その名に反して手応えあり。ボイロキャラ総出演の”ゆるぽわ”二次創作作品『ボイロでSRPGのSTUDIOな短編』

ワガハイはシミュレーションRPG(SRPG)である。
名前はまだない。

某文豪の名作小説にちなんで言ってしまったが、このタイトル画面の通り、これより紹介するゲームには名前がない。だが、名前が無いのはこの画面だけのことだ。ゲーム一式のダウンロードが行える「ふりーむ!」のページには、ちゃんと名前が付けられている。

気になる名前は『ボイロでSRPGのSTUDIOな短編』である。

いや、それ記事見出しに出とるし、と言いたくなったかもしれない。
そこは大人の視点でスルーいただければ幸いに思います。
実際、『SRPG Studio』製のSRPGで短編である。ウソではない。
2019年の大晦日(12月31日)より無料配布を開始した。Windows PC用だ。

ボイロ(VOICEROID)の6名が織り成す短編SRPG

SRPGのStudio、短編は名が示す通り。残るボイロとは?
株式会社AHS(AH-Software)が販売している、読み上げ用音声合成ソフト「VOICEROID」のことである。その名が現すように文章を入力することで、その文章を読み上げてくれる。株式会社エーアイの音声合成エンジン「AITalk」を元に製作しており、「VOICEROID」はそこにキャラクター性を持たせたシリーズとして、複数の製品が出ている。

本作はそんなVOICEROID製品のイメージキャラクターたちをメインに据えた、いわゆる二次創作作品となっている。登場するのは総勢6名。以下、各キャラクターとそれぞれのユニットクラス(兵種)を個別に紹介。(若干のネタバレを含みます)

アカネ(琴葉茜)

VOICEROID+ 琴葉 茜・葵」及び「VOICEROID2 琴葉 茜・葵」のイメージキャラクター。
後述のアオイとは双子で、関西弁で話す。
本作における主人公枠。ユニットクラスは「ロード」。メイン武器は剣。

アオイ(琴葉葵)

VOICEROID+ 琴葉 茜・葵」及び「VOICEROID2 琴葉 茜・葵」のイメージキャラクター。
上記、アカネの妹。こちらは標準語で話す。
ユニットクラスは「お助けパラディン」。某著名SRPGで言う所のジェ○ガン(※作中では伏せてないが、あえて伏せる)。初っ端から剣、斧、槍を使える万能ユニットだが、成長率は壊滅的に低く、レベルアップも1回しかできない。

マキ(弦巻マキ)

音楽制作ソフトウェア「Music Maker」シリーズの「jamバンド」のメンバーで、「VOICEROID+ 民安ともえ EX」のイメージキャラクター。製品名表記が声の元である声優の名前になっているが、これには諸々の事情があるらしい。(割愛)
ユニットクラスは「ファイター」。メイン武器は斧。

ユカリ(結月ゆかり)

VOICEROID2 結月ゆかり」を始めとするVOICEROIDソフトウェアのイメージキャラクター。
上記マキとは共演機会が多い。(本作でも一緒に登場)
ユニットクラスは「ビーストテイマー」。メイン武器は槍。

ズンコ(東北ずん子)

宮城県の「ずんだ餅」をモチーフとする、東北6県を盛り上げるため誕生したキャラクターVOICEROIDソフトウェアもAHSより発売されている。
どんな餅も一瞬で「ずんだ餅」に変える必殺技「ずんだアロー」を持つ元設定にちなんで、メイン武器は弓矢。だが、ユニットクラスは”斥候”の設定から「シーフ」。鍵開け能力を持つ。そして、肝心の「ずんだアロー」は出せない。ガッデム!

キリタン(東北きりたん)

上記、ズンコの妹。なんだか色々不安になってしまう状況で登場するのだが、詳しくは本編で。こちらもVOICEROIDソフトウェアがAHSより発売されている。
ユニットクラスは「ウィザード」。唯一の魔法使い。杖も使える。

以上の6名をカーソルで動かし、敵に戦闘を仕掛けながらマップごとに設定された目標の達成を目指す。ゲームの流れとしてはそんな感じだ。ターン制SRPGの王道に則った作りである。

システム周りも王道準拠。
ジェイ○ンの名を出した点でお察しいただきたい。

細かい仕組みもそれに準拠。武器ごとの相性こと「三すくみ」、”剣は斧に強く”、”斧は槍に強く”……は最たる象徴だ。それを踏まえた武器を選択し、戦闘を仕掛けると命中率が上下するようになっている。さらに攻撃力、防御力、回避、敵の必殺攻撃発生率にも大きめの補正がかかる。そのため、相性の悪い武器で攻撃を仕掛けた場合、与えられるダメージ量が著しく減少するなどのデメリットが。逆に相性の良い武器で攻撃を仕掛ければ、大きなダメージを与えられるのを始め、優勢になれる仕組みとなっている。

