商店街の大通りにゲームが集結!SANUKI X GAME 2025探訪記
2025年11月16日、一般社団法人讃岐GameNの主催によるゲームイベント「SANUKI X GAME」(サヌキ エックス ゲーム)が香川県高松市の高松南部3町商店街にて開催された。2021年から開催されており今年で5回目の開催となる。会場ではのべ60の団体が出展を行っていた。
「SANUKI X GAME」の特徴は”ゲームのお祭り”をコンセプトとした商店街回遊型のイベントであること。会場である高松南部3町商店街は「3町」の名前の通り、南新町・常磐町・田町の各商店街をまとめた通称で、日本一の長さを持つ商店街である高松中央商店街の一翼を担っている。スタンプラリーやゲーム大会などの様々な催し物、ワークショップやスポーツ体験コーナーなど、単純なゲームの展示のみに留まらない趣向が凝らされており、”お祭り”色を強く感じられるイベントとなっていた。
今回のレポートでは作品別のピックアップではなく、展示エリアごとに項を区切って展示の様子を含めて紹介する形式とした。読者の皆さんにも一風変わったこのイベントの雰囲気が多少なりとも伝われば幸いだ。
PLAYエリア
会場北部のPLAYエリアでは、基板やモニターなどがあしらわれたゲーミングな「だんじり」がお出迎え。なんとも”お祭り”といった感じのこのだんじりだが、前夜祭での練り歩きで実際に担がれており、その様子はSANUKI X GAMEの公式X(旧Twitter)のポストから確認することができる。
昨年の神戸ゲームラビリンス(関連記事)にて注目作品としてピックアップし、筆者がSANUKI X GAMEを知るきっかけともなったスタジオぽんず『レッツカチコミ!!のおかちゃん』はアーケード風の筐体にて展示。某ワニのゲームをモチーフとしたボスと戦うステージ2がプレイできるようになっていた。
大阪電気通信大学 総合情報学部デジタルゲーム学科の学生チームによる『RescueSprinters』は火災を起こした列車の消火と人命救助を行う2人協力型アクションゲーム。各プレイヤーは消防車上の消防士を操作し、はしごの操作、放水による消火、列車内の乗客の救出などを手際よく行っていく。途中で高低差が登場したり、伸ばしたはしごが壊れた際にヘリが新しいはしごを持ってくるダイナミックさが面白い。展示以外での公開については検討中とのこと。
劇団カレーライス『ロボ王 vs ウチュメガファイト』は、レトロ風2D対戦格闘ゲーム『ロボ王』と『ウチュメガファイト』の両雄が激突するタッグマッチ式2D対戦格闘ゲーム。攻撃と交代の2ボタンで操作し攻撃の強弱すら大胆にそぎ落としたシステムになっているが、格闘ゲームの醍醐味がしっかり味わえる。2人協力プレイ・4人対戦プレイにも対応しており多人数プレイが熱くなりそうだ。本作はSteamでの年内のリリースを目標に開発が進められている。
書店×ノベルゲーム
地区内の各書店では書店×ノベルゲームというコラボレーションが実施され、物語に浸れる空間がそれぞれに演出されていた。その中から「絵と本 羊雲」2階ギャラリーの様子をピックアップして紹介する。
サークル拡蝶詞が出展していた『anomie』は「脳で操作できる機械」が普及し、人間とAIとの境目があやふやとなった近未来の秋葉原を舞台としたSFノベル。電気街の中でもクラシカルな無線店での会話や、主人公である「橘真」がテロ事件に巻き込まれるというスペクタクル感のある導入部が体験できた。
Evan氏が制作中の『nerd: tracing dayline』は、田舎町に引っ越してきた学校に馴染めない少女が主人公のアドベンチャーゲーム。試遊できた範囲は転校してきたばかりの少女が夜遅くの海岸通りを一人ぽつんと歩いていくというもので、自らの行動に対して何かにつけて理由を探そうとする内省的な少女の堂々巡りする思考をバックログ機能で辿らせるという演出に唸らされた。公式サイト等の紹介では「話題」を集めて人々と交流するとのことで、過去を辿ることが話題探しのためにも重要になりそうだ。
