フリゲ探索RPG『ALICE HOLE』 名作の遺伝子を引き継ぐ迷宮を制して、立ちはだかる困難を“克服”せよ!

RPG,フリーゲーム

RPGといえばドラゴンクエストやファイナルファンタジーのように、冒険をしながら物語を進めていくタイプのものを思い浮かべる人もいると思います。あるいはウィザード・リィや世界樹の迷宮のように、冒険者を編成して3Dダンジョンに潜るゲームを思い浮かべる人もいるでしょう。

市販されているRPGにはいくつもの系譜があるのと同じように、フリーゲームにも脈々と受け継がれたRPGの派生ジャンルというものが存在します。例えばマップのない"ノンフィールドRPG”など、画期的なゲームシステムが後の作品に受け継がれるケースが多々あります。

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さて、今回紹介するフリーゲームは、2D見下ろし型のダンジョン探索RPG『ALICE HOLE』です。作者は黒木静氏。小さな部屋で目覚めた主人公の少女アリスが、「フランシスカに会わなければいけない」というわずかな記憶を頼りに、広大な迷宮を渡り歩いて彼女を探すという内容です。

本作はダンジョンの探索に重きを置いた長編RPGで、ボリュームも難易度も歯ごたえのあるものになっております。無数のモンスターやトラップ、複雑に入り組んだ道筋、そして凶悪な敵の猛攻など一筋縄ではいきません。一方でダンジョンには隠された宝が大量に眠っており、一度始めると止め時が分からなくなる魅力もあります。綿密なマップデザイン、読みごたえのある世界観、白熱するバトルなど、往年のフリーゲームファンにこそ特にオススメしたい魔性の迷宮の物語を、今回もじっくりと紹介していきます。

謎に満ちた世界で、アリスは真実を求めて旅立つ

主人公のアリスは、見知らぬ館で目を覚まします。ここはどこなのか、そもそも自分は何者なのかさえ分かりません。唯一の記憶は、夢で「フランシスカ」と呼ばれるメイドが自分を残してどこかに出かけていったことのみ。アリスは手がかりとなるフランシスカを探すため、館の扉から繋がる異世界へ足を踏み入れます。

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与えられた情報は限りなく少ない。フランシスカを追うためには自分の足で探索する他ない。

扉の外は凶悪なモンスターが徘徊しており、魔法も技も使えないアリスが冒険するには危険が伴います。そんなアリスを助けてくれるのは、少女の姿をした「心象」と呼ばれる存在です。彼女たちはゲーム開始時にいくつかの質問に応えることで仲間になり、強力な攻撃や回復などを駆使して戦ってくれます。心象はアリスの感情を司る存在らしいのですが、彼女たちもまた記憶を失っており、詳しいことは不明です。

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心象は全員で7人。プレイヤーごとに最初に仲間になる心象は変わってくる。

数々の謎に満ちた世界で、アリスはいくつもの難関を突破して、無事フランシスカを見つけられるでしょうか?

危険な迷宮を探索し、隠された財宝を見つけ出せ!

本作のスタート地点となる館は、「太古の風穴」「古代王の墓」など、扉を開けるといくつものダンジョンに繋がっています。ダンジョンはどれも広大で複雑。行き先はプレイヤーが自由に選べますが、どこもかしこも大量のモンスターが徘徊しており、トラップが仕掛けられている場所もあります。中には簡単に全滅するほど凶悪な敵が待ち受けている場所もあります。

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圧倒的な数の敵や危険なトラップ。準備不足は命取りになる。

その代わり、ダンジョンには数百近い宝箱が設置されており、敵をかい潜って宝箱に辿り着けば、敵に対抗できる強力な装備品が手に入ります。本作では武器や防具に属性が備わっており、弱点を突けば大ダメージを与え、耐性を付ければ猛攻をしのぐことができるのです。

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しっかりと育成し属性を有効に活用すれば、ハック&スラッシュのように敵をサクサク倒せる。

宝箱は巧妙に隠されており、マップの違和感がある場所を調べてみると、隠し扉や隠し階段が見つかることがあります。なにげない壁の不規則な部分、奇妙なほど何もない空間の床、強敵が立ち塞がる入り口の奥……。そういった怪しいところには、財宝が眠ってる可能性が高いです。

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広大な迷宮から隠された宝を探し当てるのは至難のように思えるが、よく観察すればヒントが見つかるはず。

しかし、どんな装備が手に入ったところで、道中戦闘に負けてゲームオーバーになってしまうとそれまでの苦労が水の泡に。本作では「帰還の宝珠」というアイテムを使えば一瞬で館に戻ることは可能です。それでも次から次へと宝が見つかるため、もう帰ったほうがいいか、それとももう少しだけ粘るか、プレイヤーを惑わします。

敵は法則的に動いていることもあるので、よく見て避ければ戦わずに宝を手に入れることが出来ます。もちろんRPGなので、しっかり仲間たちを鍛えてレベルアップして確実に進むのも手です。本作では一度倒した敵は蘇らないので、邪魔な敵を減らしながらじっくり探索する事も出来ます。迷宮をどう攻略するかは、プレイヤー次第です。

散りばめられた世界の謎のピースを集めよう!

探索で手に入るものは装備品だけではありません。ひとつは仲間となる「心象」です。最初に仲間になった心象以外は、ダンジョンの奥底で石像の姿で佇んでおり、話しかければ仲間になってくれます。ただし、戦闘で一度に参加できる心象はひとりだけ。この世界には「心の宝珠」と呼ばれるものがあり、それを手に入れればパーティの参加人数が増えるそうですが……?

