和風ファンタジーRPG『剣閃神姫誅伐伝』 あらゆるボスを一撃必殺!——その対価は、ヒロインの寿命

RPG,フリーゲーム

RPGをプレイしていて、どうしてもボスの倒し方がわからず詰んでしまった、という経験はないだろうか。今回紹介するフリーゲーム『剣閃神姫誅伐伝』はゲーム全体を通して一定回数までなら、あらゆる敵に強制的に勝利できるシステムが特徴となっている。シナリオ上において重要なボス戦であろうとお構いなしに一撃必殺できる、ある意味掟破りの画期的なシステムだ。これで詰んでしまう恐れはほぼほぼなし。ちなみにこのシステム、使用するためのリソースとして消費するのはヒロインの寿命である。

まつろわぬ民「羅刹」との戦いを描くノベル+ノンフィールドRPG

『剣閃神姫誅伐伝』は、日本の神話をモチーフにしたようなファンタジー世界が舞台のRPG。遠い昔、天の神々に反逆したまつろわぬ民「羅刹」と戦う人々を守護したという女神「天剣姫神あめのつるぎひめのかみ」の伝説が残る世界で、復讐のため羅刹と戦い続ける武士「影時」が、天剣姫神と同じ容姿の少女「零亞」と出会うことから物語が展開していく。

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羅刹との戦いで窮地に追い込まれた影時達は、突如現れた少女に救われる。その姿は伝説の女神と同じで……

ゲームは主にノベルゲーム的なストーリーパートと、ノンフィールドの探索パートで進行。探索パートでは特定の進行度で内容固定の戦闘が発生するほか、任意に敵と戦って経験値やお金を稼ぐこともできる。探索を最後まで進めるとボス戦が発生し、これに勝利することで物語が進んでいく、というのが基本的な流れだ。

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探索はノンフィールドで進行。特定の進行度で内容固定の戦闘が発生するほか、いつでも任意に戦闘が行える

任意戦闘での経験値・お金稼ぎをせずストレートに進めた場合、戦闘の難易度は高め。とくにボス戦はかなり歯応えのあるものとなっている。そこで出番となるのが、冒頭で紹介した一撃必殺システムだ。

具体的には零亞が使う“存在を切断する奥義”により、あらゆる敵を一撃で倒すことが可能。使用すると残り寿命に相当するパラメーターである「天命」を1つ消費する。そのほか、パーティが全滅した際には同様に天命を1つ消費して“死を斬る”ことで、全滅をなかったことにして体力を全回復した上に、しばらくの間戦闘不能にならない“死殺”状態になることができる。

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零亜は一撃必殺奥義のほかに、“死という事象そのもの”を斬ることで全滅をなかったことにする能力も持つ。いずれもその絶大な力の対価として寿命が削られていく

非常に強力だが天命を回復させる手段はゲーム中を通して一切存在しないため、使い所は見極める必要がある。さらに本作はこの零亞の天命の値次第ではバッドエンドとなるマルチエンディング。とはいえ分岐条件はほぼ明示されているので、気を付けていれば回避は難しくはない。

レベルを上げて着実に進めていくもよし、命を削って打開するもよし、あるいはすべてを縛って高難易度のバトルにチャレンジするもよしと、遊び方はプレイヤー次第だ。

コンボが攻略の要!戦術性と爽快感が一体となった戦闘システム

天命消費と並んで本作の戦闘において大きな特徴となるのが、“気魄”を溜めることにより連続行動が可能となるシステムだ。

本作の戦闘は敵味方が入り交じって順次行動するCTB方式のコマンド選択型。最大3人パーティで、装備によって使用可能になる魔法的な位置付けの“神言”、そして主に通常攻撃や防御で溜まる気魄を消費して発動させるキャラクターごとの固有技“練技”など駆使して戦っていく。

攻撃を行う練技は、使用後に続けて再行動が可能。気魄を多く溜めていれば、それだけ多く行動ができるというわけだ。そして敵に攻撃が当たるたびに“撃数”という値が増えていき、この数が高いほど攻撃の威力が上がっていく。撃数は別の味方の攻撃でも継続して増加していき、敵から攻撃を受けたり、攻撃を回避されるとリセットされる仕組み。

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練技による連続行動を駆使して撃数を重ねていくことで、コンボボーナス的に与えるダメージを上げることができる

このため、いかに敵の攻撃を挟まずに味方の行動を繋ぎ、撃数を多く稼ぐかというのが攻略の要となる。ある程度気魄を溜めてから攻勢を掛けるのが強い動きだが、もちろん敵もその間、手をこまねいているわけではない。気魄を溜めつつ敵の攻撃をどう凌ぐか、アタッカーと支援役といった役割分担も重要だ。

