Gear VRって何がスゴイの?Unity、Oculusの両エバンジェリストが語るスマホでできるVRの未来

VR(バーチャル・リアリティ),イベントレポート

今年の東京ゲームショウ。モンハンなどの超人気タイトルに負けず劣らず熱気が集まっていたのは、Oculus RiftやProject MorpheusといったVRヘッドマウントディスプレイが体験できるコーナーだ。いずれも一般公開日は整理券方式に切り替えたが、開場直後に配布終了という注目ぶりだった。

本家であるOculus VRやSonyのブースだけでなく、企業や個人、学生が開発したソフトも各ブースで体験可能になっており、いずれも列ができていた。

しかし、Oculus RiftとProject Morpheusはいずれも現時点では一般販売はされていない。販売時期は来年ではないかと思われるが、未定という状況だ。

そんな中、今年発売予定のVRデバイスがサムスンの「Gear VR」だ。Galaxy Note 4をヘッドマウントディスプレイに装着するだけで使用可能ということで手軽にVRが楽しめるのではないかという期待が集まる。

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Gear VR

ビジネスデー初日の9月18日、サムスンのブースでこのGearVRについて興味深いトークイベントが行われたので、そのレポートをお送りしよう。

登壇したのは、OculusRiftの日本での普及を精力的に進めているエバンジェリストこと近藤GOROman義仁氏(@GOROman)とUnityTechnologiesJapan日本担当ディレクターの大前広樹氏(@pigeon6)だ。

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大前氏(左)と近藤氏(右)

この講演では、VRデバイスの潮流を追いながら、Gear VRの登場にどういった意義があるのかが2人の軽い掛け合いとともに語られた。

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まずはヘッドマウントディスプレイの歴史の振り返り。一番最初のHMDは1965年に開発されていたことは筆者も知らなかった。

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おなじみのバーチャルボーイ(任天堂)やダイノバイザー(タカラ)といったHMDを振り返る。写真はCaveと呼ばれる部屋のような装置。いずれも普及には至らず。

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そして、OculusRiftの登場により、個人開発によるVRコンテンツがスタート。堰を切ったようにものすごい数のコンテンツが登場した。その背景には開発ツールとして個人開発者が使っていたUnityの存在も大きな役割を果たしている。

Gear VRがこれまでのHMDと比べてすぐれている点

こうした歴史的な流れを振り返ったところで本題のGear VRの紹介に入った。キーとなる人物は、ジョン・カーマック。「DOOM」「Quake」といったゲームを開発し、FPSというゲームジャンルを生み出した人物だ。

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開発者でもある講演者の2人も、彼のことを「神」と連呼していたほどだ。

そのカーマックがOculus Riftに惚れ込み、現在はOculus VR社でCTO(最高技術責任者)として開発にあたっている。今回サムスンが発表したGear VRは、Oculus VR社が開発協力しており、このジョン・カーマックも開発にあたっては相当の情熱を込めているという。

そして、講演者2名がOculusなど他のHMDと比べて、Gear VRで実現されたと考えるポイントが一気に紹介された。

ポイント1 ケーブルがないこと
Galaxy Note 4を差し込むだけなので、配線などは一切不要だ。コードがあるとどうしても動きに制約が出てしまう。コードがないという点は非常に大きい。

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つまりGear VRをつけたまま踊れる!

ポイント2 高解像度
VRの場合、立体視のために同じ画面を2つ並べて重ねるため、どうしても高い解像度が求められる。Gear VRで実現したのは2560×1440という高解像度。Oculus Rift DK2とProject Morpheusはいずれも1920×1080のフルHD。モバイルながらその上をいく解像度だ。

ポイント3 カメラが内蔵
スマホでは背面にカメラが搭載されているが、Gear VRはそのカメラが使えるようになっている。そのため、現実を映しながらそこにキャラクターなどを投影させるARも可能だ。

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カメラのフレームレートも60fpsと再生環境と同様。

ポイント4 追加センサー
Gear VRは、ただ頭に装着するだけのゴーグルではない。加速度センサー、ジャイロセンサーなどVR用に様々なセンサーが搭載されているため、トラッキング性能が非常に高く自然になっている。

ポイント5 VR酔いしにくい
VRでしばしば問題となるのが、現実の感覚との差異によるVR酔いだ。それを軽減するための様々な技術が詰め込まれている。

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カーマックが情熱を注ぎ込んだ結果、実際にはありえないような技術を実現しているとのこと。改めて「カーマックすげぇ!」と2人。

ポイント6 Unityに対応
これは開発者サイドの話になるが、GearVRのコンテンツを開発する場合、デバイス統合がしやすい。開発用のツールSDKの中に、ゲームエンジンUnity用のソフトウェアが同梱されており、簡単に対応できるようだ。

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どれくらい簡単かというと、実際に展示されていた『Unity-chan Live』というUnity-chanが歌って踊るコンテンツのGear VRへの対応は1日(実質2時間くらい)で終わってしまったと、大前氏。

ポイント7 マーケットプレイス
Gear VR向けのコンテンツをどうやって手に入れればいいかというと、Gear VRを装着しながら、ストアでそのまま購入、ダウンロードそしてプレイができてしまう。こうした簡単にプレイできるマーケットプレイスの整備が整っていることも一つの利点だ。

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Oculus VR社が作ろうとしているOculus Homeというマーケットプレイスに直接アクセス可能。

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いちいちGalaxy Noteを取り出さなくてもGearVRの操作で購入が完了してしまう。

最後に、2人からはこうしたGear VRとUnityによって本格的なVRゲーミングが幕を開けるのではないかという話があってトークイベントは終了となった。

筆者がこの講演を聴き、そして実際にデバイスを体験して感じたのは、Gear VRは「手軽なOculus Rift」ということだ。頭の激しい動きにも遅延なく追従するため、基本的にはOculus Riftの体験と変わらない。視野角が96度と、Oculusの110度と比べるとやや狭いくらいだろうか。

そして、配線、設定、ソフト入手といった、現状のOculus Riftではやや面倒で一般ユーザー向けにはまだハードルが高い部分が大幅に簡略化していることが最大の特徴だ。販売は年内ということで、本家Oculus Riftよりも先に市場に投入される(日本での販売については不明)。一番最初の没入型VRヘッドマウントディスプレイだ。発熱やバッテリーの持ちなどはかなり気になるところだが、今後もこの分野は改良が進んでいくものと期待される。

もぐらゲームスでも以前まとめたように対応ゲームも既に何本か開発が始まっていると報じられており、今後の展開が楽しみだ。

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