また、戦闘での2回攻撃発生条件もやや独特。「追撃性能」持ちの武器限定になっている(+速さのステータスが影響)。それを持たない武器は、1回しか攻撃できないのだ。これは味方のみならず、敵も共通。なので、攻撃時は相手の武器を調べることも大事。もし、その手の武器を持っているのを見落とし、戦闘を始めたりすれば、返り討ちにされかねない。先述の三すくみにおいて、相性の悪いパターンであれば尚更だ。

ほかに短編ゆえ、各キャラクターの最大レベルも低めに設定されている。ただ、より強いクラスになる「クラスチェンジ」のシステムは備わっている。ただ、解禁のタイミングがやや変わっているのだが……これ以上は本編にて。

こんな具合に基本は王道ながら、設定周りで個性を出した作りにまとまっている。
そんな本作の魅力兼見所はストーリーである。

”SRPGあるあるネタ”満載のストーリーと意外な遊び応え

……と言いながら、別に国家間の陰謀渦巻く戦争が描かれる訳ではない。
そもそも短編だ。おまけに登場キャラクター達はボイロの面々である。
一口で言えば、ゆるぽわ系だ。

ただ全編、唐突に次ぐ唐突の連続で、あらゆる場面でSRPGの”あるあるネタ”が飛び交う、ツッコミどころ満載の内容になっている。

そもそも、オープニングからして唐突。とある領地の森の一軒家で、平和な日々を過ごしていたアカネ・アオイの姉妹。そこに秒速で山賊が襲来。何故かパラディンになっていたアオイに導かれるがまま、アカネは彼らと一戦交えることになってしまう。

戦闘後、山賊が襲ってきたのは、領主の統治が最近、疎かになっていることに影響しているとの噂が。二人は真相を確かめ、領主は何しとるんじゃボケェ、いてこましたろかの勢いでカチこむべく、町へ向かう……というものである。

若干、汚らしい言葉が混じったことをお許しいただきたい。
(ちなみに若干、その後の展開も混ぜた)

だが、実際そんなノリで始まり、以降も唐突な展開が連続する。思わず「どうしてこうなった」とボヤきたくなること必至の内容である。そのような展開と共に先に紹介したボイロ由来のキャラクター達が順次参戦していく。もちろん、加入の過程は唐突の極み。「なんでやねん」である。一部に至っては、本当に「どうしてこうなった」と言わざるを得ない構図で現れたりもする。

いや、むしろ「助けてなんちゃら」だ。
誰のことを言っているのかバレバレだが、お構いなしとしよう。

そう言ったノリで全編、展開されるので、ひたすらに愉快。主人公枠のアカネもあらゆる展開に対し、(関西弁と共に)ツッコミを入れまくるので、陰謀がなんだ、愛憎劇がなんやねんの勢い任せっぷりである。

そこに入り混じるのがSRPGの”あるあるネタ”。既に「お助けパラディン」やら「助けてなんちゃら」、システム周りの三すくみの例を出してしまっているが、あらゆる場面にてSRPGお馴染みのネタが飛び交っては、プレイヤーをクスりとさせる。SRPG好きであれば、「露骨過ぎるやんけ!」と口に出してしまうこと確実の”あるある”っぷりなのだ。

数あるネタの中でも群を抜いて必見なのは、「クラスチェンジ」に関する展開。どういう展開かの詳細については伏せる。とにかく、ご覧いただきたい。”SRPGあるある”の極致を見るだろう。「SRPG?いや、これの元ネタって……」と言いたくなるかもしれないが、それ以上いけない。”SRPGあるある”なのだ。そもそも、某有名SRPGの関係者はそれに熱中した過去を公言されている。ゆえに”あるある”に属するのだ。そう思おう。そうしてください。お願いします。

