“サバイバル”ノンフィールドRPG『最果てを目指す』 溢れる意思を力に変えて少女とロボはゆく

フィールド移動という間を省いてプレイの密度を上げたノンフィールドRPGは、ゲームデザインにおいて制作者が注力する要素が色濃く出やすい。バトルを主軸としたもの、アイテム集めが楽しいもの、ストーリーを前面に押し出したADV寄りのものなど、それぞれのこだわりを感じる多彩な作品が生まれ続けている。

今回紹介するフリーゲーム『最果てを目指す』 は、独自システムのバトルに素材集めとアイテムクラフト、さらには豊富なイベントシナリオと、こだわりを感じる要素がいくつも存在する、なかなかに欲張った作りのRPGだ。それでいて各要素が取り散らかってはおらず、1つの軸によって絶妙にまとめあげられている。その軸とは“サバイバル”。公称ジャンル表記「サバイバルノンフィールドRPG」に相応しい、創意工夫と計画性、さらには意思の力で厳しい旅路を生き抜いていく作品だ。

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アイテムクラフトが生き延びる鍵となるノンフィールドRPG

本作の主人公は、世界のどこかにあるという“最果て”を目指す少女「ツキ」に生み出されたロボット(名前はプレイヤーが入力)。イレギュラーにより自らの意思を持つロボットとなった主人公は、ツキの望みを叶えるため共に前へと進み続ける。ゲームの流れとしては全100歩のエリアが5つあり、その先にあるという“最果て”へ辿り付くため、戦闘や各種イベントを切り抜けながら一歩ずつ進んでいく。各エリアはそれぞれ行き先が3つあり、登場する敵や入手できるアイテム、発生するイベントが行き先ごとに変化する。

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主人公は自らの意思で行動するロボット。意思を備えたことは制作者であるツキにも想定外のようで……?

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各エリアで選ぶ行き先ごとに、登場する敵や入手できるアイテム、発生するイベントなどが異なる

先へ進むにあたり基幹となるリソースは、主人公のエネルギーを表すEPに、ツキの生命力満腹度。これらはエリア毎に設定された効果で一歩ずつ増減するほか、任意のタイミングでEPを消費して行うアイテム探索や、戦闘でのダメージ、各種イベントの結果など、さまざまな状況で変動する。EPと生命力のいずれかが尽きるとゲームオーバーで、この2つを回復させる休息で大きく消費する満腹度も含め、3つのリソースのいずれも枯渇しないよう管理するのが生き延びるための最優先事項となる。

探索で見付けたり、敵を倒すなどして入手できる素材アイテムを合成して様々なアイテムを制作するクラフト要素もプレイにおいて大きな比重を占める。作れるアイテムには回復や戦闘の支援に使う消費アイテムのほか、特定エリアにおける悪環境(暗い、暑いなど)を緩和するランタンや耐熱外套、休息の効率を上げるテントといったサバイバルのための道具もあり、何を作れるかは素材の所持に関わらず最初からすべて確認可能。必要なアイテムを見定めて素材を確保していくのも重要なサバイバル術となっている。

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状況や手持ちの素材、これから入手できそうな素材などを見定めて、どのアイテムを作るか検討していく

レベルアップで入手するポイントにより上げることができる、「カリスマ」「知識」といった非戦闘系スキルの存在もユニークだ。最果てを目指す旅の中で遭遇するイベントでは選択肢で判断を迫られる場面があり、その際には選択するために特定のスキルが必要となる選択肢が表れることも。EPなどのリソースを消費する代わりにスキルを活かしたトラブル解決が可能になるなど、戦闘とは別の形で旅の障害が演出されている。

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選択肢によりイベントの結果が分岐。前提スキルが必要な選択肢やリソースを消費する選択肢もあり、ゲームブックやTRPGのような趣も感じられる

論理思考で切り抜けるバトル。それでも敵わないなら“意思”の力で覆せ

本作の戦闘はターン制のコマンド選択型。敵は常に1体で、HPや防御力を表すDEF、先手後手の判定に使われるSPDなどのステータス、そして「30ダメージの2回攻撃」といった行動内容がすべてオープンになっている。主人公は「通常攻撃」「貫通攻撃」などの攻撃行動と「防御」「回避」などの防御行動の両方を、それぞれ4つから1つ選択して攻めと守りを同時に行うのが特徴で、加えてツキはアイテムでサポートする。

DEFの高い敵にはこれを無視できる貫通攻撃を繰り出したりと、状況に応じたコマンドを選択していくのが基本。ただし敵の攻撃にも「防御無視」「必中」とこちらの一部の防御行動を無意味にするものがあり、いかに被害を抑えつつ、着実にダメージを与えられるかの最適解を模索するパズル的な戦闘に仕上がっている。

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攻撃行動、防御行動ともに4つのコマンドから1つずつ選んで行動する

