探索型アクションを遊ぶプレイヤーも戸惑いなくプレイできるようにしている。基本、ステージ最深部で待ち構えるボスを倒せば、エピソードクリアという一区切りになり、ゲームが小休止する。そして、そこからそのまま続けるもよし、今日は止めて明日続きをやるも良しの選択を気軽に行える。

このような区切りがあるので、初めて探索型アクションゲームを遊ぶプレイヤーでも目的意識が持ち易く、それでいて適切な止め時を意識してプレイできる。最終目的達成に長いこと縛られることもなければ、止め時を設定する意識をする必要もなく、気の赴くままに本編を進めていけるのだ。

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また、ステージクリア方式ならではの起伏に富んだ展開の数々も大きな魅力。巨大ヘリの襲撃、道なき道をジープで突き進むなど、エピソードごとに舞台が変わる強みを活かした、多彩なイベントの数々はプレイヤーを退屈させない。

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マップも広すぎず狭すぎず、複雑な分岐を設けずの適度なバランスでまとめられているので、テンポ良く進めていけるのが気持ちよい。時には僅かなミスも許さない操作が求められる難局も立ちはだかるが、事前にセーブポイント(リトライポイント)を設ける配慮を施し、再開時のストレスを緩和させる措置も万全に成されている。そう言った遊び易さと手ごわさを両立させているのも絶妙で、初めて探索型アクションを遊ぶプレイヤーから熟練者までフォローする調整の妙を実感させられること請け合いだ。

今、ウサギと亀のアドベンチャーがエジプトの地に燃える!

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丁寧に描き込まれたドット絵で彩られたグラフィックも素晴らしく、特にエピソードの終盤で登場するボス達はその真骨頂とも言える出来。見た目だけでなく、攻撃パターンも個性的で、プレイヤーの予想をいい意味で裏切る行動をお披露目する。中にはジョナサンの耳アクションに匹敵する、荒唐無稽な攻撃と動きで攻めてくるボスもいるので必見だ。

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ボリュームもエンディングまでは大体3~5時間ほどだが、隠されたアイテムの収集などの寄り道、やり込み要素は豊富。ストーリーもコメディあり、シリアスありの見応えのある内容で、特に中盤以降の熱い展開にはつい見入ってしまうものがある。

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探索型アクションゲーム初体験なプレイヤーに優しく、熟練者の欲求にも十分に応えてくれる密度と手応えを誇る今作。可愛いウサギが耳を振り回しながら、遺跡の探検と敵との激しい戦闘を繰り広げていく様は今作でしか体験できないものがあるので、興味を抱いた方はぜひ、機会があったらプレイしてみて欲しい。

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なお本作は2015年5月27日、ニコニコ動画内の「ニコニコゲームマガジン」にて公開されたフリゲ作品で、連載形式で同年10月16日までの約5ヶ月に渡り、ステージ及びエピソードが追加されていった(全4話)。2016年3月18日には、フリゲ版にはない多くの新要素を実装し、システム周りにも改良を施した有料版『Pharaoh Rebirth+』がSteamで配信されている。

現在もフリゲ版、有料(Steam)版の二つを選べるが、筆者としては後者、有料版をお薦めしたい。充実した内容もさることながら、難易度選択機能の搭載によって、アクションゲームに苦手意識のあるプレイヤーに優しく、かつ更なる難しさを求めるプレイヤーにも適応した作りになっているからだ。他にも操作性の改良を始め、細かなパワーアップも施されているので、どうせプレイするのなら骨の髄までしゃぶり尽せる方を…というのなら、ぜひご検討のほどを。

[基本情報]
タイトル: 『ファラオリバース(Pharaoh Rebirth+)』
制作者: クロボン(KROBON station)
クリア時間:3時間~5時間(※やり込み要素のコンプリートを除く)
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料(電ファミニコゲームマガジン版)、¥980(Steam版)

https://gamemaga.denfaminicogamer.jp/pharaoh/download.html

  • シェループ(@shelloop

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