ストーリーに焦点を当てたが、ゲーム側もなかなか魅力的な仕上がりだ。特に「三すくみ」と「追撃性能」を踏まえた進軍が試される各マップでの展開は、独特のスリルと最善の一手を考える楽しさに富んでいる。”ゆるぽわ”を謳いながら、難易度のバランスも非常にいい。ターンごとのセーブが可能、戦闘で敗北しても撤退するだけで永久ロストはなしと、全体としては低めだが、先2つの特徴の関係で、1ユニットでも欠けると戦闘面での懸念が増していくのがいい緊張感を醸し出している。「お助けパラディン」なる文字通りのユニットでフォローする際も、武器ごとの相性と追撃性能は常に考えなければならないし、それによる単騎突撃もほぼ通用しない。ましてや、かのユニットにはジ○イガンチューニングが施されている。いずれは性能面で他のユニットに追い越されるデスティニーだ。

そんな個々の特徴を踏まえた進軍、運用が攻略の要になるので、難易度低めとは言え確かな手応えが得られる。育成周りも最大レベルの低さと経験を積む機会が限られていることにより、地味に悩まされる。一応、”あるあるネタ”由来の稼ぎポイントはあるが、最大レベルが低いのもあって、万能ユニットの誕生が誕生するか否かはほぼ運だ。

こんな具合に遊び応えの面でもいい感じの”あるある”が炸裂していて、申し分ないやり応えが得られる。短編だけあって、エンディングまでは最長でも2~3時間ほどと短めだ。人によっては1時間以内でのクリアも可能。だが、一方的な展開にはなりにくく、マップごとに紛うことなき戦術と戦略が試される設計。ゆるぽわな作風、若干の適当さが滲み出ているタイトルとは裏腹に、SRPGとしてのキモは忘れていない見事な仕上がりなのだ。

それもあって、SRPG好きほどいい意味で裏切られること必至。どこからどう見てもボイロのキャラクターファン向けではないか、との先入観を持っているのなら、すぐにでもダウンロードしてやるべし。意外な手応えに驚くこと請け合いだ。

侮れば返り討ち確実。これぞ正真正銘、侮りがたし良作!

また、SRPG好きに必見の見所で「おまけモード」の存在がある。これは本編クリア後に解禁されるゲームモードで、いわゆる高難易度的なものに属するのだが、仕組みが大変ユニーク。成長要素(レベルアップ)なし、命中率の概念なしという、確率の概念を完全に取っ払ったものになっているのだ。

なので、どのマップでもダメージ確定を前提に、相性などの要素を踏まえて判断しなければならない、詰め将棋そのものな展開が繰り広げられる。レベルアップがないので、SRPGというよりは戦略シミュレーション(ストラテジー)寄りのバランスだが、常に被害が生じる危険を感じながら進軍する過程には本編とは異なる緊張感がある。もし、本編の難易度に物足りなさを感じるのであれば、ぜひチャレンジしてみて欲しいモードだ。ちなみにこのモードではストーリーイベントも完全になくなる。純粋にゲームだけ遊びたいプレイヤーにもおすすめだ。

このほか総合ターン数、合計レベル数の算出を始めとする機能も搭載されていて、2周目以降のやり込みにも完全対応。成績によってエンディングが変わる類の仕掛けはないが、いずれかの限界を極め、プレイするとひと味違った展開が楽しめるので、こちらも物足りなさを感じたプレイヤーはぜひ、チャレンジいただきたい。

演出面でもストーリーイベントはフルボイスで、どのキャラクターもそれぞれのVOICEROIDソフトウェアによる声で喋る。表情が変わるなど、アニメーション周りも凝った仕上がりだ。

また、既に幾つかのスクリーンショットに出している通り、”携帯ゲーム機初期時代”の某有名SRPGシリーズをモチーフにした戦闘シーンにも注目。最小限の動きによる、スピーディでテンポ抜群のアニメーションの数々には、ネタ元を知る人ほど苦笑い必至だ。SRPG Studio製のタイトルとしても珍しさ全開、且つこの手の戦闘シーンも作れることを堂々証明した仕上がりになっているので、同ツールでゲームを制作中の人も要チェックだ。

登場キャラクター達の関係から、プレイ層を限定しているように見えるが、その実は優れた遊び応えを誇る短編SRPG。抑えた難易度も相まって、ボイロキャラクターのファンにも手に取りやすく、SRPG好きにも魅力的な要素が揃っていることから自信を持っておすすめできる。短編ゆえに手軽に遊べるので、少しでも興味があればダウンロードして遊んでみて欲しい良作だ。

ゆるぽわな雰囲気に侮ることなかれ。
ツッコミ所満載な作風にも戸惑うことなかれ。
なかなかに手応えありです。

[基本情報]
タイトル:『ボイロでSRPGのSTUDIOな短編』
作者:ゆーぎり
クリア時間:2~3時間
対応OS:Windows
価格:無料

※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/21748


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    シェループ(@shelloop

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