と、ここまではノンフィールドRPGでは比較的ポピュラーな“1手ごとの価値が重いロジカルなバトル”の範疇だが、本作のバトルの真骨頂はこの先にある。各エリアの100歩目に待ち構えるボスや終盤エリアの敵などは、現状のステータスでは防ぎきれない攻撃や「防御無視かつ必中で高ダメージ」などといった一見理不尽な攻撃を仕掛けてくることも。そうした「詰んだ」ように見える状況を覆せる力が主人公には備わっている。それが≪意思≫システムだ。

主人公はゲーム開始時に3つある「意思」を1つ消費し、通常攻撃や貫通攻撃なら威力を倍増、防御は軽減できるダメージ値を倍に、先手を取ったときに敵の一部行動をキャンセルできる防御行動「妨害」を後手でも有効に……などと、コマンドの効果を大幅に強化可能。これにより本来なら凌げない攻撃を凌いだり、敵が行動する前に一気に倒し切るなど戦術の幅が広がる。比較的シンプルなコマンド選択に「回数限定の超強化」という要素が掛け合わされることで、奥深い戦術を堪能できるのが本作のバトルの醍醐味だ。

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そのままでは耐えきれない攻撃を、意思の力で完全無効化することも可能

意思はボスの撃破や特定のイベントなどで回復。初期値であり最大値の3を超えた場合、溢れた意思は意思を回復させるアイテムへと変換……つまり意思をストックしておくことができる。終盤には次々と押し寄せる理不尽を意思の力でねじ伏せるような展開もままあり、これに備えてどれだけ意思をストックしておけるか、というのも重要な生存戦略となるだろう。意思はイベントで本来選べない選択肢を選べるようにするなど戦闘以外の使い道もあり、使い所の見極めが一際シビアなリソースとなっている。

少女とロボは共にゆく。厳しい旅の支えとなる軽妙なシナリオも見所

ここまでの紹介で察せられるかもしれないが、本作の難易度は比較的高め。エリアによっては一歩ずつ減っていくツキの生命力に焦り、新しいエリアに到達すればいきなり詰むような敵が出てこないか戦々恐々とする。そんな緊迫した最果てへの旅路の光となってくれるのが、少女とロボットが共に苦難を乗り越え、旅を通じて交流していく様子が軽妙なテキストで描かれるシナリオだ。

本作のイベントシナリオは主人公視点の地の文とツキの台詞で構成。抑制の効いた、しかし決して無感情ではなくツキへ対する温かい視線も感じられる地の文と、旅への覚悟を固めつつもそこで起きるさまざまな出来事への好奇心も隠さないツキの軽やかな台詞回しが交互に掛け合う形で、心地良いテンポ感の文章に仕上がっている。イベントはトラブルだけでなく休息時などにも発生。最果てという未知の場所を目指す旅ならではの不思議な出来事や、コミカルな一幕などもあり、どれもが旅の大事な想い出となることだろう。

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意思を持つロボットと少女の交流が軽妙に、ときに情感豊かに描かれる

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進行状況や持っているアイテムなどに応じたツキのコメントが随時挟まれる要素もあり、旅路を賑やかなものにしてくれる

本作は一度の挑戦でクリアすることは難しいかもしれないが、旅の途中で入手でき、戦闘コマンドを変化させられる「心装」はゲームオーバーになっても次回以降のプレイに引き継げるほか、進行状況に応じて解放される「残滓」をセットして初期ステータスを上げる要素もあり、周回によって少しずつ強くなることが可能。何よりプレイヤーの知識と経験が積み重なることで生存率を上げていくことができるだろう。

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「心装」により追加効果の付与など戦闘コマンドを変化させることが可能。入手した心装は次回以降のプレイにも引き継がれる

さまざまな名作を生み出してきたノンフィールドRPGというジャンル。本作『最果てを目指す』はシステムなどの面でそうした過去の作品から受け継いだものも感じさせつつ、ただ戦いを“勝ち抜く”だけでなく、ものづくりや多様な状況を切り抜けるための技能、さらには旅路に寄りそってくれる存在により、“共に生き抜く”ことを軸とした本作だけのプレイ感を醸成していると感じさせられた。

1周は比較的コンパクトでありつつ、クリア後もエリア進行の別ルート開拓やハードモードなど、やりこみも楽しめる作品となっている。少女と共に最果てを目指す旅に興味があれば、恐れずにぜひ足を踏み入れてみてほしい。その旅は厳しく困難であっても、決して孤独ではないのだから。

[基本情報]
タイトル:最果てを目指す
制作者:Huyumi氏(ゆりかごは夕月にて
クリア時間:初クリアまで約2~6時間(公称)
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_8289.html

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    中村友次郎(@finalbeta

    フリーゲームと同人ゲーム、日本ファルコム作品をこよなく愛するゲーム好き。システムに凝ったRPGをとくに好んでプレイします。スマホRPGは「メギド72」激推し。
    過去に十数年ほど、窓の杜の連載記事「週末ゲーム」の編集と一部執筆を担当していました。