今後のアップデートと完成が期待される、注目の制作途中フリーゲーム3選(2022年10月号)

フリーゲーム,連載

日々、個性豊かな新作が誕生し続けているフリーゲーム。その中には完成品に限らず、現在制作途上のものもあり、公開後も都度実施されるアップデートで完成に向け、着々と進歩し続けている。

本記事では、そんな制作途上のフリーゲームより注目の3本を紹介。

今回は長編RPG2タイトル、探索と戦闘要素を持つアドベンチャーゲーム1タイトルの計3タイトルをピックアップした。
RPGに関して、前回(先月号)ではシステム面で個性の強いタイトルをピックアップしたが、今回はどちらも王道寄りとなる。ただ、どちらも未完成ながらボリューム満点である。アドベンチャーゲームの方も、システム面で興味深い見所を持っている。

いずれも機会があれば公開中のものを体験して、その魅力をお確かめいただきたい。

目次

  1. ホシウタ
  2. 時渡りの徒花
  3. 共鳴ロンターノ

ホシウタ

少年期と青年期、2つの時代を舞台にした全4章の壮大なストーリーを描いた長編RPG。本稿執筆時点では少年期を舞台にした1章、青年期が舞台の2章までがプレイできる。

基本的にはストーリーに沿ってマップを移動し、戦闘やダンジョン探索などをこなしていく形で本編は進行。システム面も戦闘は敏捷性の高い順から行動するターン制のコマンド選択型で、王道寄りとなっている。
ただ、特徴的かつ意欲的な試みも満載だ。ひとつに時間の概念。街以外のフィールドマップを歩くと時間が経過し、昼ならば夜に、夜ならば昼へと変化する。それと共に登場する敵が変わったり、一部のイベントが進行可能になるといった要素が設けられている。

また、もうひとつの試みとしては主人公「トト」にはライオンの「ナユタ」、ハヤブサの「コット」が同行。その力を借りて大きな岩を動かしたり、小さな穴を通り抜けてその先にある仕掛けを作動させるといったことができるようになっている。主にダンジョン探索時に活躍することが多く、それによって起伏のある展開を描いているのがちょっとした見所だ。

ちなみにダンジョン探索では、他にも敵に見つからないよう行動するステルスイベントも用意されている。ダンジョン以外のイベント絡みでも、馬車の護衛という防衛ゲーム的な展開があったりと、起伏を付ける試みは豊富で、その練り込まれた構成には並々ならぬこだわりを感じさせられるはずだ。

戦闘もシステム面は前述の通りだが、「スキル」の使用時に消費するMPは通常攻撃、防御によって上昇するチャージ形式、「ソウルゲージ」なるゲージが貯まると基礎ステータスが上昇するほか、強力な必殺技が放てるといった個性的な仕様が盛り込まれている。

ストーリーおよび世界観も南米的な香り漂う独特なものに加え、少年期と青年期とで全く異なる展開が描かれるという見所がある。
キャラクターの個性付けや内面描写も丁寧で、亡くなったとされる父親の軌跡を辿っていく大筋もその謎も併せ、引き込まれること請け合い。

本稿執筆時点の2章までの段階でも15時間以上は遊べる大ボリュームで、完成版が相当な大作になることを期待させられる作品。前述の工夫の数々など、RPGとしても非常に意欲的で遊び応えのある仕上がりになっているので要チェックだ。

[基本情報]
タイトル:『ホシウタ』
作者:山乃ゆぎと
クリア時間:12~15時間(※2章まで)
対応プラットフォーム:Windows

◇ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/28092

時渡りの徒花

前述の『ホシウタ』に続き、こちらも長編RPG。危険な新種の魔物「エニグマ」が支配する絶望の未来を変えるため、その一端を体験した主人公「リアム」が奮闘する模様を描いた作品。こちらも章単位で設けられたストーリー(クエスト)に沿って進めていく構成となっていて、本稿執筆時点では5章までが体験可能になっている。

「時渡り」の名称から時間軸移動を題材にしたストーリーを想像するところだが、その種の展開が最も描かれるのは最序盤。それ以降は未来を変えるため、現在の時間軸で冒険を繰り広げていくという流れになっている。ただし、本作の制作進捗が掲載されているCi-enのページによれば、今後公開予定の6章以降には選択肢が登場し、それによってストーリー展開が変化する仕掛けが登場するようだ。