フラワーショップ×植物ゲーム
会場の中央の交差点に位置するフラワーショップ「カタリ」では植物を題材とした2作品が展示されていた。
店外で展示されていたのが盆栽サークルかみんぐの『盆栽と言ったら高松だろ!』。そうなの!?とその場で思わず言ってしまったが、実際に高松は日本の盆栽松の生産の8割を占める名産地であるとのこと。盆栽の写真を使った神経衰弱ゲームで遊ぶことができ、盆栽に使われる植物の特徴も合わせて学ぶことができた。
店内で展示されていたabyss good games『あなたに花束を』は、花屋となって来客の注文に応じて花束を作成し、提供した花束の内容に応じて物語が展開するというアドベンチャーゲーム。展示では練習としてブーケやバスケットなどを自由に選択して花束を作るまでを体験でき、飾り付けにじっくりこだわれるようになっていた。
花屋さんの中で花屋さんになるゲームを遊ぶという一体感ある体験は感動の一言。カタリの店頭に置いてある花の名札には花言葉が添えられており、どのように花を選んでいくのかを想起しやすかった点もゲームの魅力を引き立てていた。また、筆者の前にカタリの店員さんが本作をプレイしていたため感想を伺ってみたところ、作中で語られる薔薇に関するエピソードの詳しさに触れて本職も太鼓判を押していたのが印象的だった。
MIRAIエリア
会場南側のMIRAIエリアはユニークという一言では片付けられない。判子、松葉杖、眼鏡、雀荘といった異業種からの出展のほか、未だかつて見たことが無い畳に炬燵スタイルの展示が度肝を抜いた。この上ないリラックス空間と言えば間違いは無いのだが、一体何を見せられているのだ…。
本の虫眼鏡『ラビィアンブックス』は本を開いてつなぎあわせ、本の上を自動で進む「ラビィ」をゴールへと導くという作品で、シミュレーションを公称しているがプレイ感はパズルゲームに近い。ラヴィが色付きパネルの上を歩くとラビィの「セーカク」が変化し、ゴールするためにはラビィのセーカクをゴールの色と合わせる必要がある。ラビィのセーカクをどう変化させていくかに各々のプレイヤーのセーカクも現れそうだ。
ハンドセンサーLeap Motionを使った体感ゲームであるsamirin33氏の『時速1000kmの牛』。手のひらの動きで高速飛行する牛を動かし、表題となっている時速1000kmまでの到達時間を競う。障害物を避けながらゲージを溜め、ゲージが溜まった時に拳を握ると「フィーバーモード」に突入し、フィーバー中は物にぶつかりまくることで加速できるが、「よける」と「ぶつかる」の意識を咄嗟に切り替えるのが難しい。フィーバーモード中はモニターの下に置かれた送風機より風が吹き付けるようになっており気分を盛り上げていた。
高松に開発スタジオを持つ株式会社xeenは自社開発中のボードゲーム『ボムボムドカン』を出展。親となったプレイヤーが持っている爆弾の数値を超えないように数値カードを重ねていくチキンレースで、爆弾カードが爆発する数値の推理と様々な効果を持つスペシャルカードが駆け引きのカギ。なかでも全員が手札を隣の人に回してしまうスペシャルカード「ハリケーン」が豪快だ。
モニターを縦に使った展示が目立っていたまよねえ氏の『STRECT』。80年代に一世を風靡したキャラバンスタイルの縦スクロール型2Dシューティングゲームで、何も考えずに出てくる敵を撃って破壊しまくれるテンポの良さが魅力。一方で各所に隠されたスコアボーナスの数々や、敵に接近するなどの条件で発生する「攻撃封じ」で激化する難易度を抑え込むといったマニアックな要素も盛り込まれている。itch.ioにてデモ版が公開中で、ステージ分岐などボリュームを増やすためにリリースはしばらく先になるとのこと。Steamページでは2027年第一四半期のリリースが予定されている。











































