可愛らしい少女たちによる、血生臭い抗争劇を描くクライムサスペンスRPG『Orangeblood』

199X年、実在の歴史とは異なる過程を辿った20世紀末。名うての「紛争解決業者(トラブル・バスター)」であるヴァニラ(ヴァニラ・ヴィンセント)は、とある一件でドジを踏み、アメリカ・コロラド州のフローレンス連邦刑務所に拘留されていた。

そんな中、”アイスマン”を名乗る人物より、沖縄近海の人工島「ニュー・コザ」の街にある主幹構造物(メイン・ストラクチャ)の最基底部こと”閉鎖区画”への侵入ルート確保の依頼を彼女は引き受けることになる。
報酬は即時釈放、犯罪記録全抹消、そして20万ドル。

かくして、DJのマチコ(南風原マチコ)の案内と共に故郷でもある地へ帰ってきたヴァニラだったが、街には各国のマフィアが根城とする高層ビルが建ち、すっかり様子が変わってしまっていた。さらにマチコの兄の家だった「クラブ・シャングリラ」も彼に敵対するギャングに支配されてしまっている始末。不利な状況の中、ヴァニラはマチコと共にマフィアたちとの銃弾を用いた交渉を展開させつつ、依頼達成に挑む。果たして無事、遂行できるのか。そして、依頼を出した”アイスマン”の真意とは。

『Orangeblood(オレンジブラッド)』は2020年1月14日より、Steam及びPLAYISMストアにて販売中のRPG。個人開発者兼スタジオの「Grayfax Software」のデビュー作でもある。対応OSはWindows。Nintendo Switch、PlayStation 4、Xbox Oneの家庭用ゲーム機版リリースも2020年内に予定されている。

FPS(TPS)&ハクスラ要素が特徴のRPG

RPGとしての作り、流れは至って正統派。ストーリーに沿って指定される目的地を目指し、時にはターゲットの殺害を果たすなりして進めていく構成だ。基本的に目的地などは画面左上に表示されたミニマップ、セーブ&ロード画面などで表示。それに沿って行動していけば、自然に進んでいくテンポ重視の設計になっている。

RPGの定番たる戦闘システムも王道。サイドビュー(横視点)のターン制コマンドバトルとなっている。行動順序も速さ(敏捷)のステータスが高いキャラクターから動く伝統的な仕様。次にどのキャラクターが行動するかを示すタイムラインも画面右上に表示するなど、現代的な工夫も施された作りだ。

ただ、主要武器がアサルトライフル、サブマシンガンなどの銃火器を主体にしているのが大きな特徴。各武器には「AP」こと残弾数も設定されていて、全弾発射しきった際には「リロード」を行わなければならない。やり方はコマンドメニューにある「リロード」を決定するだけ。他に全弾発射しきった状態で攻撃コマンドを選んだ際にも、自動で行われるようになっている。

だが、一行動として消費されるので、攻撃は次のターンに持ち越し。そのため、実施のタイミングが悪いと、敵の集中砲火に晒されたり、形勢逆転に繋がる恐れも。概念そのものはFPS(ファースト・パーソン・シューター)、TPS(サード・パーソン・シューター)で馴染み深いものだが、それをRPGへと翻案し、独特の駆け引きを表現したシステムに完成されている。

また、装備によってはリロードと同時に体力回復、防御力上昇などの補助効果も付けられる。そして、攻撃手段は銃火器照射以外にも「スキル」がある。大体、想像通りの必殺技だ。「SP」と呼ばれる専用ゲージを消費して発動する。

その大半は敵に致命的なダメージを与えるものばかり。ただ、強力なものほど多くのSPを消費。さらに一回発動すると数ターン使えなくなる種類もあるので、使用時のタイミングには気を付けなければならない。


▲スキルには必殺技の類以外にも「パッシブ」なる補助効果を及ぼすものも。

そして、さらなる特徴が豊富な装備品。戦闘が発生するマップでは「クレート」と称された宝箱がランダムで配置。これを戦闘で手に入る「フラグメントキー」で開ける度に銃火器、防具類が手に入る。しかも、ザクザクと。本作では武器、装備類共に50個ストックできるのだが、あっという間に満タンになる。いわゆるハック&スラッシュ(ハクスラ)由来の入手率になっているのだ。