そのため、現段階の遊び心地としては王道のRPGという印象が強い。
システム周りも王道で、少し特徴的と言えるのは戦闘システム全般。敏捷の高いキャラクターであれば複数回行動可能という、アクティブタイムバトル(ATB)形式なのだが、この時に時間が流れるか否かを選べる、ストーリー設定にちなんだ難易度選択機能が用意されている。これにより、スピーディでスリリングな戦闘(ターンが回った時に時間が止まらない)、一手ごとにじっくり考える戦闘(ターンが回った時に時間が止まる)が楽しめる1粒で2度おいしい作りになっている。

また、本作はフィールドマップの作り込みに力を注いでおり、美しさを重視した見た目もさることながら、次のマップへと移動する場所には矢印を表示するなど、右往左往させないための配慮が徹底されている。地形の構造も場所ごとの違いが明確に表現されているほか、寄り道も豊富で、その先に強力な装備が隠されている傾向が高く、探索にも熱が入りやすい。RPGに個性豊かなマップを巡ることを求めている人なら、本作は存分にその欲求を満たしてくれるだろう。さすが力を入れていると売りにしているだけの仕上がりだ。

若干、雑魚敵とボスとで得られる経験値の差が大きいことなど、気になる箇所もあるのだが、その辺りは制作途中ということで今後のアップデートでの改善に期待したいところ。最終的なボリュームもかなりの規模となり、前述の通り分岐も導入されるとのことなので、長編RPG好きはもちろんのこと、時間軸を題材にしたストーリーや世界観が好きな人には注目の1本だ。

[基本情報]
タイトル:『時渡りの徒花』
作者:表裏
クリア時間:5~7時間(※5章まで)
対応プラットフォーム:Windows

◇ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/26202

共鳴ロンターノ

3年ぶりに帰郷した召喚師の主人公「レリナ」が、家主兼師匠の「サジル」が課題として残した謎の召喚メモの解読に挑む、全4編からなるストーリーを描くアドベンチャーゲーム。

基本的にはストーリーを読み進めていく内容だが、ある程度イベントが進んだ後、レリナを左右に動かせる移動パートが登場。これで幼馴染の「サイア」が働く「魔具店」に出向いて買い物をしたり、「ギルド」でクエストに挑んだりしながら、召喚メモの解読に必要な手掛かりを見つけていくという流れになる……らしい。

仮定表現で締めた通り、本稿執筆時点では仮実装の段階にあり、まだ遊べるようにはなっていない。ただ、いずれもどのようにレイアを動かすのかといった部分は体験可能。特に注目なのはクエストで、なんと専用のマップを探索しながら進んでいくというものになっている。しかも、道中には敵も現れて戦闘が発生するようにもなっているようだ。

残念ながら現段階では未実装で、戦闘システムの詳細は不明。ただ、主人公が召喚師という設定にちなんで、使い魔のキャラクターが戦うスタイルになると思われる。

実際に現段階で確かめられるストーリーでは、3体の使い魔が登場し、その一部に明らかに戦闘向けとも言える面子がいる。それが恐らく戦闘でも活躍するのだろう。どんな風になるのかは未知数だが、それぞれ分かりやすい個性付けが図られているだけに正式実装の時が期待されるところだ。

また、マルチエンディング制の採用も予告されており、これにも何らかの使い魔が絡んでくることが推察される。レリナに対して露骨な反応を見せるサイアも気になるところだが、こうした要素の導入もあってやり込み周りもそれなりに備わりそうだ。肝心のストーリーも登場キャラクターたちの個性付けはバッチリ。とりわけ魔族の「ロギア」はその登場と活躍からして今後への期待を抱いてしまうはずだ。

全体的に穏やかな雰囲気が漂いつつも、ここぞという所でドカンと盛り上げる演出も色んな意味で印象に残ること請け合い。前述の通り探索パートが仮実装に加え、ストーリー本編もプロローグ限定のため、掴みの部分しか楽しめない。だが、個性的なアドベンチャーゲームになることを自然に想像し、期待してしまう内容である。雰囲気や探索パートがどんな具合か気になれば、ぜひ体験版をチェックいただきたい。

[基本情報]
タイトル:『共鳴ロンターノ』
作者:神楽いづち
クリア時間:15分(※プロローグのみ)
対応プラットフォーム:Windows

◇ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/18528

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