短編フリーゲームRPG『歪者行進曲』。高難度な戦闘と狂気の世界に酔いしれる

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今回は、ンギョッポラーヌ氏作『歪者行進曲』という短編フリーゲームRPGを紹介いたします。

ひたすら強敵と戦うためにザコ戦を排除してボスとのみ戦うゲームで、大きな魅力はなんといっても「試行錯誤をして高難度のボス戦に打ち勝つ面白さ」。それに加えて「厨二全開なテキスト」「美麗なマップとBGM」です。

特殊なシステムを使いこなして殲滅せよ!超高難度の戦闘

戦闘の難易度が高い、と聞いてイメージされるのはどんなゲームでしょうか。ボスの火力が高い、回復アイテムが少ない、ザコ敵が強いなどさまざまなパターンがありますが、この『歪者行進曲』は驚異の高火力ボスが特徴です。通常戦闘は序盤にチュートリアル代わりにあるのみで、ほとんどありません。HP・MPの値は敵味方共に低く、一瞬の気のゆるみが敗北につながる、ギリギリのラインの緊迫した戦闘を味わう事ができます。

主人公である「レヌンヴェイド」と「ドラヴォロワ」は、故郷を蹂躙した「憎獄人形0118」への復讐のため、遺跡へ潜ります。その先々で彼らを迎えるのは、一筋縄ではいかない凶悪なボスたち。

本作はWOLF RPGエディター(以下、ウディタ)製で、バトルシステム自体は一般的なターン制のコマンド入力戦闘です。レベルの概念はないので、事前にスキルポイントで技を習得し、装備を整えてから挑む方式となります。敵の情報がある程度戦闘前にわかるようになっており、戦略を立てておくことが必要です。もちろん、高難度の謳い文句どおり敵の攻撃は凄まじいの一言。一撃で戦闘不能になるダメージを放ってきたり、1ターン毎に最大HPの何割も削るステータス異常である「致死毒」状態にしてきたりと種類は様々。対策をせずに初戦でアッサリと勝つのは難しいでしょう。

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一回の攻撃で確実に戦闘不能にしてくる敵も現れる

コマンドは「攻撃」「特殊技能」「回復」「呪印」「防御」の5つ。
「回復」は、味方単体のHP回復と軽い状態異常の治癒、「呪印」は敵の攻撃力を低下&MP吸収、というこのゲーム特有の珍しいコマンドです。更にアイテムが存在しないかわりに、片方が倒れても、もう片方が1ターン耐えきればHP1で蘇生というシステムがあり、これらを上手く利用して戦闘に活かしていかなければなりません。

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メニュー画面では、「TC」というスキルポイントを消費して新しいスキルを覚えたりコマンドを強化したりすることができます。たとえば先ほどの「回復」コマンドは軽い状態異常にしか対応できませんが、強化することで更に上位の状態異常を治癒することができるようになります。スキルポイントには限りがあるので、ボスのタイプを見極めてスキルを取捨選択する戦闘前の戦略が重要になってきます。

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片方が倒れ、敵に先手をうたれる危険な状況。しかし1ターン防御してしのげば、もう一人の味方が回復する。戦略性のあるバトルで、プレイヤーの腕が試される

戦略性の高さだけでなく、ユーザビリティにも配慮

挑戦しがいのある戦闘システムが魅力でありつつ、このゲームは、プレイヤーのユーザビリティにも配慮されている点が多く見られます。例えば、一部の重要なボス戦を除き、逃走可能かつ負けても即座にリトライが可能なので「この装備・スキルでは勝てない」と思ったらいったん引き、準備をし直して再度挑むことができます。回復アイテムもデスペナルティも存在しないので、損することは一切ありません。さまざまな戦略を試しにぶつかっていきましょう。

(※…デスペナルティ:戦闘で負けた際の経験値・所持金減少などのペナルティ)

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加えて、このゲームではいつでもボスの場所に移動できるワープシステムがあるので、一旦諦めて少し遺跡の先に進み、装備などを回収し、気軽にボスに挑み直すことができます。中盤以降では難易度の変更が可能になるので、どうしても勝てない場合は難易度を下げてみるのも一つの手です。