こうして溜めた気魄を使う練技は、撃数を多く稼げるものや撃数による補正を大きく受けるもの、攻撃しつつバフやデバフをかけられるものなど多様なものが揃っており、キャラクターごとの戦闘スタイルを特徴付けている。溜めた気魄をどういう順番で、どの練技に割り振っていくかというコンボの組み立てが醍醐味で、立てた戦術が綺麗にハマり、味方の攻撃を繋げて敵に大ダメージを与えられると痛快だ。

そのほか一部のキャラクターの練技には回復技もあり、「回復しつつ攻撃」といった動きも可能。また、例外的に連続行動はできないが味方を庇う体勢に入る練技もあり、一気に攻める以外にも、練技による立ち回りが独特の戦術性を生み出している。総じて敵の攻撃を凌ぎつつ機を見て攻めに転ずるという、緩急のついたバトルに仕上がっている印象だ。

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攻撃回数や範囲、追加効果の異なる攻撃用の練技、さらに回復や支援などさまざまな練技の組み合わせで戦術を立てていくのが醍醐味

「神玉」による自由度の高いキャラクターカスタマイズ

本作でパーティメンバーとなるのは影時と零亜のほか、影時の幼馴染みで高い神言の才能を持つ「朱音」、自らの拳で戦うパワーファイターの「愛叉」といった6人の武芸者達。戦闘スタイルはステータスや練技で個性付けられているが、さらにプレイヤーがカスタマイズできる要素もある。それが装備品にセットできる「神玉」だ。

神玉をセットできる数は装備品ごとに異なるが、ゲームを進めるほどより多くの神玉をセットできる装備品を入手可能になる。神玉はステータスを伸ばすもの、特定の神言が使用可能になるもの、パッシブスキルにあたる「常在神言」を獲得できるもの、攻撃時に確率でデバフをかけられるようになるものなどさまざまだ。

ステータスを伸ばす神玉や攻撃にデバフ効果を付与する神玉は、同じものを複数セットすることも可能。攻撃力に極振りしたり、デバフ付与の確率を上げたり、打たれ弱さを補強したり……もちろんバランスよく強化するのもありと、自由度の高いキャラカスタマイズを存分に行うことができる。

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武具および2つまで装備できる装身具のそれぞれに、神玉をセットして能力をカスタマイズできる

神玉は店で買えるほか、ボス戦や、スキップすることも可能な強敵との戦闘に勝つとレアなものを入手できることも。強力な神玉の入手で戦略にアップデートがかけられるのも面白いところだ。

戦いを通じて描かれる、武芸者達のドラマと神話の先にある物語

本作を通して描かれるのは、「羅刹王」のもと軍として蜂起した羅刹と影時達の激しい戦い。さらにその戦いを続ける中で、天剣姫神の伝説の真実に迫っていく伝奇ファンタジー的な内容も興味が惹かれるものとなっている。

影時と共に戦う仲間達のドラマも見どころだ。羅刹は神への反逆への裁きとして異形化した亜人族で、人間に敵意がない者でさえ、生まれながらに差別の対象となっている。そんな羅刹との共存の道を模索する朱音や、自らも身体的には羅刹でありつつも生きるために羅刹と戦う獣人の神言使い「烈華」など、戦いへの思惑は人それぞれ。過去の因縁から羅刹を憎む影時ですら、それはあくまで人に仇なす存在としてであって、種族としての羅刹を忌避しているわけではない。作中では「突き抜けた半端者たち」などとも呼ばれるが、まさにそんな時代の常識に囚われない者達が、自ら信じるもののために運命を切り拓いていく様が胸を打つ。

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隠していた事情を打ち明けることで軽蔑されないかと恐れる烈華に対する影時の言葉。良くも悪くも羅刹討伐と剣術以外にこだわりのない、根っからの武人といったところである

彼らに相対する者達もそれぞれの信念を持ち、ときにこちらの戦いの“義”を問うてくる。各人物の見せ場となるような戦闘で、普段は隠している真の名を、自らの行動原理と共に名乗り上げる「真名宣告」もケレン味のあるものとなっている。

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羅刹の王として影時達の前に立ち塞がる男「阿令為」。何かを知っている様子で、影時達に戦う意味を問い掛けてくる

シチュエーションに応じて多数用意され、それぞれが印象深い戦闘BGMなど場を盛り上げる演出も充実しており、「戦いを通じて描かれる物語」を存分に堪能できる。物語もバトルも熱く、探索はサクサク進行できるノンフィールド、詰み防止の“保険”も用意されているため幅広いプレイヤーに安心してお勧めできるRPGだ。

[基本情報]
タイトル:剣閃神姫誅伐伝
制作者:Hollow_Perception(anubis氏)
公称プレイ時間:6~9時間
対応OS:Windows
価格:無料

ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/22879

  • 中村友次郎(@finalbeta

    RPGのプレイと紹介がライフワーク。システムに凝ったRPGをとくに好んでプレイします。商業で一番好きなゲームメーカーは日本ファルコム。運営型では原神にハマってます。
    過去に十数年ほど、窓の杜の連載記事「週末ゲーム」の編集と一部執筆を担当していました。