各装備にも「Common」、「Uncommon」、「Epic」と言ったレアリティが設定されており、高いものほど大きな補助効果を与え、時に難易度を一変させる。また、攻撃に状態異常効果、属性を付ける種類もあり、一部の戦闘ではその種の装備変更で優勢・劣勢が逆転したりも。そんな相性の概念もあり、単に高レアで性能の高い武器で押し通せば済まないバランスを実現している。

他に戦闘はマップ上の敵シンボルに接触すると発生する「シンボルエンカウント」方式ながら、ピストルで攻撃すると「スタン」状態にでき、その時に接触すればSPが50溜まった状態で戦闘が始まる仕掛けも。マップ上にもリトライ時のチェックポイントが至る所に配置されていたりと、今風のゲームらしい配慮も凝らされている。

根っ子は王道で、紹介が漏れたが「RPGツクールMV」制作作品らしい手触りもある。ただ、戦闘から装備品調達まで、ユニークな工夫が凝らされていて、独自の個性が滲み出ている。まさに懐かしいけど、新しさもあるタイプのRPGだ。

大味なバランスが描く、少女たちの凶悪さとギャップの大きさ

そんな本作の魅力は良くも悪くも大味なバランス。
一言で言って”荒々しい”。

序盤は比較的、各種特徴的な要素と装備の切り替えを楽しみながら戦闘を進めていける。ただ、3人目の仲間キャラクター「ヤザワ(矢沢叡智)」が加入する辺りから、膨大な補助効果を持つ装備類が手に入るようになり、力押しが容易になっていく。件の「ヤザワ」も敵全体を攻撃、且つ防御力無視の凶悪なスキルを所持していて、装備の組み合わせによっては万単位のダメージを叩き出せる。どうもステータスの攻撃力がそのまま反映される仕様のようで、重ねがけで凶悪化できるのだ。

加入は大体中盤からだが、これ以降の展開は壮絶。問答無用の斬り捨て御免祭りである。特に雑魚敵との戦いがそうなりやすく、先の「スタン」させてからの戦闘開始を徹底すれば、1ターンでの決着も容易なぐらいだ。また、主人公のヴァニラも「デッドアイ」なる凶悪スキルを所持。装備している銃火器を弱点とする敵に使えば致命傷、場合によっては瞬殺できる。

これはゲーム開始間もない頃から使えるので、雑魚敵との戦闘は例のスタンさせて~の流れで即決可能だ。さすがに中盤になると、敵の強化、登場数の増加で難しくなるのだが、件のヤザワがそれをフォロー。豪快の極みな展開が連発する。

さらに4人目の「ジャッキー(白蘭花)」が加われば、ボスに致命傷を与えられるような「スキル」も解禁。ボスとの戦闘はスタンによる突入が無効なので、SPを溜めるために色々工夫しなければならないのだが、それを達成して以降はもう、勝利確定に等しい展開に。可愛らしい少女たちになぶり殺しにされる、壮絶な一部始終を見ることになるのである。ジーザス。

こう言った豪快な力押しを可能にしているため、本作でターンごとに戦略を組み立て、最適の一手を下していくような遊びは正直に申して楽しめない。装備の選別で可能になる余地はあるが、むしろそれ以上に力で押すこと推奨な感じ。驚くべき大味ぶりだ。

なので、緻密さを求めるプレイヤーには肩透かし確実。ただ、これが大きな魅力でもある。特に強烈なダメージを与える攻撃を仕掛け、敵のマフィアたちを問答無用でしばき倒していく過程は爽快感抜群。強い装備の入手で、それが実現可能になった際の快感も格別で、ハクスラならではの達成感に満ちている。

何より、可愛らしい少女がそのような圧倒的な力を振る舞い、殺戮の限りを尽くしていく構図はインパクト抜群。そのことは本編のストーリーでも強調されていて、見た目からは想像もつかぬ犯罪的な用語が飛び交う作風との相乗効果を及ぼしている。強キャラ感も様々なイベントで発揮されるので、徹底的に力で押し、勝利する光景にも違和感なし。むしろ、これぐらいして当たり前だと言わんばかりの説得力が滲み出ている。