また、主人公の二人には「強さ」、ボスには「適正値」という基準が存在します。強さは武器・防具の質によって決まり、この数値を各ボスの適正値と比べて、戦いを挑むための目安にすることができます。ランクの高い装備で叩きのめすのも、あえて弱い装備で強敵に挑むのもプレイヤーの自由です。

スキルをつけかえたり装備を少し強いものに変えるだけでも、大きく戦況が変わります。ボスの特徴に合わせて、自分なりの勝ち方を見つけていきましょう。

“厨二病"を昇華したテキストセンスに唸れ!

ここまでの敵の名前、技からも感じる厨二病さ。しかしこれは序の口であり、作中で手に入る武器・防具まで、一分の隙もないほどに固められています。

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アイテムの説明までこの調子なので、少しグロテスクでダークな文章や単語に惹かれる人にとっては堪らない濃さを誇ります。

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初期から主人公たちの前に姿を現す、敵の大ボス「憎獄人形0118」。一人称すら定まらない彼のセリフの支離滅裂さが、作中ににじみ出る狂気部分を大きく担っています。

ダンジョン内ではところどころにメモが落ちており、断片を組み合わせて読んでみると物語の背景が浮かび上がってきます。公開サイトにも説明があるように、このゲームは世界観を共有する『歪者行進曲』という作品群の一作目となっており、メモを全て集めても世界の全貌を理解しきるのは難しく、少し謎が残ります。ですが話の大筋自体はそこまで複雑でもなく、主人公たちの置かれた状況は今作で理解できるようになっています。

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パートナーであるドラヴォロワ。主人公の人柄を把握するのに一役買うとともに、ダークなストーリーの中で、彼女との会話が癒しに

思わず立ち止まってしまうマップ構成、BGM

今まで紹介してきたような”厨二”な文章を格好いいと思えるのは、他の部分が狂気的なテキストに見劣りしないクオリティを誇ってこそ。『歪者行進曲』において戦闘やネーミング以外に注目すべき点として、マップとBGMがあげられます。

ボスとの連戦の間には、不穏で不気味な戦場から、鳥が舞う平和な村、奥行きある異空間まで、次々と美しい世界が展開されます。

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思わず進行を中断して、周りを見て歩きたくなるような透明感のあるマップ

さらにBGMは、多くのフリーゲームをプレイしてきた人でも耳慣れない名曲ばかりです。聞けば聞くほど味わい深くなる曲たちが、同じ敵との再戦を飽きさせません。

短いオープニングが終わって訪れる森。そこで、幻想的で切ないBGMと共に、近づくと飛び立つ鳥・人物ごとに違う文章ウィンドウなどの細かい演出に驚き、最初に出会うボスではメタル調の激しい戦闘曲が繰り広げられ、一気にこの『歪者行進曲』の世界に引きずり込まれます。

「高難度」という言葉でプレイを躊躇される方もいらっしゃるかもしれませんが、それはあまりにももったいない。このゲームには、試行錯誤する面白さ・戦略がうまく決まって勝ったときの快感がつまっています。バトル好きな方はもちろん、今までハイレベルな戦闘に魅力を感じていなかった方も、ぜひ手に取って「こんなに高揚する戦闘があるのか!」と実感していただきたい。ただの高難度ではなく価値ある高難度を見事に実現している本作、クリアするまでの時間は3~6時間ほどです。
歪んだ美しい世界と、強大な敵があなたを待ち受けています。

[基本情報]
タイトル 『歪者行進曲』
制作者 ンギョッポラーヌ
クリア時間 3~6時間程度。(作者の最短で1時間15分)
対応OS Windows 2000/XP/VISTA/7/8
価格 無料
ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/8528

  • レイ(@Rei__game

    フリーゲーム大好きなぬるゲーマー。プレイアビリティにうるさい人。ツクールでのゲーム制作にも手を出してますがまったく進んでません。「Rebellion Istuooll」に今も昔も心酔してます。