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各地で仲間になる心象。それぞれ得意不得意があるので、状況によって使い分けよう。

行く先々で手に入る「本」も、本作では欠かせない存在です。ダンジョンの至る所に落ちている本には様々な情報が書いてあります。ダンジョンや装備の情報、隠し部屋のヒントなど様々。特に、歴史に名を残した「聖王」「賢王」「愚王」「魔王」と呼ばれる4人の王の物語は、この世界の成り立ちを紐解くための手掛かりとなります。純粋に読み物としても面白く、続きを読みたいがため探索に熱が入ります。

本を沢山集めて図書館に寄贈すると、ダンジョン探索で役に立つものが貰えます。移動速度を上げたり、強敵の情報を知れたりと非常に有効なものが多いので、積極的に集めることをオススメします。また本とは別に、装備することができる魔書も存在します。

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ダンジョンに残された本から、この世界が断片的に見えている。50冊以上集めると……?

最後に、最も重要なものが「鍵」です。ダンジョンには特別な鍵で封印した扉があり、その先には王の残した宝物や新たな迷宮の入り口、あるいは今まで以上に強い敵が待ち構えていることがあります。4人の王を冠した鍵を手に入れるのは簡単なことではありませんが、すべて見つけることで、プレイヤーは物語の核心へと迫ることになります。

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鍵を守るため、あるいは鍵を手に入れた先には、恐ろしい敵が待ち構えている。全力を尽くして戦おう!

ここまで本作の特徴的な部分を紹介してきましたが、往年からのフリゲファンならもう気づいた方がいるかもしれません。ALICE HOLEのゲームデザインは、ゼロ年代のフリーゲームの名作『ネフェシエル』と『イストワール』を明確にオマージュしています。

蘇る伝説のフリーゲームの遺伝子

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『ネフェシエル』『イストワール』は、それぞれ2002年・2004年に公開されたダンジョン探索をメインとするRPGツクール2000製のフリーゲームです。ダンジョン内に大量に配置された宝箱、数々の隠し扉や隠し階段、押し寄せる大量のモンスターと恐ろしきトラップ、書物などで語られる断片的なバックストーリー、謎多き世界観……。その魅力的なゲームデザインと物語は、多くのファンとフォロワー作品を輩出しました。以前筆者が記事を執筆した『WIZMAZE』などその影響を公言している作者もおり、フリーゲームのRPGにおける金字塔的なポジションに位置しています。

しかしながら影響下にあるゲームの中でも、ALICE HOLEほどゲームデザインを強く引き継いだ作品はかなり珍しいです。ダンジョンこそ別物ですが、その端々にネフェシエルとイストワールを彷彿とさせるマップが存在します。

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両作をプレイした人なら、ニヤリとするエリアも。

ALICE HOLEはそれぞれの作品の持ち味を整理しつつ、より遊びやすいバランスに仕上げています。しかし現代風のプレイ性は程々に抑え、懐かしいクラシックな遊び心地を再現しています。敵の数や厳しいトラップに心折れるプレイヤーもいるかもしれません。その分、難所を突破できた時の喜びもひとしおです。

それと同時に、ALIICE HOLEには両作品にはない挑戦的な要素も含まれています。この物語を終える時、本作と他の作品がどう違うのかきっと気付くでしょう。

恐ろしき迷宮を踏破するために

ALICE HOLEの難易度はけして楽なものとはいえません。ここでゲームを攻略するためのヒントをいくつか書いていこうと思います。

本作のゲーム制作ツール「Wolf RPGエディター」にはスクリーンショット機能がついています。鍵のかかった扉の場所や謎解きのヒントを記録しておくと、のちのちの探索が楽になるでしょう。

店では敵がドロップしたアイテムと装備品を交換してくれます。交換してくれるものの中には強力なものもあるので、積極的に活用するのがオススメです。

凶悪なボスの攻撃に歯が立たないのであれば、装備を見直すのが大切です。属性や状態異常の相性を考えて装備を選べば、難敵を軽々倒せることもあります。

最後に、ALICE HOLEには「克服」と呼ばれる要素もあります。それは同じモンスターを沢山倒すことで、アリスが自分の感情を克服して少しだけ強くなるというものです。アリスは他のキャラクターと比べて特殊な能力がないため、レベルや装備以外の数少ない強化ポイントと言えます。

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克服のためには、かなりの数の敵を倒さなければいけない。ゲーム後半の敵だと伸びが大きくなる。

ALICE HOLEは、手探りでゲームを解き明かす楽しさがあります。結末に到達するまでに大変な場面が幾度となくありましたが、試行錯誤しながら未知のエリアを探索するワクワク感は、代え難いものがあります。腕に自信があるなら、ぜひ自分の力で迷宮踏破を目指してください。

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ゲームの達成度を示す実績では、迷宮をどれだけ攻略出来たか振り返ることができる。

また、本作をクリアした後でも残された謎がいくつかあり、夏頃に新たな物語が用意されると告知されております。こちらも期待して待ちたいところです。

タイトル 『ALICE HOLE』
制作者 黒木静(制作者様サイトはこちら)
対応OS Windows
プレイ時間 10~30時間程
価格 無料
ダウンロードはこちらから
ふりーむ! https://www.freem.ne.jp/win/game/16515
Vector http://www.vector.co.jp/soft/winnt/game/se517095.html

  • ノンジャンル人生(@nongenre_zinsei

    普段からRPGの考察と『メイジの転生録』の話ばかりしている人です。2016年にはもぐらゲームスにて連載「フリーゲームをはじめよう。」を寄稿し、近年はVR・VTuberの記事なども執筆しました。noteでは「一期崎火雀」名義でゲーム関連のコラムを書いています。

    自身もRPGを制作中。

    note:一期崎火雀(ノンジャンル人生)