フリーゲーム『カリスは影差す迷宮で』 。下された任務は「仲間殺し」。限られた期限を上手く使う遺跡探索RPG

「中尉、君には二つの任務が与えられる。
 一つは、鉱堀作業中に発見された遺跡の調査。
 もう一つは、同行する護衛者の抹殺だ」
(公式ページより引用)

今回はフリーゲームRPG『カリスは影差す迷宮で』を紹介する。本作は、小説化もされたフリーゲームである『黒先輩と黒屋敷の闇に迷わない』の作者である饗庭淵氏の新作だ。
このゲームの主人公は、軍属の考古学者である「キース中尉」。とある鉱山の採掘中に現れた遺跡の調査を任されたキース。しかし上官によると、遺跡調査はあくまで「目的の一つ」。キースに与えられた「本当の目的」は、調査中にキースの護衛となる女魔術師「カリス」を、事故に見せかけて殺すことだという。

学者としての調査任務と、全く別の暗殺任務を同時に命じられてしまったキース。魔術士の中でも特に優れた「獅士魔術師」であるカリスと遺跡探索を行う中で、カリスを殺すことは果たして可能なのか。なぜカリスは殺されなければならないのか。そして未だ謎が多い時代の遺跡奥深くに、キースは何を見るのか?

本作は、「相棒殺し」という特徴的な要素ももちろんだが、名作フリーゲーム『Histoire – イストワール』や『Nepheshel – ネフェシエル』、そして『魔王物語物語』のような、マップの探索を行い、自分の手でゲーム世界の物語を読み解くこともまた楽しめる作品となっている。早速紹介していきたい。

「遺跡探索」と「カリスの殺害」。そのどちらを優先するか?

本作には、ひとつの重要なルールがある。それは軍から与えられた「30日」という期限。その期限のうちにカリスを殺さなければ、任務は失敗となってしまう。任務遂行のための資金は1週間ごとに軍から支給されるが、遺跡探索の成果で支給額が変動するため、探索にも注力しなければならない。また遺跡で発掘される発掘物である「遺物」には強力な武具もあり、こちらもカリスを殺すうえで重要なものとなってくる。そのため、カリス殺害という任務達成のためには、やはり遺跡調査にも力を入れることが必要となってくる。

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ゲーム開始時のキースとカリス(画面右)の能力差。カリスは「獅士魔術師」の名に恥じぬ、圧倒的な力を誇る。正面から戦って彼女を殺すことは、まず不可能だ。

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遺跡の中であれば、いつでもカリスを殺すために「襲撃」することができる。カリスの不意を突くため、さまざまな方法で彼女からの「信頼」を得ることも重要になってくる。

また、さきほど挙げた「期限」の存在はこのゲームにほどよい緊張感を与える。「30日という期限から逆算して、1日の間に遺跡のどこまでを探索するか?」という時間リソースの配分意識ももちろんだが、遺跡探索を行う上での重要な行動を完了するには、期限である30日のうち、数日の日数をかけることが必要となるためだ。行動のためにかかる日数としては「1日」の行動が多いものの、それらの行動のうちいくつかは、どの行動を先に行うかの優先度を考えなければならないものとなっている。
日数を消費する行動について、例えば、遺跡に存在する「鍵のかかった扉」。これは万能の鍵である「流鍵(るけん)」というアイテムを消費することで、1日から数日間待つことで鍵の解除を行うことが出来る。この行動に関しては特に取捨選択などは発生しないため、扉を見つけ次第どんどん鍵を設置していくことがセオリーとなる。

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遺跡内の扉を開放しつつ、さらに奥へと進んで行こう。

次は、当時の歴史の情報が書かれている遺物「古文書」の読解や、魔法を習得するための「魔術書」の読解だ。これら読解行動にも数日間の日数かかる。読解については、宿で休むときに、古文書か魔術書のどちらか一方を読み解くかを選ぶという選択が生まれる。簡単なものなら1日で読み解けるが、魔術書などは複数日必要なこともある。また、一日に遺跡の探索をあえて行わないことで、2回分の読解行動に充てることもできる。古文書を紐解き遺跡の謎を読み解くか、それとも、魔術書を読解し、戦力の増強を優先するか?はたまた、一日分の遺跡探索を行わず、両方を読解するか?その選択は、プレイヤー次第だ。