そのような凶悪な少女たちを描く意図があるとなれば、驚くほど理に適ったまとめ方になっているのだ。そして、このおかげで彼女たちの戦闘での一部始終も強く印象に残る。それに重なるように存在感を放つのが「ニュー・コザ」の街並み。

各国のマフィアが高層ビル群を根城にし、抗争を繰り広げる混沌とした設定に件の力押し……という名の弱肉強食感が際立って表現されているのだ。むせ返るほど緻密なドット絵で描写されたグラフィックもそれを演出。豪華絢爛で複雑な構成をした地上、簡素で薄暗い地下のマップはその象徴で、穏やかならざる本作の世界観と激戦区な雰囲気を引き立てていて面白い。

大味なことを調整放棄と見なすのも止む無いところはある。また、ボス戦は調整的に乱暴で、決まって3回行動を決めてくる関係で形勢逆転されやすい。一部、初見殺し要素を仕込んだボスも存在する。そのため、力押しが最適解なのだが……曲がりなりにも雑魚敵とは異なる強敵たるボスだ。少しは駆け引きを楽しませてくれる面子も用意して欲しかった。ただ、おかげでやたら際立つ少女たちの凶悪さ。

「大味=破綻している」ではなく、明確な意図をもってそうした、こだわりに満ちたバランスを実現しているのだ。若干、それってどうなのと思うかもしれないが、実際にそれらの技で暴れ回れば分かる。意識してしまうのだ、彼女たちの強さを。

マフィアどもに慈悲無し。斬り捨て御免の怪作

ひたすらに凶悪な少女たちの暴れっぷりが描かれるストーリーも、スピーディ、かつテンポよく展開されていく構成が痛快。特に作中の目的とされた”閉鎖区画”に関するイベント、探索では、最下層に近づくにつれ、おぞましい”何か”が見え始めるミステリー色の滲み出た展開が楽しめる。また、世界観も詳細に設定されつつも、語りすぎない姿勢が徹底されているのも秀逸。おかげでテンポが損なわれないだけでなく、街全体の雰囲気や人物相関を程よいペースで味わいながら進めていける。

とは言うものの、エンディングまで5~6時間程度で内容としては短め。また、終盤の展開は相当な唐突感が否めず、エンディングも気付いたら終わっていたようなオチになってしまっている。中でもラスボス戦から、その後のイベントはもう少し長くしても良かった。どうも起承転結の”結”が欠けているようで、筆者は首を傾げてしまった。

また、クリア後に特殊なダンジョンが解禁されるが、本編から2~3倍難易度が跳ね上がるのは若干、乱暴さが否めない。本編が大味な関係で、意図的にやっているのかもしれないが……。

他にマチコのパッシブスキルで、戦闘開始前に自動で発動する「トランジョン」の点滅演出も目に負担がかかりやすい。現在はアップデートで明るさの調整が行われたが、オプションの「カラー設定」によっては変わらず派手なままなど、完全な解決には至ってない。まだもう一段階、暗くしても良いように感じる。マップもグラフィックは圧倒的ながら、描き込みすぎて道が分かりにくく、ほぼミニマップを見ながらの進行になってしまうのが厳しい。ジオラマっぽくする「ティルトシフト」も、結果的に視認性を悪くしているので、機能的に余計に感じてしまう。(オプションでOFFに設定可能なのが救い)

随所にて荒々しさが際立つ出来だが、それゆえの魅力が詰まっているのも事実。強力なスキルを駆使し、マフィアやらヤクザを一網打尽、時に斬り捨て御免する爽快感は最たる象徴だ。総じて良作……というよりも野心作、怪作の表現が似合う本作。難易度的には抑えられているので、爽快感のあるRPGをプレイしたいのであればぜひ、お試しいただきたい1本だ。

キャラクターの可愛らしさとドット絵に惹かれながらプレイするのもよし。その先に待つ、暴力と無慈悲の世界に翻弄されよう。

[基本情報]
タイトル:『Orangeblood(オレンジブラッド)』
作者:Grayfax Software(※販売:PLAYISM)
クリア時間:5~7時間
対応OS:Windows
価格(税込):¥ 1,999
備考:暴力、出血、薬物表現あり

購入はこちら
※Steam

※PLAYISMストア
https://playism.com/ja/product/orangeblood


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