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遺跡に残る魔力の影響から、思いもよらない場所にたどり着くことも。

また、探索中には遺跡に潜む魔物との戦闘が発生する。戦闘はキースとカリスの二人で戦うこととなるが、キースは自由な操作が出来るものの、戦力としては心もとない。一方で、カリスはプレイヤーによる操作ができない分、圧倒的な力で魔物を倒していく。キースが戦闘不能となると、遺跡の調査を中断して宿に帰還しなければならず、その際は一日の終わりに宿で行える古文書の読解なども行えなくなってしまう。前述の通り、一日一日の重みがあるゲームのため、一日の終わりに古文書の読解も行えるように、キースが危険な状態になったら自主的に宿に戻る…というプレイヤーの判断が必要になってくる。調査中には一時的に脱出が不可能な状態に陥ることもあるため、いままで行ったことのない場所に行くときには、万全の準備が欠かせない。

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キースは戦力としては劣る分、カリスからのサポートを受けることが出来る。

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遺跡の中に潜むモンスターとの戦闘では、カリスの圧倒的な魔力を存分に見ることが出来る。

こういった魔物との戦いや、遺跡に仕掛けられた罠の存在…。それらの危険要素から、護衛であるカリスはキースを守ってくれる。そこでカリスが消耗した頃合を見て「襲撃」を仕掛けることもポイントとなっている

遺跡の発掘物から、歴史の謎と物語を読み解け!

本作の面白さの大きな部分は、やはり遺跡の探索だろう。かつて滅んでしまった時代の古文書を紐解いていく中で分かるのは、はるか昔に栄えていた「凪ノ時代」という文明のこと。その時代に人類に対して猛威を振るい、「災厄」とまで言われた魔術士「キールニール」。そしてキールニールに対抗するために行われていた、一連の「計画」について…。
遺跡の奥に進むたびに、かつての時代に何が起こっていたのか?という部分が見えてくる。考古学者キースの持つ探索欲に、次第にプレイヤーも一体化していくことだろう。こういった探索部分の面白さに、知的な好奇心をくすぐられるゲームデザインとなっている

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古文書に記された内容から、「凪ノ時代」に何が起こっていたのかを知ることが出来る。

また、遺跡で発掘した遺物によっては、宿で休むときにイベントが発生するものもある。遺物に関してのキースとカリスの掛け合いとなっており、基本的にユーモラスなものだ。これもお楽しみ要素のひとつとなっている。

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遺跡から発掘された、ネコの耳のような謎の装備について真面目に考察するキース。

そして、暗殺の目標であるカリスだが、遺跡の探索を通して彼女のことも知ることができ、次第にその人間性も分かっていく。殺すためにカリスとの信頼を深めるにつれて、彼女のこういった人間味のある姿を見ることになる。そして時間は過ぎていき、キースは決断を迫られる。

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遺跡のなかで発掘されるベッドを見て、休みたい欲求に駆られる彼女の姿。

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キースは、カリスをなぜ殺さなければならないのか。その理由とは…。

本作は、「相棒殺し」という特徴的な設定だけでなく、遺跡の調査を通してその作り込まれた設定を読み解き、物語を楽しむという、探索型RPGとしても非常に質の高いものになっている。ぜひとも最後までプレイして、結末を見届けてほしい。

[基本情報]
タイトル
 カリスは影差す迷宮で
制作者 饗庭淵(制作者様サイトはこちら)
クリア時間 5時間程度
対応OS Win XP/VISTA/7/8(RPGツクールXPの動作環境に準拠)
価格 無料

ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/8604


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    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。